医療一般|page:137

日本人片頭痛患者に対するフレマネズマブ オートインジェクターの第III相臨床試験

 ヒト化抗CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)モノクローナル抗体であるフレマネズマブは、片頭痛発作の発症抑制を適応とする皮下注射製剤である。2022年、フレマネズマブに、自宅での自己注射が可能となるオートインジェクター(AI)製剤が新たな選択肢として加わった。獨協医科大学の平田 幸一氏らは、フレマネズマブのAI製剤の安全性を調査するために実施された第III相臨床試験の結果を報告した。その結果、自宅でのフレマネズマブのAI製剤自己注射は、一般的な安全性および良好な忍容性が認められた。著者らは、有用性およびアドヒアランス改善の観点から、フレマネズマブのAI製剤による投与戦略は臨床的に意義があると考えられると報告している。Expert Opinion on Drug Safety誌オンライン版2022年12月28日号の報告。

乳がん患者のリアルワールドでのコロナワクチン効果/JCO

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチンの臨床試験には、積極的ながん治療を受けている乳がん患者が含まれていない。今回、イタリア・ジェノバ大学のMarco Tagliamento氏らが、リアルワールドの乳がん患者におけるワクチン接種の効果を調査したところ、乳がん患者においてもワクチン接種がCOVID-19罹患率および死亡率を改善することが示された。また、欧州におけるオミクロン株流行期、乳がん患者におけるCOVID-19重症度は低いままだった。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2023年1月31日号に掲載。

宇宙食もヘルシーに

 食事を変更すると、短期間でも健康や認知機能などのパフォーマンスに変化が現れる可能性が、米航空宇宙局(NASA)の研究で明らかになった。宇宙食に含まれる、野菜や果物、魚などを増やしたところ、宇宙飛行士のコレステロールレベルやストレス状態、認知機能に有意な変化が生じたという。NASAのGrace Douglas氏らの研究によるもので、詳細は「Scientific Reports」に12月15日掲載された。  宇宙飛行は人間の健康に影響を及ぼすことが知られている。また宇宙船はスペースや電力に限りがあることから、持ち込む食料にはさまざまな制限が課せられる。さらに宇宙環境は医療資源が乏しいため、健康リスクをできるだけ抑制し得る食品が期待される。そのため、安全性や栄養価に優れた宇宙食の開発が続けられている。Douglas氏らの研究は、このような条件によりマッチするように改良された新開発の宇宙食の有用性を、16人の宇宙飛行士(平均年齢40±9歳、男性10人、BMI23.7±2.8)を対象に検証したもの。

1日を快活にスタートするための三つの鍵

 朝、気持ち良く目覚めて1日を快活に過ごすためには三つの鍵があることが、新たな研究から明らかになった。前日に運動をして、いつもより少し遅めに起き、炭水化物が多めの朝食を取ると良いようだ。これらの3因子は、朝の覚醒レベルにそれぞれ独立した関連があるという。米カリフォルニア大学バークレー校のRaphael Vallat氏らの研究によるもので、詳細は「Nature Communications」に11月19日掲載された。  広告などでは、しばしば朝食のシーンとして、砂糖で甘くしたシリアルがテーブルに並んだ映像が登場する。ただ、砂糖などの単純糖質ばかりの食事は、1日のスタートには最悪のようであり、Vallat氏は、「摂取後に血糖値を急激に上昇させる食品は避けた方が良い」と話す。

おたふくかぜワクチンの予防効果、成人期には低下?

 米国では、小児に対するムンプス(流行性耳下腺炎、おたふくかぜ)ワクチンの定期接種が行われているにもかかわらず、依然としておたふくかぜのアウトブレイクが報告されている。この原因を、ワクチン接種により獲得した免疫の減衰に求める説を裏付ける研究結果が報告された。米ジョージア大学Odum School of EcologyのDeven V. Gokhale氏らによる研究で、詳細は、「Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS)」に1月9日掲載された。  おたふくかぜは、片側または両側の頬(耳の下)や顎の下の腫れ、発熱などを主症状とする全身性のウイルス感染症だ。通常は、比較的軽い症状が1〜2週間続いた後に軽快するが、脳の炎症や難聴などの深刻な合併症を引き起こして重症化することもある。そのため、米国では、小児に対する麻疹(はしか)・おたふくかぜ・風疹の混合ワクチン(MMRワクチン)の定期接種が奨励されている。

