ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:97

COVID-19への抗HIV薬ロピナビル・リトナビル、RCTで有意差認めず/NEJM

 重症COVID-19入院成人患者において、抗HIV薬のロピナビル・リトナビルは標準治療よりも有効とはいえないとの見解を、中国・National Clinical Research Center for Respiratory DiseasesのBin Cao氏らが、199例を対象に行った非盲検無作為化比較試験の結果、示した。SARS-CoV-2による重症疾患の効果的な治療としての薬物療法はまだ判明していない。結果を踏まえて著者は、「重症患者においてさらなる試験を行い、効果的と思われる治療の確認・除外を行う必要がある」と述べている。NEJM誌オンライン版2020年3月18日号掲載の報告。

自転車通勤は負傷リスクを上げるか?/BMJ

 自転車通勤は、公共交通機関や自動車による通勤と比較して、がんの診断や心血管イベント、死亡が少ない一方で、負傷で入院するリスクが高く、とくに輸送関連事故による負傷リスクが高いことが、英国・グラスゴー大学のClaire Welsh氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2020年3月11日号に掲載された。英国では、自転車通勤は傷病への罹患や死亡のリスクが低いとされてきた。また、国民の自転車通勤への理解の主な障壁は、主観的および客観的な交通の危険性だが、これまでに得られた自転車と負傷に関するエビデンスの質は高くないという。

上部尿路上皮がん、術後化学療法で無病生存率改善/Lancet

 局所進行上部尿路上皮がん(UTUC)患者の治療において、腎尿管全摘除術後のゲムシタビン+プラチナ製剤併用による術後補助化学療法は、これを行わない場合に比べ無病生存(DFS)率を改善することが、英国・ランカシャー州教育病院国民保健サービス(NHS)ファンデーショントラストのAlison Birtle氏らの検討「POUT試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2020年3月5日号に掲載された。UTUCはまれな疾患で、膀胱上皮がんに比べて各病期の予後が不良とされる。UTUC患者の治療では、根治的腎尿管全摘除術後の術後化学療法の有益性に関して、国際的な合意は得られていないという。

術後肺合併症、有効な予防的介入とは/BMJ

 術後肺合併症(postoperative pulmonary complication:PPC)はよくみられる病態で、術後の合併症や死亡と関連する。英国・University College HospitalのPeter M. Odor氏らは、PPCに対する予防的介入戦略について検討し、術中の肺保護的換気や目標指向型血行動態療法の有効性を示唆する中等度の質のエビデンスはあるものの、質の高いエビデンスによって支持される介入法はないことを示した。研究の詳細は、BMJ誌2020年3月11日号に掲載された。PPCのリスクを低減するために、さまざまな介入が行われているが、実臨床での予防処置と、介入試験のアウトカムデータの不一致を示すエビデンスが報告されているという。

COVID-19、ロピナビル・リトナビルで悪化例も/JAMA

 シンガポールでSARS-CoV-2感染が確認された最初の18例の臨床所見は、軽度の気道感染症が多く、一部の患者で酸素吸入を要し、抗レトロウイルス薬による治療の臨床転帰はさまざまであったという。シンガポール・国立感染症センター(NCID)のBarnaby Edward Young氏らが、同国SARS-CoV-2感染症例の最初の経験を報告した。SARS-CoV-2感染は2019年12月に中国湖北省武漢市で発生し、中国国外で持続的なヒトからヒトへの感染が世界的に広がっている。JAMA誌オンライン版2020年3月3日号掲載の報告。

AIDS関連カポジ肉腫、有病率が高い地域での最適治療は?/Lancet

 資源が限られた地域における進行性AIDS関連カポジ肉腫に対する最適な治療戦略は「パクリタキセル+抗レトロウイルス療法(ART)」であることが、米国・AIDS Malignancy ConsortiumのSusan E. Krown氏らによる無作為化非盲検非劣性試験の結果、示された。非劣性の証明は事前に設定したマージンではできなかったが、「経口エトポシド+ART」および「ブレオマイシン+ビンクリスチン+ART」の両治療に対して優越性が示されたという。AIDS関連カポジ肉腫は、HIV患者の頻度の高い併存疾患および死亡の原因であるが、疾患頻度が最も高い低所得および中所得国では最適な治療レジメンについて系統的な評価がされていなかった。Lancet誌オンライン版2020年3月5日号掲載の報告。

ARDSの目標PaO2値、55~70mmHgの生存率/NEJM

 急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の患者に対し、動脈血酸素分圧(PaO2)の目標値を55~70mmHgに制限した酸素療法は、PaO2目標値を90~105mmHgにした酸素療法に比べ、28日生存率が上昇しないことが、フランス・フランシュ・コンテ大学のLoic Barrot氏らが行った多施設共同無作為化試験の結果、示された。ARDS患者に対する酸素療法のPaO2目標値は、55~80mmHgとすることを米国国立心肺血液研究所のARDSネットワークは推奨しているが、同閾値の妥当性を前向きに検証したデータは不足していた。研究グループは、同閾値の下限値目標がARDS患者のアウトカムを改善すると仮定して検証試験を行った。NEJM誌2020年3月12日号掲載の報告。

