医療一般|page:117

DOACの出血リスクが少ないのは?リバーロキサバンvs.エドキサバン

 非弁膜症性心房細動(NVAF)治療として直接経口抗凝固薬(DOAC)の用量規定を遵守しない投与(off-label dosing)は適応外使用となる。一方、現実の本剤処方の実態は、かなりの頻度で規定用量非遵守の低用量使用(off-label underdosing)が行われている。そこで、北摂総合病院の諏訪 道博氏らは血漿濃度(PCs:plasma concentrations)をモニタリングし、1日1回服用のリバーロキサバンとエドキサバンの投与状況を調査した。その結果、NVAF患者のPCsを監視することで、リバーロキサバンとエドキサバンの出血リスク軽減のための用量調整が可能なことを実証した。また、出血の発生率はリバーロキサバン群よりエドキサバン群で少ないことも明らかになった。Circulation Reports誌2023年3月10日号掲載の報告。

ナノプラスチックは血液脳関門を突破して脳に到達する可能性

 微小なプラスチック粒子が血液脳関門を突破する仕組みについて研究を進めている研究グループが、その答えを見つけたことを報告した。マウスとコンピューターモデリングを使った実験により、体内に取り込まれたマイクロプラスチックや1μm(0.001mm)未満のナノプラスチック(micro- and nanoplastics;MNP)が脳に到達するためには、その表面に形成される生体分子コロナと呼ばれる複合体が重要な役割を果たしていることを突き止めたのだ。研究グループは、「プラスチック粒子が血液脳関門を突破する仕組みを明らかにした今回の研究結果を受け、この分野の研究が前進する可能性がある」と期待を示している。デブレツェン大学(ハンガリー)物理化学分野のOldamur Holloczki氏らによるこの研究の詳細は、「Nanomaterials」に4月19日掲載された。

坐骨神経痛の手術の効果のほどは?

 坐骨神経痛による痛みや障害に対する治療として、手術は最良の選択肢とは言えないのではないかとする論文が、「The BMJ」に4月19日掲載された。シドニー大学(オーストラリア)のChristine Lin氏らの研究によるもの。  Lin氏は坐骨神経痛を、「腰椎椎間板ヘルニアなどによって脊髄の神経が圧迫されるために生じる下肢の痛みであり、腰の痛みや筋力の衰え、下肢の異常感覚として現れることもある」と解説する。治療法としては、「侵襲性の低い手段が優先されるが、その効果が不十分な場合には手術が推奨されることが多い」という。

FDAが血液がん患者に対する臍帯血ベースの細胞療法Omisirgeを承認

 米食品医薬品局(FDA)は4月17日、骨髄機能廃絶療法後の血液がん患者における感染症リスクを低減するために、大幅に改良された同種臍帯血ベースの細胞療法であるOmisirge(一般名omidubicel-onlv)を承認した。対象は、放射線療法や化学療法などの骨髄機能廃絶療法後に臍帯血移植を予定している12歳以上の血液がん患者。   難治性の血液がんでは、一般的に、化学療法や放射線療法などによる移植前処置により患者の造血幹細胞を死滅させた後に、健康な造血幹細胞を移植してがんの完治を目指す治療(造血幹細胞移植)が行われる。

AI耐性HR+進行乳がんへのcapivasertib上乗せによるPFS改善、サブグループ解析結果(CAPItello-291)/ESMO BREAST 2023

 アロマターゼ阻害薬(AI)耐性のホルモン受容体陽性(HR+)HER2陰性(HER2-)進行乳がん(切除不能の局所進行乳がんもしくは転移・再発乳がん)に対するフルベストラントへのAKT阻害薬capivasertibの上乗せ効果を検討した第III相CAPItello-291試験。その探索的サブグループ解析の結果、CDK4/6阻害薬治療歴、進行がんへの化学療法歴、肝転移の有無にかかわらず、PFSの改善が示された。英国・The Royal Marsden Hospital-ChelseaのNicholas Turner氏が欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2023、5月11~13日)で報告した。

日本における双極性障害外来患者の入院の予測因子~MUSUBI研究

 双極性障害は、躁症状とうつ症状が繰り返し発現し、社会的機能低下や自殺リスクにつながる可能性のある疾患である。症状の増悪により入院せざるを得なかった双極性障害患者では、その後の心理社会的機能の低下が報告されていることから、できる限り入院リスクを減らす治療が求められる。しかし、双極性障害患者の実臨床における入院の予測因子に関するエビデンスは、これまで十分ではなかった。獨協医科大学の徳満 敬大氏らは、日本における双極性障害外来患者の入院の予測因子を明らかにするため、観察研究を実施した。その結果、対象となった双極性障害外来患者の3.06%が、ベースラインから1年間に精神科への入院を経験していることが明らかとなった。また、双極I型障害、ベースライン時の機能の全体的評定尺度(GAF)スコアの低さ、失業状態、薬物乱用、躁状態が入院の予測因子である可能性が示唆された。Frontiers in Psychiatry誌2023年3月16日号の報告。

