医療一般|page:126

統合失調症患者の睡眠構造に対するブレクスピプラゾールの影響

 ブレクスピプラゾールは、日本において統合失調症治療に広く用いられている非定型抗精神病薬の1つである。これまでの研究では、睡眠変数に対するいくつかの抗精神病薬による治療効果が報告されているが、統合失調症患者の睡眠構造に対するブレクスピプラゾールの影響については、十分に検討されていない。長野・栗田病院の荒井 勇輔氏らは、統合失調症患者を対象に、睡眠構造に対するブレクスピプラゾールの影響を検討した。その結果、ブレクスピプラゾールの併用は、統合失調症患者の睡眠構造に変化を及ぼす可能性が示唆されたが、多重比較補正後では有意な差は認められなかった。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2023年1月6日号の報告。

4人に1人近くの患者が入院中に有害事象を経験

 入院患者のほぼ4分の1が入院中に有害事象を経験することが、新たな研究で明らかにされた。このような有害事象の多くは、薬剤の副作用や手術リスクに起因するものであるため、防止することは困難だという。米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院のDavid Bates氏らが実施したこの研究の詳細は、「The New England Journal of Medicine(NEJM)」1月12日号に掲載された。  Bates氏らは、患者の診療録データを用いて後ろ向きコホート研究を実施し、入院中の患者に生じた有害事象の発生頻度、予防可能性、および重症度を検討した。対象は、米マサチューセッツ州の11施設の病院に2018年に入院した患者からランダムに抽出した2,809人(平均年齢59.9歳)とした。

tTMBがPD-L1陽性NSCLCに対するペムブロリズマブ単剤の治療効果を予測(KEYNOTE-042)/Ann Oncol

 ペムブロリズマブ単剤は、PD-L1陽性(TPS≧1%)の進行・再発の非小細胞肺がん(NSCLC)に対する、1次治療に用いられている。中国・香港中文大学のT. S. K. Mok氏らは、ペムブロリズマブ単剤の化学療法に対する治療効果を予測するバイオマーカーの探索を行った。その結果、腫瘍組織の遺伝子変異量(tTMB)が1エクソームあたり175個以上(tTMB≧175mut/exome)の集団において、ペムブロリズマブ単剤は化学療法と比べて、全生存期間(OS)および無増悪生存期間(PFS)を改善したが、tTMB<175mut/exomeではいずれも改善しなかった。Annals of Oncology誌オンライン版2023年1月25日掲載の報告。

SNRI使用と口渇リスク

 口腔乾燥症や口渇は唾液量の減少および欠如を起因とする状態であり、特定の薬剤の使用に続発してみられる。Joseph Katz氏らは、口腔乾燥症患者とセロトニンノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)使用との関連を分析した。その結果、SNRIを使用している患者は、使用していない患者と比較し、口渇リスクが約5倍であることが明らかとなった。結果を踏まえて著者らは、SNRIを処方する専門医、唾液の産生やQOLへのSNRIによる影響を認識していない医師、口腔乾燥症の治療に携わっている歯科医師にとって、本結果は有益な情報であろうと報告している。Quintessence International誌オンライン版2023年1月10日号の報告。

「骨転移診療ガイドライン」-新たな課題を認識しつつ改訂

 『骨転移診療ガイドライン』の改訂第2版が2022年12月に発刊された。2015年に初版発刊後、骨修飾薬の使用方法や骨関連事象のマネジメントなどの医学的エビデンスが蓄積されてきたことを踏まえ、7年ぶりの改訂となる。今回、本ガイドライン作成ワーキンググループのリーダーを務めた柴田 浩行氏(秋田大学大学院医学系研究科臨床腫瘍学講座)に、改訂ポイントや疫学的データの収集などの課題について話を聞いた。  がん治療で病巣を取り除けたとしても身体機能の低下によって生活の質(QOL)が低下してしまっては、患者の生きがいまでも損なわれてしまうかもしれない。骨転移はすべてのがんで遭遇する可能性があり1)柴田氏らはがん患者の骨転移がもたらす身体機能の低下をいかにして防ぐことができるのかを念頭に置いてガイドライン(GL)を作成した。「骨転移が生じる患者の多くはStageIVではあるが、外科的介入に対するエビデンスが蓄積されつつあることから、今回の改訂には多くの整形外科医にご参加いただき、外科領域のClinical Questionを増やした」と話し、「作成メンバーが、診断・外科・放射線・緩和・リハビリテーションと看護の5領域に分かれて取り組んだ点も成果に良く反映されている」と作成時の体制について説明した。

