日本発エビデンス|page:3

限局型小細胞肺がんへのデュルバルマブ地固め、日本人でも有効(ADRIATIC)/日本肺癌学会

 限局型小細胞肺がん(LD-SCLC)患者を対象とした国際共同第III相無作為化比較試験「ADRIATIC試験」の第1回中間解析において、同時化学放射線療法(cCRT)後のデュルバルマブ地固め療法が全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)を有意に改善したことが報告されている1)。本試験の日本人サブグループ解析の結果について、善家 義貴氏(国立がん研究センター東病院)が第65回日本肺癌学会学術集会で発表した。 ・試験デザイン:国際共同第III相無作為化比較試験 ・対象:I~III期(I/II期は外科手術不能の患者)でPS0/1のLD-SCLC患者のうち、cCRT後に病勢進行が認められなかった患者730例(PCIの有無は問わない) ・試験群1(デュルバルマブ群):デュルバルマブ(1,500mg、cCRT後1~42日目に開始して4週ごと)を最長24ヵ月 264例(日本人19例)

第2世代抗精神病薬治療104週間の最終治療結果〜国内JUMPs試験

 CNS薬理研究所の石郷岡 純氏らは、アリピプラゾール、ブロナンセリン、パリペリドンの104週間自然主義的研究である統合失調症に対する有用な薬物治療プログラム(JUMPs)試験の最終結果を報告した。BMC Psychiatry誌2024年9月5日号の報告。  本研究は、日本のリアルワールドにおける、第2世代抗精神病薬(SGA )3剤(アリピプラゾール、ブロナンセリン、パリペリドン)の長期的な有用性を検討するためのオープンラベル多施設共同ランダム化平行群間比較試験として実施された。対象は、抗精神病薬による治療または切り替えによる治療を必要とした20歳以上の統合失調症患者。主要エンドポイントは、104週にわたる治療中止率とした。副次的エンドポイントには、寛解率、個人的・社会的機能遂行度尺度(PSP)、安全性、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)、QOL(EuroQol-5 dimension[(EQ-5D])を含めた。

日本人治療抵抗性うつ病患者に対するブレクスピプラゾール2mg補助療法の長期有用性

 うつ病患者では、抗うつ薬単独療法で治療反応が不十分な場合が少なくない。治療抵抗性うつ病に対するブレクスピプラゾール補助療法の有効性および安全性は、プラセボ対照ランダム化多施設共同並行群間第II/III相試験であるBLESS試験において確認されている。BLESS試験は、抗うつ薬単独療法で効果不十分であった日本人治療抵抗性うつ病患者740例を対象に、補助療法として6週間のブレクスピプラゾール1mg/日または2mg/日をプラセボと比較した試験である。関西医科大学の加藤 正樹氏らは、日本人治療抵抗性うつ病患者に対するブレクスピプラゾール2mg補助療法の52週間にわたる長期安全性および有効性を評価するため、本検討を行った。CNS Drugs誌オンライン版2024年10月18日号の報告。

多発性骨髄腫におけるCAR-T細胞の製造不良の要因/京都大学

 CAR-T細胞療法は、再発難治多発性骨髄腫の管理を大幅に改善した。しかしCAR-T細胞には、製造過程で一部に発生する細胞増殖不良による「製造不良」という問題がある。製造不良は治療の大きな遅れや、その間の病勢進行につながるため、治療計画に重大な影響を与える。製造不良の実態把握とリスク因子の同定が急務とされていた。  そのようななか、骨髄腫患者におけるCAR-T細胞製造不良リスクを特定するため、日本でide-cel(商品名:アベクマ)治療を受けた患者の全国コホート研究が実施された。対象はide-cel投与のための白血球アフェレーシスを受けた患者である。

「医療費が負担だった」8割、がん患者が感じている経済的不安/日本癌治療学会

 「いくらかかるかわからない」「費用が心配で高い治療を受け入れられない」。がん治療にかかる費用は病院の会計窓口で聞くまでわからないというケースも少なくないだろう。NPO法人キャンサーネットジャパンは、がん患者が感じている、がん治療への経済的負担についてのアンケート結果を第62回日本癌治療学会学術集会で発表した。  調査対象は20歳以上の日本のがん治療経験者、調査期間は2024年8月8日~9月1日で、1,117名から回答を得ている。  61%の治療経験者はがんになる前から治療費の備えをしていた。それにもかかわらず、約8割(78%)が、がん治療中に医療費が負担だと感じていた。

