医療一般|page:125

コクランレビューが導き出したマスク着用効果

 2020年の新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)流行以前にも新型インフルエンザ(H1N1)や重症急性呼吸器症候群 (SARS)の感染拡大が問題視され、その度にコクランレビューがなされてきた。今回、新型コロナ流行に関する研究を盛り込み更新されたシステマティックレビューがCochrane Libraryの2023年1月30日版に掲載された。  オックスフォード大学のTom Jefferson氏らは急性呼吸器感染症に影響するウイルスの拡散阻止または軽減のための身体的介入の有効性を評価することを目的に論文データベース(CENTRAL、PubMed、Embaseほか)および2022年10月に登録された2試験から、後方引用と前方引用によるシステマティックレビューを行った。

胆道がんのアンメットニーズ充足へ、デュルバルマブ適応追加/AZ

 アストラゼネカは、抗PD-L1抗体デュルバルマブ(商品名:イミフィンジ)が2022年12月23日に「治癒切除不能な胆道癌」「切除不能な肝細胞癌」「切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」を適応症とした承認を取得したことを受け、「進行胆道がん治療におけるイミフィンジの役割とは~免疫チェックポイント阻害剤による胆道がん治療の変革~」をテーマとして、2023年2月7日にメディアセミナーを開催した。  胆道がんの1年間の罹患数は2万2,201例(2018年)、死亡数は1万7,773例(2020年)と報告されている1)。一般的に、胆道がんは予後不良であり、手術による切除例や切除不能例を含めた胆道がん全体での5年生存率は、20~30%とされている1)。多くの場合、胆道がんは進行期になってから診断され、遠隔転移が認められてから診断される割合は全体の4割に上るという報告もある2)。また、遠隔転移のある場合、1年生存率は14~16%と非常に予後が悪いことも報告されている3)。このように、胆道がんはアンメットメディカルニーズの高いがんといえる。

女児の運動有能感に効果的なのは?

 児童期の発達にとって重要とされる外遊びは、とくに女児において運動有能感を向上させ、自発的な身体活動を促進する可能性があることが、神戸大学大学院保健学研究科のRyo Goto氏らによる研究で明らかになった。Children誌2023年1月10日号の報告。  児童期の外遊びは年々減少傾向にある。運動有能感の向上は、外遊びやスポーツクラブなどでの身体活動を促進するが、運動有能感と外遊びとの関係はわかっていなかった。今回、児童における運動有能感の向上と外遊びとの関係を調査し、男女間で差があるかどうかを調べる目的で横断研究が行われた。

免疫便潜血検査陽性と認知症との関連

 免疫便潜血検査(FIT)は、大腸がん(CRC)のスクリーニングに広く用いられているが、CRC以外の疾患の場合でもFIT陽性になることがある。韓国・ソウル大学のYu Kyung Jun氏らは、FIT陽性結果と認知症発症との関連を調査した。その結果、FIT陽性は、とくに65歳未満の人で認知症リスクの増加と関連が認められた。著者らは、FIT陽性者で悪性腫瘍が認められない場合、臨床医は認知症の可能性を考慮すべきであるとまとめている。Journal of Alzheimer's Disease誌オンライン版2023年1月12日号の報告。

乾癬の発症にPCSK9が関与か

 脂質異常症の治療薬として用いられているPCSK9(proprotein convertase subtilisin/kexin type 9)阻害薬について、乾癬予防に使用できる可能性が指摘された。英国・マンチェスター大学のSizheng Steven Zhao氏らによる1万2,116例の乾癬患者を対象としたメンデルランダム化解析において、乾癬の発症へのPCSK9の関与が示唆された。脂質経路は乾癬の発症に関与しており、スタチンなどの一部の脂質低下薬は疾患修飾の特性を有すると考えられている。しかし大規模集団での研究はほとんど実施されておらず、従来の観察研究の結果に基づく因果関係の解釈は、交絡因子の存在により限界があった。JAMA Dermatology誌オンライン版2023年1月25日号掲載の報告。

