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脳転移/髄膜がん腫症を伴うHER2+乳がんへのT-DXd、長期の有効性を評価(ROSET-BM)/日本乳癌学会

 脳転移や髄膜転移を有するHER2+乳がんに対するトラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)の長期の有効性を検討したわが国のレトロスペクティブチャートレビュー研究であるROSET-BM試験において、前回の発表から追跡期間を1年延長したデータ(データカットオフ:2022月10月31日)を、北海道がんセンターの山本 貢氏が第32回日本乳癌学会学術総会で発表した。  本試験には2020年5月25日~2021年4月30日にT-DXd治療を開始した患者が登録された。評価項目は、全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)、治療成功期間(TTF)で、さらにOSと関連する背景因子を探索するために、Cox比例ハザードモデルを用いて単変量解析および多変量解析を実施した。対象は20歳以上の脳転移または髄膜がん腫症(LMC)を有するHER2+乳がん患者で、臨床試験でT-DXd治療を受けた患者は除外した。

HR+/HER2-早期乳がんにおける早期再発のリスク因子(WJOG15721B)/日本乳癌学会

 HR+/HER2-早期乳がん患者における早期再発のリスク因子を探索したWJOG15721B試験の結果、若年、静脈侵襲、病理学的浸潤径、病理学的リンパ節転移の個数などが独立したリスク因子として同定されたことを、国立がん研究センター東病院の綿貫 瑠璃奈氏が第32回日本乳癌学会学術総会で発表した。  HR+/HER2-乳がんで、術後内分泌療法開始後3年以内の早期に再発した患者の予後は不良であることが報告されている。monarchE試験では再発高リスクのHR+/HER2乳がん患者において内分泌療法にアベマシクリブを加えることで有意な無浸潤疾患生存期間(iDFS)の延長が示されている。monarchE試験の適格基準を満たす患者は極めて再発高リスクであり、この基準を満たさない早期再発の高リスク集団が存在する可能性がある。そこで研究グループは、HR+/HER2-乳がんの臨床病理学的因子や周術期治療と術後3年以内の再発との関連を調べ、早期再発のリスク因子を同定することを目的として後方視的多施設共同観察研究を実施した。

腎機能低下RAへの生物学的製剤、安全性・有効性が明らかに

 血液透析(HD)患者を含む慢性腎臓病(CKD)を併存する関節リウマチ(RA)患者の治療薬についてのエビデンスは限られている。今回、虎の門病院腎センター内科・リウマチ膠原病科の吉村 祐輔氏らはCKD患者における生物学的疾患修飾性抗リウマチ薬(bDMARD)の有効性・安全性を明らかにした。腎機能低下群においてもbDMARDの継続率は概ね保持され、とくに、インターロイキン-6(IL-6)阻害薬は、推定糸球体濾過量(eGFR)が30mL/分/1.73m2未満の患者で薬剤継続率が有意に高く、無効による中止が少なかったことから、IL-6阻害薬はほかの bDMARDと比較し、単剤での治療がより有効であることを示唆した。Annals of the Rheumatic Diseases誌2024年7月4日号オンライン版掲載の報告。

一次乳房再建における有害事象のリスク因子/日本乳癌学会

 2013年に乳房インプラントが保険収載されて以降乳房再建は増加傾向にあり、2020年には遺伝性乳がん卵巣がん症候群の予防的切除も保険収載された。一方で、乳房インプラント関連未分化大細胞型リンパ腫(BIA-ALCL)の発生が報告され、再建後有害事象のリスク因子についても多数の報告があるが、結果は一致していない。日本乳癌学会班研究(枝園班)では、一次乳房再建施行患者における有害事象のリスク因子について多施設共同の後ろ向き解析を実施し、聖マリアンナ医科大学の志茂 彩華氏が結果を第32回日本乳癌学会学術総会で発表した。

eGFRは心臓突然死のリスク予測因子

 推算糸球体濾過値(eGFR)は、心不全患者の心臓突然死の独立予測因子であり、リスク予測において左室駆出率(LVEF)にeGFRを追加することが有用であるという研究結果が発表された。藤田医科大学ばんたね病院循環器内科の祖父江嘉洋氏らが行った前向き研究の成果であり、「ESC Heart Failure」に6月10日掲載された。  心不全患者の心臓突然死の予防において、LVEFおよびNYHA心機能分類に基づき植込み型除細動器(ICD)の適応が考慮される。ただ、軽度から中等度の慢性腎臓病(CKD)を有する患者に対するICDの有用性に関して、これまでの研究の結果は一貫していない。そこで著者らは今回、心臓突然死における腎機能の役割を検討するため、2008年1月から2015年12月に非代償性心不全で入院したNYHA分類II~III度の患者を対象として、心臓突然死の発生を追跡し、心臓突然死の予測因子を検討する前向き研究を行った。

