医療一般|page:28

植物性肉は動物の肉よりも心臓に良い

 植物性食品由来の肉(植物性肉)は、超加工食品であるにもかかわらず、動物の肉よりも心臓の健康に良いのではないかとする、ブリティッシュコロンビア大学(カナダ)のEhud Ur氏らのレビュー論文が、「Canadian Journal of Cardiology」に6月25日掲載された。動物の肉を植物性肉に置き換えると、血清脂質や体重といった心臓病の危険因子の多くが改善することが報告されているという。論文の上席著者であるUr氏はNBCニュースの取材に対して、「植物性肉は健康的な代替品であり、心血管疾患のリスク因子の明らかな低下に関連している」と述べている。

定年退職前後の高強度トレーニングで老後も活動的に

 定年退職が視野に入ってきたら、高強度の筋力トレーニングをしておくと良いかもしれない。それにより、身体的に自立した生活にとって重要な下肢の筋力が、退職後にも長期間維持されるという。ウメオ大学(スウェーデン)のCarl-Johan Boraxbekk氏らの研究の結果であり、詳細は「BMJ Open Sport & Exercise Medicine」に6月18日掲載された。  筋力トレーニングによって、加齢による筋肉量や筋力の低下が抑制される。ただし筋力トレーニングを一定期間継続した後に、その効果がどれだけ長く維持されるのかという点はよく分かっていない。Boraxbekk氏らはこの点を検証するために、無作為化比較試験を実施した。

メトホルミンで先天異常のリスクは上昇しない

 経口血糖降下薬のメトホルミンの催奇形性を否定する論文が2報、「Annals of Internal Medicine」に6月18日掲載された。両論文ともに米ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院の研究者による報告で、妊娠成立前に男性が同薬を服用した場合、および、妊娠初期の女性が同薬を服用していた場合のいずれも、有意なリスク上昇は観察されなかったという。   最初の報告はRan Rotem氏らの研究によるもの。同氏は、「胎児や新生児の健康に関する研究では従来、母親の状態が重視されてきた。しかし近年は父親の状態の重要性に関する理解が深まってきている」と、CNNの取材に対して語っている。その一例として、妊娠成立前の3カ月間に男性がメトホルミンなどの経口血糖降下薬を服用していた場合に、先天異常のリスクが40%増加するという研究結果が2022年に報告されているという。しかし今回のRotem氏らのデータは、その報告と矛盾するものだ。同氏は、「過去の研究で観察されたリスク上昇は、薬剤ではなく高血糖そのもの、または併発疾患に関連して生じていた可能性がある」と指摘している。

もし過去に戻れたらどの診療科を選ぶ?後輩には勧める?/医師1,000人アンケート

 厚生労働省が2024年3月19日に公表した「医師・歯科医師・薬剤師統計」の最新結果では、全国の医師数は34万3,275人で、前回調査(2020年)と比べて1.1%増加した。本調査では、前回調査時と比べて美容外科、アレルギー科、産科、形成外科などの診療科で医師数の増加がみられた。一方、気管食道外科、小児外科、外科、心療内科、耳鼻咽喉科などの診療科では医師数の減少がみられた(詳細は関連記事参照)。この結果には、ワークライフバランスや年収、やりがい、キャリアなどを含めた診療科への満足度が影響している可能性も考えられる。

日本のプライマリケアにおける不眠症の治療戦略の実態

 オレキシン受容体拮抗薬やメラトニン受容体作動薬などの新規睡眠薬の導入後、プライマリケア医による不眠症治療実態は、明らかとなっていない。秋田大学の竹島 正浩氏らは、日本のプライマリケア診療における不眠症の治療戦略を調査するため、Webベースのアンケート調査を実施した。BMC Primary Care誌2024年6月18日号の報告。  対象は、プライマリケア医117人。不眠症の各マネジメントオプションの精通度を2段階(精通していない:0、精通している:1)で評価し、不眠症のマネジメント法を9段階リッカート尺度(処方/実施したことがない:1、頻繁に処方/実施している:9)を用いて調査した。マネジメントオプションに精通していないと回答した医師は、処方/実施したことがないとみなした。

VEXAS症候群、83%に皮膚病変

 VEXAS(Vacuoles, E1 enzyme, X-linked, Autoinflammatory, Somatic)症候群は、近年定義された後天性自己炎症性疾患で、主に50歳以上の男性に発症する。全身性の炎症症状、進行性骨髄不全症、炎症性皮膚症状がみられるのが特徴である。米国・ラトガース大学のIsabella J. Tan氏らは、観察コホート研究においてVEXAS症候群では皮膚症状が一般的かつ早期からみられる症状であることを明らかにした。そのうえで「皮膚血管炎、好中球性皮膚症、または軟骨炎を患う高齢の男性患者では、VEXAS症候群についての遺伝的評価を検討する必要がある。早期診断を促進するために、皮膚科医の間でVEXAS症候群の認識を高めることが重要である」と述べている。JAMA Dermatology誌オンライン版2024年6月12日号掲載の報告。

