医療一般|page:113

CKDに対する集学的治療で腎機能低下が抑制される

 慢性腎臓病(CKD)に対する集学的治療(MDC)の有効性を示すエビデンスが報告された。MDC介入後には腎機能(eGFR)低下速度が有意に抑制されるという。国内多施設共同研究の結果であり、日本大学医学部腎臓高血圧内分泌内科の阿部雅紀氏らによる論文が「Clinical and Experimental Nephrology」に3月31日掲載された。MDCに携わるスタッフの職種数や介入回数が多いほど、腎代替療法や全死亡のリスクが低下するというデータも示されている。  CKDが進行すると生命維持のために腎代替療法(透析または腎移植)が必要となるなど、患者本人のQOLが低下するだけでなく医療経済的な負担も大きくなる。

高リスクStageII/III早期乳がんでの術後内分泌療法+ribociclib、iDFSを改善(NATALEE)/ASCO2023

 再発リスクの高いHR+/HER2-早期乳がんの術後内分泌療法へのCDK4/6阻害薬追加による効果については、すでにアベマシクリブが無浸潤疾患生存期間(iDFS)を改善したことがmonarchE試験で確認されている。ribociclibについては、リンパ節転移のない患者を含む再発リスクの高いStageII/IIIのHR+/HER2-早期乳がんという幅広い集団を対象に第III相NATALEE試験が進行している。その主要評価項目であるiDFSについて、第2回中間解析の結果、有意に改善したことが、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で米国・David Geffen School of Medicine at UCLAのDennis J. Slamon氏により発表された。

日本人2型糖尿病の100人に1人が寛解、達成しやすい人は?/新潟大

 従来、糖尿病を発症すると、一生にわたって治療が必要といわれてきた。しかし、実際には2型糖尿病と診断され、治療を開始した患者のうち、血糖値が正常値近くまで改善し、薬物治療が不要な状態となる患者が存在する。そこで、2021年に米国糖尿病学会(ADA)を中心とする専門家グループは、「薬物療法を行っていない状態でHbA1c値6.5%未満が3ヵ月以上持続している状態」を糖尿病の「寛解」と定義した。しかし、日本人2型糖尿病患者において、寛解を達成する割合や、達成する患者の特徴、寛解の持続状況は明らかになっていない。そこで、藤原 和哉氏(新潟大学大学院医歯学総合研究科血液・内分泌・代謝内科学分野 特任准教授)らの研究グループは、全国の糖尿病専門施設に通院中の2型糖尿病患者4万8,320例を対象として、臨床データを後ろ向きに解析した。その結果、約100人に1人が寛解を達成していたことが明らかになった。本研究結果は、Diabetes, Obesity and Metabolism誌オンライン版2023年5月8日号に掲載された。

治療抵抗性うつ病に対するベンゾジアゼピン長期使用~FACE-TRDコホート研究

 ベンゾジアゼピン(BZD)の長期使用は、公衆衛生上の問題の1つである。しかし、治療抵抗性うつ病(TRD)に対するBZD長期使用の影響に関するデータは、十分とはいえない。フランス・エクス=マルセイユ大学のGuillaume Fond氏らは、選択していないTRD患者におけるBZD長期使用および1年間でBZD中止に成功した患者の割合を調査し、継続的なBZD長期使用がメンタルヘルスのアウトカムに及ぼす影響を評価した。

早期に禁煙していた人は肺がんになっても死亡リスクが低い

 肺がんになる前に禁煙していた人は、肺がんが見つかった時にも喫煙していた人よりも、発がん後の死亡リスクが低いことを示すデータが報告された。米ハーバードT. H.チャン公衆衛生大学院のDavid Christiani氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Network Open」に5月5日掲載された。  喫煙者の肺がんリスクが高いことは広く知られているが、喫煙者が禁煙した後に肺がんに罹患した場合の予後への影響はよく分かっていなかった。今回の研究によって、肺がんと診断された時点で喫煙習慣のあった人は、喫煙歴のない肺がん患者に比べて死亡リスクが68%高いのに対して、診断前に禁煙していた人のリスク上昇幅は26%であることが示された。また、禁煙期間が長ければ長いほど、肺がん診断後の死亡リスクが低いという関連があることも明らかになった。Christiani氏は、「この結果により、禁煙すれば、たとえ肺がんになってもメリットを得られると、力強く言えるようになった」と語っている。