HR+/HER2-進行乳がん1次治療、リアルワールドでのパルボシクリブ+フルベストラント/+AIの効果/日本乳癌学会

 HR+/HER2-進行乳がん1次治療におけるパルボシクリブ+フルベストラントとパルボシクリブ+アロマターゼ阻害薬(AI)の効果をリアルワールドデータ(RWD)で評価した結果、ほぼ同様な傾向であったことを京都大学の増田 慎三氏が第32回日本乳癌学会学術総会で発表した。後治療の検討から、増田氏は「後治療におけるホルモン療法の期間を伸ばす工夫が今後大切」とした。  HR+/HER2-進行乳がんにおいてパルボシクリブと内分泌療法の併用療法が内分泌療法単独と比較して無増悪生存期間(PFS)を有意に延長することは第III相試験において示されているが、実臨床下でフルベストラント併用とAI併用を別々に評価した研究はほとんどない。本研究では、HR+/HER2-進行乳がんに1次または2次治療としてパルボシクリブ+内分泌療法を行った際の実臨床下での有用性を評価した国内20施設の多施設観察研究のデータから、1次治療として登録された420例のうち、術後補助療法終了から再発までの期間(TFI)が12ヵ月以上、および初診時Stage IVの症例を解析対象とした。併用した内分泌療法別に、患者背景、実臨床下でのPFS(rwPFS)、全生存期間(OS)、化学療法開始までの期間(CFS)、後治療の内訳を評価した。

日本の精神科ガイドライン著者におけるCOI分析

 臨床診療ガイドライン(CPG)は、エビデンスに基づく標準的な患者ケアを提供するために、必要不可欠である。しかし、CPGの著者に対する金銭的な利益相反(COI)により、著者への信頼性が損なわれる可能性がある。東北大学の村山 安寿氏らは、日本の精神科CPGの著者におけるCOIの範囲および規模を調査するため、本研究を実施した。BMJ Open誌2024年6月21日号の報告。  製薬会社より開示された支払い金額を横断的に分析し、日本の双極性障害/うつ病のCPGの著者に対し2016〜20年に支払われた講演謝礼、コンサルティング料、執筆謝礼などを評価した。

デュルバルマブ+化学療法±オラパリブの日本人子宮体がんに対する成績(DUO-E)/日本婦人科腫瘍学会

 進行子宮体がんに対してデュルバルマブを含む治療と標準化学療法を比較する第III相試験DUO-Eの日本人サブセット解析が、第66回日本婦人科腫瘍学会学術大会で久留米大学の西尾 真氏により発表された。  DUO-E試験では、進行再発子宮体がん1次治療のITT集団において、化学療法・デュルバルマブ併用+デュルバルマブ維持療法群および、同併用+デュルバルマブ・オラパリブ維持療法群ともに、化学療法と比べ有意に無増悪生存期間(PFS)の改善が報告されている。対化学療法群におけるハザード比(HR)はそれぞれ0.71(95%信頼区間[CI]:0.57〜0.89、p=0.003)、0.55(95%CI:0.43〜0.69、p<0.0001)であった。

monarchEとPOTENTの適格性の有無と予後の関連/日本乳癌学会

 再発高リスクのホルモン受容体(HR)陽性HER2陰性乳がんに対する術後補助療法として、アベマシクリブおよびS-1がそれぞれmonarchE試験およびPOTENT試験の結果を基に保険適応となっている。しかしその投与対象は一部が重複しており、またPOTENT試験の適格基準はStage I~IIIBと幅広い。名古屋市立大学の磯谷 彩夏氏らはmonarchE試験およびPOTENT試験の適格/不適格症例ごとの予後を検討することを目的に、単施設の後ろ向き解析を実施。結果を第32回日本乳癌学会学術総会で発表した。  本研究では、1981〜2023年に名古屋市立大学病院で根治的手術を実施したStage I~IIICのHR陽性HER2陰性乳がん2,197例の診療録を後ろ向きに解析した。主要評価項目は無病生存期間(DFS)であった。S-1、CDK4/6阻害薬、PARP阻害薬のいずれかの投与歴のある患者98例が除外され、本研究に適格とされた患者2,099例のうち、両試験適格群は275例、monarchE試験(コホート1)のみ適格群は64例、POTENT試験のみ適格群は810例、両試験不適格群は950例であった。