スマホのツールによる顔のスキャンで脳卒中を検出

 救急隊員がスマートフォン(以下、スマホ)のツールを使って患者の顔をスキャンすることで、数秒以内に脳卒中の有無を判定できる可能性のあることが、RMIT大学(オーストラリア)のGuilherme Camargo de Oliveira氏らの研究で示された。人工知能(AI)で駆動するこのツールは、顔の対称性と特定の筋肉の動きを分析し、脳卒中のわずかな兆候を検出することができるという。研究の詳細は、「Computer Methods and Programs in Biomedicine」6月号に掲載された。  脳卒中は、動脈の閉塞により脳への血流が止まったり、血管が破裂して脳内で出血したりすることで発症する。脳卒中の症状には、錯乱、身体の一部または全身の運動コントロールの喪失、言語障害、表情の消失などがある。

自然の中での運動は屋内での運動よりも有益

 公園での散歩や小道を自転車で走るなどの自然の中で行う運動は、室内で行う運動よりも有益である可能性が、新たなレビューで示唆された。ただし、公共の自然エリアへのアクセスは地域により異なり、全ての人が屋外で運動できるわけではないと研究グループは指摘している。米テキサスA&M大学健康・自然センターのJay Maddock氏とHoward Frumkin氏によるこの研究の詳細は、「American Journal of Lifestyle Medicine」に5月11日掲載された。  Maddock氏らは本研究の背景説明の中で、現在、米国成人の4人に3人以上が推奨されている1週間の運動量を確保できていないと述べている。同氏らは、このような運動は、心臓病、糖尿病、一部のがん、骨粗鬆症などの慢性的な健康問題の予防に役立つ上に、免疫機能を高め、気分を改善し、痛みのコントロールを助け、寿命の延長にもつながると説明している。

動物実験の成果、ヒトへの応用は20件に1件

 動物実験はしばしば、ヒトの病気に対する治療法を開発するための最初のステップと考えられている。しかし122本の論文を対象にしたレビューから、動物実験の結果が実用化された治療法はわずか5%に過ぎないことが明らかになった。チューリッヒ大学(スイス)の神経学者であるBenjamin Ineichen氏らによるこの研究の詳細は、「PLOS Biology」に6月13日掲載された。Ineichen氏らは、「動物実験の結果と初期の臨床試験の結果の一貫性は高いものの、規制当局の承認を得た治療法はわずかだった」と述べている。  治療法の開発に関する研究では、動物実験とヒトを対象にした初期試験を経た上で、ランダム化比較試験(RCT)によりその治療法の有効性と安全性を確かめるのが通常のステップだ。RCTで望み通りの結果が得られた際には、その結果を規制当局に提出して承認を求める。

HER2+乳がん脳転移例へのT-DXd、PFSとOS(TUXEDO-1最終解析)

 活動性脳転移を有するHER2+乳がん患者に対するトラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)の効果を検討した第II相TUXEDO-1試験において、主要評価項目の頭蓋内奏効率は73.3%と高かったことが報告されている。今回、本試験における無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)の最終解析の結果をオーストリア・ウイーン医科大学のRupert Bartsch氏らが報告した。Neuro-Oncology誌オンライン版2024年6月4日号に掲載。  本試験は、2020年7月~2021年7月にトラスツズマブまたはペルツズマブの投与歴のあるHER2+乳がんで新たに診断または進行した活動性脳転移を有する15例(女性14例、男性1例)に対して、T-DXdを3週ごとに投与した。主要評価項目は頭蓋内奏効率、副次評価項目はPFS、OS、安全性、QOL、神経認知機能であった。

中高年の果物や野菜の摂取とうつ病発症リスク

 新たな観察研究の報告により、うつ病発症予防に果物や野菜の摂取が重要な役割を果たすことが示唆されている。しかし、高齢者や低中所得国(LMIC)に関する研究は不足している。オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のAnnabel P. Matison氏らは、果物や野菜の摂取とうつ病リスクとの関連を明らかにするため、LMICを含むさまざまなコホート研究を分析し、その結果のメタ解析を実施した。Journal of Affective Disorders誌2024年8月15日号の報告。  対象は、LMICでの4件のコホートを含む10件のコホートより抽出した非うつ病成人地域住民7,801例(平均年齢:68.6±8.0歳、女性の割合:55.8%)。果物と野菜の摂取量は、包括的な食品摂取頻度質問票、食品質問票短縮版、食事歴などにより自己申告で収集した。抑うつ症状の評価およびうつ病の定義には、検証済みの尺度およびカットオフ値を用いた。ベースライン時における果物や野菜の摂取量とフローアップ期間中(3〜9年)のうつ病発症との関連性を評価するため、Cox回帰を用いた。分析は、コホートごとに実施し、結果をメタ解析した。

