医療一般|page:138

人工陰茎白膜の開発―ブタのペニスで有用性を確認

 人工的な陰茎白膜の開発状況に関する論文が「Matter」に1月4日掲載された。華南理工大学(中国)のXuetao Shi氏らによる研究であり、動物実験によって新しい技術の有用性が確認されたという。論文の上席著者であるShi氏は、「この領域の技術開発はあまり注目されていないが、潜在的なニーズは非常に大きいのではないか」と述べている。  40~70歳の男性の約半数が何らかの勃起障害(ED)症状を抱えていると推定されており、その5%程度はペイロニー病が占めると考えられている。ペイロニー病は、陰茎の白膜という組織に瘢痕ができて痛みを生じたり、陰茎が湾曲する病気。発症の原因は、外傷や性行為中に生じるダメージが多いとされる。白膜は勃起時に海綿体にたまった血液の流出を遮る役割があるため、その白膜が損傷を受けるペイロニー病ではEDになりやすい。

日本人long COVIDの特徴は?

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の後遺症、いわゆる「long COVID」の日本人での実態が報告された。症状としては倦怠感や抑うつなどが多く、女性や就労が制限されている人および非就労者でパフォーマンスの低下が顕著だという。東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科国際健康推進医学分野の藤原武男氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of Clinical Medicine」に10月31日掲載された。  COVID-19罹患者のlong COVID発症率は25~60%とされており、研究対象によって大きな差がある。また、性別や年齢、就労状況、教育歴などの属性との関連も検討されていて、それらが関連ありとする研究と関連なしとする研究が混在している。加えてこれまでに報告されている研究は主として海外で行われたものであり、国内発のデータは少ない。日本は他国よりもCOVID-19の有病率と死亡率が低く、long COVIDの実態も海外とは異なる可能性が考えられる。これらを背景として藤原氏らは、日本人のlong COVIDの特徴の把握を試みた。

高齢ドライバーの運転事故は減少しているか/筑波大

 高齢者の自動車運転に起因する事故が後を絶たない。交通安全推進のため、75歳以上のドライバーを対象に、2009年から運転免許更新時の認知機能検査が義務化され、2017年からその検査結果の運用方法が変更された。これら運用変更後に、高齢ドライバーの事故は減少したのだろうか。  市川 政雄氏(筑波大学医学医療系教授)らの研究グループは、2012~19年までに全国で発生した高齢ドライバーによる交通事故のデータを用い、2017年の運用変更後に、75歳以上のドライバーの事故数が、認知機能検査の対象外である70~74歳と比べ、どの程度変化したのか分析した。また、75歳以上の高齢者が自転車や徒歩で移動中に負った交通外傷の数にも変化があったのか、同様に分析した。

アルツハイマー病治療薬lecanemab、厚労省の優先審査品目に指定/エーザイ・バイオジェン

 エーザイとバイオジェン・インクは1月30日、アルツハイマー病(AD)治療薬の抗アミロイドβ(Aβ)プロトフィブリル抗体lecanemabの日本における製造販売承認申請について、厚生労働省より優先審査品目に指定されたことを発表した。優先審査は、重篤な疾病で医療上の有用性が高いと認められた新薬などに与えられ、総審査期間の目標が短縮される。医薬品医療機器総合機構(PMDA)によると、申請から承認までの総審査期間は、通常品目は80パーセンタイル値で12ヵ月のところ、優先品目は9ヵ月となっている。

コロナ2価ワクチンブースター、入院/死亡抑制効果は従来ワクチンの2倍/NEJM

 2022年8月31日、米食品医薬品局(FDA)は、起源株由来のスパイクタンパク質を含むmRNAとオミクロン変異株BA.4/5株由来のスパイクタンパク質を含むモデルナおよびファイザー製の2価ワクチンを、1次接種またはブースター接種後少なくとも2ヵ月以降のブースター接種用に緊急使用できるように承認した。FDAの承認は、これら2種類の2価ワクチンの非臨床データ、オミクロン変異株BA.1系統のmRNAを含む2価ワクチンの安全性と免疫原性のデータ、および1価ワクチンの安全性と有効性のデータに基づいて行われたものである。9月1日以降、この2種類の2価mRNAワクチンは、米国やその他の国々で、12歳以上の人のブースター接種用として、1価ワクチンに代わって使用されている。今回、オミクロン変異株BA.4.6、BA.5、BQ.1、BQ.1.1による重症感染に対するこれら2価ワクチンの有効性についての大規模コホート研究のデータが、NEJM誌オンライン版2023年1月25日号のCORRESPONDENCEに掲載された。2価ワクチンによるブースター接種の入院/死亡抑制効果は、従来ワクチンによるブースター接種の2倍以上だった。