コロナ変異株KP.3のウイルス学的特徴、他株との比較/感染症学会・化学療法学会

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の第11波が到来したか――。厚生労働省が7月19日時点に発表した「新型コロナウイルス感染症の定点当たり報告数の推移」によると、都道府県別では、沖縄、九州、四国を中心に、定点当たりの報告数が第10波のピークを上回る地域が続出している。全国の定点当たりの報告数は11.18となり、昨年同期(第9波)の11.04を超えた。また、東京都が同日に発表したゲノム解析による変異株サーベイランスによると、7月18日時点では、全体の87%をKP.3(JN.1系統)が占めている。KP.2やJN.1を合わせると、JN.1系統が98.7%となっている。  東京大学医科学研究所システムウイルス学分野の佐藤 佳氏が主宰する研究コンソーシアム「G2P-Japan(The Genotype to Phenotype Japan)」は、感染拡大中のKP.3、および近縁のLB.1と KP.2.3の流行動態や免疫抵抗性等のウイルス学的特性について調査した。その結果、これらの親系統のJN.1と比べ、自然感染やワクチン接種により誘導された中和抗体に対して高い逃避能や、高い伝播力(実効再生産数)を有することが判明した。6月27~29日に開催の第98回日本感染症学会学術講演会 第72回日本化学療法学会総会 合同学会にて結果を発表した。本結果はThe Lancet Infectious Diseases誌オンライン版2024年6月27日号に掲載された。

アルツハイマー型認知症のアジテーションに対する新たな選択肢〜マウスモデル評価

 ブレクスピプラゾールは、アルツハイマー型認知症に伴う行動障害(アジテーション)に対し米国食品医薬品局(FDA)で初めて承認された治療薬である。アルツハイマー型認知症に伴うアジテーションの発生頻度は高く、患者および介護者にとって大きな負担となる。ブレクスピプラゾールの有効性、安全性、忍容性は、臨床試験により実証されている。大塚製薬のNaoki Amada氏らは、動物実験におけるブレクスピプラゾールのアジテーション緩和作用の結果を報告した。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2024年6月25日号の報告。

HER2+乳がんに対する周術期至適治療を検討/日本乳癌学会

 HER2+乳がんの周術期治療選択において、Stage Iやリンパ節転移陰性のStage II(T2N0)でのレジメン選択や術前化学療法の適応は施設間で考え方に違いがある。今回、船橋市立医療センターの松崎 弘志氏らは、これらのStageに対する至適な治療法を明らかにするため、手術を実施したHER2+乳がんについて後ろ向きに評価し、第32回日本乳癌学会学術総会で発表した。

HPVワクチン、積極的勧奨の再開後の年代別接種率は?/阪大

 ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの積極的勧奨が再開しているが、接種率は伸び悩んでいる。この状況が維持された場合、ワクチンの積極的勧奨再開世代における定期接種終了年度までの累積接種率は、WHOが子宮頸がん排除のために掲げる目標値(90%)の半分にも満たないことが推定された。八木 麻未氏(大阪大学大学院医学系研究科産科学婦人科学教室 特任助教)らの研究グループは、2022年度までのHPVワクチンの生まれ年度ごとの累積接種率を集計した。その結果、個別案内を受けた世代(2004~09年度生まれ)では平均16.16%、積極的勧奨が再開された世代(2010年度生まれ)では2.83%と、積極的勧奨再開後も接種率が回復していない実態が明らかとなった。本研究結果は、JAMA Network Open誌2024年7月16日号に掲載された。

口臭と認知症との関連〜11年間の国内フォローアップ調査

 社会的交流の頻度が低いと潜在的な認知症リスクが増加する。口臭はアルツハイマー病を含む認知症リスクを増加させる可能性がある。東京医科歯科大学のDuc Sy Minh Ho氏らは、口臭と認知症との関連を調査した。Journal of Alzheimer's Disease Reports誌2024年5月17日号の報告。  秋田県・横手市のJPHCプロスペクティブ研究(Japan Public Health Center-based Prospective Study)を用いて、検討を行った。対象は、2005年5月〜2006年1月に歯科検診および自己申告調査を行った56〜75歳の1,493人。認知症発症のフォローアップ調査は、2006〜16年の介護保険データを用いて行った。口臭のレベルに応じて、口臭なし群、軽度の口臭群、重度の口臭群に分類した。口臭が認知症に及ぼすハザード比を推定するため、Cox比例ハザードモデルを用いた。感度分析には、逆確率重み付けCoxモデルを用いた。

