医療一般|page:159

自閉スペクトラム症から総合失調症への進展

 これまでの研究では、自閉スペクトラム症(ASD)の小児は、その後の人生において統合失調症の発症リスクが高いことが示唆されている。台湾・高雄栄民総医院のTien-Wei Hsu氏らは、ASDにおける診断の安定性および統合失調症への進展に対する潜在的な予測因子について調査を行った。その結果、統合失調症と診断されたASD患者の3分の2以上が、ASD診断から最初の3年間で進展しており、人口統計学的特徴、身体的および精神的な併存疾患、精神疾患の家族歴が、進展の重要な予測因子であることが示唆された。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2022年9月3日号の報告。  対象は、2001~10年にASDと診断された青年(10~19歳)および若年成人(20~29歳)の患者1万1,170例。統合失調症の新規診断患者を特定するため、2011年末までフォローアップ調査を実施した。統合失調症への進展およびその予測因子を推定するため、時間のスケールとして年齢を用いたカプランマイヤー法およびCox回帰を用いた。

RAS/BRAF野生型大腸がん、FOLFIRI+セツキシマブ後のセツキシマブ単剤維持療法は継続投与に非劣性を示せず(ERMES)/ESMO2022

 RAS/BRAF野生型大腸がんの1次治療において、FOLFIRIと抗EGFR抗体薬セツキシマブを投与し、その後に毒性軽減のためにセツキシマブを単剤投与する維持療法は、継続投与に対して非劣性を示すことができなかったという。この第III相ERMES試験の結果を、イタリア・Fondazione Policlinico UniversitarioのArmando Orlandi氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2022)で報告した。

TILsを有するTN乳がんへの術前ニボルマブ±イピリムマブ、高い免疫活性示す(BELLINI)/ESMO2022

 術前化学療法への免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の追加による、早期トリプルネガティブ(TN)乳がん患者の転帰改善が報告されているが、どのような患者にICIが有効なのか、そしてどのような患者で術前化学療法のde-escalationが可能なのかは分かっていない。また早期TN乳がんでは、抗PD-1抗体への抗CTLA-4抗体の追加は検討されていない。オランダ・Netherlands Cancer InstituteのMarleen Kok氏らは、ニボルマブ±低用量イピリムマブの投与が、TILsを有するTN乳がんにおいて免疫応答を誘発するという仮説の検証を目的として、第II相非無作為化バスケット試験(BELLINI試験)を実施。その最初の結果を欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2022)で発表した。

睡眠の質と片頭痛との関係

 睡眠状態と片頭痛は密接に関連しているといわれている。しかし、睡眠の質と片頭痛発症リスクとの関連をシステマティックに評価した研究はほとんどなく、性差や年齢差についてもよくわかっていない。中国・北京中医薬大学のShaojie Duan氏らは、睡眠の質と片頭痛発症リスクとの関連およびその性差や年齢差について調査を行った。また、睡眠の質と片頭痛患者の苦痛、重症度、身体障害、頭痛への影響、QOL、不安、抑うつ症状との関連も併せて調査した。その結果、睡眠の質の低下は、片頭痛発症リスクや片頭痛関連の苦痛と有意かつ独立して関連していることが明らかとなった。著者らは、睡眠の質の評価をより充実させることで、片頭痛患者の早期予防や治療に役立つであろうとまとめている。Frontiers in Neurology誌2022年8月26日号の報告。  対象は、片頭痛患者134例および年齢・性別がマッチした健康対照者70例。睡眠の質の評価には、ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)を用いた。睡眠の質と片頭痛発症リスク、頭痛関連の苦痛との関連を評価するため、ロジスティック回帰分析および線形回帰分析を行った。  主な結果は以下のとおり。

20歳未満のコロナ死亡例、基礎疾患やワクチン接種状況は?/国立感染症研究所

 国立感染症研究所は9月14日、新型コロナウイルス感染後の20歳未満の死亡例に関する積極的疫学調査(第一報)の結果を発表した。オミクロン株の感染拡大に伴い、小児の感染者数が増加し、重症例や死亡例発生も報告されている。厚生労働省および同研究所は、日本小児科学会、日本集中治療医学会、日本救急医学会とともに、急性期以降の死亡例も含めて、積極的疫学調査を実施した。その結果、基礎疾患の有無がほぼ同数であり、ワクチン接種対象年齢でも87%が未接種で、発症から死亡まで1週間未満が73%(中央値4日)を占めていることなどが明らかになった。  本結果は、2022年1月1日~8月31日に報告された小児等の死亡例に関する暫定的な報告となる。調査対象となったのは、急性期の死亡例、加えて、死因を新型コロナとは別原因とした症例で、発症からの日数は問わないとする急性期以降に死亡した症例の計41例。そのうち32例について8月31日までに実地調査を行うことができ、明らかな内因性死亡と考えられたのは29例であった。調査項目は、年齢、性別、基礎疾患、新型コロナワクチン接種歴、発症日、死亡日、症状/所見、死亡に至る経緯等となっている。小児の死亡例は、2022年1月から継続的に発生し、疫学週28週目(7月11~17日)から増加していた。