再発・転移子宮頸がんへのtisotumab vedotin、日本人でも有望な結果/日本癌治療学会

 再発・転移子宮頸がんに対する新規ADC・tisotumab vedotinは、担当医師の選択による化学療法と比較して全生存率を有意に改善したことが昨年の欧州臨床腫瘍学会(ESMO2023)で報告された。この国際共同第III相ランダム化非盲検試験innovaTV 301の日本人のサブグループの解析結果を、第62回日本癌治療学会学術集会(10月24~26日)において久留米大学の西尾 真氏が発表した。 ・対象:再発・転移子宮頸がん患者(化学療法+ベバシズマブ、抗PD-(L)1療法後に病勢進行) ・試験群:tisotumab vedotin(2.0mg/kg、3週ごと:TV群) 対照群:医師選択の化学療法(トポテカン、ビノレルビン、ゲムシタビン、イリノテカン、ペメトレキセド:CT群) ・評価項目: [主要評価項目]全生存期間(OS) [副次評価項目]無増悪生存期間(PFS)、奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、安全性

日本人の認知機能にはEPA/DHAに加えARAも重要―脳トレとの組合せでの縦断的検討

 パズルやクイズなどの“脳トレ”を行う頻度の高さと、アラキドン酸(ARA)やドコサヘキサエン酸(DHA)という長鎖多価不飽和脂肪酸(LCPUFA)の摂取量の多さが、加齢に伴う認知機能低下抑制という点で、相加的に働く可能性を示唆するデータが報告された。また3種類のLCPUFAの中で最も強い関連が見られたのは、DHAやエイコサペンタエン酸(EPA)ではなくARAだという。サントリーウエルネス(株)生命科学研究所の得田久敬氏、国立長寿医療研究センター研究所の大塚礼氏らの研究結果であり、詳細は「Frontiers in Aging Neuroscience」に8月7日掲載された。  認知機能の維持には、食習慣や運動習慣、脳を使うトレーニング“脳トレ”などを組み合わせた、多面的なアプローチが効果的であると考えられている。ただ、それらを並行して行った場合の認知機能に対する影響を、縦断的に追跡した研究報告は少ない。得田氏らは、栄養関連で比較的エビデンスの多いLCPUFAと脳トレの組み合わせが、加齢に伴う認知機能低下を抑制するのではないかとの仮説の下、以下の検討を行った。

運動しても血圧が低下しない人とは?

 運動は血圧を低下させるのに有効だが、病態生理学的状態、運動の種類、地域による効果の違いはよくわかっていない。今回、福岡大学の末松 保憲氏らによる系統的レビューとメタ解析の結果、健康人や高血圧などの生活習慣病患者では運動の種類にかかわらず収縮期血圧が低下したが、心血管疾患患者では低下しなかったことがわかった。Hypertension Research誌オンライン版2024年11月1日号に掲載。

MET exon14スキッピングNSCLC、グマロンチニブの日本人データ(GLORY)/日本肺癌学会

 グマロンチニブは、METチロシンキナーゼのATP結合部位を選択的かつ競合的に阻害する薬剤であり、既存のテポチニブ、カプマチニブと同様の作用機序を有する。グマロンチニブは、MET遺伝子exon14スキッピング変異陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)を適応とする薬剤として、本邦では2024年6月に製造販売承認を取得し、同年10月に発売された。本承認の評価試験である国際共同第Ib/II相試験「GLORY試験」の第II相パートにおける、全体集団および日本人集団の結果について、後藤 功一氏(国立がん研究センター東病院)が第65回日本肺癌学会学術集会で報告した。

NSCLCへのニボルマブ+イピリムマブ±化学療法、実臨床の有効性・安全性(LIGHT-NING第4回中間解析)/日本肺癌学会

 国際共同第III相試験CheckMate 9LA試験、CheckMate 227試験の結果に基づき、進行・再発非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療として、ニボルマブ+イピリムマブ±化学療法が保険適用となり、実臨床でも使用されている。2試験の有効性の成績は、少数例ではあるものの日本人集団が全体集団よりも良好な傾向にあった一方、Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)の発現割合は、日本人集団が全体集団よりも高い傾向にあったことが報告されている。そこで、ニボルマブ+イピリムマブ+化学療法(CheckMate 9LAレジメン)、ニボルマブ+イピリムマブ(CheckMate 227レジメン)を使用した患者のリアルワールドデータを収集するLIGHT-NING試験が実施された。本試験の第4回中間解析の結果について、山口 哲平氏(愛知県がんセンター呼吸器内科部)が第65回日本肺癌学会学術集会で発表した。