糖尿病患者の認知症リスク低減、GLP-1RA vs.DPP-4i vs.SU薬

 65歳以上の2型糖尿病患者9万例弱を最長10年間追跡した結果、GLP-1受容体作動薬を服用する患者では、スルホニル尿素(SU)薬やDPP-4阻害薬を服用する患者よりも認知症の発症リスクが低かったことが、スウェーデン・Karolinska InstitutetのBowen Tang氏らによって明らかになった。eClinicalMedicine誌オンライン版2024年6月20日号掲載の報告。  これまでの研究により、2型糖尿病患者は認知症の発症リスクが高いことが報告されている。一部の血糖降下薬は、プラセボまたはほかの血糖降下薬との比較において、2型糖尿病患者の認知障害および認知症のリスクを低減させる可能性が示唆されているが、相反する報告もあり、さらなる研究が求められていた。そこで研究グループは、糖尿病を有する高齢者の認知症リスクに対する3つの薬剤クラス(GLP-1受容体作動薬、DPP-4阻害薬、SU薬)の影響を比較するため、スウェーデンの全国登録から取得したリアルワールドデータを用いて、2010年1月1日~2020年6月30日に臨床試験を模した逐次試験エミュレーション(sequential trial emulation)を実施した。

臨床現場で感じる甲状腺眼症診療の課題とは?/アムジェン

 アムジェンは、2024年6月20日に、甲状腺眼症の診療を取り巻く現状や課題をテーマとしたメディアセミナーを開催した。同セミナーでは、渡邊 奈津子氏(伊藤病院 内科部長)が甲状腺眼症の診断や治療について、神前 あい氏(オリンピア眼科病院 副院長)が甲状腺眼症の臨床経過についてそれぞれ語った。  甲状腺眼症はバセドウ病やまれに橋本病に伴ってみられる眼窩組織の自己免疫性炎症性疾患であり、多岐にわたる眼症状を引き起こす。甲状腺は、甲状腺ホルモンを合成・分泌する役割を担っており、正常な状態では下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)が甲状腺のTSH受容体と結び付き、適量のホルモンが分泌される。しかし、バセドウ病では、TSH受容体に対する抗体が生成され、常にTSH受容体が刺激されて過剰なホルモンが分泌される。甲状腺眼症は、目の周囲の眼窩におけるTSH受容体が刺激されることで発症する。甲状腺眼症の病態は非常に広範であり、瞼、角膜、結膜、外眼筋、視神経、脂肪組織、涙腺など、さまざまな部位に影響を及ぼす。たとえば、涙腺の炎症によって涙が出にくくなったり、脂肪組織や外眼筋の肥大により眼球が飛び出したりするケースがある。最重症例では、視神経が圧迫されて視力障害や視神経萎縮が起こることもある。一方で、眼の症状については見落とされることがしばしばあり、臨床で問題となることもあるという。

天候や天気の変化で身体の不調を感じる人は6割超/アイスタット

 梅雨の時期や台風、季節の変わり目では、気圧や天気の変化により頭痛や関節痛など身体に不調を起こす「気象病(天気痛)」が知られ、次第に市民権を得つつある。最近では天気予報でも気圧予報がレポートされ、身近なものとなっている。  こうした気象病の実態と日常生活での関連を調査するためにアイスタットは、「気象病(天気痛)に関するアンケート」を6月に行った。

感情認識・表現療法はCBTよりも慢性疼痛の軽減に効果的

 高齢者の慢性疼痛に対する治療法として、新しいタイプの心理療法が現行の標準的な治療法である認知行動療法(CBT)よりも効果的な可能性のあることが、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)医学部精神医学・生物行動科学のBrandon Yarns氏らが実施したランダム化比較試験(RCT)で示された。米国の退役軍人を対象とした同試験では、CBTを受けた人と比べて感情認識・表現療法(EAET)と呼ばれる治療を受けた人では慢性疼痛が有意に軽減し、軽減効果がより長期にわたって持続したという。詳細は、「JAMA Network Open」に6月13日掲載された。