肺炎への抗菌薬、静注から経口に早期切り替えで入院期間短縮か

 肺炎により入院した患者は、通常、状態が安定するまで静脈注射(IV)用の抗菌薬(以下、IV抗菌薬)を投与される。しかし、市中肺炎に罹患した患者の多くでは、もっと早い段階でIV抗菌薬から経口抗菌薬に切り替えた方が早期退院につながる可能性のあることが新たな研究で示された。米クリーブランドクリニック・コミュニティーケアのAbhishek Deshpande氏らによるこの研究結果は、「Clinical Infectious Diseases」に4月3日掲載された。

女性の腰痛にはストレスから来る“冷え”が関与?―日本人対象横断研究

 女性の腰痛に関連のある因子をWeb調査で検討した結果が報告された。敦賀市立看護大学の萬代望氏と関西医療大学の渡邉真弓氏、武田時昌氏、新潟大学の富山智香子氏、福島県立医科大学の二階堂琢也氏らの研究によるもので、詳細は「BMC Research Notes」に1月30日掲載された。“冷え”を訴え、実際に体温が低い人に腰痛が多く、その背後には精神的ストレスが関係している可能性が想定されるという。  腰痛は、日本人女性が訴える慢性症状として肩こりに次いで2番目に多いと報告されている。整形外科的疾患の症状として腰痛が現れることもあるが、詳しい検査をしても原因が見つからない「非特異的腰痛」が少なくない。非特異的腰痛の予防・改善には、その発症に関連のある因子を特定することが求められる。

日本における睡眠薬の使用パターン~レセプトデータ分析

 不眠症の最適な治療法に関するコンセンサスは、限られている。近年、オレキシン受容体拮抗薬の導入により、利用可能な治療選択肢が増加してきたが、日本における睡眠薬使用パターンを包括的に評価した報告は、行われていなかった。MSDの奥田 尚紀氏らは、日本の不眠症治療における睡眠薬のリアルワールドでの使用パターンを調査するため、レセプトデータベースの分析を行った。その結果、日本における睡眠薬の新規使用患者および長期使用患者では、明確な使用パターンおよび傾向が認められた。著者らは、睡眠薬のリスクとベネフィットに関するエビデンスを蓄積し、不眠症に対する治療選択肢をさらに理解することは、リアルワールドにおいて睡眠薬を使用する医師にとって有益であろうとしている。BMC Psychiatry誌2023年4月20日号の報告。

「日本版CDC」2025年度創設へ、参議院で可決

 今後の感染症流行に備え、国立感染症研究所と国立国際医療研究センターを統合し、新たに「国立健康危機管理研究機構」を設立するための法律が、5月31日の参議院本会議で可決、成立した。米国疾病管理予防センター(CDC)をモデルとして、2025年度に国立健康危機管理研究機構が創設される予定。感染症その他の疾患に関し、調査研究、医療の提供、人材の養成等を行うとともに、国民の生命および健康に重大な影響を与える恐れがある感染症の発生および蔓延時において、疫学調査から臨床研究までを総合的に実施し科学的知見を提供できる体制の強化を図る。

大腸がんを予防するコーヒーの摂取量は?~アンブレラレビュー

 1日5杯以上のコーヒー摂取により、大腸がんのリスクが有意に低減することが、米国・Cleveland Clinic FloridaのSameh Hany Emile氏らのアンブレラレビューによって明らかになった。Techniques in Coloproctology誌オンライン版2023年5月2日掲載の報告。  コーヒーの摂取によって、全死亡リスクおよび心疾患、脳血管疾患、呼吸器疾患による死亡リスクの低減が報告されている。また、大腸がんや一部のがん種を予防する可能性も示唆されている。しかし、コーヒー摂取が大腸がんのリスク低減と関連するエビデンスは十分ではない。

アスリートの睡眠習慣は食事に左右される?