ビタミンD値が低いとサルコペニアのリスクが高い可能性

 血清ビタミンD値が低い高齢者は骨格質量指数(SMI)が低くて握力が弱く、サルコペニアのリスクが高い可能性のあることが報告された。大阪大学大学院医学系研究科老年・総合内科学の赤坂憲氏らの研究結果であり、詳細は「Geriatrics & Gerontology International」に8月1日掲載された。  サルコペニアは筋肉の量や筋力が低下した状態であり、移動困難や転倒・骨折、さらに寝たきりなどのリスクが高くなる。また日本の高齢者対象研究から、サルコペニア該当者は死亡リスクが男性で2.0倍、女性で2.3倍高いことも報告されている。

胃がん1次治療のニボルマブ+化学療法、承認後のリアルワールドデータ/日本癌治療学会

 進行再発胃がん1次治療に対するニボルマブ+化学療法は、CheckMate 649試験およびATTRACTION-4試験の結果に基づき、本邦では2021年11月に承認された。本レジメンの実臨床での有用性を検討する観察試験であるG-KNIGHTが行われ、第62回日本癌治療学会学術集会(10月24~26日)では、倉敷中央病院の仁科 慎一氏が本試験の2回目の解析結果を発表した。今回の解析は2023年11月までのデータに基づいて実施された。  主な結果は以下のとおり。 ・2021年11月~2023年6月に1次治療としてニボルマブ+化学療法を受けた切除不能・HER2陰性胃がん患者を対象に、日本全国23施設から539例が登録され、527例が解析対象となった。 ・追跡期間中央値は10.3ヵ月(SD 6.7~15.0)、年齢中央値は70.3歳(24~87)、65.5%が男性、90.9%がECOG PS 0または1であった。

せん妄で認知症リスク5倍~日本の入院患者26万例のデータ

 せん妄は、高齢者、とくに高齢入院患者の意識障害に影響を及ぼすことが多い。近年、せん妄歴と認知症リスク上昇との関連を報告したエビデンスが増加している。しかし、多くの研究は、主に患者数の少ない術後およびICU患者に焦点が当てられており、範囲が限定されているため、適応範囲が広いとはいえない。大阪医科薬科大学の南 博也氏らは、入院患者全体を対象に、せん妄の発生率およびその後の認知症発症リスクを調査した。さらに、入院中のせん妄発現とその後の認知症発症との相関も調査した。Frontiers in Psychiatry誌2024年9月13日号の報告。

乳がんへのドセタキセルとパクリタキセル、眼科有害事象リスクに差/日本癌治療学会

 乳がん周術期療法におけるドセタキセルとパクリタキセルの眼科有害事象のリスクを比較した結果、ドセタキセルはパクリタキセルと比較して流涙症のリスクが有意に高かった一方で、黄斑浮腫や視神経障害などのリスクは有意差を認めなかったことを、東京大学の祝 千佳子氏が第62回日本癌治療学会学術集会(10月24~26日)で発表した。  タキサン系薬剤は好中球減少症や末梢神経障害などさまざまな有害事象を来すことが広く知られているが、眼科有害事象についても報告がある。しかし、ドセタキセルとパクリタキセルの間で眼科有害事象を比較した研究は乏しい。そこで研究グループは、早期乳がんの周術期療法としてドセタキセルまたはパクリタキセルを使用した群で、眼科有害事象の発現リスクに差があるかどうかを比較するために研究を実施した。

高リスクmHSPCに対するアビラテロン、エンザルタミド、アパルタミドの比較~日本のリアルワールドデータ

 転移を有するホルモン感受性前立腺がん(mHSPC)に対する、アビラテロン、エンザルタミド、アパルタミドという3剤のアンドロゲン受容体経路阻害薬(ARPI)の有効性と安全性を比較した多施設共同研究の結果、全生存期間(OS)、がん特異的生存期間(CSS)、去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)までの期間について、3剤の差はみられなかった。東京慈恵会医科大学の柳澤 孝文氏らによるProstate誌オンライン版2024年10月17日号掲載の報告。  本研究では、2015年9月~2023年12月にARPI+アンドロゲン除去療法を受けたmHSPC患者668例の記録を後ろ向きに解析した。LATITUDE基準に基づき、アビラテロン、エンザルタミド、アパルタミドの比較は高リスク患者のみで行われ、前立腺特異抗原(PSA)低下率95%および99%達成などのPSA反応、OS、CSS、CRPCまでの期間、有害事象(AE)の発生率が比較された。すべての2群間比較において、交絡因子の影響を最小化するために傾向スコアマッチングが用いられた。