分散型治験スタート、説明・同意もオンラインで/アムジェン・MICIN・聖マリアンナ医大

 オンライン診療等を手掛けるMICINとアムジェン、聖マリアンナ医科大学病院は、分散型臨床試験(DCT)で協業している。6月、MICINが提供するDCTプラットフォーム「MiROHA(ミロハ)」の「eConsent」(オンライン同意システム機能)を使用し、初めて遠隔で患者への治験の説明を行い、参加同意を得たことを発表した。  がんの治験は、実施する医療機関ががんセンターや大学病院など中核病院に限られ、通院の負担から遠方の患者が参加できない、という問題があった。今回「MiROHA」を使用するのは、アムジェンが実施する未治療の進行がんに対する企業治験。発現頻度が低いバイオマーカーを対象としているため対象患者の絶対数が少なく、スクリーニングでの脱落率も高いことが予想されるため、広いエリアから患者を集める必要がある。DCTシステムで治験実施医療機関と関連病院をつなぎ、遠隔でインフォームド・コンセントを実施。患者は治験実施医療機関を直接受診することなく、紹介元の病院にいながら治験の説明を受け、参加同意までオンラインで行うことができるようになった。

未治療統合失調症患者におけるメタボリックシンドローム有病率と関連因子

 メタボリックシンドローム(MetS)は、心血管疾患特有のいくつかのリスク因子を含む疾患であり、統合失調症患者では頻繁に発症する。中国・Wuhan Mental Health CenterのSuoya Hu氏らは、抗精神病薬未使用の統合失調症患者におけるMetSの発症と重症度に影響を及ぼす因子を明らかにするため、本研究を実施した。Early Intervention in Psychiatry誌オンライン版2024年5月22日号の報告。  対象は、2017年2月〜2022年6月に中国中部最大の精神科専門施設に入院した抗精神病薬未使用の18〜49歳の統合失調症患者668例。対象患者の社会人口統計学的および一般臨床データを収集した。精神病理スコアおよび重症度の評価には、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)および臨床全般印象度の改善度(CGI-I)をそれぞれ用いた。MetSスコアは、重症度を判断するため算出した。

夏場は注意!紫外線だけでなく、高温・熱中症も白内障リスクに

 今夏も高温の日が続くことが予想されている。紫外線が眼病リスクを高めるという報告はこれまでも多くされてきたが、紫外線だけでなく、環境温度や熱中症の既往も白内障リスクを高める可能性があるという。2024年6月にジョンソン・エンド・ジョンソンが行ったプレスセミナーにおいて、金沢医科大学 眼科学講座 主任教授 佐々木 洋氏が「紫外線と高温環境が目に与える影響と対策」と題した講演を行い、これまで佐々木氏らの研究グループが行った調査データをまとめて報告した。

肺の中を泳ぐマイクロロボットが抗がん薬を効率的に投与

 肺の中を泳いで進み、抗がん薬をがん細胞に直接投与できる、極めて微小なロボット(マイクロロボット)の開発に関する研究成果が報告された。肺転移のあるメラノーマのマウスを用いた初期の試験で、このマイクロロボットによる治療によりマウスの平均生存期間が延長することを確認できたという。米カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)化学・ナノ工学教授のLiangfang Zhang氏らによるこの研究結果は、「Science Advances」に6月12日掲載された。Zhang氏は、「マイクロロボットは、命に関わるさまざまな肺の病気と闘うために、肺組織全体に治療薬を積極的かつ効率的に送達できるプラットフォーム技術だ」と話している。

座位時間を減らすことが健康的な老化につながる

 テレビは、ついだらだらと見てしまうものだが、健康的な老化のためにはソファーに座っている時間は短い方が良いことを明らかにした研究結果がまた1件報告された。米ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院疫学分野のMolin Wang氏らによる研究で、詳細は「JAMA Network Open」に6月11日掲載された。  この研究は、Nurses' Health Studyに参加した4万5,176人の女性の20年間の追跡データを用いて、座位行動および低強度の運動(light-intensity physical activity;LPA)と健康的な老化との関連を調査したものである。全参加者が1992年時点で50歳以上であり(平均年齢59.2歳)、慢性疾患は持っていなかった。座位行動の指標として、座位でテレビを見ている時間、座位で仕事をしている時間、その他の家庭での座位時間、LPAの指標として、家庭(LPA-HOME)と仕事(LPA-WORK)でそれぞれ立ったり歩いたりして過ごす時間を調べた。健康的な老化とは、主要な慢性疾患に罹患しておらず、主観的認知機能・身体機能・メンタルヘルス障害がない状態で70歳以上に達している場合と定義された。