COVID-19の2価ワクチン接種でXBB系統の感染リスクが半減

 新型コロナウイルスオミクロン株のBA.4とBA.5に対応した2価ワクチンのブースター接種により、現在流行中のオミクロン株XBB系統への感染リスクが半減する可能性が、新たなデータで示された。米疾病対策センター(CDC)が実施したこの研究結果は、「Morbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)」に1月25日掲載された。NBCニュースは、CDCのCOVID-19 Emergency Response Teamの責任者であるBrendan Jackson氏がこの知見について、「非常に心強いものだ」とコメントしたことを報じている。

短時間のPET-CT検査でホルモン分泌異常による高血圧を診断

 10分程度の非侵襲的なPET-CT検査により、高血圧の原因となっている腫瘍を、従来のカテーテルを用いた侵襲的な検査と同程度の精度で検出できることが、新たな研究で示された。研究グループは、この検査により見つけた腫瘍を外科的に切除することで、このタイプの高血圧を治療できるようになる可能性があるとしている。英ロンドン大学クイーン・メアリー校教授のMorris Brown氏らが実施したこの研究結果は、「Nature Medicine」に1月16日掲載された。  高血圧の大部分はその原因が不明であり、患者は生涯にわたって薬物療法が必要である。ただし、同大学の研究グループが実施した過去の研究では、高血圧患者の5~10%は、副腎でのアルドステロンの過剰分泌(原発性アルドステロン症)を原因とすることが明らかにされている。アルドステロンは体内のナトリウムや水分の量を調節する働きを持つホルモンだが、過剰に分泌されると体内に塩分や水分が蓄積して高血圧を引き起こす。このタイプの高血圧患者では一般的な降圧薬が奏効せず、心筋梗塞や脳卒中のリスクが上昇する。原発性アルドステロン症の原因は、副腎の良性腫瘍(通常は片側性)か、両側の副腎でのアルドステロン分泌細胞の過形成である。前者の場合には、副腎摘出による治療が可能だが、標準的な術前検査が侵襲的であるため、実際に手術を受ける患者は1%足らずにとどまっているのが現状である。

米FDAが喘息の2剤配合吸入薬を承認

 米食品医薬品局(FDA)は1月11日、気管支収縮の治療または予防と喘息発作リスクの低減を目的に、18歳以上の成人喘息患者が利用できる吸入薬Airsupra(一般名albuterol and budesonide)を新たに承認した。  Airsupraは、β2アドレナリン受容体作動薬であるalbuterol(アルブテロール、日本ではサルブタモール)と副腎皮質ステロイドのブデソニドの合剤。吸入ステロイド薬(ICS)と短時間作用型β2刺激薬の合剤の米国での承認は、今回が初めてである。また、喘息症状の長期管理薬としてではなく、発作治療薬として吸入ステロイド薬を含有する薬剤が米国で承認されたのも、今回が初めてである。

コロナワクチン接種者と未接種者、情報源の違いは?/筑波大

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のワクチンを接種するかどうかを決定しておらず「様子見」していた人のうち、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する情報を「職場/学校」「LINE」から得ている人はその後のワクチン接種率が高く、「インターネットニュース」「動画共有サイト(YouTubeなど)」から得ている人は接種率が低かったことを、筑波大学の堀 大介氏らが明らかにした。Environmental health and preventive medicine誌オンライン版2023年2月2日掲載の報告。  過去の研究によって、COVID-19に関する情報をテレビのニュース番組や新聞から得ている人はワクチン接種意向が高いなど、情報源の種類と接種意向との関連が報告されていた。しかし、ワクチンが接種可能になった後に実際にワクチンを接種したかどうかは不明のため、ワクチン接種の意思決定プロセスにおける情報源の種類の影響は明らかではなかった。そこで研究グループは、ワクチンを接種するかどうかまだ決めていない人において、使用しているCOVID-19に関する情報源とその後のワクチン接種の有無との関連を明らかにするため調査を実施した。

