日本発エビデンス|page:72

糖尿病のリスクが放射線によるがんリスクより増加

 2011年の福島原発事故は、住民の生活習慣病や放射線被ばくなどの複数のリスクの増加と恐怖を引き起こした。福島県立医科大学の村上 道夫氏らが、原発事故関連の放射線によるがんリスクと糖尿病リスクの増加について損失余命(LLE)を用いて評価したところ、糖尿病関連のLLEが放射線被ばくによるがん関連のLLEを大きく上回った。PLOS ONE誌2017年9月28日号に掲載。

LDL-Cが低い人でもスタチンは有用か

 LDLコレステロール(LDL-C)の管理とスタチン治療戦略に関する推奨は、ガイドラインによって異なる。国立国際医療研究センターの辻本 哲郎氏らの前向きコホート研究の結果、スタチン治療はLDL-C値が低い場合も高リスク患者の全死亡率を下げるために有効であることが示唆された。The American Journal of Cardiology誌オンライン版2017年8月30日号に掲載。

ランジオロールの心臓手術後AF抑制作用

 ランジオロールは、心臓手術後1週間以内の心房細動(AF)発症を抑制することが、高知医科大学の田村 貴彦氏らによる研究で明らかになった。また、ランジオロール非投与群と比較して、院内死亡率および合併症発症率に有意な差は認められなかった。Journal of Clinical Anesthesia誌2017年11月号(オンライン版2017年7月21日号)の報告。

統合失調症とω3脂肪酸:和歌山県立医大

 統合失調症患者の機能的アウトカムに認知機能障害は強く関連しているが、その病態生理はよくわかっていない。健常人および精神神経疾患患者の認知機能に対するω3脂肪酸の関与が注目されている。和歌山県立医科大学の里神 和美氏らは、統合失調症患者におけるω3脂肪酸と認知機能、社会的機能、精神症状との関連を調査した。Schizophrenia research誌2017年5月18日号の報告。

飲酒でのフラッシング反応別の膀胱がんリスク~JPHC研究

 わが国の多目的コホート研究(JPHC研究、主任研究者:津金昌一郎氏)において、飲酒量と膀胱がんの関連を、アセトアルデヒド代謝能の代用マーカーであるフラッシング反応を含めて検討した。その結果、フラッシング反応のある男性では、飲酒量と膀胱がんリスクとの間に逆U字型の関連を示した。また、飲酒とフラッシング反応との交互作用は有意傾向を示し、飲酒によるアセトアルデヒドが膀胱がんリスクと関連するという仮説を支持する可能性を示した。International journal of cancer誌オンライン版2017年9月5日号に掲載。

日本人女性、GIの高い食事はうつになりにくい?

 西洋諸国よりも食事のグリセミックインデックス(GI)と血糖負荷(GL)が高いアジア人集団において、これらとうつ症状との関連についての疫学的エビデンスは限定的であり、結論は出ていない。今回、東京大学の研究グループの横断研究で、日本人の若年および中年女性において、食事のGIがうつ症状と逆相関し、GLとは関連がなかったことが示された。European journal of nutrition誌オンライン版2017年7月20日号に掲載。

認知症発症への血圧の影響、ポイントは血圧変動:九州大

 これまでの研究では、診察室血圧変動の大きさが、認知障害や認知症のリスク因子であることが報告されている。しかし、家庭での血圧測定によって評価された日々の血圧変動と認知症発症との関連を調べた研究はなかった。九州大学の大石 絵美氏らは、久山町研究に登録されている日本人高齢者の日常血圧変動と認知症リスクとの関連を調査した。Circulation誌2017年8月8日号の報告。

メタボの予防法は性別によって異なる?~亘理町研究

 日本において、メタボリックシンドローム(MetS)とプレメタボリックシンドローム(preMetS)は男性でより多くみられる。しかし、これらの代謝障害と生活習慣因子との関係に性別による違いがあるかどうかは不明である。東北労災病院の服部 朝美氏らは、30歳以上の一般集団の日本人における、MetSとpreMetSに対する男女別の生活習慣因子との関連を調べた。その結果、MetSとpreMetSに関連する生活習慣因子は男女で異なり、著者は「MetSの効果的な予防には、性別によって特有の生活習慣の変更が必要であることが示唆された」とまとめている。Internal medicine誌2017年8月10日号掲載の報告。

認知症に対する抗精神病薬処方、治療反応の予測因子は:慈恵医大

 東京慈恵会医科大学の永田 智行氏らは、精神病性攻撃的症状を有するアルツハイマー型認知症に対する、非定型抗精神病薬の8週間の治療継続および治療反応を、CATIE-AD(Clinical Antipsychotic Trials of Intervention Effectiveness-Alzheimer's Disease)データを用いて調査した。Journal of Alzheimer's disease誌オンライン版2017年8月9日号の報告。

自宅に退院する急性脳卒中患者を予測する5つの因子

 急性期脳卒中入院患者の退院計画は、医療資源の合理的な利用を促進するとともに、臨床アウトカムを改善し患者の経済的負担を軽減する。とくに、退院先の予測は退院計画に重要であることから、京都大学の西垣 昌和氏らのグループは、急性脳卒中後に自宅に退院する可能性が高い患者を予測する5つの変数を特定し、評価モデルを開発した。本モデルは入院後早期に医療従事者が退院を適切に計画するのに役立つだろう、と著者らは記している。Stroke誌オンライン版2017年8月25日号に掲載。