統合失調症発症と昼寝の頻度との関係

 統合失調症と昼寝の頻度との関連について、中国・温州医科大学のJun Ma氏らが調査を行った。その結果、昼寝の頻度の増加と統合失調症発症との間に双方向の関連が認められ、統合失調症の進行や治療に対する潜在的な介入として昼寝の頻度をコントロールする意義が示唆された。BMC Psychiatry誌2022年12月13日号の報告。  昼寝の頻度と統合失調症に関連する上位の遺伝的バリアントのゲノムワイド関連解析(GWAS)によって得られる要約統計量(summary statistics)を用いて、双方向2サンプルメンデルランダム化解析を実施した。昼寝に関するGWASの一塩基多型(SNP)のデータは、英国バイオバンク(45万2,633例)および23andMeコホート研究(54万1,333例)より抽出し、統合失調症に関連するGWASは、Psychiatric Genomics Consortium(PGC:3万6,989件、症例:11万3,075例)より抽出した。逆分散加重(IVW)分析を主要な方法として用い、加重中央値、MR-Robust、Adjusted Profile Score(RAPS)、Radial MR、MR-Pleiotropy Residual Sum Outlier(PRESSO)を感度分析として用いた。

「ChatGPT」は論文著者になれない、医学誌編集者団体が声明

 2022年11月にリリースされた米国OpenAIが開発した「ChatGPT」が話題を集めている。質問文を入力するとAIが次々に回答を提示してくれるこの種のサービスは、リアルの人間と会話しているような使用感のため「チャットボット」とも総称される。ChatGPTはWebから広範なデータを収集し、強化学習させた回答が提示される。執筆やリサーチにどのくらい使えるのか、多くの利用法が世界中のユーザーによって試行され、リリースから2ヵ月で月間アクティブユーザー数は1億人に達したと推計されている。

HR+/HER2+進行乳がん1次治療、ペルツズマブ+トラスツズマブ+AIの長期解析結果(PERTAIN)

 ホルモン受容体陽性(HR+)/HER2陽性(HER2+)の転移を有する/局所進行閉経後乳がん患者における1次治療として、トラスツズマブとアロマターゼ阻害薬(AI)に化学療法を併用/併用せずペルツズマブを追加することにより、無増悪生存期間(PFS)が大幅に改善されたことが第II相PERTAIN試験の主要解析(追跡期間中央値31ヵ月)で示されている。今回、同試験の最終解析結果(追跡期間中央値6年超)を、イタリア・フェデリコ2世ナポリ大学のGrazia Arpino氏らがClinical Cancer Research誌オンライン版2023年1月30日号に報告した。

コロナの重症肺炎、他の肺炎と転帰は異なるか

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重大な合併症の1つとして急性低酸素性呼吸不全(AHRF)がある。COVID-19による肺炎が引き起こすAHRFは、他の原因によるAHRFとは異なる表現型を有し、より高い死亡率を示すと考えられていた。そこで、米国・ジョンズ・ホプキンス大学のEric P. Nolley氏らは、COVID-19により人工呼吸器が必要な重症肺炎を発症した患者について、他の原因によって重症肺炎を発症した患者と転帰を比較した。その結果、COVID-19による重症肺炎患者は、他の原因による重症肺炎患者と比べて死亡率の上昇は認められなかったものの、人工呼吸器を外すまでの期間が長かったことを明らかにした。JAMA Network Open誌2023年1月10日掲載の報告。

コミュニティガーデンは健康増進に役立つ

 ガーデニングの経験者なら、土を掘って種をまく喜びや、最初の収穫時の誇らしい気持ちを理解できるはずだ。それに加えて、ガーデニングは健康にも良い影響を与えるようだ。新たな研究で、都市部のコミュニティガーデン(地域住民が運営や管理を担う庭)の存在は、住民の新鮮な食品の摂取量や運動量の増加をもたらす一方で、ストレスや不安を軽減する可能性のあることが示されたのだ。米コロラド大学ボルダー校環境学部教授のJill Litt氏らが実施したこの研究結果は、「The Lancet Planetary Health」1月4日号に掲載された。