日本人片頭痛患者に対するフレマネズマブ オートインジェクターの第III相臨床試験

 ヒト化抗CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)モノクローナル抗体であるフレマネズマブは、片頭痛発作の発症抑制を適応とする皮下注射製剤である。2022年、フレマネズマブに、自宅での自己注射が可能となるオートインジェクター(AI)製剤が新たな選択肢として加わった。獨協医科大学の平田 幸一氏らは、フレマネズマブのAI製剤の安全性を調査するために実施された第III相臨床試験の結果を報告した。その結果、自宅でのフレマネズマブのAI製剤自己注射は、一般的な安全性および良好な忍容性が認められた。著者らは、有用性およびアドヒアランス改善の観点から、フレマネズマブのAI製剤による投与戦略は臨床的に意義があると考えられると報告している。Expert Opinion on Drug Safety誌オンライン版2022年12月28日号の報告。

乳がん患者のリアルワールドでのコロナワクチン効果/JCO

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチンの臨床試験には、積極的ながん治療を受けている乳がん患者が含まれていない。今回、イタリア・ジェノバ大学のMarco Tagliamento氏らが、リアルワールドの乳がん患者におけるワクチン接種の効果を調査したところ、乳がん患者においてもワクチン接種がCOVID-19罹患率および死亡率を改善することが示された。また、欧州におけるオミクロン株流行期、乳がん患者におけるCOVID-19重症度は低いままだった。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2023年1月31日号に掲載。

宇宙食もヘルシーに

 食事を変更すると、短期間でも健康や認知機能などのパフォーマンスに変化が現れる可能性が、米航空宇宙局(NASA)の研究で明らかになった。宇宙食に含まれる、野菜や果物、魚などを増やしたところ、宇宙飛行士のコレステロールレベルやストレス状態、認知機能に有意な変化が生じたという。NASAのGrace Douglas氏らの研究によるもので、詳細は「Scientific Reports」に12月15日掲載された。  宇宙飛行は人間の健康に影響を及ぼすことが知られている。また宇宙船はスペースや電力に限りがあることから、持ち込む食料にはさまざまな制限が課せられる。さらに宇宙環境は医療資源が乏しいため、健康リスクをできるだけ抑制し得る食品が期待される。そのため、安全性や栄養価に優れた宇宙食の開発が続けられている。Douglas氏らの研究は、このような条件によりマッチするように改良された新開発の宇宙食の有用性を、16人の宇宙飛行士(平均年齢40±9歳、男性10人、BMI23.7±2.8)を対象に検証したもの。

1日を快活にスタートするための三つの鍵

 朝、気持ち良く目覚めて1日を快活に過ごすためには三つの鍵があることが、新たな研究から明らかになった。前日に運動をして、いつもより少し遅めに起き、炭水化物が多めの朝食を取ると良いようだ。これらの3因子は、朝の覚醒レベルにそれぞれ独立した関連があるという。米カリフォルニア大学バークレー校のRaphael Vallat氏らの研究によるもので、詳細は「Nature Communications」に11月19日掲載された。  広告などでは、しばしば朝食のシーンとして、砂糖で甘くしたシリアルがテーブルに並んだ映像が登場する。ただ、砂糖などの単純糖質ばかりの食事は、1日のスタートには最悪のようであり、Vallat氏は、「摂取後に血糖値を急激に上昇させる食品は避けた方が良い」と話す。

おたふくかぜワクチンの予防効果、成人期には低下?

 米国では、小児に対するムンプス(流行性耳下腺炎、おたふくかぜ)ワクチンの定期接種が行われているにもかかわらず、依然としておたふくかぜのアウトブレイクが報告されている。この原因を、ワクチン接種により獲得した免疫の減衰に求める説を裏付ける研究結果が報告された。米ジョージア大学Odum School of EcologyのDeven V. Gokhale氏らによる研究で、詳細は、「Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS)」に1月9日掲載された。  おたふくかぜは、片側または両側の頬(耳の下)や顎の下の腫れ、発熱などを主症状とする全身性のウイルス感染症だ。通常は、比較的軽い症状が1〜2週間続いた後に軽快するが、脳の炎症や難聴などの深刻な合併症を引き起こして重症化することもある。そのため、米国では、小児に対する麻疹(はしか)・おたふくかぜ・風疹の混合ワクチン(MMRワクチン)の定期接種が奨励されている。