COVID-19患者、ウイルス排出期間中央値が20日/Lancet

 新型コロナウイルスへの感染が確認された成人入院患者について調べたところ、高齢、高Sequential Organ Failure Assessment(SOFA)スコア、Dダイマー値1μg/L超が、院内死亡リスク増大と関連することが示された。また、生存者のウイルス排出期間中央値は20.0日であった。中国・北京協和医科大学付属医院のFei Zhou氏らが、患者191例について行った後ろ向きコホート研究を報告した。Lancet誌オンライン版2020年3月9日号掲載の報告。

毎日1個の卵、アジア人は心血管疾患リスク低下の可能性/BMJ

 卵の中等度の消費(最大1日1個まで)は、心血管疾患全般のリスクを増加させず、アジア人ではむしろリスクを低下させる可能性があることが、米国・ハーバード公衆衛生大学院のJean-Philippe Drouin-Chartier氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2020年3月4日号に掲載された。卵の消費と心血管疾患リスクの関連は、この10年間、激しい議論を呼ぶ主題となっているが、これまでに得られた知見では結論が出ていないという。  研究グループは、卵の摂取と心血管疾患リスクの関連を評価する目的で前向きコホート研究を行い、この研究結果を含めたアップデートメタ解析を実施した(米国国立衛生研究所[NIH]などの助成による)。

経口ART中のHIV-1感染患者に、月1回のCAB+RPVは有効か/NEJM

 標準的な経口抗レトロウイルス療法(ART)を受けているヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)感染患者の維持療法では、長期作用型注射薬cabotegravir(CAB、インテグラーゼ阻害薬)+リルピビリン(RPV、非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬)の月1回投与への切り替えは、標準治療を継続するアプローチに対し、有効性に関して非劣性であることが、米国・ネブラスカ大学医療センターのSusan Swindells氏らによる「ATLAS試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2020年3月4日号に掲載された。HIV-1感染患者の治療では、簡略化されたレジメンの導入により、患者満足度が向上し、アドヒアランスが促進される可能性があるという。

オピオイド中止によって増大するリスクとは?/BMJ

 オピオイド治療を受けている退役軍人保健局の患者では、処方の中止により過剰摂取または自殺による死亡リスクが増大し、治療期間が長い患者ほど死亡リスクが高いことが、米国退役軍人局精神保健自殺予防部のElizabeth M. Oliva氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2020年3月4日号に掲載された。米国では、オピオイドの過剰摂取やオピオイド使用障害による死亡の増加に伴い、オピオイド処方関連リスクの軽減戦略が求められており、リスクがベネフィットを上回った時点での治療中止が推奨されている。その一方で、長期の治療を受けている患者では、治療中止後の有害事象(過剰摂取による死亡、自殺念慮、自傷行為、薬物関連イベントによる入院や救急診療部受診)の増加が報告されている。

HIVの維持療法、長期作用型注射薬の有効性は/NEJM

 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染患者の維持療法において、いずれも長期作用型注射薬であるcabotegravir(CAB、インテグラーゼ阻害薬)とリルピビリン(RPV、非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬)2剤併用の月1回投与の有効性は、経口薬3剤の毎日投与に対し非劣性であることが、英国・ロンドン大学クイーン・メアリー校のChloe Orkin氏らの「FLAIR試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2020年3月4日号に掲載された。現在の抗レトロウイルス療法(ART)の有効性は高い。そのため、進行中の薬剤開発の焦点の1つは、副作用プロファイルの改善と、治療からの離脱を低減するための利便性だという。また、長期の毎日投与レジメンは、患者に不満を生じさせたり、スティグマの原因となり、アドヒアランスを損なって治療失敗のリスクを高める可能性があることから、より受け入れやすい治療アプローチが求められている。

新薬上市にかかる研究開発費用を推定/JAMA

 英国・ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのOlivier J. Wouters氏らは、一般公開されているデータを用い新薬の上市に必要な研究開発投資を推定した。同氏らの検討はこれまでと異なり、解析対象製品が幅広く、公開されている利用可能なデータを反映していること、および基礎とした仮定コスト算出法が違うことだという。その条件を満たした新薬63製剤について調べた結果、研究開発投資額は中央値で約10億ドル、平均値で約13億ドルであったという。直近の研究では、新薬開発の平均費用は3億1,400万~28億ドルと推定され、議論の的となっていた。JAMA誌2020年3月3日号掲載の報告。

