医療一般|page:91

急性期統合失調症に対する長時間作用型注射剤抗精神病薬~メタ解析

 長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬は、統合失調症の再発予防効果が期待できるが、急性期患者においてもベネフィットをもたらす可能性がある。ドイツ・ミュンヘン工科大学のDongfang Wang氏らは、急性期統合失調症患者に対する第2世代抗精神病薬(SGA)のLAIに関するエビデンスのシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、急性期統合失調症に対し、SGA-LAIは効果的な治療選択肢であることを報告した。Schizophrenia Bulletin誌オンライン版2023年6月23日号の報告。

摂食障害の薬物療法に関するWFSBPガイドライン2023

 摂食障害の薬物療法に関する世界生物学的精神医学会連合(WFSBP)のガイドライン2023では、診断および精神薬理学的進歩、エビデンスレベル、推奨度などの評価に関して、最新の推奨内容に更新されている。英国・キングス・カレッジ・ロンドンのHubertus Himmerich氏らは、本ガイドラインの更新内容のレビューを行った。The World Journal of Biological Psychiatry誌オンライン版2023年4月24日号の報告。  摂食障害のWFSBPタスクフォースは、関連文献をレビューし、エビデンスレベルおよび推奨度のランク付けを行った。

地域枠出身の研修医の臨床能力は低いのか

 医師の偏在を解消するために医学部で地域枠の導入が進んでいる。2021年度には入学者全体の18.7%が地域枠学生となっている。その一方で、入学試験での成績は一般枠入学者に比べ、地域枠入学者で低い傾向にあることが知られ、入学後の学習能力や臨床能力の差異について懸念が示されてきた。  これら懸念事項について福井 翔氏 (杏林大学 総合医療学)、西崎 祐史氏 (順天堂大学 医学教育研究室)、徳田 安春氏 (群星沖縄臨床研修センター)らの研究チームは、日本全国の臨床研修医(postgraduate year[PGY]-1およびPGY-2)を対象に実施した基本的臨床能力評価試験(GM-ITE:General Medicine In-Training Examination)の結果と、研修教育環境に関するアンケート結果を用いて、地域枠卒業生のGM-ITEスコアの特徴を調査した。

乾癬・湿疹の重症度、なぜ患者と医師で認識が異なるか

 乾癬や湿疹を有する患者と医師の間で、重症度の認識の違いとその要因を調べた結果、認識の不一致は46.3%に認められた。医師は視覚的な客観的尺度を重視したのに対し、患者は疾患の身体的、機能的、感情的な影響を重視したことが要因として示された。また、これらが患者のレジリエンス(回復力)、自己効力感、否定的な社会的比較と関連していること、医師は重症疾患に遭遇する頻度が高いため、軽症例を過小評価してしまう可能性も示唆された。シンガポール・National University Healthcare SystemのValencia Long氏らが患者と医師1,053組を対象とした横断研究を実施し、以上の結果が示された。著者は、「本研究により明らかになった患者と医師の認識の不一致の要因が、認識の不一致を小さくするための認知行動的介入の潜在的なターゲットになる」とまとめている。JAMA Dermatology誌オンライン版2023年7月12日号掲載の報告。

適量の飲酒、非飲酒より死亡率低い?~女性コホート

 女性の中年期のアルコール摂取量と全死亡率およびがん死亡率の関連について、オーストラリア・メルボルン大学のYi Yang氏らが持続的仮説的介入で検討した結果、全死亡率はまったくアルコールを摂取していなかった場合よりもある程度の量(エタノール30g/日以下)を摂取していたほうが低くなっていた可能性が示唆された。一方、がん死亡率では明らかではなかった。American Journal of Epidemiology誌オンライン版2023年7月24日号に掲載。  本研究は、1996~2016年に定期的に収集されたAustralian Longitudinal Study on Women's Health 1946~51年出生コホートのデータを用いた。ベースライン時に女性をさまざまなアルコール摂取量(エタノール0~30g/日超、または30g/日超の場合は20g/日以下に減量)に割り付け、摂取量を継続した場合の全死亡率およびがん死亡率を推定した。