統合失調症発症と昼寝の頻度との関係

 統合失調症と昼寝の頻度との関連について、中国・温州医科大学のJun Ma氏らが調査を行った。その結果、昼寝の頻度の増加と統合失調症発症との間に双方向の関連が認められ、統合失調症の進行や治療に対する潜在的な介入として昼寝の頻度をコントロールする意義が示唆された。BMC Psychiatry誌2022年12月13日号の報告。  昼寝の頻度と統合失調症に関連する上位の遺伝的バリアントのゲノムワイド関連解析(GWAS)によって得られる要約統計量(summary statistics)を用いて、双方向2サンプルメンデルランダム化解析を実施した。昼寝に関するGWASの一塩基多型(SNP)のデータは、英国バイオバンク(45万2,633例)および23andMeコホート研究(54万1,333例)より抽出し、統合失調症に関連するGWASは、Psychiatric Genomics Consortium(PGC:3万6,989件、症例:11万3,075例)より抽出した。逆分散加重(IVW)分析を主要な方法として用い、加重中央値、MR-Robust、Adjusted Profile Score(RAPS)、Radial MR、MR-Pleiotropy Residual Sum Outlier(PRESSO)を感度分析として用いた。

「ChatGPT」は論文著者になれない、医学誌編集者団体が声明

 2022年11月にリリースされた米国OpenAIが開発した「ChatGPT」が話題を集めている。質問文を入力するとAIが次々に回答を提示してくれるこの種のサービスは、リアルの人間と会話しているような使用感のため「チャットボット」とも総称される。ChatGPTはWebから広範なデータを収集し、強化学習させた回答が提示される。執筆やリサーチにどのくらい使えるのか、多くの利用法が世界中のユーザーによって試行され、リリースから2ヵ月で月間アクティブユーザー数は1億人に達したと推計されている。

HR+/HER2+進行乳がん1次治療、ペルツズマブ+トラスツズマブ+AIの長期解析結果(PERTAIN)

 ホルモン受容体陽性(HR+)/HER2陽性(HER2+)の転移を有する/局所進行閉経後乳がん患者における1次治療として、トラスツズマブとアロマターゼ阻害薬(AI)に化学療法を併用/併用せずペルツズマブを追加することにより、無増悪生存期間(PFS)が大幅に改善されたことが第II相PERTAIN試験の主要解析(追跡期間中央値31ヵ月)で示されている。今回、同試験の最終解析結果(追跡期間中央値6年超)を、イタリア・フェデリコ2世ナポリ大学のGrazia Arpino氏らがClinical Cancer Research誌オンライン版2023年1月30日号に報告した。

コロナの重症肺炎、他の肺炎と転帰は異なるか

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重大な合併症の1つとして急性低酸素性呼吸不全(AHRF)がある。COVID-19による肺炎が引き起こすAHRFは、他の原因によるAHRFとは異なる表現型を有し、より高い死亡率を示すと考えられていた。そこで、米国・ジョンズ・ホプキンス大学のEric P. Nolley氏らは、COVID-19により人工呼吸器が必要な重症肺炎を発症した患者について、他の原因によって重症肺炎を発症した患者と転帰を比較した。その結果、COVID-19による重症肺炎患者は、他の原因による重症肺炎患者と比べて死亡率の上昇は認められなかったものの、人工呼吸器を外すまでの期間が長かったことを明らかにした。JAMA Network Open誌2023年1月10日掲載の報告。

コミュニティガーデンは健康増進に役立つ

 ガーデニングの経験者なら、土を掘って種をまく喜びや、最初の収穫時の誇らしい気持ちを理解できるはずだ。それに加えて、ガーデニングは健康にも良い影響を与えるようだ。新たな研究で、都市部のコミュニティガーデン(地域住民が運営や管理を担う庭)の存在は、住民の新鮮な食品の摂取量や運動量の増加をもたらす一方で、ストレスや不安を軽減する可能性のあることが示されたのだ。米コロラド大学ボルダー校環境学部教授のJill Litt氏らが実施したこの研究結果は、「The Lancet Planetary Health」1月4日号に掲載された。

新型コロナワクチンの2回目のブースター接種、心臓への悪影響なし

 ファイザー社製新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンの2回目のブースター接種(追加接種)は心臓にとって安全であることが、前向きおよび後ろ向きコホート研究で確認された。テルアビブ大学(イスラエル)経営工学分野のDan Yamin氏らによる研究で、詳細は「Lancet Respiratory Medicine」に11月18日掲載された。  この研究では、2種類のデータを用いてファイザー社製COVID-19ワクチンの2回目のブースター接種の安全性を評価した。データの一つは、イスラエルで2番目に大きな健康保険組織Maccabi Healthcare Servicesの加入者からランダムに抽出した25万人分のデータ(後ろ向き研究)であり、もう一つは現在も継続中の前向き観察研究であるPerMed試験(前向き研究)の参加者4,698人のデータである。