医療一般|page:112

ベンゾジアゼピンの使用と中止の意思決定に関する患者と精神科医の認識比較

 ベンゾジアゼピン(BZD)やZ薬の長期使用は推奨されていないにもかかわらず、患者や医師がどのように認識しているかは、あまりよくわかっていない。聖路加国際大学の青木 裕見氏らは、精神科外来患者および精神科医において、BZDの使用と中止の意思決定に関する認識を評価し比較するため、横断調査を実施した。その結果、精神科外来患者の多くは、自分の意思に反して睡眠薬または抗不安薬を長期的に使用していることが示唆された。International Journal of Environmental Research and Public Health誌2023年4月3日号の報告。

既治療・転移乳がんへのHER3-DXd、幅広いHER3発現状況で有用/ASCO2023

 複数治療歴のあるER+およびトリプルネガティブ(TN)の局所進行または転移を有する乳がん(MBC)患者を対象とした第II相試験の結果、HER3を標的としたpatritumab deruxtecan(HER3-DXd)の有効性は、幅広いHER3発現状況で認められたことを、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で、米国・Sarah Cannon Research InstituteのErika P. Hamilton氏が発表した。  MBC患者はHER3が高値であることが多いが、HER3過剰発現はがんの進行や生存率の低下と関連することが報告されている。また、HER3-DXdの有効性は乳がんのサブタイプやHER3発現状況にあまり依存しない可能性が示唆されている。本試験は、HER3-DXd投与で最大の効果が得られる患者群を特定するために、パートA、パートB、パートZの3パートで実施されている。今回はパートAとして、特定のバイオマーカー(ER/PR/HER2/HER3)が発現した患者における有効性と安全性が検討された(データカットオフ:2022年9月6日)。

DLL陽性SCLC・神経内分泌がん、DLL3/CD3 BiTE抗体のFirst in Human試験/ASCO2023

 Notchリガンドの1つであるDLL3はNotchを阻害する働きを有する。DLL3は、小細胞肺がん(SCLC)や神経内分泌がん(NEC)の細胞表面に高発現しており、薬剤ターゲットとして有望視されている。DLL3とCD3を標的とする二重特異性T細胞誘導(BiTE)抗体のBI 764532は、DLL3陽性細胞および異種移植モデルマウスで強力な前臨床抗腫瘍活性を示したことが報告された。そこで、DLL3陽性SCLC、NEC患者を対象としたBI 764532のファースト・イン・ヒューマン試験(NCT04429087)が実施されている。現在進行中の本試験において、BI 764532は管理可能な安全性プロファイルを示し、有効性についても有望な結果が得られていることが示された。ドイツ・ドレスデン工科大学のMartin Wermke氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で発表した。

HER2+胆道がんに対するtucatinibとトラスツズマブの併用療法の有用性/ASCO2023

 数ラインの治療歴のあるHER2陽性の転移のある胆道がんに対し、チロシンキナーゼ阻害薬のtucatinibとトラスツズマブの併用療法が有効であるという報告が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)において国立がん研究センター東病院の中村能章氏よりなされた。  これは、泌尿器がんなどのHER2陽性固形がんを含む9つのコホートからなるオープンラベル第II相バスケット試験であるSGNTUC-019試験の中の、胆道がんコホートの結果である。

7項目でメタボ発症を予測~日本人向けリスクスコア

 向こう5年間でのメタボリックシンドローム(MetS)発症リスクを、年齢や性別、BMIなど、わずか7項目で予測できるリスクスコアが開発された。鹿児島大学大学院医歯学総合研究科心臓血管・高血圧内科のSalim Anwar氏、窪薗琢郎氏らの研究によるもので、論文が「PLOS ONE」に4月7日掲載された。  MetSの有病率は、人種/民族、および、その国で用いられているMetSの定義によって異なる。世界的には成人の20~25%との報告があり、日本では年齢調整有病率が19.3%と報告されている。これまでにMetSの発症を予測するためのいくつかのモデルが提案されてきているが、いずれも対象が日本人でない、開発に用いたサンプル数が少ない、検査値だけを検討していて生活習慣関連因子が考慮されていないなどの限界点がある。著者らはこれらの点を考慮し、日本人の大規模なサンプルのデータに基づく予測モデルの開発を試みた。