睡眠リズムの乱れで若年者の血圧上昇に対する内臓脂肪の影響が増大する

 若年者では、血圧上昇に対する内臓脂肪組織(VAT)の影響は、睡眠リズムが乱れると増大するという研究結果が「Hypertension」に3月6日掲載された。  VATは心血管代謝系の健康状態に影響し、また両者は同時に睡眠リズムの影響を受けることが知られている。米ペンシルベニア州立大学医学部のNatasha Morales-Ghinaglia氏らが行った今回の後ろ向きコホート研究では、VAT(肥満)が心血管代謝系の健康状態(血圧)に影響を及ぼす際における調整変数(moderator)としての睡眠リズムの役割について検討した。  対象はPenn State Child Cohortに参加した若年者303人(平均年齢16.2±2.2歳、女性47.5%)。アクチグラフを用いて7晩にわたり、総睡眠時間および標準偏差、睡眠中央時刻(就寝時刻から起床時刻までの中央の時刻)および標準偏差を、通学日・非通学日、平日・週末別に算出した。睡眠中央時刻および標準偏差(睡眠の不規則性)が、VATと収縮期血圧(SBP)/拡張期血圧(DBP)との関連に対する調整変数となるか否かを、多変量線形回帰モデルにより人口統計学的因子、総睡眠時間および標準偏差を調整して解析した。VATは二重エネルギーX線吸収スキャンにより測定し、血圧は座位で測定した。

1回の内視鏡治療で2型糖尿病患者のインスリン治療が不要になる可能性

 1時間ほどの内視鏡治療で、2型糖尿病患者のインスリン治療が不要となる可能性を示唆する研究結果が、米国消化器病週間(DDW2023、5月6~9日、米国・シカゴ)で報告された。アムステルダム大学(オランダ)のJacques Bergman氏らの研究によるもの。同氏はDDW2023に合わせて開催されたメディア対象ブリーフィングにおいて、「1回の介入で少なくとも1年間は治療効果が維持された。この治療法は2型糖尿病の管理を大きく変えるかもしれない」と語った。  検討された新たな治療法は、電気パルスを用いて十二指腸の粘膜の表層を切除する内視鏡手術で、「Recellularization via electroporation therapy(ReCET)」と名付けられている。この治療法が奏効するメカニズムはまだ完全には理解されていない。ただし研究者らは、十二指腸のシグナル伝達の異常のためにインスリン抵抗性が生じている状態で、組織構造を維持したまま、シグナル伝達が劣化した細胞のアポトーシスと再生を誘導することが、インスリン感受性の回復につながると考えている。また、熱などを用いるアブレーションと異なり、組織へのダメージが少ないため、治療に伴う合併症のリスクが低いことも、この手法のメリットとして挙げられるという。

ウクライナの戦争負傷者で薬剤耐性菌が増加

 ウクライナで戦争により負傷して入院した患者の多くが、極度の薬剤耐性を獲得した細菌に感染していることが、ルンド大学(スウェーデン)臨床細菌学分野教授のKristian Riesbeck氏らによる研究で示された。研究グループは、このような状況が戦争により荒廃したウクライナの負傷者や病人に対する治療をいっそう困難なものにしているとの危惧を示している。この研究は、「The Lancet Infectious Diseases」7月号に掲載された。  Riesbeck氏は、「私はこれまでに多くの薬剤耐性菌と患者を目にしてきたため慣れているが、今回目撃したほど強烈な薬剤耐性菌に遭遇したことは、これまでなかった」と話している。

NAFLD・NASHが名称変更!?新しい名称は…

 「非アルコール性脂肪肝疾患 (NAFLD:nonalcoholic fatty liver disease、わが国ではナッフルディ、ナッフルドと呼ばれる) と非アルコール性脂肪性肝炎 (NASH:nonalcoholic steatohepatitis 、ナッシュ) が名称変更される」と、先日開催された欧州肝臓学会国際肝臓学会議(EASL-ILC)2023で発表された。以前から欧米ではNAFLDやNASHという用語が患者への偏見になるという声が上がっていたようで、今回、米国・シカゴ大学のMary E. Rinella氏らは論文などの趣意に関する専門家や患者支援者が命名法や定義の変更について支持しているか否かを調査した。その結果、改名に際し“metabolic”(代謝性)という用語を含めることが求められ、新たな名称としてNAFLDはMASLD(metabolic dysfunction-associated steatotic liver disease)へ、NASHはMASH(metabolic dysfunction-associated steatohepatitis)への変更が望ましいことが明らかになった。Journal of Hepatology誌2023年6月24日号掲載の報告。