高齢者への前立線がんスクリーニング、推奨なしでも行われる背景

 米国では、2021年に24万8,530例の男性が前立腺がんと診断され、3万4,000例以上が死亡したと推定されている。一方、前立腺がんは進行が遅く、70 歳以上の場合、スクリーニングは寿命を延ばすことなく、過剰診断や過剰診療の不必要なリスクをもたらす可能性があるとして、米国ガイドラインにおいて推奨されていない。  それにもかかわらず行われる「価値の低い」スクリーニングは主にプライマリケア・クリニック(家庭医)で行われており、医師の指示/依頼が多いほど低価値のスクリーニングが行われる傾向にあることが、米国・ノースカロライナ州のウェイクフォレスト医科大学の Chris Gillette氏らによる研究で示された。本結果は、Journal of the American Board of Family Medicine誌オンライン版2023年1月2日号に掲載された。

治療抵抗性双極性障害治療の現在と今後の方向性

 双極性障害は世界人口の1~2%に影響を及ぼすとされる慢性的な精神疾患であり、うつ病エピソードが頻繁に認められ、約3分の1の患者では適切な用量による薬物治療に反応が得られないといわれている。治療抵抗性双極性障害(TRBD)の明確な基準は存在しないが、2つの治療薬による適切な治療を行ったにもかかわらず効果不十分である場合の対処は、TRBD治療の重要な課題である。米国・ルイビル大学のOmar H. Elsayed氏らは、TRBDに対する治療介入、課題、潜在的な今後の方向性について、エビデンスベースでの確認を行った。その結果、TRBDの現在の治療法に関するエビデンスは限られており、その有効性は低かった。TRBDの効果的な治療法や革新的なアプローチは研究中であり、今後の研究結果が待ち望まれる。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2022年12月16日号の報告。

積極的な脳腫瘍手術により生存期間が向上

 進行の遅い脳腫瘍の一つである低悪性度のグリオーマ(神経膠腫)に関する研究で、より積極的な手術により生存期間を延長できる可能性のあることが明らかにされた。治療成功の鍵は、診断後できるだけ速やかに、できるだけ多くの腫瘍を除去することだという。論文の筆頭著者である、米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)神経外科准教授のShawn Hervey-Jumper氏は、「この知見は、治療に関する議論に終止符を打つものだ」と述べている。詳細は、「Journal of Clinical Oncology」に1月4日掲載された。  米国では年間2万人が低悪性度のグリオーマと診断される。その大半は、若年期と中年期の成人である。グリオーマに対する治療は、手術による腫瘍の摘出が基本だが、多くの場合、取りきれなかった腫瘍細胞が徐々に増殖して再発し、それが悪性化して2年以内に死に至る。

FDA、ペムブロリズマブの非小細胞肺がん術後補助療法を承認

 米国食品医薬品局(FDA) は、2023年1月26日、ペムブロリズマブをStageIB(T2a≧4cm)〜IIIAの切除後非小細胞肺がん(NSCLC)に対する化学療法後の補助療法として承認した。  今回の承認は、多施設無作為化三重盲検プラセボ対照試験であるKEYNOTE-091に基づくもの。試験の主要評価項目は、治験担当医師の評価による無病生存率(DFS)であった。  試験の結果、ペムブロリズマブ群は全集団におけるDFを統計学的有意に改善し、主要評価項目を達成している。