ADHDスクリーニング、親と教師の精度に関する調査

 注意欠如多動症(ADHD)のスクリーニング精度について、小学生の親または学校教師による違いを明らかにするため、中国・The First Hospital of Jilin UniversityのHong-Hua Li氏らは検討を行った。また、ADHDに対する親の認識や情報源に影響を及ぼす因子、ADHD陽性スクリーニング率へのそれらの影響についても併せて調査した。その結果、小学生の親と教師ではADHD症状の認識が異なっており、ADHDスクリーニング陽性率は親よりも教師において有意に高いことが明らかとなった。親のADHDの認識に影響を及ぼす因子として、親の性別・教育レベル、子供の性別・年齢・学年、ADHDに関する情報源が挙げられた。結果を踏まえ著者らは、父親、教育レベルの低い両親、小学2年生・3年生の両親においては、ADHD症状の早期認識を向上させるために、ADHDに関するより多くの知識の習得が必要であるとしている。Frontiers in Psychology誌2022年12月23日号の報告。

ペムブロリズマブ+化学療法による胆道がん1次治療、生存期間を延長(KEYNOTE-966)/Merck

 2023年1月25日、Merck社は、第III相KEYNOTE-966試験の最終解析結果を公表した。この試験では、進行または切除不能な胆道がん(BTC)の1次治療において、ペムブロリズマブと標準化学療法(ゲムシタビンおよびシスプラチン)の併用は、全生存期間(OS)を統計学的に有意に延長し、臨床的に意義のある改善を示した。また、同試験におけるペムブロリズマブの安全性プロファイルは、これまでの試験の結果と一貫していた。  この結果については、今後さまざまな腫瘍関連学会で発表するとともに、各国の規制当局へ承認申請する予定。

がんと共に生きる人々を支えるために、医師ができること/武田

 がん治療の進歩は目覚ましく、新たな治療法が続々と登場している。しかし、がん患者の精神・心理的苦痛に対する支援はどうだろうか。がん患者が抱える課題と、それに対する取り組みについての理解を深めることを目的に、武田薬品工業は「がんになっても“誰一人取り残されない社会”を作るために」をテーマとして、2023年1月27日にメディアセミナーを開催した。  セミナーの前半では、大西 秀樹氏(埼玉医科大学国際医療センター 精神腫瘍科 診療部長・教授)が「がん患者さん・ご家族の心理社会的支援の必要性」をテーマに、心理支援の重要性を語った。後半では、坂本 はと恵氏(国立がん研究センター東病院 サポーティブケアセンター 副サポーティブケアセンター長)が「がん相談支援センターの役割と現状」をテーマに、がん相談支援センターの具体的な業務内容を紹介し、医療者・患者への周知の重要性を述べた。セミナーの座長は、悪性リンパ腫の罹患経験を有する天野 慎介氏(一般社団法人全国がん患者団体連合会 理事長)が務めた。

新型コロナ、米0~19歳の感染症による死因1位

 新型コロナウイルス感染症による死亡は、昨年7月までの1年間において米国の0~19歳の全死因の8位、感染症または呼吸器疾患による死亡では1位だったことがわかった。英国オックスフォード大学のSeth Flaxman氏らによる本研究の結果は、JAMA Network Open誌2023年1月30日号に掲載された。  研究者らは、米国疾病対策予防センター(CDC)のWide-Ranging Online Data for Epidemiologic Research(WONDER)データベースを使い、2020年4月1日~2022年8月31日まで、12ヵ月の期間ごとにCOVID-19の死亡率を算出。

認知症の初期症状によってその後の進行速度が異なる

 記憶力の低下は認知症で見られる最も一般的な症状だが、認知症の初期にそれが現れた人は、ほかの症状が初期に現れた人よりも、その後の進行が緩やかであるとする研究結果が報告された。米クリーブランド・クリニック脳の健康センターのJagan Pillai氏らの研究によるもので、詳細は「Alzheimer's & Dementia」に12月20日掲載された。  Pillai氏は、「文章を書いたり、計画を立てたり、問題を解決したり、空間や距離を把握したりする能力の低下が認知症の初期に現れた人に比べて、記憶力の低下が最初の症状だった人は、認知機能の低下速度がわずかに遅い。今後の研究により、初期症状によってその後の経過を予測できることが証明されたなら、患者やその家族が将来への備えを考える際に有用な情報となるだろう」と述べている。