包括的がんゲノムプロファイリングリキッドバイオプシーGuardant360 CDx がん遺伝子パネル販売開始

 ガーダントヘルスジャパンは、固形がん患者を対象とした包括的がんゲノムプロファイリング(CGP)用リキッドバイオプシー Guardant360 CDx がん遺伝子パネル(以下、Guardant 360 CDx)について、2023年7月24日より保険償還が開始され、同日より販売すると発表した。併せて、エスアールエルによる検査の受託が開始される。  Guardant 360 CDxは、血中循環腫瘍DNA (ctDNA) を次世代シークエンサーによって解析するがん遺伝子パネル検査として、2022年3月10日に厚生労働省より承認されている。固形がん患者の血液検体から、がんに関連の74遺伝子を網羅的に調べることが可能。

乳がん診断から手術までの期間、生存率への影響は?

 乳がん診断から手術までの期間が2週間を超えた患者では生存率が低かったことが、中国・上海交通大学医学部のSiji Zhu氏らの研究で示された。著者らは「今回の結果は、生存率を改善するためにできるだけ診断後早期に治療を開始する努力が必要であることを示唆している」と述べている。Scientific Reports誌2023年7月26日号に掲載。

双極性障害の5年間の再発率とそれに関連する要因~レトロスペクティブコホート研究

 双極性障害患者の再発率に関するエビデンスは、とくに英国において不足している。英国・バーミンガム大学のDanielle Hett氏らは、英国の健康保健サービスより定期的なケアを受けている双極性障害患者を対象に、5年間の再発率および関連性の評価を行った。その結果、英国で2次的メンタルヘルスサービスを受けている双極性障害患者の約4人に1人は、5年間で再発を経験していた。トラウマ、自殺傾向、精神症状の残存、併存疾患などは、双極性障害患者の再発と関連していることから、再発予防の観点からもこれらの因子を考慮し、対処することが求められると報告した。International Journal of Bipolar Disorders誌2023年6月30日号の報告。

コロナの急性期症状、男女差は?

 男性のほうが新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の症状が重症化しやすく死亡率が高いという、性別による差異が報告されている。その理由として、男性のほうが喫煙率や飲酒率、予後悪化に関連する併存疾患を有している割合が高いなどの健康格差が示唆されている1)。今回、COVID-19の急性期症状の性差を調査したところ、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)陽性と判定された男性では発熱や悪寒といった特定の症状の発現率が女性よりも高いことが、米国・テキサス大学ヒューストン健康科学センター/アーカンソー医科大学のJenil R. Patel氏らにより明らかになった。Preventive Medicine Reports誌2023年10月号掲載の報告。

日本エンドオブライフケア学会第6回学術集会の開催について【ご案内】

 日本エンドオブライフケア学会第6回学術集会が、2023年9月16日(土)、17日(日)に昌賢学園まえばしホール(群馬県・前橋市民文化会館)で開催される。プログラムは、人の誕生から高齢者まで幅広くエンドオブライフケアの専門的な講演、シンポジウム、ケア技術の実演講演、がんの最新治療、海外招聘講演、エンドオブライフケアやアドバンス・ケア・プランニング(ACP)に関する相談コーナーなど、豊富に揃えている。また、9月15日(金)には同会場小ホールで前夜祭が開催される。ご興味のある方、参加ご希望の方はぜひ学術集会ホームページにアクセスされたい。

DPP-4阻害薬の副作用「類天疱瘡」、適切な処置の注意喚起/PMDA

糖尿病治療薬DPP-4阻害薬やその配合剤の副作用として知られている類天疱瘡。DPP-4阻害薬服用後にこの副作用を疑う皮膚異常がみられたにもかかわらず、投与が継続され類天疱瘡の悪化を来し入院するケースが報告されているという。これに対して医薬品医療機器総合機構PMDAは7月27日に医薬品適正使用のお願いを発出した。  PMDAは以下のように注意を呼びかけている。