魚油サプリ、全死因死亡と心血管疾患死リスクを低下/BMJ

 魚油サプリメントの摂取は、全死因死亡および心血管疾患(CVD)死亡のリスク低下と関連し、一般集団においてCVDイベントに対して最低限の有益性をもたらす可能性があることが示された。中国・南方医科大学のZhi-Hao Li氏らが、大規模前向きコホート研究の結果を報告した。魚油サプリメントは、英国やその他の先進国でよく用いられており、最近の無作為化比較試験13件を対象としたメタ解析で、オメガ3脂肪酸サプリメントと比較して、わずかではあるが有意なCVDの予防効果が示唆された。ただし無作為化試験での魚油サプリメント摂取は、理想的な管理下で評価されたものであり、結果を大規模かつ多様な集団に一般化することは難しいことから、研究グループは、リアルライフ設定での大規模コホート研究で評価を行った。BMJ誌2020年3月4日号掲載の報告。

COVID-19、入院時の発熱例は4割程度/NEJM

 発生から当初2ヵ月間に新型コロナウイルスへの感染が確認された1,099例の臨床的特徴を調べたところ、入院時に発熱が認められたのは43.8%にとどまり、また胸部CT検査で異常所見が認められたのは56.4%と、熱症状や肺の異常所見が認められない患者が多かったという。中国・広州医科大学のWei-jie Guan氏らによる調査報告で、NEJM誌オンライン版2020年2月28日号で発表された。なお本報告は3月3日に内容が更新されている。  研究グループは、2020年1月29日までに中国本土30の省・自治区等の病院552ヵ所に入院した、新型コロナウイルスへの感染が検査で確認された1,099例について、その臨床的特徴を調査した。

大手製薬企業、他業種と比べ収益性は高いのか/JAMA

 2000~18年の大手製薬会社35社の収益性は、代表的な他業種の米国上場企業357社と比べて有意に高いが、その差について、会社の規模、会計年度、研究開発費を考慮すると、必ずしもそうとは断言できないというエビデンスが示された。米国・ベントレー大学のFred D. Ledley氏らによる検討の結果で、著者は「大手製薬会社の収益性に関するデータは、医療をより利用しやすくする根拠に基づく施策を作成するために重要とはいえるだろう」とまとめている。JAMA誌2020年3月3日号掲載の報告。

中等~重症ARDSへのIFNβ-1aは?/JAMA

 中等症~重症の急性呼吸窮迫症候群(ARDS)患者の治療において、インターフェロン(IFN)β-1aの6日間静脈内投与はプラセボと比較して、死亡と人工呼吸器非装着日数を合わせた複合スコアを改善しないことが、イタリア・ボローニャ大学のV Marco Ranieri氏らによる「INTEREST試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌2020年2月25日号に掲載された。ARDSの基盤となる主要な病態生理学的イベントは制御不能な炎症反応であり、その結果として、肺における血管漏出(vascular leakage)の増加に伴って肺胞-毛細血管関門の上皮と内皮の損傷がもたらされる。一方、上皮と内皮の細胞に発現しているCD73は、アデノシン産生を調節する酵素であり、IFNβ-1aはCD73をアップレギュレートすることで血管漏出を防止し、白血球動員を抑制するという。

nerinetide、急性期脳梗塞のEVT後の転帰改善せず/Lancet

 開発中の神経保護薬nerinetideは、急性期脳梗塞患者において、血管内血栓回収療法(EVT)施行後の良好な機能的転帰の達成割合を改善しないが、アルテプラーゼによる血栓溶解療法を併用しなかった集団では、これを改善するとともに、死亡を抑制する可能性があることが、カナダ・カルガリー大学のMichael D. Hill氏らによる「ESCAPE-NA1試験」で示された。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2020年2月20日号に掲載された。nerinetideは、シナプス後肥厚部タンパク質95(PSD-95、disks large homolog 4とも呼ばれる)を阻害するエイコサペプチドで、虚血再灌流の前臨床脳梗塞モデルで有効性が確認されている神経保護薬である。

簡略化MRI、高濃度乳房で高い乳がん検出率/JAMA

 高濃度乳房(dense breast)女性の乳がんスクリーニング検査では、簡略化乳房MRI(AB-MRI)はデジタル乳房トモシンセシス(DBT)に比べ、浸潤性乳がんの検出率が有意に高いことが、米国・スローン・ケタリング記念がんセンターのChristopher E. Comstock氏らECOG-ACRIN Cancer Research Groupが行ったEA1141試験で示された。研究の成果は、JAMA誌2020年2月25日号に掲載された。高濃度乳房の女性は乳がんのリスクが高く、マンモグラフィでも早期診断が難しいため、スクリーニング検査法の改良が求められているという。

高血圧患者以外でもナトリウム摂取量削減に応じて血圧低下/BMJ

 食事からのナトリウム(塩分)摂取量の削減による血圧の低下には、強力な用量反応関係がみられ、降圧効果は高齢者や非白人、血圧が高い集団で大きいことが、オーストラリア・シドニー大学のLiping Huang氏らの検討で明らかとなった。研究の成果は、BMJ誌2020年2月25日号に掲載された。ナトリウム摂取量が多いほど血圧が上昇することは、広範なエビデンスによって示されている。一方、高血圧患者では、血圧に及ぼすナトリウム摂取量削減の効果は明らかだが、他の集団での効果は不確実であり、介入期間の影響も十分には解明されていないという。