日本の成人の身長低下、低出生体重が原因か

 国立成育医療研究センターの森崎 菜穂氏らが、わが国における1969年以降の出生特性と成人の平均身長の推移を調査したところ、20世紀は増加し続けていた成人の身長は1980年生まれから低下し始めていた。一方、低出生体重(LBW)での出生はU字型を示し、成人の身長の低下がLBW出生の増加に起因する可能性が示された。Journal of Epidemiology and Community Health誌オンライン版2017年8月19日号に掲載。

日本人妊婦のうつ病診断、適切なカットオフ値はいくつか

 妊娠中のうつ病は、母親と子供の両方に悪影響を及ぼす。出産前のうつ病は、出産後のうつ病の予測因子であるため、早期発見は出産後うつ病の予防につながる可能性がある。エジンバラ産後うつ病尺度(EPDS)は、周産期によく用いられるが、妊娠中のカットオフ値については、日本人で確認されていない。国立精神・神経医療研究センターの臼田 謙太郎氏らは、日本における妊娠中期のEPDSカットオフ値を最適化するため検討を行った。Psychiatry and clinical neurosciences誌オンライン版2017年8月2日号の報告。

ベルソムラによる「せん妄予防」

 順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学の八田耕太郎氏らは、高齢救急患者における、就寝前に不眠症治療薬「ベルソムラ(一般名:スボレキサント)」投与によって、安全にせん妄を予防できることをJournal of Clinical Psychiatry誌に発表した。研究者らは本結果について、今まで実効性がなかったせん妄の療法に、薬物療法による新たなせん妄予防の道を拓いたもので、せん妄診療を治療から予防にパラダイムシフトさせる意義があるものとしている。

肝がん1次治療、レンバチニブ対ソラフェニブREFLECT試験の日本人データ/日本臨床腫瘍学会

 レンバチニブ(商品名:レンビマ)は、VEGFR1~3、FGFR1~4、PDGFRα、RET、KITを標的とした経口マルチキナーゼ阻害薬であり、進行肝細胞がん(HCC)において、従来の標準治療薬であるソラフェニブ(商品名:ネクサバール)に対する非劣性が国際無作為化オープンラベル第III相非劣性試験REFLECT試験で示されている。第15回日本臨床腫瘍学会では、同試験の日本人集団の解析結果が、国立がん研究センター東病院池田 公史氏より発表された。

抗精神病薬に関する知識は治療効果に影響するか:慶應義塾大

 統合失調症患者における、処方された抗精神病薬の知識について、データは非常に限られている。また、処方された抗精神病薬に関する患者の知識が、服薬アドヒアランスに及ぼす影響についてはよくわかっていない。慶應義塾大学の長井 信弘氏らは、これらの関連について検討を行った。Pharmacopsychiatry誌オンライン版2017年7月4日号の報告。

4種類の非定型抗精神病薬、自律神経系への影響を比較:横浜市大

 抗精神病薬は、統合失調症患者の自律神経系(ANS)機能不全に関連するが、各非定型抗精神病薬の影響は明らかになっていない。横浜市立大学の服部 早紀氏らは、リスペリドン、オランザピン、アリピプラゾール、クエチアピンの4種類の非定型抗精神病薬が、ANS活性にどのような影響を及ぼすかを調査した。Schizophrenia research誌オンライン版2017年7月12日号の報告。

都道府県間で広がる健康格差/Lancet

 東京大学大学院医学系研究科主任教授の渋谷 健司氏らによる「日本の都道府県別の疾病負荷研究(1990~2015年)」の結果が、Lancet誌オンライン版2017年7月19日号で発表された(筆頭著者は同大学助教の野村 周平氏)。1990~2015年に日本では、総じて大半の重大疾患による死亡率や身体的障害発生の低下に成功した一方で、ゆっくりとだが都道府県間の健康格差は進んでいることが明らかになった。その原因については、各都道府県間の保健システムの主なインプット(医療費、医療従事者数など)と健康アウトカムに有意な関連を見いだすことはできなかったとして、著者は「保健システムのパフォーマンス(医療の質など)を含む評価を早急に行い、都道府県格差を生み出している要因を明らかにする研究が必要である」と提言している。

日本人双極性障害患者のリチウム治療反応予測因子:獨協医大

 双極性障害患者では、機能的アウトカムに有意な影響を及ぼす認知機能障害が問題となることが多い。しかし、認知機能や機能的アウトカムの中心的な役割に対するリチウムの影響はよくわかっていない。獨協医科大学の齋藤 聡氏らは、リチウム治療中の双極性障害患者において、患者背景および臨床的変数(リチウムへの治療反応を含む)によって、認知機能および機能的アウトカムが予測されるかを検討した。Bipolar disorders誌オンライン版2017年7月10日号の報告。

脳卒中リスク、ビタミンC摂取と反比例

 日本人における食事での抗酸化ビタミンの摂取と脳卒中発症の関連についてJPHC研究(Japan Public Health Center-based Prospective Study、主任研究者:津金昌一郎氏)で検討したところ、非喫煙者においてビタミンC摂取と脳卒中全体および脳梗塞発症との逆相関が認められた。European journal of clinical nutrition誌オンライン版2017年7月12日号に掲載。