オシメルチニブのEGFR陽性NSCLCアジュバント、3.6年で5.5年の無再発生存(ADAURA)/ESMO2022

 完全切除EGFR変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)に対する、第3世代EGFR-TKIオシメルチニブの術後補助療法の有効性と安全性を評価する第III相無作為化二重盲検比較試験ADAURAの第2回解析が発表され、オシメルチニブの有効性が持続していることが明らかになった。  ADAURAの初回解析における、術後オシメルチニブ±補助化学療法はプラセボと比較して統計学的に有意かつ臨床的に意味のある無病生存期間(DFS)の利益を示した。

5~11歳への3回目接種を追加、新型コロナ予防接種の手引き9版/厚労省

 厚生労働省は、9月6日に全国の市町村に「新型コロナウイルス感染症に係る予防接種の実施に関する手引き(9版)」を発出するとともに、同省のホームページでも公開した。本手引きは2020年12月17日の初版以来、十数回の更新を行い、その時どきの臨床知見、行政施策を反映した内容に改訂されている。 【第2章 5(新型コロナワクチンの概要)、第7章(ワクチン各論)】 ワクチンの有効期限について事務連絡の日付・名称を更新 【第4章 3(13)(接種を受ける努力義務等の取扱い)】 接種を受ける努力義務などの取扱いについて更新

HER2低発現のHR+転移乳がんに対するSGの有効性(TROPiCS-02)/ESMO2022

 複数の治療歴があるHR+/HER2-転移乳がん患者に対する抗体薬物複合体sacituzumab govitecan(SG)の有用性を評価する第III相TROPiCS-02試験で、SGが医師選択治療(TPC)より無増悪生存期間(PFS)を改善したことがASCO2022で報告されている。今回、本試験の事後解析として、HER2低発現(IHC1+、またはIHC2+かつISH陰性)患者とHER2 IHC0患者に分けて評価した結果について、ドイツ・Heidelberg UniversityのFrederik Marme氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2022)で発表した。

摂食障害患者における境界性パーソナリティ障害症状

 オーストラリア・St Vincent's HospitalのPrudence Vivarini氏らは、摂食障害(ED)外来患者における境界性パーソナリティ障害(BPD)症状の有症率を調査し、BPD症状とその重症度、苦痛、機能との関連を評価した。その結果、ED外来患者はBPD症状の有症率が高いことが示唆され、著者らはED患者に対するBPDスクリーニングの必要性を報告した。Personality and Mental Health誌オンライン版2022年8月29日号の報告。  対象は、ED外来患者119例。境界性パーソナリティ障害のMcLeanスクリーニング尺度(MSI-BPD)を用い(カットオフ値:7)、BPD症状が高い群(高BPD群)と低い群(低BPD群)に分類した。ED診断、ED発症年齢、評価時の年齢、罹病期間、BMI、ED症状、心理的苦痛、心理社会的機能について両群間で比較した。BPD症状とこれら変数との関係を評価するため、相関分析を行った。

認知症と肥満・糖尿病

 米国では、肥満、糖尿病、認知症などの慢性疾患が増加している。これら慢性疾患の予防や適切なマネジメント戦術に関する知見は、疾患予防のうえで重大かつ緊要である。米国・テキサス工科大学のAshley Selman氏らは、認知症と肥満および糖尿病との関連についての理解を深めるため、それぞれの役割を解説し、新たな治療法についての情報を紹介した。International Journal of Molecular Sciences誌2022年8月17日号の報告。  主な内容は以下のとおり。 ・肥満、糖尿病、認知症の相互関係は、さらに解明されつつある。 ・肥満、糖尿病、認知症の発症に関連する炎症状態の一因として、加齢、性別、遺伝的要因、後天的要因、うつ病、高脂質の西洋型食生活が挙げられる。 ・この炎症状態は、食物摂取の調節不全およびインスリン抵抗性につながる可能性がある。 ・肥満は糖尿病発症につながる基礎疾患であり、後に、2型糖尿病(type 2 diabetes mellitus:T2DM)の場合には“3型(type 3 diabetes mellitus:T3DM)”すなわちアルツハイマー病へ進行する可能性がある。