眼球運動と認知機能を用いた統合失調症診断の有用性

 統合失調症患者では、眼球運動異常や認知機能低下がみられる。奈良県立医科大学の岡崎 康輔氏らは、統合失調症患者と健康対照者における眼球運動および認知機能に関するデータを用いて、精神科医療における実践的なデジタルヘルスアプリケーションに流用可能な臨床診断マーカーの開発を目指して、本研究を実施した。その結果、眼球運動と認知機能データの7つのペアは、統合失調症患者を鑑別するうえで、臨床診断に支援につながり、統合失調症の診断の一貫性、早期介入、共通意思決定を促進するために、これらを利用したポータブルディバイスでも機能する客観的な補助診断方法の開発に役立つ可能性があることを報告した。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2023年4月8日号の報告。

完全切除EGFR陽性NSCLC、術後補助療法の効果不良因子(IMPACT-TR)/ASCO2023

 完全切除を達成したEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)患者における、チロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)による術後補助療法の効果や、再発を予測するバイオマーカーは、十分に検討されていないのが現状である。そこで、EGFR遺伝子変異陽性NSCLC患者の完全切除後の術後補助療法として、ゲフィチニブとシスプラチン+ビノレルビン(cis/vin)を比較した、国内第III相試験「IMPACT試験」の対象患者においてバイオマーカーが検討された。その結果、ゲフィチニブに対してはNOTCH1遺伝子変異が、cis/vinに対してはCREBBP遺伝子変異が効果不良を予測する因子となることが示唆された。米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)において、池田 慧氏(神奈川県立循環器呼吸器病センター)が本結果について発表した。

HR+/HER2-進行乳がん、CDK4/6阻害薬は1次治療か2次治療か(SONIA)/ASCO2023

 HR+/HER2-進行乳がんに対する1次治療でのCDK4/6阻害薬使用は、2次治療での使用と比較して、無増悪生存期間(PFS)の有意な減少や臨床的に意味のある有用性が認められなかったことが、オランダで全国的に実施された医師主導の第III相SONIA試験で示された。また、CDK4/6阻害薬を1次治療で使用すると使用期間が16.5ヵ月長くなり、毒性および治療費用が増加したという。オランダ・The Netherlands Cancer InstituteのGabe S. Sonke氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で発表した。

脳卒中後の回復の鍵は運動

 脳卒中後の回復には、運動が重要である可能性を示すデータが報告された。脳卒中発症後の6カ月間に運動量を増やして継続していた患者は、そうでない患者よりも機能的転帰が良好だったという。ヨーテボリ大学(スウェーデン)のDongni Buvarp氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Network Open」に5月1日掲載された。同氏は、「脳卒中の重症度にかかわりなく、運動量を増やすことでメリットを得ることができる」と話している。  この研究は、2014年10月~2019年6月に、スウェーデンの35の医療機関が参加して実施された、抗うつ薬の有効性を検証した臨床研究のデータを用いて行われた。研究参加者は脳卒中発症後2~15日に登録された18歳以上の患者1,367人〔年齢中央値72歳(四分位範囲65~79)、男性62%〕。主要評価項目は、運動量の経時的な変化であり、副次的に6カ月後の機能回復の程度(mRSスコア)が評価された。

インスピレーションが必要なら、仮眠を取ると良いかも?

 白熱電球を発明したトーマス・エジソンは、短時間の昼寝によって自身が持つ創造力が高まると考えていたが、この考えは間違っていないようだ。米マサチューセッツ工科大学(MIT)コンピューターサイエンス・神経科学分野のKathleen Esfahany氏らの研究から、睡眠と覚醒の間を漂っている睡眠段階(入眠期)に、創造的思考が特に豊かになることが明らかになった。この研究の詳細は、「Scientific Reports」5月15日号に掲載された。  以前から入眠期、具体的には覚醒から睡眠へと移行する「N1」と呼ばれるノンレム睡眠の最初の段階は、創造力を高めると考えられてきた。しかし、それを裏付ける科学的な証拠は少なかった。そこでEsfahany氏らは今回、1)仮眠が本当に創造力を向上させるのか、2)入眠期に音声ガイドにより特定の指示を与えることでその創造力を形作り、かつ向上させることができるのか、の二つの疑問に対する答えを明らかにするために、研究を実施した。

γ-GTPが高い、アルコール性肝障害の可能性は?