 早寝早起きの生活にしたいのなら、食べ物をアレンジしてみると良いかもしれない。新たに報告された研究によると、何を食べるかによって、睡眠パターンが異なる可能性があるという。米ウエストバージニア大学のLauren Rentz氏らが、大学生アスリートを対象に行った小規模な研究の結果であり、米国生理学会(APS2023、4月20~23日、米国・ロングビーチ)で発表された。  Rentz氏によると、「アスリートの成功にとって、試合時に自分のパフォーマンスを最大化して発揮することだけでなく、試合やトレーニングの後の迅速な回復も重要。良い睡眠習慣が日々の身体的・精神的ストレスからの回復を促し、将来のパフォーマンスに好影響を与える」とのことだ。ただし、「常に強いストレスにさらされているアスリートの回復戦略における、睡眠と栄養素摂取の関係はまだほとんど知られていない」と、同氏は研究の背景を語っている。

抑うつ症状の強い女性には下部尿路症状が多い――国内ネット調査

 日本人女性では、頻尿や尿失禁などの下部尿路症状と抑うつ症状との間に有意な関連のあることが明らかになった。特に若年女性で、より強固な関連が認められたという。横浜市立大学附属市民総合医療センター泌尿器・腎移植科の河原崇司氏らが行ったインターネット調査の結果であり、詳細は「Lower Urinary Tract Symptoms」に3月30日掲載された。  頻尿、尿意切迫感、尿失禁、排尿後の尿漏れといった下部尿路症状(LUTS)は加齢とともに増え、特に女性では尿失禁や尿漏れが男性に比べて起こりやすい。LUTSは命にかかわるものではないものの、生活の質(QOL)を大きく低下させる。一方、うつ病も女性に多い疾患であり、かつ、うつ病は時に命にかかわることがある。これまで海外からは、女性のLUTSがうつ病リスクに関連していることを示す研究結果が報告されている。ただし、それを否定する研究もあり、また日本人女性対象の研究報告はまだない。河原氏らの研究は以上を背景として行われた。

境界性パーソナリティ障害に有効な治療は~リアルワールドデータより

 境界性パーソナリティ障害(BPD)患者の多くは精神薬理学的治療を受けているが、BPDに関する臨床ガイドラインには、薬物療法の役割についてのコンセンサスはない。東フィンランド大学のJohannes Lieslehto氏らは、BPDに対する薬物療法の有効性について比較検討を行った。その結果、注意欠如多動症(ADHD)の治療薬が、BPD患者の精神科再入院、すべての原因による入院または死亡のリスク低下と関連していることが示唆された。Acta Psychiatrica Scandinavica誌オンライン版2023年4月24日号の報告。

米CDCが今夏のサル痘再流行の可能性について警告

 米疾病対策センター(CDC)は5月15日、ヘルス・アラート・ネットワークを通して、サル痘ウイルスに感染するリスクのある人にワクチンを接種するよう呼びかけた。背景には、2022年夏にピークに達して以降、徐々に減少していたサル痘(2023年2月にエムポックスに名称変更)の罹患者数が再び増加に転じる可能性に対する危惧がある。CDCは、「人々が集うフェスティバルやその他のイベントを通して、2023年の春から夏にかけてサル痘が再び流行する可能性がある」と述べている。

クランベリーの尿路感染症予防効果、新たなデータで示される

 クランベリー製品の摂取が尿路感染症(UTI)の予防に役立つという説は何十年も前から唱えられているが、50件の研究のレビューから、その説を支持する結果が得られたことが報告された。フリンダース大学(オーストラリア)医学・公衆衛生学部公衆衛生学科のJacqueline Stephens氏らによるこの研究結果は、「Cochrane Library」に4月17日掲載された。Stephens氏は、「濃縮液や錠剤・カプセル状のクランベリー製品の摂取が、UTI再発患者や小児など一部の人に有効であることについて、初めて合意を得ることができた」と話している。

