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東京2020で発生しうる患者とその対応策/日本救急医学会

 東京2020オリンピック・パラリンピックの開催まで300日を切った。この開催を迎える上で医学的に重要なのは、熱中症やインバウンド感染症、そしてテロへの対策ではないだろうか。そこで、医学系学会のうち25団体(2019年10月現在)が“2020年東京オリンピック・パラリンピックに係る救急・災害医療体制を検討する学術連合体(コンソーシアム)”を結成。リスクを想定し、対策に取り組んでいる。  この構成団体の中のうち、日本救急医学会ほか5学会(日本臨床救急医学会、日本感染症学会、日本外傷学会、日本災害医学会 、日本集中治療医学会)と東京都医師会の担当委員が、2019年10月2~4日に開催された第47回日本救急医学会総会・学術集会のパネルディスカッション8「2020年東京オリンピック・パラリンピックに関わる救急・災害医療体制を検討する学術連合体の活動現状と今後の展開について」にて、各学会の委員会活動の進捗を報告した。

21遺伝子再発スコアが高いHR+早期乳がんでの術後化学療法の併用効果(TAILORx 2次解析)/ESMO2019

 リンパ節転移のないホルモン感受性(HR)陽性HER2陰性の早期乳がん患者で、21遺伝子アッセイによる再発スコアが高い(26〜100)場合、術後にタキサンとアントラサイクリン両方もしくはどちらかを含む化学療法と内分泌療法を併用したほうが、内分泌療法単独よりもアウトカムが良好であることが、TAILORx試験の2次解析で示唆された。スペインで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で、米国・Albert Einstein College of MedicineのJoseph A. Sparano氏が発表した。この結果はJAMA Oncology誌オンライン版9月30日号に同時掲載された。

日本における認知症の重症度と社会的介護コスト

 アルツハイマー病患者への直接的な社会的支援のコストは高まっており、高齢化に伴い、今後さらに増加し続けると予想される。藤田医科大学の武地 一氏らは、日本における長期介護保険でのアルツハイマー病に対する直接的な社会的支援のコストを推定するため、検討を行った。Geriatrics & Gerontology International誌オンライン版2019年9月2日号の報告。  本研究は、メモリークリニックを受診したアルツハイマー病患者または軽度認知障害患者169例に対し、長期にわたるフォローアップを行った横断的研究である。認知症の重症度、介護サービスの利用、コストについて分析を行った。

アパルタミド、転移のない去勢抵抗性前立腺がんのOSを改善(SPARTAN試験)/ESMO2019

 遠隔転移のない去勢抵抗性前立腺がん(nmCRPC)に対する、アンドロゲン受容体シグナル伝達阻害薬であるアパルタミドの試験結果が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で、米国・Massachusetts General Hospital Cancer Center and Harvard Medical SchoolのMatthew R. Smith氏より発表された。  本試験(SPARTAN試験)は、日本も参加した国際共同のプラセボコントロールの第III相試験である。過去に、1回目の中間解析が実施され、アパルタミドが有意に無転移生存期間を延長したことが報告されている。今回の報告は2回目の中間解析結果であり、全生存期間(OS)、化学療法施行までの期間(TTC)、安全性についての発表。

小細胞肺がんに対するアテゾリズマブ+化学療法の成績(IMpower133)/ESMO2019

 進展型小細胞肺がん(ES-SCLC)に対する、カルボプラチン・エトポシドへのアテゾリズマブ(商品名:テセントリク)の追加効果を評価する第III相試験IMpower133では、アテゾリズマブの追加による生存改善が、世界肺がん学会(WCLC2019)で示された。欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)では、同試験の全生存期間(OS)、奏効期間(DOR)、奏効率(ORR)、安全性について最新のデータが発表され、ドイツ・Lung Clinic GrosshansdorのMartin Rech氏が報告した。

血糖降下薬ピオグリタゾンの肺がん予防効果?

 経口血糖降下薬にがん予防効果があるのか。米国・ロッキーマウンテン地方退役軍人医療センターのRobert L. Keith氏らは、肺がんの発症リスクが高い現喫煙者や元喫煙者において、経口血糖降下薬ピオグリタゾンに肺がんの発症予防効果があるかを検討する第II相無作為化試験を行った。その結果、有意ではないがわずかに効果が期待できる所見や、特異的病変で組織学的改善が認められたという。著者は「さらなる試験を行い、反応性異形成の特徴を明らかにする必要がある」と述べている。これまでに、前臨床試験でチアゾリジン系薬が肺がんを予防することが、また同薬を服用する糖尿病患者で肺がんの割合が低いことが示唆されていた。Cancer Prevention Research誌2019年10月号掲載の報告。

初回エピソード統合失調症に対するコンピューター化認知機能改善療法~ランダム化比較試験

 統合失調症患者は、社会的機能低下に関連する認知機能障害を呈する。コンピューター化された認知機能改善療法は、慢性期統合失調症の認知機能と機能障害の両方に対する改善効果が知られているが、これらのアプローチを統合失調症の初期段階に用いた場合の効果については、あまり知られていない。スペイン・Universidad Miguel HernandezのLorena Garcia-Fernandez氏らは、初回エピソード統合失調症患者を対象にコンピューター化認知機能改善療法の効果について検証を行った。Psychiatry Research誌オンライン版2019年9月7日号の報告。