 大塚製薬主催のプレスセミナー(5月22日開催)において、吉治 仁志氏(奈良県立医科大学消化器内科学 教授)が「肝機能異常を指摘されたときの対処法」について講演し、アルコール性肝障害を疑うポイントやかかりつけ患者に対する対応法ついて解説を行った。  肝機能障害は“人間ドック受診者の3人に1人が指摘を受ける項目”と言われており、臓器治療としては断酒治療が最も有効だが、ハードルが高い患者さんには「断酒をいきなり強く求めると治療が続かないことが多く、その場合まずは減酒から始める」と吉治氏は話した。医学界では各学会が「熊本宣言 HbA1c7%未満」「stop-CKD eGFR60未満」などのスローガンを掲げて市民に対して疾患啓発を行っている一方で、肝機能については提言が存在しなかった。そこで、日本肝臓学会は6月15、16日に開催される『第59回日本肝臓学会総会』にて“Stop CLD(Chronic liver disease) ALT over 30U/L”(ALTが30を超えたらかかりつけ医を受診しましょう)を『奈良宣言』として掲げることにしたという。この数値の根拠ついて「この値は特定健診基準や日本人間ドック協会のALTの保健指導判定値であり、日本のみならず脂肪肝がとくに問題になっている米国でも医師への相談基準」とコメントした。

糖尿病患者の眼科受診率は半数以下/国立国際医療研究センター研究所

 糖尿病で重大な合併症に「糖尿病性網膜症」がある。治療の進歩もあり、減少しているとはいえ、本症の予防には定期的なスクリーニングが重要であり、糖尿病を主に診療する内科医と眼科医の間の連携はうまく機能しているのだろうか。この疑問に対し、井花 庸子氏(国立国際医療研究センター研究所 糖尿病情報センター)らの研究グループは、ナショナルデータベースを用いたレトロスペクティブ横断コホート研究「わが国の糖尿病患者における糖尿病網膜症スクリーニングのための内科と眼科の受診間の患者紹介フロー」を行い、その結果を報告した。Journal of Diabetes Investigation誌5月2日オンライン掲載。

薬物療法抵抗性ではないStageIV乳がんの原発巣切除、OS改善せず(JCOG1017)/ASCO2023

 薬物療法抵抗性ではないde novo stageIV乳がんに対して、薬物療法単独に比べて、原発巣切除により全生存期間(OS)を改善するかどうかを検討したわが国の第III相試験(JCOG1017)の結果、OSに有意差が認められなかった。一方、原発巣切除群は、局所コントロールが良好であり、また閉経前や単臓器転移ではOSが改善される可能性が示された。岡山大学の枝園 忠彦氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で発表した。  原発巣切除がde novo StageIV乳がんの生存期間を改善する可能性については、Tata Memorial Hospital、MF07-01試験、ABCSG28試験、ECOG2108試験といった前向き研究で検討されているが、いまだ議論の余地がある。JCOG1017試験では、de novo StageIV乳がんにおいて臨床的サブタイプに基づき、初期薬物療法後の原発巣切除の有無による予後を比較した。

切除不能肝細胞がんの1次治療、STRIDEレジメンでOS延長/AZ

 2023年4月4日(木)にアストラゼネカ株式会社主催のプレスセミナーが開催され、肝細胞がん治療における免疫チェックポイント阻害薬のさらなる可能性について、千葉大学大学院医学研究院消化器内科学 教授の加藤 直也氏が語った。加藤氏は、「肝細胞がんは肝予備能を維持し、悪化させないことが大切。デュルバルマブ(製品名:イミフィンジ)と2023年3月に薬価基準収載されたトレメリムマブ(製品名:イジュド)を併用するSTRIDEレジメンは肝臓に負担をかけにくく、理にかなっているのではないか」と述べた。外科的な治療が不可能なケースの多い肝細胞がんだが、薬物治療の新たな局面を迎え、長期生存率の向上が期待できそうだ。