代謝的に健康でもFIB-4 index高値の男性はCKDリスクが高い

 代謝的に健康で慢性腎臓病(CKD)のリスクは低いと考えられる男性でも、肝臓線維化マーカーである「FIB-4 index」が高い場合はCKDリスクが高いことを示唆するデータが報告された。産業医科大学病院腎センターの久間昭寛氏らが行った縦断的研究の結果であり、詳細は「Scientific Reports」に10月5日掲載された。  メタボリックシンドロームの肝臓における表現型とされる非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は、肝硬変や肝がんのリスクであるのと同時に、心血管代謝疾患リスクとも関連のあることが知られている。さらに、NAFLDがアルブミン尿のリスク因子であるとする報告もある。ただし、NAFLDがCKDの独立したリスク因子であるか否かは十分検討されていない。これを背景として久間氏らは、NAFLDなどによる肝線維化の簡便な指標であるFIB-4 indexとCKDリスクとの関連を検討した。

昼寝とうつ病リスク~メタ解析

 いまだ議論の余地が残る昼寝とうつ病リスクとの関連について、中国・江西科技師範大学のLiqing Li氏らはメタ解析を実施し、これらの関連性を明らかにしようと試みた。その結果、昼寝はうつ病の予測因子であることが示唆された。Frontiers in Psychology誌2022年12月15日号の報告。  2022年2月までに公表された研究を、PubMed、Embase、Web of Science、China National Knowledge Infrastructure databasesより検索し、解析に含めた研究のリファレンスリストの情報も併せて収集した。ランダム効果モデルを用いて、複合エフェクトサイズを推定した。

オミクロン株XBB.1.5、感染力・免疫逃避能ともに増強/東大

 米国疾病予防管理センター(CDC)が発表したデータによると、米国では2022年12月より新型コロナウイルスのオミクロン株XBB.1.5の感染が急激に増加し、2023年2月4日時点で全体の66.4%を占めている。XBB.1から派生したXBB.1.5は、日本でも感染例が確認されており、今後の感染拡大が懸念されている。東京大学医科学研究所の佐藤 佳氏らの研究グループは、オミクロン株XBB.1.5のウイルス学的特徴を、流行動態、感染性、免疫抵抗性などの観点から解析し、XBB.1.5はXBB.1と比べて、実効再生産数(Re)が1.2倍高いことや感染力が高まっていること、さらに血清中の中和抗体に対してBA.2やBA.5よりもきわめて高い免疫逃避能を持つことを明らかにした。本結果は、Lancet Infectious Diseases誌オンライン版2023年1月31日号のCORRESPONDENCEに掲載された。

toripalimabのNSCLC周術期治療が主要評価項目を達成/Junshi Biosciences

 Junshi Biosciences社は、2023年1月18日、抗PD-1抗体toripalimabによる非小細胞肺がん(NSCLC)の周術期治療が、第III相試験Neotorchの中間解析で主要評価項目を達成したと発表した。  Neotorch試験は、肺がんの術前・術後補助療法において、プラチナダブレット化学療法単独と、toripalimab+プラチナダブレット化学療法の有効性と安全性を比較する無作為化二重盲検プラセボ対照第III相研究。  中間解析の結果、NSCLCへのtoripalimab+化学療法の手術前後の補助療法とtoripalimab単剤の地固め療法の組み合わせは、化学療法単独と比較して無病生存期間(EFS)を有意に延長する可能性を示した。toripalimabの安全性データは既知のリスクと一致しており、新たな安全性シグナルは確認されていない。

血中のDNA断片を用いたがん検査、低コストで簡便な検査法として有望

 複数の種類のがんを、他の検査法よりも簡便かつより安価に検出できる血液検査の開発に向けて、研究が前進した。米ウィスコンシン大学のMuhammed Murtaza氏らが開発したこの検査法は、予期せぬ場所で「壊れた」ように見えるDNAの断片を測定するというシンプルな方法で特定のがんのシグナルを検出するものだ。この方法により、現在開発中の他のがんの血液検査法よりも少ない量の血液検体で、11種類のがんのいずれかがある人と、がんのない人を高い精度で判別できたという。この研究結果は、「Science Translational Medicine」1月11日号に掲載された。  この研究は、複数の種類のがんについてワンストップでスクリーニングできる血液検査の開発に向けたさまざまな取り組みの中では最新のものの1つである。これらの検査法はいずれも、血液中に存在する腫瘍由来の遺伝物質を利用する点で共通している。このような血液検査は、現在は有効なスクリーニング手段のない種類のがんを含めたさまざまながんの発見につながる、簡便なスクリーニング方法となる可能性を秘めている。

日本人のサルコペニア予防には地中海食より日本食?

