医療一般|page:11

コーヒーは動脈硬化に影響するか

 習慣的なコーヒー摂取によって心臓足首血管指数(CAVI)には変化がなく、動脈硬化に影響を及ぼさないことが、イタリア・University Milano-BicoccaのRaffaella Dell’Oro氏らの研究で示唆された。この結果は習慣的にコーヒーを摂取しても血圧に有意な影響がないことを支持するかもしれない。American Journal of Hypertension誌2024年10月号に掲載。  本研究は、PAMELA研究の第3回フォローアップで募集された514人(平均年齢±SD:66.6±9.9歳)を対象に、習慣的なコーヒーの1日摂取量によって3群(0、1~2、3杯/日以上)に分け、CAVI、診療所血圧、自由行動下血圧などを測定した。

腎臓結石の残存破片の排出には超音波が有効

 腎臓結石は外科的に除去しても半数の患者で小さな破片が腎臓に残ってしまう。こうした患者の約25%では、5年以内に、大きくなった破片を除去する再手術が必要になる。しかし、このような残存破片に対しては、超音波により結石を移動させて体内から排出できる可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。このような超音波を用いた処置を受けた患者での再発リスクは、受けなかった患者よりも70%低いことが示されたという。米ワシントン大学医学部の泌尿器科医であるJonathan Harper氏らによるこの研究の詳細は、「The Journal of Urology」に8月14日掲載された。

体内での金属の蓄積は心血管疾患の悪化をもたらす?

 カドミウムやウラン、コバルトなどの環境中に存在する金属が、人間の体内に蓄積して心血管疾患を悪化させる可能性のあることが、米コロンビア大学のKatlyn McGraw氏らの研究で示唆された。研究参加者から採取された尿検体に含まれるさまざまな金属の濃度上昇に伴い、心血管疾患の重要な要素である硬く石灰化した動脈の指標も上昇することが判明したという。研究結果は、「Journal of the American College of Cardiology」に9月18日掲載された。  McGraw氏は同大学のニュースリリースの中で、「本研究結果から、金属への曝露をアテローム性動脈硬化症と心血管疾患の重要なリスク因子として考慮することの重要性が明らかになった。これが、金属曝露をターゲットにした新たな予防戦略や治療戦略につながる可能性がある」と述べている。

長期的な運動は脂肪の健康的な蓄積に役立つ

 長い間、定期的に運動しているのに、いまだにぽっこりと出たお腹を見て苛立つことはないだろうか。そんな人にとって心強い研究結果が報告された。たとえ腹筋が割れた状態にならなくても、運動によって脂肪の蓄積としてはより健康的な皮下脂肪の蓄積が促進され、長期的には健康に良い影響を及ぼすことが明らかになった。研究論文の上席著者である、米ミシガン大学運動学部運動科学分野のJeffrey Horowitz氏は、「数カ月から数年にわたる定期的な運動は、カロリー消費の手段となるだけでなく、加齢に伴い体重が増加した場合でも、脂肪をより健康的に蓄えることができるように脂肪組織を変化させるようだ」と述べている。この研究の詳細は、「Nature Metabolism」に9月10日掲載された。

歯の数は日本人の平均余命にどの程度影響するか?

 これまでの研究において、歯の喪失が認知症リスクの増加と関連していることが報告されている。しかし、歯の数と認知症のない平均余命や認知症の有無によらない平均余命との関連を調査した研究は、これまでほとんどなかった。東北大学の木内 桜氏らは、日本人高齢者の歯の数と認知症のない平均余命および認知症の有無によらない平均余命との関連を調査するため、プロスペクティブコホート研究を実施した。Journal of the American Medical Directors Association誌オンライン版2024年9月11日号の報告。  2010〜20年の10年間フォローアップ調査を行った。対象は、日本の9つの自治体に在住する、機能的に自立した65歳以上の高齢者。歯の数は、20本以上、10〜19本、1〜9本、0本に分類した。アウトカムとして、10年間のフォローアップ期間中における認知症の発症および死亡率を収集した。歯の数に応じ、認知症のない平均生存率および全生存率を推定するため、multistate modelingを用いた。