世界初のRSVワクチン承認/FDA

 グラクソ・スミスクライン/GSKは、2023年5月3日、RSウイルス(RSV)ワクチン「Arexvy」について、60歳以上におけるRSVに関連する下気道疾患の予防を目的として米国食品医薬品局(FDA)の承認を取得したことを発表した。本承認は、60歳以上を対象とした第III相試験「AReSVi-006試験」の結果に基づくもの。RSVは、米国において65歳以上の年間約17万7千例の入院、約1万4千例の死亡を引き起こしていると推定されている。日本においては、60歳以上の年間約6万3千例の入院、約4千例の死亡を引き起こしていると推定されている。

日本人は低炭水化物食で糖尿病リスクが上がる?下がる?~JACC研究

 低炭水化物食(LCD)スコアと2型糖尿病発症リスクの関連を検討したメタ解析では、LCDスコアが高い(炭水化物が少なくタンパク質と脂質が多い)ほど2型糖尿病発症リスクが高い傾向がみられたことが報告されている。しかし、メタ解析の対象となった研究のほとんどがアジア人以外での研究である。今回、日本の大規模な全国コホート研究であるJACC(Japan Collaborative Cohort Study for Evaluation of Cancer Risk)研究の約2万人のデータを用いて、北海道大学の八重樫 昭徳氏らが前向きに検討したところ、日本人ではLCDスコアが高い食事で2型糖尿病リスクが上昇する可能性は低いことが示唆された。Journal of Nutritional Science誌2023年4月14日号に掲載。

入院前のコロナスクリーニングPCR検査、変異株流行初期に有用か/感染症学会・化学療法学会

 入院時のスクリーニング検査としてのSARS-CoV-2 RT PCRは、院内感染予防や全身麻酔・手術などの侵襲による患者の重症化予防に有用とされる一方、陽性率の低さや所要時間、コストなどの問題が指摘されており、新型コロナの5類感染症移行に伴い、今後の検査の緩和について議論が行われている。京都府立医科大学附属病院の山本 千恵氏らの研究チームにより予定入院前スクリーニング検査としてのSARS-CoV-2 RT PCRについて検討が行われ、その結果、とくに各変異株の流行初期において院内感染の予防に効果的であった可能性が示唆された。4月28~30日に開催された第97回日本感染症学会総会・学術講演会/第71回日本化学療法学会学術集会合同学会にて山本氏が発表した。

早食いは身長が縮みやすい?~日本人での研究

 早食いは体重増加の独立したリスク因子であり、また先行研究で過体重が身長低下の独立したリスク因子であることが報告されている。では、早食いと身長低下は関連するだろうか。今回、大阪健康安全基盤研究所の清水 悠路氏らによる日本人労働者での後ろ向き研究の結果、早食いが過体重と関連し、過体重は身長低下と関連していたが、早食いと身長低下については、過体重の人とそうでない人で異なっていた。すなわち、過体重でない人は食べるのが速い人が、過体重の人では食べるのが遅い人が、身長が低下する確率が高かった。PLOS ONE誌2023年4月26日号に掲載。

COVID-19パンデミックは日本人のうつ病リスクにどの程度の影響を及ぼしたのか

 北里大学の深瀬 裕子氏らは、長期にわたるCOVID-19パンデミックが日本の一般集団におけるうつ病や心的外傷後ストレス障害(PTSD)の変化にどのような影響を及ぼしたかを評価し、そのリスク因子や適応/非適応戦略についても調査を行った。その結果、うつ病レベルは、パンデミックの初期段階で増大し、2022年1月には軽減したと考えられた。男性では、抑うつ症状を軽減するためには、経済的な状態を改善する必要があることが示唆された。パンデミックが長期間に及んだため、男女ともに適応戦略を特定することは困難であった。一方、PTSDについては、日本の一般集団において顕著な変化は認められなかった。BMC Psychiatry誌2023年3月20日号の報告。

研修医の長時間勤務が患者に危険をもたらす可能性

 長時間勤務をしている研修医はミスを犯す確率が高く、また患者に危険をもたらす可能性も高くなる実態を示すデータが報告された。米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院のLaura Barger氏らの研究によるもので、詳細は「BMJ Medicine」に4月12日掲載された。  医師の長時間勤務による安全上のリスクの懸念は、これまでにも報告されてきている。ただしBarger氏らによると、それらの報告の多くは、医師養成機関卒業後1年目の研修医を対象とした研究だという。同氏らは今回、比較的経験を積んだと考えられる卒後2年目以降の研修医を対象とする調査を実施。

血液検査によるがんの早期発見、予備的研究で有望な結果

 実験段階にある血液検査によって、これまで発見することが難しかったがん種を含むさまざまな種類のがんを高い精度で発見できる可能性のあることが、米ヴァンダービルトがんセンターのBen Ho Park氏らによる予備的研究で示された。この研究結果は、米国がん学会(AACR 2023、4月14~19日、米オーランド)で発表された。  今回のPark氏らの研究は、一度に複数の種類のがんのスクリーニング方法となり得る血液検査の開発に向けた取り組みとしては最新のものだ。これ以外にも現在、数多くの企業がこうした「多がん早期検出(multicancer early detection;MCED)」技術の開発を進めている。