HR+/HER2+進行乳がんへのアベマシクリブ+トラスツズマブ+フルベストラント、OS最終結果(monarcHER)/ESMO2022

 ホルモン受容体(HR)陽性/HER2陽性(HR+/HER2+)の進行乳がんに対する、アベマシクリブ+トラスツズマブ+フルベストラントの3剤併用療法が、トラスツズマブ+化学療法と比較して数値的に全生存期間(OS)を改善した。フランス・Gustave RoussyのFabrice Andre氏が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2022)で第II相monarcHER試験の最終解析結果を発表した。  同試験については、すでに主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)を3剤併用群で有意に改善したことが報告されている1)。 ・対象:HR+/HER2+進行乳がんで、抗HER2療法を2ライン以上受けており(T-DM1とタキサン系抗がん剤の治療歴は必須)、さらにCDK4/6阻害薬とフルベストラントは未投与である患者237例 ・試験群:アベマシクリブ+トラスツズマブ+フルベストラント(ATF群)またはアベマシクリブ+トラスツズマブ(AT群) ・対照群:トラスツズマブ+主治医選択の化学療法(TC群)

低BMIの蛋白尿リスクに“朝食抜き”が影響

 蛋白尿は心血管疾患と死亡率の重要な予測因子であり、いくつかの研究では、朝食を抜くことと蛋白尿の有病率との関連性が報告1)されている。また、朝食を抜くと肥満のリスクが高まることも明らかになっている。そこで、村津 淳氏(りんくう総合医療センター腎臓内科)らは蛋白尿が肥満の人でよく見られることに着目し、朝食を抜くことによる蛋白尿の有病率とBMIとの関連について調査を行った。その結果、蛋白尿は低BMIと関連性が見られ、低BMIの人の場合には、朝食を抜くことに注意する必要があることが示唆された。本研究結果はFront Endocrinol誌8月19日号に掲載された。 . 本研究者らは、正常な腎機能者における朝食抜きと蛋白尿の有病率との関連に対するBMIの臨床的影響を評価することを目的に、2008年4月~2018年12月までの期間に市中病院で健康診断を受け、腎疾患の既往がなく、推定糸球体濾過量(eGFR)が60mL/min/1.73m2 以上であった2万6,888例 (男性:1万5,875例、女性:1万1,013例) を対象に横断研究を実施した。

BA.2.75「ケンタウロス」に対するコロナ治療薬の効果を比較/NEJM

 2022年6月よりインドを中心に感染拡大したオミクロン株BA.2.75(別名:ケンタウロス)は、日本を含め、米国、シンガポール、カナダ、英国、オーストラリアなど、少なくとも25ヵ国で確認されている。河岡 義裕氏、高下 恵美氏らによる東京大学、国立感染症研究所、国立国際医療研究センターが共同で行った研究において、BA.2.75に対し、4種類の抗体薬と3種類の抗ウイルス薬についてin vitroでの有効性を検証したところ、一部の抗体薬とすべての抗ウイルス薬が有効性を維持していることが示された。本結果は、NEJM誌オンライン版2022年9月7日号のCORRESPONDENCEに掲載された。

ファイザーとモデルナのBA.1対応追加接種用2価ワクチンを承認/厚生労働省

 厚生労働省は9月12日、ファイザーおよびモデルナのオミクロン株BA.1に対応した新型コロナウイルス2価ワクチンを承認(特例承認医薬品における効能・効果、用法・用量の一部変更承認)したことを発表した。2価ワクチンの販売名は、ファイザーが「コミナティRTU筋注(2価:起源株/オミクロン株BA.1)」、モデルナが「スパイクバックス筋注(2価:起源株/オミクロン株BA.1)」となる。両ワクチンともに追加接種用で、ファイザー製は12歳以上、モデルナ製は18歳以上が対象となる。

統合失調症や双極性障害の興奮症状に対するデクスメデトミジン舌下投与の有用性

 米国・ニューヨーク医科大学のLeslie Citrome氏らは、統合失調症または双極性障害に関連する興奮症状を伴う成人患者において、デクスメデトミジンの臨床的有効性および忍容性を評価するため、治療必要数(NNT)、有害必要数(NNH)、likelihood to be helped or harmed(LHH)を用いた評価を行った。その結果、統合失調症または双極性障害に関連する急性興奮症状に対し、デクスメデトミジン舌下投与は良好なベネフィット-リスクプロファイルを有する治療であることが確認された。Advances in Therapy誌オンライン版2022年8月24日号の報告。