セラピー犬は医療従事者の気分を改善する

 セラピー犬は、病院の患者の気分を明るくするのと同じように、医療従事者の気分を高めるのにも役立つことが、新たな研究で明らかになった。この研究では、セラピー犬セッションにより、米国中西部の外科病棟と集中治療室で働く少数の医療従事者の気分の改善したことが確認されたという。詳細は、「International Journal of Complementary & Alternative Medicine」に7月26日掲載された。  論文の筆頭著者である、米オハイオ州立大学統合健康センターのBeth Steinberg氏は、「病院のスタッフが、われわれが連れて行った犬と一緒に座り、その日の出来事を話しながら涙を流すのを何度も目撃した」と振り返る。同氏はさらに、「たいていの人は、傍に座ってじっと話を聞いてくれる、偏見のない、毛むくじゃらのやさしい動物に親しみを感じるものだ。犬は、あなたの容貌やその日の気分など気にしない。ただ、あなたが自分を必要としていることを感じ取り、寄り添ってくれるのだ」と述べている。

脳卒中後には睡眠パターンが変わる?

 一晩の正常な睡眠時間は6〜8時間と考えられているが、脳卒中生存者の中でこの健康的な睡眠時間を維持できている人は半数以下に過ぎないことが、新たな研究で明らかにされた。この研究では、脳卒中の既往がある人の多くで、一晩の睡眠時間が長過ぎるか短過ぎるかのいずれかであることが示されたという。米デューク大学医学部のSara Hassani氏らによるこの研究の詳細は、「Neurology」に9月11日掲載された。  論文の筆頭著者であるHassani氏は、「適切な睡眠時間は、理想的な脳と心臓の健康に不可欠だと考えられている。長過ぎたり短過ぎたりする睡眠は脳卒中後の回復に影響し、生活の質(QOL)を低下させる可能性がある。この研究結果を受けて、脳卒中の既往がある人が睡眠問題を抱えていないかを検査し、問題がある人の睡眠習慣を改善する方法を検討すべきだ」と主張している。

呼吸によりマイクロプラスチックが脳に侵入する?

 人間の脳から初めて、顕微鏡でしか確認できない微小なプラスチック粒子(マイクロプラスチック)が検出された。ベルリン自由大学(ドイツ)のLuis Fernando Amato-Lourenco氏とサンパウロ大学(ブラジル)のThais Mauad氏らが率いる研究グループが、剖検された15人の成人のうちの8人において、脳の嗅覚を司る領域である嗅球からマイクロプラスチックが検出されたことを報告した。空気中に浮遊する小さなマイクロプラスチックはあらゆる場所に存在するため、生涯にわたって呼吸を通じて吸い込まれた可能性が高いと見られている。詳細は、「JAMA Network Open」に9月16日掲載された。

進行メラノーマに対するオプジーボとヤーボイの併用療法が生存期間を延長

 ニボルマブ(商品名オプジーボ)とイピリムマブ(商品名ヤーボイ)の2種類の免疫チェックポイント阻害薬の併用療法により、進行メラノーマ患者の生存期間を大幅に延長できる可能性のあることが、10年にわたる追跡調査により明らかになった。米ワイル・コーネル・メディスンのJedd Wolchok氏らによるこの研究の詳細は、「The New England Journal of Medicine(NEJM)」に9月15日掲載された。Wolchok氏は、「これは、慣例を変える試験だった。対象患者の平均生存期間は現在6年を超えている。追跡3年時点でがんの進行が認められなかった患者は、10年後も再発や他の病気を発症することなく生存している可能性が高い」と話している。