精子は帽子を脱がないと卵子と受精できない/大阪大

 近年、不妊治療に関心が集まっている。主に健康保険上の取り扱いや不妊治療の助成金の面がほとんどであるが、不妊そのもののメカニズムについては、あまり注目されていない。  今回、宮田 治彦氏(大阪大学微生物病研究所 准教授)らの研究グループは、精子の受精能獲得に重要なタンパク質FER1L5の発見を発表した。Science Advances誌2023年1月25日号からの報告。

13種のがん発生率と生活習慣・遺伝的因子の関係

 19万人以上のUKバイオバンクのデータを用いて、世界がん研究基金(WCRF)による生活習慣のアドバイスを遵守することが13種類のがんのリスクとどのような関係があるのか、また遺伝的リスクによってこれらの関連性が異なるのかを調査するため、前向きコホート研究が実施された。南オーストラリア大学のStephanie Byrne氏らによるInternational Journal of Epidemiology誌オンライン版2023年1月18日号への報告。  2006~10年にかけて37~73歳の参加者の生活習慣を評価し、2015~19年までがんの発生率を追跡調査した。解析対象は、悪性腫瘍の既往がない19万5,822人。13のがん種(前立腺がん、大腸がん、閉経後乳がん、肺がん、悪性黒色腫、非ホジキンリンパ腫、腎臓がん、子宮がん、膵臓がん、膀胱がん、口腔・咽頭がん、卵巣がん、リンパ性白血病)とがん全体について多遺伝子リスクスコア(PRS)を計算し、WCRFの勧告からライフスタイル指数を計算。両者の加法的・乗法的交互作用が評価された。

尿酸の上昇は心房細動発症と関連

 さまざまな疫学調査より高い尿酸値は心房細動(AF)の独立したリスクとされている。今回、スウェーデン・カロリンスカ研究所のMozhu Ding氏らがスウェーデンのAMORISコホート研究から尿酸の上昇がAFの新規発症と関連することを報告した。Journal of the American Heart Association誌1月12日号からの報告。  心血管系疾患の評価において尿酸値の役割はますます重要となっているが、AFとの関係は明確でない。本研究では、尿酸値とAFの新規発症リスクとの関連について検討した。

睡眠薬使用と認知症リスクに関する人種差

 高齢者の認知機能に対する睡眠薬の影響は論争の的となっている。これは、睡眠の質や人種差に依拠している可能性がある。米国・カリフォルニア大学のYue Leng氏らは、睡眠薬使用と認知症発症について15年間の縦断的関連を評価し、夜間の睡眠障害との関連や人種差について調査を行った。その結果、睡眠薬の高頻度の使用が、白人高齢者の認知症リスクと関連していることを報告した。Journal of Alzheimer's Disease誌オンライン版2022年12月20日号の報告。  対象は、認知症でない地域住民の高齢者3,068人(年齢:74.1±2.9歳、黒人の割合:41.7%、女性の割合:51.5%)。睡眠薬使用は、「睡眠薬や睡眠補助薬を服用していますか?」との質問を3回行って記録し、5段階(まったくない[0回]、ほとんどない[1回/月]、ときどき[2~4回/月]、よくある[5~15回/月]、非常によくある[16~30回/月])で評価した。認知症の発症は、入院記録、認知症薬の使用または全体的な認知機能の臨床的に有意な低下で定義した。

アトピー性皮膚炎、抗IL-13抗体薬のステロイドへの上乗せは有用か?

 中等症~重症アトピー性皮膚炎(AD)の青少年・成人患者において、インターロイキン13(IL-13)をターゲットとする高親和性モノクローナル抗体lebrikizumab(LEB)と局所コルチコステロイド(TCS)の併用は、TCS単独と比べてアウトカムの改善が認められた。米国・オレゴン健康科学大学のEric L. Simpson氏らが第III相無作為化試験「ADhere試験」の結果を報告した。安全性は先行試験の報告と一致していた。LEB単剤の有効性と安全性は、第IIb相試験の16週単独投与期間中および2件の52週の第III相試験で示されていた。JAMA Dermatology誌オンライン版2023年1月11日号掲載の報告。