術前療法で残存病変のあるHER2+早期乳がん、術後T-DM1による末梢神経障害・血小板減少症・CNS再発(KATHERINE)/ESMO2019

 トラスツズマブを含む術前化学療法で浸潤がんの残存がみられたHER2陽性早期乳がんに対する術後補助療法としてT-DM1(トラスツズマブ エムタンシン)の効果をトラスツズマブと比較したKATHERINE試験において、末梢神経障害、血小板減少症、中枢神経系(CNS)再発に関する詳細な分析結果が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)でドイツ・Helios Klinikum Berlin BuchのMichael Untch氏より報告された。T-DM1による末梢神経障害に関して、ベースライン時の末梢神経障害が持続期間と消失率に影響する可能性があるが発現率には影響せず、術前化学療法でのタキサン製剤の種類は発現率に影響しないことがわかった。

ロミプロスチム、化学療法誘発性血小板減少症を改善/JCO

 米国・スローン・ケタリング記念がんセンターのGerald A. Soff氏らは、化学療法誘発性血小板減少症を伴う固形がん患者を対象に、ロミプロスチム投与群と経過観察群を比較する無作為化第II相臨床試験を行い、ロミプロスチムは化学療法誘発性血小板減少症の改善に有効であることを明らかにした。化学療法誘発性血小板減少症は、がん治療の遅延または縮小につながるが、これまでに承認された治療法はない。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2019年9月23日号掲載の報告。

糖尿病診療ガイドライン2019を公開~日本糖尿病学会

 日本糖尿病学会(理事長:門脇 孝)は、『糖尿病診療ガイドライン2019』を発行し、同会のホームページ上で公開を始めた。  糖尿病診療ガイドラインは、エビデンスに基づく糖尿病診療の推進と糖尿病診療の均てん化を目的に3年ごとに改訂されて、今回の第6版が最新版となる。  糖尿病診療ガイドライン2019の記載方式は2016年版と同様に「CQ・Q方式」とし、推奨グレードも策定委員の投票で決定し、合意率も記載されている。また、今般では、CQ・Qの各項目を適宜見直すとともに、必要に応じ新たなCQ・Qを設定している。  糖尿病診療ガイドライン2019の内容としては、新しい文献をできうる限り引用し、これらの知見を取り上げているほか、付録としてわが国における大規模臨床試験「J-DOIT 1〜3」「JDCP study」「J-DREAMS」を紹介している。とくに食事療法に関しては、従来の標準体重の代わりに目標体重という概念を取り入れ、より個々の症例に対応可能な柔軟な食事療法が示されている。もちろん日本動脈硬化学会や日本高血圧学会の最新のガイドラインを参考に、これらとの齟齬がないような改訂が行われている。

心臓再同期療法における左室の逆リモデリングと長期予後【Dr.河田pick up】

 心臓再同期療法(CRT)が有効とされる主な機序は、左室逆リモデリングおよび左室収縮期径の縮小である。MADIT-CRT試験は、軽度の心不全を有する心筋症患者において、CRTの有効性を調べた研究であり、2011年に発表された。その結果により、CRTの適応が拡大された経緯がある。今回、米国・ロチェスター大学のValentina Kutyifa氏ら研究グループがMADIT-CRTの長期フォローのデータを用い、CRTにおける左室収縮末期容量の改善および死亡への影響、その関係性は左脚ブロック(LBBB)において影響があるのかどうかを検証した。JACC-EP誌2019年9月号に掲載。

初回エピソードうつ病患者における発症年齢と皮質の厚さとの関連

 以前の研究で、早期発症成人うつ病(EOD)患者と遅発性成人うつ病(LOD)患者では、脳灰白質の体積変化に違いがあることが示唆されていた。中国・昆明医科大学のZonglin Shen氏らは、皮質の厚さ(CT)がうつ病の発症年齢の影響を受けるかについて検討を行った。Neuroreport誌オンライン版2019年9月9日号の報告。  EOD患者54例、LOD患者58例、若者対照群57例、高齢対照群58例の高解像度MRI画像より検討を行った。うつ病の重症度は、ハミルトンうつ病評価尺度17項目(HDRS17)を用いて評価した。患者のCTと臨床スコアとの関連について分析を行った。

ALK陽性肺がんの脳転移例に特化したセリチニブの臨床効果(ASCEND-7)/ESMO2019

 脳転移は、ALK融合遺伝子陽性非小細胞肺がん(ALK陽性NSCLC)の30~50%に発生し、予後も不良である。第2世代ALK-TKIセリチニブは、ALK陽性NSCLCの脳転移病変に対する抗腫瘍活性が報告されている。そのような中、脳転移のあるALK陽性NSCLCのみを対象に、セリチニブの抗腫瘍活性を評価する第II相多施設オープンラベル試験ASCEND-7が行われ、その結果を、欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)において、ワシントン大学のLaura QM Chaw氏が発表した。