オーラルフレイルは死亡リスクと独立して関連

 1万人以上の日本人高齢者を対象に、オーラルフレイルと死亡リスクの関連を調べる前向きコホート研究が行われた。その結果、オーラルフレイルのある人はない人と比べて、身体的フレイルや心理的フレイルとは独立して、死亡リスクが高いことが明らかとなった。早稲田大学スポーツ科学学術院の渡邉大輝氏らによる研究であり、「Experimental Gerontology」6月15日号に掲載された。  口の健康は食事や会話において重要であり、口の機能を維持するためのオーラルフレイル対策が注目されている。また、オーラルフレイルは高齢者の死亡や障害のリスク上昇と関連することが報告されている。しかし、オーラルフレイルと死亡リスクとの関連について、身体的フレイルの影響を取り除いて解析した研究は少ない。

オミクロン対応2価コロナワクチン、半年後の予防効果は?/感染症学会・化学療法学会

 第98回日本感染症学会学術講演会 第72回日本化学療法学会総会 合同学会が、6月27~29日に神戸国際会議場および神戸国際展示場にて開催された。本学会では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する最新知見も多数報告された。長崎大学熱帯医学研究所の前田 遥氏らの研究チームは、2021年7月から国内での新型コロナワクチンの有効性を長期的に評価することを目的としてVERSUS研究を開始しており、これまで断続的にその成果を報告している。

日本における頭痛障害、片頭痛の有病率調査の正確性は

 疫学データを収集するために実施されるアンケート調査は、誤分類を起こす可能性がある。大阪・富永病院の竹島 多賀夫氏らは、頭痛に関するアンケートを分析し、どの質問が片頭痛以外の分類につながっているかを評価した。BMC Neurology誌2024年5月25日号の報告。  19〜74歳の個人医療請求データと組み合わせた匿名調査をDeSCヘルスケアより入手し、一次性頭痛障害(片頭痛、緊張型頭痛、群発性頭痛、その他の頭痛障害)の患者割合を調査した。片頭痛を判定する6つの基準を用いて、その他の頭痛障害を有する人が、アンケートにどのように回答したかを調査した。

夜勤とギャンブル利用の関係

 日本人の労働者2万人以上を対象とした横断研究の結果、夜勤はギャンブルの利用と関連しており、夜勤のある人ほど、ギャンブルから生活や健康などの問題が発生する可能性が高いことが明らかとなった。慶應義塾大学 医学部衛生学公衆衛生学教室 HTA公的分析研究室の吉岡貴史氏らによる研究であり、「Addictive Behaviors」に5月23日掲載された。  夜勤を含むシフト勤務者の睡眠に関する問題は、「交代勤務睡眠障害」と呼ばれる。睡眠の質が悪いとアルコールや睡眠補助薬の多用につながる可能性があり、反対に、覚醒を維持するためにカフェインやタバコなどの物質を常用してしまうこともある。

スパイロなしでも胸部X線画像で呼吸機能が予測可能!?

 スパイロメトリーなどを用いた呼吸機能検査は、喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの呼吸器疾患の管理に不可欠な検査である。しかし、高齢者や小児などでは正確な評価が困難な場合がある。また、新型コロナウイルス感染症流行時には、感染リスクを考慮して実施が控えられるなど、実施が制限される場合もある。そこで、植田 大樹氏(大阪公立大学大学院医学研究科人工知能学 准教授)らの研究グループは、14万枚超の胸部X線画像をAIモデルの訓練・検証に使用して、胸部X線画像から呼吸機能を推定するAIモデルを開発した。その結果、本AIモデルによる呼吸機能の推定値は、実際の呼吸機能検査の測定値と非常に高い一致率を示した。本研究結果は、Lancet Digital Health誌オンライン版2024年7月8日号で報告された。

「孤食」の人は自殺リスクが2.8倍に?

 日本の高齢者4.6万人を7年間追跡し、社会的つながりと自殺との関連を調べたところ、「孤食」の状態にある人は、自殺死亡のリスクが約2.8倍、高かったという推計結果が発表された。日本福祉大学社会福祉学部の斉藤雅茂氏らによる研究であり、「Social Science & Medicine」4月号に掲載された。  日本では依然として、国際的に見て自殺率が高い。社会的孤立の問題が指摘されているが、個人の社会的つながりに関する多様な指標と自殺死亡を検証した研究は少ない。また、日本では50~59歳の年齢層の自殺者数が最も多いが、70~79歳と80歳以上の自殺者数を合計するとそれを上回る。そのような中、高齢者の自殺に関する研究は不足している。