新型コロナワクチンの2回目のブースター接種、心臓への悪影響なし

 ファイザー社製新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンの2回目のブースター接種(追加接種)は心臓にとって安全であることが、前向きおよび後ろ向きコホート研究で確認された。テルアビブ大学(イスラエル)経営工学分野のDan Yamin氏らによる研究で、詳細は「Lancet Respiratory Medicine」に11月18日掲載された。  この研究では、2種類のデータを用いてファイザー社製COVID-19ワクチンの2回目のブースター接種の安全性を評価した。データの一つは、イスラエルで2番目に大きな健康保険組織Maccabi Healthcare Servicesの加入者からランダムに抽出した25万人分のデータ(後ろ向き研究)であり、もう一つは現在も継続中の前向き観察研究であるPerMed試験(前向き研究)の参加者4,698人のデータである。

血圧が高い人ほど眼圧が高い

 日本人対象の大規模な横断研究から、緑内障を含む眼疾患既往歴のない一般住民において、収縮期血圧と拡張期血圧のいずれについても、その値が高いほど眼圧が高いという有意な関連のあることが明らかになった。慶應義塾大学医学部眼科の羽入田明子氏、筑波大学医学医療系社会健康医学の山岸良匡氏らの研究によるもので、詳細は「Scientific Reports」に10月19日掲載された。  眼圧とは眼球内の圧力のこと。眼球の形を維持するために一定程度の眼圧が必要とされるが、高すぎる眼圧は視神経にダメージを与え、視野障害を引き起こす。現在、国内での視覚障害の原因のトップは緑内障であり、緑内障の治療においては眼圧をしっかり下げることで視神経への負担を抑制することが重要。

高齢者の歩行速度と認知症リスク~久山町研究

 九州大学の多治見 昂洋氏らは、高齢者の歩行速度と脳体積および認知症発症リスクとの関連を調査した。その結果、最高歩行速度が低下すると認知症リスクが上昇しており、この関連には海馬、島皮質の灰白質体積(GMV)減少および白質病変体積(WMHV)増加が関連している可能性が示唆された。Archives of Gerontology and Geriatrics誌2023年3月号の報告。  MRIを実施した65歳以上の認知症でない日本人高齢者1,112人を対象に、5.0年間(中央値)フォローアップを行った。対象者を、年齢および性別ごとに最高歩行速度の四分位により分類した。GMVおよびWMHVの測定には、voxel-based morphometry(VBM)法を用いた。最高歩行速度とGMVとの横断的な関連を評価するため、共分散分析を用いた。最高歩行速度と認知症発症リスクとの関連を推定するため、Cox比例ハザードモデルを用いた。最高歩行速度と認知症との関連に対する脳体積の影響を検討するため、媒介分析を行った。

スタチン・アスピリン・メトホルミンと肝がんリスクとの関連~メタ解析

 スタチン、アスピリン、メトホルミンが肝細胞がんを予防する可能性があることを示唆する報告があるが、これまでのメタ解析は異質性やベースラインリスクを適切に調整されていない試験が含まれていたため、シンガポール・National University of SingaporeのRebecca W. Zeng氏らは新たにメタ解析を実施した。その結果、スタチンおよびアスピリンは肝細胞がんリスク低下と関連していたが、併用薬剤を考慮したサブグループ解析ではスタチンのみが有意であった。メトホルミンは関連が認められなかった。Alimentary Pharmacology and Therapeutics誌オンライン版2023年1月10日号に掲載。

オミクロン株BF.7、BQ.1.1、XBB.1に対するワクチンの効果は?/NEJM

 2月2日に発表された東京都新型コロナウイルス感染症モニタリング会議・分析資料によると、これまで主流だったオミクロン株BA.5から、BQ.1.1やBF.7に置き換わりが進んでいる。海外では、インドやシンガポールなどのアジア諸国でXBB系統の勢力も拡大している。米国・ベス・イスラエル・ディーコネス医療センターのJessica Miller氏らの研究グループは、1価およびBA.4/5対応2価のmRNA新型コロナワクチンを追加接種した被験者において、これらの新たな変異型についてワクチンの効果を評価したところ、BA.5と比較して、BQ.1.1やXBB.1に対するワクチンによって獲得できる中和抗体価が、著しく低いことが示された。

乳がん診断後に体重が増加しやすい人は?