ペムブロリズマブ、既治療TN乳がんへの単剤投与は?(KEYNOTE-119)/ESMO2019

 局所進行/転移を有するトリプルネガティブ乳がん(mTNBC)患者に対する、2~3次治療としてのペムブロリズマブ単剤療法は、化学療法単剤と比較して生存期間を有意に改善しなかった。しかし、PD-L1発現レベルが上昇するにつれてペムブロリズマブによる治療効果が高まる傾向が確認されている。スペインで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で、スペイン・Vall d'Hebron Institute of OncologyのJavier Cortés氏が第III相無作為化非盲検試験KEYNOTE-119の結果を発表した。

ドセタキセル+ADTがmHSPCのOSを延長(STAMPEDE試験)/ESMO2019

 転移を有するホルモン療法未治療の前立腺がん(mHSPC)患者に対する、ドセタキセル(DTX)とアンドロゲン除去療法(ADT)の併用療法の結果が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で、英国・Queen Elizabeth Hospital のNick James氏より発表された。  本試験(STAMPEDE試験)は前立腺がんを対象に、10群(A~L群)のアームを持ち、1万人以上の症例が登録される国際共同臨床試験である。既にmHSPCの1次治療としてDTX+ADTのOS改善報告がある。今回は2005年10月~2013年3月に登録のあった、A群(ADT群)とC群(DTX群)との長期追跡の結果と、高腫瘍量/低腫瘍量ごとの解析である。

日本人アレルギー性喘息に対するダニ舌下免疫療法の安全性

 ダニアレルゲン舌下免疫療法(HDM SLIT)は、コントロール不良のアレルギー性喘息に対し、有効かつ安全であることが、これまでに欧州で確認されている。  今回、田中 明彦氏(昭和大学医学部内科学講座 呼吸器・アレルギー内科部門 講師)らは、日本人を対象に、最大19ヵ月にわたるHDM SLITの有効性と安全性を評価した。その結果、成人アレルギー性喘息患者において、HDM SLITは良好な安全性プロファイルを示した。The journal of allergy and clinical immunology:In practice誌2019年9月18日号に掲載。

統合失調症患者に対する長時間作用型抗精神病薬治療と機能的および臨床的寛解との関連

 機能的寛解は、統合失調症の主要な治療目標となってきたが、良好なアウトカムの割合は、15~51%の範囲で大きなばらつきがある。また、臨床的寛解が機能的寛解の前提条件であるかについてもよくわかっていない。フランス・パリ大学のPhilip Gorwood氏らは、急性期エピソード後に長時間作用型持効性注射剤(LAI)による治療を開始した統合失調症患者の機能的および臨床的寛解との関連性を評価するため、プロスペクティブ観察研究を実施した。Psychiatry Research誌オンライン版2019年9月7日号の報告。

PD-L1陽性肺がん、ペムブロリズマブ+化学療法の有効性とTMBに関連性示されず/ESMO2019

 ペムブロリズマブ+プラチナベース化学療法は組織型、PD-L1発現の有無にかかわらず、転移を有する非小細胞肺がん(NSCLC)に生存ベネフィットをもたらす。また、腫瘍変異負荷はNSCLCを含む固形がんの潜在的バイオマーカーとして興味を持たれている。スペイン・Hospital Universitario Doce de OctubreのLuis Paz-Ares氏らは、KEYNOTE-021(コホートCおよびG)、-189、-407のNSCLC患者における組織腫瘍変異負荷(tTMB)とペムブロリズマブ+化学療法の効果との関係を評価する探索的研究を行い、その結果を欧州臨床学会(ESMO2019)で発表した。

BRCA変異HER2-進行乳がん、veliparib追加でPFSが有意に改善(BROCADE3)/ESMO2019

 生殖細胞系列のBRCA遺伝子(gBRCA)変異のあるHER2陰性進行乳がんに対して、カルボプラチン+パクリタキセルへのPARP1/2阻害薬であるveliparibの上乗せ効果を検討した第III相BROCADE3試験の結果、無増悪生存期間(PFS)を有意に改善したことが示された。veliparibの追加による毒性プロファイルの変化はみられなかった。欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で、フランス・Centre Eugene MarquisのVeronique C. Dieras氏が発表した。  gBRCA遺伝子変異のある進行乳がんを対象とした第II相試験では、カルボプラチン+パクリタキセルにveliparibを上乗せすることにより、PFS中央値および全生存期間(OS)中央値がより大きく、毒性の上乗せは軽度であることが示されていた。

世界初のRNAi治療の最前線

 2019年9月13日、Alnylam Japan(アルナイラム・ジャパン)株式会社は、9月9日にトランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー治療薬「オンパットロ点滴静注 2mg/mL」(一般名:パチシランナトリウム)を発売したことに寄せ、都内でメディアセミナーを開催した。  パチシランナトリウムは、日本国内における初のRNAi(RNA interference:RNA干渉)治療薬*であり、同社が国内で上市・販売する最初の製品。