日本発エビデンス|page:73

高齢者の高血圧診療ガイドライン発表―日常診療の問題に焦点

 日本老年医学会は7月20日に「高齢者高血圧診療ガイドライン(JGS-HT2017)」を発表した。本ガイドラインでは、日常診療で生じる問題に基づいてClinical Question(CQ)を設定しており、診療における方針決定をするうえで、参考となる推奨を提示している。  高齢者においては、生活習慣病管理の目的は脳血管疾患予防だけでなく、生活機能全般の維持という側面もあるため、フレイルや認知症などの合併症を考慮したガイドラインが重要と考えられている。そのため、高齢者高血圧診療ガイドライン2017では、治療介入によるアウトカムを認知症や日常生活活動(ADL)に設定して行われたシステマティックレビューが基盤となっている。以下にその概略を紹介する。

高濃度乳房における超音波検査の有効性/乳癌学会

 マンモグラフィによる乳がん検診では、高濃度乳房で診断精度が低下することが問題視されている。一方、超音波検査は乳房構成に影響されずに腫瘍を描出できるため、マンモグラフィの弱点を補完できるものとして期待される。高濃度乳房の多い若年者(40代女性)の診断性向上を目指し、J-START試験が行われている。このJ-START試験の宮城県におけるコホートを解析した結果が、第25回日本乳癌学会学術総会において、東北大学 乳腺内分泌外科・東北医科薬科大学 乳腺・内分泌外科の鈴木 昭彦氏により発表された。

家族の増加で脳卒中リスクは増える?~JPHC研究

 これまで、家族の増加を含めた家族構成の変化と脳卒中リスクとの関連を検討した研究はなかった。今回、わが国の多目的コホート研究であるJPHC研究(Japan Public Health Center-based Prospective Study、主任研究者:津金昌一郎氏)で日本人の家族構成の変化と脳卒中発症を検討したところ、家族(とくに配偶者)を喪失した男性は脳梗塞リスクが高く、一方、家族(とくに親)が増えた女性は家族構成が変わっていない女性より脳出血リスクが高かった。PLOS ONE誌2017年4月13日号に掲載。

ピロリ除菌療法、エソメプラゾール vs.ラベプラゾール

 CYP2C19代謝活性は、PPIを含むHelicobacter pylori除菌療法の有効性に影響する。弘前大学の下山 克氏らは、異なるCYP2C19遺伝子型を有する日本人において、CYP2C19による代謝を受けないラベプラゾールあるいはエソメプラゾールを用いた3剤併用1次除菌の有効性を比較する無作為化試験を実施した。その結果、除菌率は共に80%未満であったが、各CYP2C19遺伝子型群において同等に有効であることが示された。Internal Medicine誌オンライン版に2017年7月1日に掲載。

高力価スタチンで糖尿病発症リスク2.6倍

 脂質降下薬が糖尿病発症に関連するかどうか調べるために、日本大学薬学部の大場 延浩氏らが、脂質異常症の日本人労働者約7万例を対象とした後ろ向きコホート研究を実施した。その結果、糖尿病の臨床的危険因子の調整後も、スタチン使用により糖尿病発症リスクが1.9~2.6倍に増加したことが示された。BMJ open誌2017年6月30日号に掲載。

腫瘍溶解ウイルス、ペムブロリズマブとの併用で医師主導治験へ

 オンコリスバイオファーマ株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:浦田泰生)は2017年06月27日、国立がん研究センター東病院より腫瘍溶解ウイルス テロメライシン(OBP-301)と他の治療法との併用による効果検討に関する医師主導治験実施申請が、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)に提出された旨を発表した。

BMI正常でも低体重で生まれた女性の糖尿病に注意

 出生時体重は成人発症型糖尿病(DM)の胎児決定因子とみなされているが、BMIとの関連における公衆衛生上の重要性は不明である。今回、国立がん研究センターの片野田 耕太氏らが実施した女性看護師コホートでの研究で、出生時体重およびその在胎期間でのパーセンタイルスコアが成人発症型DMと関連すること、またBMIが正常低値の女性において出生時体重が2,500g未満だった人は成人発症型DMリスクが高いことが示唆された。Journal of epidemiology誌オンライン版2017年6月20日号に掲載。