禁煙すると心房細動のリスクは短期間で低下する

 喫煙は心房細動のリスク因子だが、禁煙に成功するとそのリスクは速やかに低下することが明らかになった。米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)のGregory Marcus氏らの研究によるもので、詳細は「JACC: Clinical Electrophysiology」に9月11日掲載された。研究者らは、「元喫煙者だからといって心房細動になると運命付けられてはいない」と述べている。  心房細動は不整脈の一種で、心臓の上部にある心房と呼ばれる部分が不規則に拍動する病気。このような拍動が現れた時の自覚症状として、動悸やめまいなどを生じることがある。しかしより重要なことは、心臓の中に血液の塊(血栓)が形成されやすくなり、その血栓が脳の動脈に運ばれるという機序での脳梗塞が起こりやすくなる点にある。このようにして起こる脳梗塞は、梗塞の範囲が広く重症になりやすい。

ステロイド薬の使用で糖尿病のリスクが2倍以上に

 ステロイド薬の全身投与により糖尿病の発症リスクが2倍以上高くなることを示唆するデータが報告された。英オックスフォード大学のRajna Golubic氏らが、欧州糖尿病学会(EASD 2024、9月9~13日、スペイン・マドリード)で発表した。  ステロイド薬は強力な抗炎症作用があり、喘息や関節リウマチなどの多くの疾患の治療で用いられていて、特に自己免疫性疾患の治療では欠かせないことが少なくない。ステロイド薬にはさまざまな副作用があり、そのうちの一つとして、血糖値の上昇、糖尿病リスクの増大が挙げられる。副作用リスクを下げるために、症状が現れる部位が呼吸器や皮膚などに限られている場合には、吸入や外用による局所投与が優先的に行われるが、局所投与では疾患コントロールが十分できない場合や全身性疾患の治療では、内服や注射などによる全身投与が必要となる。

1日2回以上の歯磨きで児童のレジリエンス向上か―貧困下で特に顕著

 歯磨きの頻度が高い子どもはレジリエンスが高く、特に貧困に該当する子どもでこの関係が強固であるとする研究結果が報告された。東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科公衆衛生学分野※の藤原武男氏らの研究によるもので、詳細は「BMC Oral Health」に8月10日掲載された。  貧困は健康リスク因子の一つとして位置付けられていて、成長過程にある子どもでは、その影響が成人後にも及ぶ可能性も指摘されている。また幼少期の貧困は、レジリエンスの低下につながることが報告されている。レジリエンスとは、ストレスやトラブルに対応して逆境から立ち直る精神的な回復力であり、レジリエンスの高さは、うつ病や不安症などのメンタルヘルス疾患のリスクの低さと関連がある。

日本人の“尿ナトカリ比”目標値が決定~ステートメント公表/日本高血圧学会

 日本高血圧学会は10月8日、日本人のための尿ナトカリ比の目標値と適切な評価方法を提唱するため、尿ナトリウム/カリウム(尿ナトカリ比)ワーキンググループによる『コンセンサスステートメント』をHypertension Research誌で公表した。尿ナトカリ比の目標値として、まずは実現可能な“4”を目指し、将来的に至適な“2”へ段階的に設定していくという。

日本におけるうつ病に対するベンゾジアゼピン長期使用の分析

 うつ病および不眠症を合併している患者では、持続的な不眠症のマネジメントのために抗うつ薬と併用してベンゾジアゼピン薬(BZD)やZ薬などの睡眠薬がよく使用される。しかし、うつ病患者に対する睡眠薬の長期使用に関連する要因は、あまりよくわかっていない。久留米大学の土生川 光成氏らは、不眠症を合併したうつ病患者に対する睡眠薬併用の長期的な状況を分析した。Journal of Psychiatric Research誌2024年10月号の報告。  抗うつ薬と睡眠薬(BZD /Z薬)を開始したうつ病患者351例のデータをレトロスペクティブに分析し、12ヵ月時点での睡眠薬の長期使用率と関連する要因を調査した。長期使用についてロジスティック回帰分析を用いて、不眠症重症度を縦断的に評価した32例の患者において、睡眠薬継続群と中止群の間で不眠症重症度を比較した。

金融詐欺に遭うのはアルツハイマー病の初期兆候?