“風邪”への抗菌薬処方、医師の年齢で明確な差/東大

 日本における非細菌性の急性呼吸器感染症に対する抗菌薬の処方実態を調査した結果、高齢院長の診療所、患者数が多い診療所、単独診療の診療所では抗菌薬を処方する割合が高く、とくに広域スペクトラム抗菌薬を処方する可能性が高かったことを、東京大学大学院医学系研究科の青山 龍平氏らがJAMA Network Open誌2024年10月21日号のリサーチレターで報告した。  日本では2016年より薬剤耐性(AMR)対策アクションプランなど、適切な抗菌薬処方を推し進める取り組みが行われているが、十分な成果は出ていない。そこで研究グループは、急性呼吸器感染症が不適切な抗菌薬処方を受けることが多い疾患の1つであることに注目し、非細菌性の急性呼吸器感染症に対する抗菌薬処方とそれに関連する診療所の特性を調査した。

歯科受診で介護コストが抑制される可能性

 歯科を受診することが、その後の要介護リスク低下や累積介護費の抑制につながる可能性を示唆するデータが報告された。特に予防目的での歯科受診による抑制効果が顕著だという。東北大学大学院歯学研究科国際歯科保健学分野の竹内研時氏、木内桜氏らの研究グループによる論文が、「The Journals of Gerontology. Series A, Biological Sciences and Medical Sciences」に8月5日掲載された。  超高齢社会の進展を背景に増大する介護費への対策が、喫緊の社会的課題となっている。介護費増大の要因として脳卒中や心血管疾患、認知機能低下などが挙げられるが、それらのリスク因子として、歯周病や咀嚼機能の低下といった歯科で治療可能な状態の関与を示唆する研究報告が増えている。このことから、適切な歯科治療によって要介護リスクが低下し、介護コストが抑制される可能性が考えられるが、そのような視点での検証作業はまだ行われていない。これを背景として竹内氏らは、全国の自治体が参加して行われている「日本老年学的評価研究(JAGES)」のデータを用いた研究を行った。

HER2+乳がんが術前療法後に陰転、長期予後への影響は?/日本癌治療学会

 術前薬物療法を行ったHER2陽性早期乳がん患者が手術検体を用いた術前薬物療法後の再検査でHER2陰性になった場合は、HER2陽性が保持されている場合と比べて長期予後が不良である可能性を、明治薬科大学/第一三共の中谷 駿介氏が第62回日本癌治療学会学術集会(10月24~26日)で発表した。  これまでの研究により、HER2陽性早期乳がんで、術前薬物療法を実施して残存病変が確認された症例の約8~47%でHER2が陽性から陰性に変化するHER2陰転化が報告されている。術前薬物療法後の手術検体を用いたHER2再評価は現時点で必須となっていないため、HER2陰転化症例に対しても術後薬物療法として抗HER2薬が投与されている実情がある。他方、HER2陰転化が予後に与える影響は研究によって結論が異なっている。HER2陰転化が予後に与える影響を明らかにすることで、術前薬物療法後の手術検体を用いたHER2再評価の必要性の再考、並びにHER2陰転化症例に対する最適な術後薬物療法の選択に寄与できる可能性がある。そこで、研究グループは、HER2陰転化が予後に与える影響を検討するために、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。

亜鉛欠乏でコロナ重症化リスクが上昇か/順天堂大

 亜鉛は免疫機能に重要な役割を果たす微量元素であり、亜鉛欠乏が免疫系を弱体化させる可能性があることが知られている。順天堂大学の松元 直美氏らの研究チームは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者における血清亜鉛濃度とCOVID-19の重症度との関連を調査したところ、患者の40%近くが血清亜鉛欠乏状態であり、血清亜鉛濃度が低いほど、COVID-19の重症度が高いことが判明した。本研究は、International Journal of General Medicine誌2024年10月16日号に掲載された。  本研究では、2020年4月~2021年8月にCOVID-19で入院した467例(18歳以上)を対象に、入院時の血清亜鉛濃度を測定した。

日本人アルツハイマー病のアジテーションに対するブレクスピプラゾール治療

 香川大学の中村 祐氏らは、日本人アルツハイマー病患者におけるアジテーション(攻撃的行動および発言、非攻撃的行動の亢進、焦燥を伴う言動等)の治療に対するブレクスピプラゾールの有効性および安全性を評価した。Alzheimer's & Dementia誌オンライン版2024年10月6日号の報告。  本研究は、第II/III相多施設ランダム化二重盲検プラセボ対照並行群間試験として実施された。アルツハイマー病に伴うアジテーションを有する患者は、ブレクスピプラゾール1mg/日群または2mg/日群、プラセボ群に3:4:4でランダムに割り付けられ、10週間投与を行った。主要エンドポイントは、ベースラインから10週目までのCohen-Mansfield Agitation Inventory(CMAI)合計スコアの変化とした。