抗体薬物複合体SG、HR+/HER2-転移乳がんのOSを改善(TROPiCS-02)/ESMO2022

 複数の治療歴があるHR+/HER2-転移乳がん患者に対して、抗体薬物複合体sacituzumab govitecan(SG)と医師選択治療(TPC)を比較した第III相TROPiCS-02試験において、SGが無増悪生存期間(PFS)を有意に改善(HR:0.66、95%CI:0.53~0.83)したことはASCO2022で報告されている。今回、事前に予定されていた全生存期間(OS)の第2回中間解析の結果について、米国・UCSF Helen Diller Family Comprehensive Cancer CenterのHope S. Rugo氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2022)で報告した。  本試験におけるOSの第1回中間解析(293イベント発生時点)では、SGによる改善傾向がみられたもののデータがmatureしていなかった。今回発表された第2回中間解析(データカットオフ:2022年7月1日)は、390イベントの発生後に行われ、追跡期間中央値は12.5ヵ月だった。

小児のコロナ後遺症は成人と異なる特徴~約66万人の解析

 小児における新型コロナウイルス感染症の罹患後症状には、成人とは異なる特徴があることを、米国・コロラド大学医学部/コロラド小児病院のSuchitra Rao氏らが明らかにした。同氏らは、新型コロナウイルスの感染から1~6ヵ月時点の症状・全身病態・投与された薬剤を調べ、罹患後症状の発生率を明らかにするとともに、リスク因子の特定を目的に、抗原検査またはPCR検査を受けた約66万人の小児を抽出して後ろ向きコホート研究を行った。

BA.1/2既感染者はBA.5の防御効果が高い?/NEJM

 国内の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の第7波の主流となったオミクロン株BA.5については、従来株の感染既往があっても免疫逃避して再感染しやすいと認識されていた。しかし、早期にBA.5が優勢になった国の1つであるポルトガルにおいて、従来株の感染既往がある人におけるBA.5感染リスクを調査したところ、BA.1/BA.2の感染既往がある人は、ほかの変異株の感染既往よりも、BA.5に対する高い防御効果を有しているということが判明した。本結果は、ポルトガル・Instituto de Medicina Molecular Joao Lobo AntunesのJoao Malato氏らが、NEJM誌2022年9月8日号のCORRESPONDENCEで報告した。  本研究では、1,034万4,802人が登録されている全国コロナウイルスレジストリSINAVEのデータが用いられ、2022年7月4日時点の12歳以上の930万7,996人が対象となっている。このレジストリには、臨床症状を問わず、ポルトガル国内で報告されたすべての症例が記録されている。遺伝子検査により各変異株が90%以上を占める期間を特定し、優勢期として設定した。BA.1とBA.2は流行の移行が緩やかだったため優勢期が統合された。各優勢期に初めて新型コロナに感染した人を特定し、各変異株の感染既往群および未感染群のBA.5に対する感染リスクを算出した。ポルトガルでは2022年6月1日よりBA.5の優勢期となっている。なお、2022年以前に被験者の98%以上が新型コロナワクチンの初回シリーズを接種完了しているため、感染者はブレークスルー感染と見なされる。

アトピー性皮膚炎、JAK阻害薬はVTE発生と関連するか?

 アトピー性皮膚炎(AD)患者、とくにJAK阻害薬による治療を受ける患者は、静脈血栓塞栓症(VTE)のリスクが高くなるなのか。これまで明らかになっていなかったこの懸念について、台湾・台北栄民総医院のTai-Li Chen氏らがシステマティック・レビューとメタ解析を行い、現状で入手可能なエビデンスで、ADあるいはJAK阻害薬とVTEリスク増大の関連を示すものはないことを明らかにした。著者は、「今回の解析結果は、臨床医がAD患者にJAK阻害薬を処方する際の参考となるだろう」としている。JAMA Dermatology誌オンライン版2022年8月24日号掲載の報告。  研究グループは、ADとVTE発生の関連を調べ、JAK阻害薬治療を受けるAD患者におけるVTE発生リスクを評価した。

乳がん周術期に新しい選択肢/リムパーザ錠適応追加

 2022年9月5日、アストラゼネカは、都内にて「早期乳がん治療におけるリムパーザの役割」をテーマにメディアセミナーを開催した。  リムパーザはBRCA1および/またはBRCA2遺伝子の変異などの相同組換え修復(HRR)の欠損を有する腫瘍細胞において、PARPを阻害し、DNAの修復を阻止することでがん細胞死を誘導する。  日本では2018年1月に「白金系抗悪性腫瘍剤感受性の再発卵巣癌における維持療法」を効能・効果として承認され、同年7月に「がん化学療法歴のあるBRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳癌」を適応として乳がん治療での使用が承認された。