 日本人中高齢者の食生活と握力との関連を検討したところ、より日本食らしい食事パターンの人ほど、握力低下が少ないことが明らかになった。一方、地中海食らしい食事パターンは、握力低下に対する保護的な効果は見られなかったという。長野県立大学健康発達学部の清水昭雄氏、神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部の遠又靖丈氏、三重大学医学部附属病院リハビリテーション部の百崎良氏らの研究によるもので、詳細は「International Journal of Environmental Research and Public Health」に10月3日掲載された。  日本食と地中海食はどちらも健康的な食事パターンとして知られており、それらを順守している人ほど心血管疾患や全死亡リスクが低いことが報告されている。ただ、日本を含む先進諸国では人口の高齢化を背景に、筋力や筋肉量が低下した状態であるサルコペニアを予防することの重要性が増している。そこで清水氏らは、日本食または地中海食の順守と、サルコペニアの主要な関連因子である握力低下との関連を横断的に検討した。

がん診断後の急速な身体機能低下はいつまで続く?

 高齢がん患者の身体機能の推移をがん診断の前後10年にわたって調査したところ、がん患者の身体機能はがん診断後に加速度的に低下し、5年後であっても非がん患者のコントロール群と比べて低いままであることが、Elizabeth M. Cespedes Feliciano氏らによって明らかになった。JAMA Oncology誌オンライン版2023年1月19日号掲載の報告。  これまで、非がん患者と比較して、がん患者のがん部位や進行度、治療が身体機能へ与える長期的な影響を調べた研究はなかった。そこで研究グループは、がん診断の前後10年間の身体機能を調査するために前向きコホート研究を実施した。

急性腎障害、造影剤は腎予後に影響せず

 急性腎障害(AKI)の既往を有する患者における、造影剤使用と腎予後の関係に関するエビデンスは不足しているのが現状である。そこで、米国・ジョンズ・ホプキンス大学のMichael R. Ehmann氏らは、AKI患者に対する造影剤静注とAKI持続の関係を検討し、造影剤は腎予後に影響を及ぼさなかったことを報告した。Intensive Care Medicine誌オンライン版2023年1月30日号掲載の報告。  2017年7月1日~2021年6月30日の間に救急受診し、入院した18歳以上の患者のうち、KDIGO(Kidney Disease Improving Global Outcomes)基準のクレアチニン値に基づいてAKI(血清クレアチニン値が0.3mg/dL以上上昇もしくは1.5倍以上に上昇)と診断された1万4,449例を対象として、後ろ向きに追跡した。評価項目は、退院時のAKI持続、180日以内の透析開始などであった。傾向スコア重み付け法やエントロピーバランス法を用いて、造影剤静注あり群となし群の背景因子を調整して解析した。

抗原検査の感度、オミクロン株感染直後は低いのか/阪大

 新型コロナウイルス感染症のオミクロン株流行下において、感染直後における抗原定性検査の感度が低下する可能性が指摘されていた。大阪大学感染症総合教育研究拠点の村上 道夫氏らの多施設共同研究グループは、日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)のクラブの選手やスタッフを対象に、同一日かつ同一個人に行われたPCR検査と抗原定性検査の結果を比較評価した。本研究の結果、PCR検査と比べた抗原定性検査の感度は63%(95%信頼区間[CI]:53~73%)、特異度は99.8%(95%CI:99.5~100.0%)であり、症状の有無や感染してからの日数は、PCR検査と比べた抗原定性検査の感度に影響しないことが明らかになった。BMJ Open誌2023年1月30日号に掲載の報告。

加熱式タバコ、コロナ感染・重症化リスクを上昇/大阪公立大ほか

 燃焼式タバコの使用は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症化リスク因子と考えられ、「新型コロナウイルス感染症診療の手引き 第8.1版」でも「喫煙」が「重症化のリスク因子」の項目に記載されている。COVID-19流行下において、各国でタバコ使用行動の変化がみられているが、加熱式タバコの使用は、増加しているともいわれる。しかし、加熱式タバコとCOVID-19の関係については、これまでほとんど検討がなされていなかった。そこで、大阪公立大学の浅井 一久氏(大阪公立大学大学院医学研究科 呼吸器内科学 准教授)らの研究グループは、加熱式タバコの使用とCOVID-19の関係に着目し、調査を実施した。その結果、タバコ非使用者に比べ、加熱式タバコ使用者は新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染率が高く、全タバコ使用者の中でも加熱式タバコと燃焼式タバコの併用者は、感染時の症状悪化リスクが最も高かった。本研究結果は、Scientific Reports誌2023年2月2日号に掲載された。