NSCLC周術期のペムブロリズマブ、EFS改善が明らかに(KEYNOTE-671)/ASCO2023

 非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対するペムブロリズマブの術前・後補助療法の無イベント生存期間(EFS)の成績が明らかにされた。  米国・スタンフォード大学のHeather Waklee氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で発表した。KEYNOTE-671試験は、切除可能NSCLC患者を対象とした、無作為化二重盲検第III相試験。免疫ポイント阻害薬の術前・後補助療法において、同試験は、デュルバルマブのAEGEAN試験に続き、triplimabのNEOTORCH試験と共に有意な改善を示したことになる。

向精神薬の頓服使用が統合失調症入院患者の転帰に及ぼす影響

 統合失調症治療では、興奮、急性精神症状、不眠、不安などの症状に対し、一般的に頓服薬が用いられる。しかし、頓服薬使用を裏付ける質の高いエビデンスは不足しており、これら薬剤の使用は、臨床経験や習慣に基づいて行われている。北里大学の姜 善貴氏らは、向精神薬の頓服使用の実態および患者の転帰に対する影響を評価するため、本研究を行った。その結果、向精神薬の頓服使用は、統合失調症入院患者の入院期間の延長、抗精神病薬の多剤併用、再入院率の増加と関連しており、精神症状のコントロールには、大量の向精神薬の頓服使用を避け、ルーチン処方で安定を目指す必要があることを報告した。Clinical Psychopharmacology and Neuroscience誌2023年5月30日号の報告。

ホジキンリンパ腫初回治療、ニボルマブ+AVD療法がPFSを改善(SWOG S1826)/ASCO2023

 成人の古典的ホジキンリンパ腫の初回治療は、長らくABVD(ブレオマイシン+ドキソルビシン+ビンブラスチン+ダカルバジン)療法が標準治療であったが、2022年にA+AVD(ブレンツキシマブ ベドチン+ドキソルビシン+ビンブラスチン+ダカルバジン)療法がABVD療法と比較して全生存期間(OS)を延長したことが報告された。しかし、若い患者を中心に、長期間続く治療による毒性の問題が依然として残っている。

HER2+早期乳がん、化学療法なしのde-escalationで3年iDFS良好(PHERGain)/ASCO2023

 HER2+早期乳がん患者を対象とした第II相PHERGain試験において、化学療法を含まないトラスツズマブ+ペルツズマブ(PH)併用療法の3年無浸潤疾患生存(iDFS)率は、ドセタキセル+カルボプラチン+トラスツズマブ+ペルツズマブ(TCHP)併用療法と同等で、とくに18F-FDG PET/CT(以下「PET」)を指標とした反応例かつ病理学的完全奏効(pCR)例(一度も化学療法を行わない群)では98.8%と最も高かったことを、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で、スペイン・International Breast Cancer CenterのJavier Cortes氏が発表した。

局所進行直腸がん、術前FOLFOX単独は術前化学放射線療法に非劣性(PROSPECT)/ASCO2023

 局所進行直腸がんの標準治療は、術前の骨盤放射線照射とフッ化ピリミジン系抗がん剤による化学療法(化学放射線療法)である。PROSPECT(Alliance N1048)試験は、フルオロウラシル、ロイコボリン、オキサリプラチンを用いた術前化学療法(FOLFOX)が術前化学放射線療法の代わりに使用できるかを検討した第III相試験。本試験の結果を、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)のプレナリーセッションとして米国・メモリアルスローンケタリングがんセンターのDeborah Schrag氏が発表し、同日にNEJM誌に掲載された。

母親の認知症歴が子供の認知症リスクに影響

 両親の認知症歴は、子供の認知症リスクを上昇させるともいわれているが、その結果に一貫性は見られていない。韓国・Sungkyunkwan University School of MedicineのDae Jong Oh氏らは、両親の認知症歴と子供の認知症リスクに関して、認知症サブタイプおよび性別の影響を調査するため、本検討を行った。その結果、母親の認知症歴は、男女ともに子供の認知症およびアルツハイマー病(AD)リスクとの関連が認められた。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2023年5月10日号の報告。  8ヵ国、9件の人口ベースコホート研究より抽出された高齢者1万7,194人のデータを用いて、横断的研究を実施した。対象研究では、認知症の診断のため、対面診断、身体検査、神経学的検査、神経心理学的評価が実施された。父親および母親の認知症歴と子供の認知症、認知症サブタイプのリスクとの関連を評価した。