家屋の断熱性が高いと冬の朝の交感神経活性化が抑制される可能性

 断熱性の高い家に住むと、気温が最も低下する冬の朝方であっても、交感神経の活性化が起きにくい可能性を示唆するデータが報告された。研究参加者に断熱性の高いモデルハウスに宿泊してもらい、自宅環境との差を検討するという、大阪大学大学院医学系研究科健康発達医学寄附講座の中神啓徳氏らが行った研究の結果であり、詳細は「Hypertension Research」に10月13日掲載された。研究参加者の全員が、モデルハウス宿泊時に睡眠時間が長くなるという変化も認められたという。

皮膚科の次世代型医療:Z世代の医学部生を中心に開発

 東北大学大学院医学系研究科皮膚科学分野では、志藤 光介氏の研究グループの協力のもと、医学部5年生の柳澤 祐太氏が主体となり、スマートフォンなどで簡便に撮影された画像から病変部位を認識し、その病変部位を検出し着目させる病変部抽出システムを、深層学習を用いて開発することに成功した。デジタル環境で育ったZ世代の医学部生の目線で作成された皮膚科関連AI研究である。東北大学 2023年1月26日付プレスリリースの報告。

内分泌療法+CDK4/6阻害薬が有効でない転移乳がん患者を予測するゲノム的特徴

 内分泌療法とCDK4/6阻害薬の併用療法で効果のない患者を特定するマーカーを探索するため、米国・Washington University in St. Louis School of MedicineのAndrew A. Davis氏らは治療抵抗性を予測するゲノム的特徴について循環腫瘍DNA(ctDNA)解析によって検討した。その結果、血中腫瘍変異負荷(bTMB)と血中コピー数負荷(bCNB)の非侵襲的プロファイリングで検出されたゲノムの複雑さが予後不良を予測し、画像診断前に増悪が確認された。Clinical Cancer Research誌オンライン版2023年1月24日号に掲載。

2価ワクチンの情報など追加、コロナワクチンに関する提言(第6版)公開/日本感染症学会

 日本感染症学会(理事長:四柳 宏氏[東京大学医科学研究所附属病院長])は、1月25日に同学会のホームページで「COVID-19ワクチンに関する提言」の第6版を公開した。  今回の第6版では、主にオミクロン株対応ワクチンに関する追加情報、新しく適応追加となったウイルスベクターワクチン、組み換えタンパク質ワクチンに関する有効性と安全性の内容が改訂され、本年5月に予定されている5類への引き下げを前に、「接種を希望する人が接種の機会を失わないよう合わせて周知する必要がある」と一層の接種への取り組みを求めている。

統合失調症・うつ病の頓服を含む退院時処方~EGUIDEプロジェクト

 さまざまなガイドラインにおいて、統合失調症やうつ病の薬物治療では、単剤療法が推奨されている。定期処方による治療はいくつかの研究で報告されているが、頓服使用を含む薬物療法に関する報告は十分ではない。北里大学の姜 善貴氏らは、頓服使用を含む薬物療法の内容を評価し、定期処方との関連を明らかにするため、本研究を実施した。その結果、向精神薬の頓服使用を考慮すると、統合失調症およびうつ病に対する退院時の薬物治療において単剤療法率および他の向精神薬未使用率は減少することが報告された。著者らは、高い単剤療法率および定期処方での他の向精神薬の未使用は、向精神薬の頓服使用の減少につながる可能性があるとしている。Annals of General Psychiatry誌2022年12月26日号の報告。

「当事者にも目を向けて」―レビー小体型認知症の多様な症状

 2023年1月17日、住友ファーマ主催のレビー小体型認知症(DLB)に関するプレスセミナーが開催され、大阪大学大学院医学系研究科 精神医学教室 教授の池田 学氏から「第2の認知症、レビー小体型認知症(DLB)の多彩な症状と治療法の進歩」について、近畿大学医学部 精神神経科学教室 主任教授 橋本 衛氏からは「当事者に目を向けた診療のすすめと当事者、介護者、主治医に伝えたいこと」について語られた。  多様な症状を示し、アルツハイマー型認知症と比べてケアが難しいDLBでは、当事者、介護者、主治医の3者の理解が深まることで、当事者のQOL向上と介護者の負担軽減が期待される。