抗精神病薬の副作用、医師にどれだけ伝えられているか:藤田保健衛生大

 抗精神病薬の有害事象は服薬アドヒアランスに著しい影響を及ぼすことがある。藤田保健衛生大学の波多野 正和氏らは、患者から報告されることの少ない抗精神病薬の有害事象およびそのような症状が残存している理由について調査した。Clinical psychopharmacology and neuroscience誌2017年5月31日号の報告。

鶏卵アレルギー予防、生後6ヵ月から微量鶏卵摂取を推奨 日本小児アレルギー学会提言

 6月16日、日本小児アレルギー学会から「鶏卵アレルギー発症予防に関する提言」が公表された。提言では、鶏卵アレルギー発症予防の方策として、アトピー性皮膚炎の乳児において、医師の管理のもと生後6ヵ月から微量の鶏卵摂取を推奨。鶏卵摂取はアトピー性皮膚炎が寛解した上で進めることが望ましいとしている。この提言は2016年に発刊された「食物アレルギー診療ガイドライン2016」および国立成育医療センターが報告したPETITスタディに基づく。

太っていないNAFLD患者で心血管リスク高い

 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は心血管疾患(CVD)発症のリスク因子として知られている。NAFLDの約20%は非肥満者に発症するが、過体重でないNAFLD患者とCVD発症リスクとの関連はまだ解明されていない。今回、京都府立医科大学の橋本 善隆氏らが、わが国のコホート研究の事後解析で調査したところ、過体重でないNAFLD患者でCVD発症リスクが高いことが示された。著者らは、さらなるCVDイベントを防ぐために、過体重でなくともNAFLDに注意を払うべきとしている。Medicine誌2017年5月号に掲載。

たこつぼ症候群の季節変動~日本のコホート研究

 たこつぼ症候群(TTS)の発症における季節的な変動が報告されているが、季節と患者特性の関係や季節による転帰への影響は不明である。東京大学の磯貝 俊明氏らがわが国のDiagnosis Procedure Combination(DPC)データベースを用いて検討したところ、TTSの院内死亡率に季節の影響がないようにみえるものの、月間変動がある可能性が示唆された。また、TTS患者における男性の割合、精神疾患・敗血症患者の割合、心室性不整脈発症率に有意な季節変動がみられた。Heart and vessels誌オンライン版2017年6月7日号に掲載。

カペシタビンによる術後補助化学療法でHER2陰性乳がんの予後を改善/NEJM

 標準的な術前補助化学療法を受け、病理検査で浸潤がんの遺残が確認されたヒト上皮増殖因子受容体2型(HER2)陰性乳がん患者において、標準的な術後治療にカペシタビンによる術後補助化学療法を加えると、無病生存(DFS)と全生存(OS)が改善することが、国立病院機構 大阪医療センターの増田 慎三氏らが実施したCREATE-X試験で示された。研究の成果は、NEJM誌2017年6月1日号に掲載された。HER2陰性原発乳がんの術前補助化学療法の病理学的完全奏効(pCR)率は13~22%で、non-pCR例の再発リスクは20~30%とされ、これら遺残病変がみられるHER2陰性例への術後補助化学療法は確立されていない。カペシタビンはフルオロウラシルの経口プロドラッグで、消化器がんの術後補助化学療法や転移性乳がん(主に2次治療)の治療薬として用いられている。

日本人の脳卒中予防に最適な身体活動量~JPHC研究

 欧米人より出血性脳卒中が多いアジア人での身体活動量と脳卒中の関連についての研究は少ない。わが国の多目的コホート研究であるJPHC研究(Japan Public Health Center-based Prospective Study、主任研究者:津金昌一郎氏)で、脳卒中予防のための身体活動の最適レベルを検討したところ、日本人では過度の激しい活動は出血性脳卒中の予防に有益ではなく、不利益にさえなる可能性があることが示唆された。今回の結果から、脳卒中予防には中等度の活動による中等度の身体活動量が最適であろうとしている。Stroke誌オンライン版2017年6月5日号に掲載。

尿pHで糖尿病発症を予測できるか~日本の大規模コホート

 これまでに2型糖尿病患者の低い尿pHとの関連が明らかになっているが、尿中pHと2型糖尿病の発症との関連は不明である。今回、京都府立医科大学の橋本 善隆氏らは、わが国における男性の大規模コホート研究で、低い尿pHが糖尿病の独立した予測因子となることを報告した。尿pHが簡単で実用的な糖尿病のマーカーである可能性が示唆された。Diabetes research and clinical practice誌オンライン版2017年5月9日号に掲載。