 乳がん診断後には体重が増加することが多い。体重増加の予測因子を同定するため、オーストラリア・Western Sydney UniversityのCarolyn Ee氏らは、オーストラリア人女性における乳がん診断後の体重増加に関連する因子を調査した。その結果、タモキシフェン投与、身体活動の減少、テレビ視聴時やコンピューター使用時の食事の自己効力感の低下が、臨床的に有意な体重増加に関連することがわかった。Breast誌オンライン版2023年1月25日号に掲載。  本研究では、2017年11月~2018年1月にオーストラリア在住の乳がんまたは非浸潤性乳管がん(DCIS)と診断された女性を対象に横断的オンライン調査した。絶対的な体重増加および臨床的に有意な(5%以上)体重増加の予測因子を、それぞれステップワイズ線形回帰モデルおよびロジスティック回帰モデルを用いて評価した。

ワーケーションで動脈硬化予防?

 都会を離れた落ち着いた環境でリモートワークをする「ワーケーション」によって、動脈硬化の進行が抑制されることを示唆するデータが発表された。米ハーバード大学医学部および奈良県立医科大学医学部客員教授の根来秀行氏らの研究によるもので、詳細は「Healthcare」に10月15日掲載された。  新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック以降、在宅でのリモートワークが広がり、さらにワーケーションも注目されるようになった。ワーケーションは一般的に、リゾート地などの自然豊かな環境で心身を休めながら仕事をすることを指し、そのような新しい働き方による労働生産性への影響など、主に社会経済的な視点からの関心が寄せられている。その一方、労働者の健康への影響という視点での研究はまだ少ない。根来氏らは、このような背景から本研究を行った。

一般集団よりも2型DM患者でとくに死亡率が高いがん種は?

 2型糖尿病の高齢患者のがん死亡率を長期的に調査したところ、全死因死亡率の低下とは対照的にがん死亡率は上昇し、とくに結腸直腸がん、肝臓がん、膵臓がん、子宮内膜がんのリスクが増加していたことを、英国・レスター大学のSuping Ling氏らが明らかにした。Diabetologia誌オンライン版2023年1月24日掲載の報告。  これまで、年齢や性別などの人口統計学的要因が2型糖尿病患者の心血管アウトカムに与える影響は広く研究されているが、がん死亡率への影響については不十分であった。そこで研究グループは、人口統計学的要因や肥満や喫煙などのリスク因子が2型糖尿病患者のがん死亡率に与える長期的な傾向を明らかにするため、約20年間のデータを用いて調査を行った。

オミクロン株対応2価ワクチン、中和活性の比較/NEJM

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のオミクロン株は変異を続け、さまざまな亜型を増やしている。そこで、SARS-CoV-2のオミクロン株BA.4/5(BA.4とBA.5は同一のスパイクタンパクを有する)と起源株の、それぞれのスパイクタンパク質をコードするmRNAを含有する2価ワクチンが開発され、世界各国で使用され始めている。しかし、オミクロン株の亜型の中には、ワクチンによって得られた免疫や、感染によって得られた免疫を回避し得るスパイクタンパク質の変異を蓄積しているものもある。

統合失調症治療における抗精神病薬処方の臨床的決定因子~コホート研究

 統合失調症の治療では主に抗精神病薬が用いられるが、近年、長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬の使用頻度が高まっている。米国・ニューヨーク医科大学のEmily Groenendaal氏らは、抗精神病薬の使用(LAI vs.経口)、薬剤クラス(第1世代抗精神病薬[FGA]vs.第2世代抗精神病薬[SGA])、臨床アウトカムの観点から、抗精神病薬選択の予測因子を特定しようと試みた。その結果、LAIか経口、FGAかSGAといった抗精神病薬の選択には、疾患重症度と罹病期間が影響を及ぼす可能性が示唆された。LAI抗精神病薬は、より重症な患者に使用される場合が多かったが、再入院率は経口抗精神病薬と同様であり、重症患者に対するLAI抗精神病薬使用が支持される結果となった。また、若年患者にはLAI抗精神病薬、高齢患者にはFGAが使用されていることが明らかとなった。Journal of Psychiatric Research誌オンライン版2022年12月28日号の報告。