RA系阻害薬やアンピシリン含有製剤など、使用上の注意改訂

 厚生労働省は5月9日、RA系阻害薬(ACE阻害薬、ARB含有製剤、直接的レニン阻害薬)、アンピシリン水和物含有製剤およびアンピシリンナトリウム含有製剤(アンピシリンナトリウム・スルバクタムナトリウムを除く)の添付文書について、使用上の注意改訂指示を発出した。  RA系阻害薬の添付文書には「9.4 生殖能を有する者」の項が新設され、“妊娠する可能性のある女性には治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与する旨、及び妊娠する可能性がある女性に投与が必要な場合の注意事項”を以下のように追記した。

認知機能低下の早期発見にアイトラッキングはどの程度有用か

 アルツハイマー病(AD)患者では初期段階から、眼球運動に反映されるように、視空間処理障害が認められる。杏林大学の徳重 真一氏らは、ビジュアルタスク実行中の視線動向パターンを評価することで、認知機能低下の早期発見に役立つかを調査した。その結果、いくつかのタスクを組み合わせて視空間処理能力を可視化することで、高感度かつ特異的に認知機能の低下を早期に検出し、その後の進行の評価に役立つ可能性があることを報告した。Frontiers in Aging Neuroscience誌2023年3月21日号の報告。

冬眠中のクマから血栓予防のヒントを発見

 長い間、体を動かさないでいると、人間なら血行不良から命にも関わる血栓ができかねない。しかし、何カ月にもわたって眠り続ける冬眠中のクマにこうした問題が生じないのはなぜなのだろう。この疑問を解く鍵はあるタンパク質にあることが、ルートヴィヒ・マクシミリアン大学ミュンヘン(ドイツ)を中心とする国際研究グループが実施した13年にわたる研究から明らかになった。研究グループは、この発見が血栓予防薬の開発につながるとの期待を示している。研究の詳細は、「Science」4月13日号に報告された。

N-3系脂肪酸などの微量栄養素には心血管リスクの抑制効果がある可能性

 n-3系脂肪酸を含む一部の微量栄養素には心血管リスクの抑制効果があると考えられることが、「Journal of the American College of Cardiology」12月号に掲載された論文で明らかにされた。  中国農業大学(中国)のPeng An氏らは、微量栄養素が心血管疾患(CVD)のリスク因子およびCVDイベントに及ぼす影響を検討したランダム化比較対照試験(RCT)のシステマティックレビューおよびメタアナリシスを実施した。  PubMed、Web of ScienceおよびEmbaseのデータベースを検索し、2022年5月1日までに発表され、抗酸化作用のある微量栄養素とCVDリスク因子およびCVDイベントとの関連を検討している884件のRCTを抽出した。これらのRCTで評価された微量栄養素は計27種類、参加者の合計は88万3,627人(489万5,544人年)であった。

経口difelikefalin、CKD患者のかゆみの軽減に有望

 そう痒症は、後期慢性腎臓病(CKD)患者において多く認められるが、中等度~重度のそう痒症を伴うCKD(ステージ3~5)患者において、経口の選択的κオピオイド受容体作動薬difelikefalin(本邦では静脈注射用製剤が申請中)が、そう痒を大幅に軽減し、その状態を維持することが示された。米国・University of Miami Miller School of MedicineのGil Yosipovitch氏らが、第II相二重盲検無作為化プラセボ対照用量設定試験の結果を報告した。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2023年4月12日号掲載の報告。

AmoyDx肺癌マルチ遺伝子PCRパネル、KRAS G12C、 RET融合遺伝子にも保険適用/理研ジェネシス

 理研ジェネシスは、2023年5月1日、「AmoyDx肺癌マルチ遺伝子PCRパネル」において、2023 年3月 22 日付で7種のドライバー遺伝子(EGFR、ALK、ROS1、BRAF、MET、KRAS、RET)を対象とするマルチプレックス検査として製造販売承認事項一部変更承認を取得し、2023年5月1日付で新たに保険適用されたと発表した。   同製品は、非小細胞肺癌の7種のドライバー遺伝子をカバーする、リアルタイムPCR法を原理としたコンパニオン診断薬である。

採血時間が入院患者の睡眠不足に影響か

 早朝の採血は入院患者の睡眠に有害な影響を与えるが、それは依然として一般的な医療行為として行われている。そこで米国・イェール・ニューヘブン病院のCesar Caraballo氏らは、早朝採血の実施割合を調査したところ、午前4:00~6:59までの時間帯に最も行われ、採血の10分の4近くを占めていたことが明らかになった。ただし、本研究の終盤には採血時間がわずかだが遅くなっていた。JAMA誌オンライン版2023年1月17日号のリサーチレターでの報告。