 金融詐欺に引っかかりやすくなっている高齢者では、アルツハイマー病発症の高リスクと関連付けられている脳領域に変化が生じている可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。論文の上席著者である、米南カリフォルニア大学心理学および家庭医学教授のDuke Han氏は、「高齢者の金銭的搾取に対する脆弱性を評価することは、軽度認知障害やアルツハイマー病などの認知症の初期段階にある人の特定に役立つ可能性がある」と述べている。この研究の詳細は、「Cerebral Cortex」9月号に掲載された。

「声の変化」からCOPD増悪を予測

 慢性閉塞性肺疾患(COPD)の増悪を、患者の声の変化から予測できることを示した新たな研究結果が報告された。患者の声は、増悪が始まる直前には高くなり、増悪が始まるとかすれることが判明したという。この研究を実施したマーストリヒト大学医療センター呼吸器内科学(オランダ)のLoes van Bemmel氏らは、これらのサインを使ってCOPDの増悪に備えられるようにするためのスマートフォン(以下、スマホ)のアプリの開発に取り組んでいる。この研究結果は、欧州呼吸器学会(ERS Congress 2024、9月7~11日、オーストリア・ウィーン)で発表された。

DPP-4iとBG薬で糖尿病性合併症発生率に差はない――4年間の後方視的解析

 血糖管理のための第一選択薬としてDPP-4阻害薬(DPP-4i)を処方した場合とビグアナイド(BG)薬を処方した場合とで、合併症発生率に差はないとする研究結果が報告された。静岡社会健康医学大学院大学(現在の所属は名古屋市立大学大学院医学研究科)の中谷英仁氏、アライドメディカル株式会社の大野浩充氏らが行った研究の結果であり、詳細は「PLOS ONE」に8月9日掲載された。  欧米では糖尿病の第一選択薬としてBG薬(メトホルミン)が広く使われているのに対して、国内ではまずDPP-4iが処方されることが多い。しかし、その両者で合併症の発生率に差があるかは明らかでなく、費用対効果の比較もほとんど行われていない。これを背景として中谷氏らは、静岡県の国民健康保険および後期高齢者医療制度のデータを用いた後方視的解析を行った。

NSAIDs、心筋梗塞や胎児動脈管収縮に関して使用上の注意改訂/厚労省

 2024年10月8日、厚生労働省はNSAIDsの添付文書の改訂指示を発出した。全身作用が期待されるNSAIDs(医療用)の添付文書には重大な副作用の項に「心筋梗塞、脳血管障害」を、シクロオキシゲナーゼ阻害作用を有するNSAIDsの添付文書には特定の背景を有する患者に関する注意として、妊婦に対し「シクロオキシゲナーゼ阻害剤の使用により胎児動脈管収縮を疑う所見を適宜確認する」旨の追記がなされる。

誤嚥性肺炎に関連する抗コリン薬~日本医薬品副作用データ

 日本の超高齢化社会は、とくに高齢者の誤嚥性肺炎のマネジメントに関して、大きな課題を呈している。大阪・藤立病院の上田 章人氏らは、主に日本医薬品副作用(JADER)データベースを用いて、抗コリン薬使用と誤嚥性肺炎の発生率との関連を調査した。Respiratory Investigation誌オンライン版2024年9月10日号の報告。  2004年第1四半期〜2023年第3四半期のJADERデータベースより抽出した、60歳以上の誤嚥性肺炎2,367例のデータを分析に用いた。シグナル検出による報告オッズ比を用いて、誤嚥性肺炎と抗コリンリスクスケールに記載されている49の薬剤との関連を評価した。これらの関連性を検証するため、MEDLINEとコクランライブラリーの調査結果を組み込んだスコープレビューが実施された。