秋接種、ファイザーとモデルナのXBB.1.5対応1価ワクチン購入合意/厚労省

 厚生労働省は7月28日、新型コロナワクチンの2023年秋開始接種に向けて、オミクロン株XBB対応1価ワクチンとして、ファイザーから2,000万回分、モデルナから500万回分を追加購入することについて、両社と合意したことを発表した。なお、必要に応じて追加購入することも合意している。  同日にファイザーが発表したプレスリリースによると、今回供給を予定しているのは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のオミクロン株XBB.1.5系統のスパイクタンパク質をコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を含む1価ワクチンとなっている。本ワクチンは、同社が2023年7月7日に厚生労働省に承認事項一部変更申請を行っていた。

急性期うつ病治療における21種の抗うつ薬の睡眠への影響~ネットワークメタ解析

 抗うつ薬による急性期治療中に見られる睡眠関連副作用は、コンプライアンスの低下や寛解を阻害する要因となりうる。中国・北京大学のShuzhe Zhou氏らは、抗うつ薬の睡眠関連副作用の種類、抗うつ薬の用量と睡眠関連副作用との関連を評価するため、本検討を行った。その結果、ほとんどの抗うつ薬において、プラセボと比較し、不眠症または傾眠のリスクが高かった。また、抗うつ薬の用量と睡眠関連副作用との関係は、さまざまであった。結果を踏まえて著者らは、「抗うつ薬による急性期治療中には、睡眠関連副作用の発現に、より注意を払う必要がある」としている。Sleep誌オンライン版2023年7月9日号の報告。

直腸がん、術前療法終了から手術までの時間と転帰

 手術適応の直腸がん患者において、術前化学(ネオアジュバント)療法から手術まで12週間以上空けた群ではそうでない群に比べ、奏効率には違いがなかったものの、再発リスクの有意な低下などが示されたという。スペイン・バルセロナ大学のYoelimar Guzman氏らによる本コホート研究の結果はJAMA Surgery誌オンライン版2023年7月12日号に掲載された。  2005年1月~2020年12月にアジュバント療法を受け、直腸間膜全切除術(TME)を受けた成人の直腸がん患者1,506例を対象とした。コホートはアジュバント療法終了から手術までの時間によって、短期(8週間以内)、中期(8週間超12週間以内)、長期(12週間超)の3群に分けられた。追跡期間の中央値は33ヵ月で、データ解析は2021年5月1日~2022年5月31日に行われた。主要評価項目は病理学的完全奏効(pCR)、副次評価項目は病理組織学的結果、周術期イベント、および生存転帰であった。

小学生のコロナ感染リスクに近隣の社会経済環境が関連―大阪市での研究

 自宅周辺の社会経済環境と、小学生の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染リスクとの関連が報告された。高学歴者の多い環境で暮らす小学生は感染リスクが低く、卸売・小売業の従事者が多い環境の小学生は感染リスクが高いという。同志社大学大学院スポーツ健康科学研究科の大石寛氏(大学院生)、同大学スポーツ健康科学部の石井好二郎氏らの研究の結果であり、詳細は「Children」に4月30日掲載された。  居住地域の社会経済環境とCOVID-19感染リスクとの間に有意な関連があることは、既に複数の研究から明らかになっている。ただしそれらの研究の多くは海外で行われたものであり、またCOVID-19重症化リスクの低い小児を対象とした研究は少ない。日本は子どもの相対的貧困率が高いこと、および、当初は低いとされていた子どものCOVID-19感染リスクもウイルスの変異とともにそうでなくなってきたことから、国内の子どもたちを対象とした知見が必要とされる。これを背景として石井氏らは、大阪市内の公立小学校の282校の「学区」を比較の単位とする研究を行った。なお、大阪市内には生活保護受給率が全国平均の3倍を上回る地区が複数存在している。

オメガ3脂肪酸で心房細動リスクは増加する?しない?/JACC

 オメガ3脂肪酸の摂取が心房細動発症リスクを高めることを示唆する研究報告があるが、依然として議論の余地がある。今回、米国・Harvard T.H. Chan School of Public HealthのFrank Qian氏らが、世界的コンソーシアムにおける17の前向きコホート研究のデータを用いて、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサペンタエン酸(DPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)の血中あるいは脂肪組織レベルと心房細動発症との関連を解析した結果、オメガ3脂肪酸の生体内レベルは心房細動発症リスクの増加に関連していなかった。本結果から、食事による習慣的なオメガ3脂肪酸の摂取は、心房細動発症リスクに関しては安全であることが示唆された。Journal of the American College of Cardiology誌2023年7月25日号に掲載。