睡眠薬にアルツハイマー病の予防効果か

 スボレキサント(商品名ベルソムラ)と呼ばれる睡眠薬が、アルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)の予防に有用である可能性を示唆する予備的な臨床試験の結果がこのほど明らかになった。スボレキサントを就寝前に服用した参加者では、アルツハイマー病に関わる重要なタンパク質であるアミロイドβやタウのリン酸化レベルが低下することが示されたという。米ワシントン大学セントルイス睡眠医学センター所長のBrendan P. Lucey氏らが実施したこの研究の詳細は、「Annals of Neurology」に3月10日掲載された。

真性多血症治療薬ロペグインターフェロン発売/ファーマエッセンシアジャパン

 ファーマエッセンシアジャパンは、抗悪性腫瘍剤/真性多血症治療薬のロペグインターフェロン アルファ-2b(商品名:ベスレミ)の皮下注250µgシリンジと500µgシリンジを6月1日に発売した(薬価収載は5月24日)。適応は真性多血症で既存治療が効果不十分または不適当な場合に限るとされている。  真性多血症(PV)は、骨髄増殖性腫瘍の一種で、骨髄の造血幹細胞の異常により、赤血球が過剰に産生される血液の希少疾病。PVは、遺伝子変異によって発症すると推定され、ほぼすべてのPV患者で造血幹細胞中のヤヌスキナーゼ2(JAK2)遺伝子に主に「JAK2 V617F」と称される変異が生じ、著しい赤血球の増加を来たす。

抗菌薬の長期使用で肺がんリスクが増加

 近年の研究で、抗菌薬によるマイクロバイオーム異常および腸と肺の相互作用が肺がん発症の引き金になる可能性が指摘されている。今回、韓国・ソウル国立大学のMinseo Kim氏らが抗菌薬の長期使用と肺がんリスクの関連を調べたところ、抗菌薬の累積使用日数および種類の数が肺がんリスク増加と関連することが示された。Journal of Infection and Public Health誌2023年7月号に掲載。

抗うつ薬、非定型抗精神病薬、ベンゾジアゼピン使用の世界的な傾向~64ヵ国横断的分析

 米国・ピッツバーグ大学のOrges Alabaku氏らは、高所得国、中所得国、低所得国における抗うつ薬、非定型抗精神病薬、ベンゾジアゼピン(BZD)使用の世界的な傾向を調査した。その結果、高所得国は中・低所得国と比較し向精神薬の治療利用率が高いことを報告した。PLOS ONE誌2023年4月26日号の報告。  IQVIAのMIDASデータベースを用いて、2014年7月~2019年12月までの国別横断的時系列分析を行った。人口で調整された使用率は、人口規模ごとに、薬剤クラス別の薬剤標準単位数で算出した。高所得国、中所得国、低所得国の分類には、国連の「2020年世界経済状況・予測」を用いた。薬剤クラス別の使用率の変化は、2014年7月~2019年7月の期間で算出した。経済状況を予測変数として用い、各国の薬剤クラス別の使用率について、ベースラインからの変化の予測可能性を評価するため線形回帰分析を実施した。

頭の中の思考を文章化する新たなデコーダーを開発

 何らかの話を頭の中で想像したり聞いたりしている人の脳の機能的MRI(fMRI)のデータから、その人が考えている内容を文章に置き換えることができるデコーダーの開発に成功したことを、米テキサス大学オースティン校のJerry Tang氏らが報告した。研究グループは、このシステムが、脳卒中などで意識はあるものの話すための身体的な能力を失った人に有益な可能性があると見ている。研究の詳細は、「Nature Neuroscience」に5月1日掲載された。  Tang氏らが開発した新しいデコーダーは、脳に電極を埋め込む必要がない、非侵襲的なアプローチを採用している点で、これまでのシステムとは異なる。デコーダーの開発ではまず、3人の試験参加者に16時間にわたってさまざまな話を聞かせ、その間の脳のfMRIデータを取得。このデータを用いて、単語の連なりに対する脳の反応を予測するためのエンコーディングモデルのトレーニングを行った。次いで、このエンコーディングモデルが予測した脳の反応を基に、ニューラルネットワーク言語モデルと探索アルゴリズムを用いたデコーダーが、最適な単語の連なりを生成するようにした。