ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:39

妊婦の罹患・死亡リスク、オミクロン株優勢中に増大/Lancet

 新型コロナウイルスのオミクロン株が懸念される変異株となった半年間について調べたところ、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の診断を受けた妊婦は、MMMI(maternal morbidity and mortality index、妊婦の罹患率・死亡率指数)リスクが増大していたことが明らかにされた。とくに、ワクチン未接種の重症COVID-19妊婦で、同リスク増大はより顕著だった。また、COVID-19の重症合併症に対するワクチンの有効性は、完全接種(2回またはAd26.COV2.Sワクチン1回)で48%と高かった。英国・オックスフォード大学のJose Villar氏らが、4,618人の妊婦を対象に行った大規模前向き観察試験「INTERCOVID-2022試験」の結果で、Lancet誌オンライン版2023年1月17日号で発表された。

オミクロン株対応2価ワクチン、4回目接種の有用性は?/NEJM

 1価・2価のオミクロン株(B.1.1.529)BA.1系統対応BNT162b2(ファイザー製)ワクチンは、BNT162b2ワクチン(30μg)と同様の安全性プロファイルを有し、祖先株とオミクロン株BA.1系統に対して顕著な中和反応を示した。また、程度は低いものの、オミクロン株亜系統のBA.4、BA.5、BA.2.75も中和した。米国・アイオワ大学のPatricia Winokur氏らが、BNT162b2ワクチン30μgを3回接種した55歳超1,846例を対象にした無作為化比較試験で明らかにし、NEJM誌2023年1月19日号で発表した。

持続性AF、PVI+左房後壁乖離術で不整脈の再発率は改善せず/JAMA

 持続性心房細動(AF)患者に対する初回カテーテルアブレーションでは、肺静脈隔離術(PVI)に左房後壁隔離術(PWI)を追加しても、PVI単独と比較して12ヵ月の時点での心房性不整脈の再発回避の割合は改善されず、複数回の手技後の再発回避にも差はないことが、オーストラリア・アルフレッド病院のPeter M. Kistler氏らが実施した「CAPLA試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌2023年1月10日号に掲載された。  CAPLA試験は、3ヵ国(オーストラリア、カナダ、英国)の11施設が参加した医師主導の無作為化臨床試験であり、2018年7月~2021年3月の期間に患者の登録が行われた(メルボルン大学Baker Department of Cardiometabolic Healthの助成を受けた)。  年齢18歳以上、症候性の持続性AFで、初回カテーテルアブレーションを受ける患者が、PVI+PWIを行う群またはPVI単独群に無作為に割り付けられた。PVIでは、左右の肺静脈の周囲を広範に焼灼し、PVI+PWIでは、これに天蓋部(roof ablation line)と底部(floor ablation line)の焼灼が追加された。

中国・高血圧の診断と治療、農村と都市での乖離が存続/BMJ

 中国では、高血圧の有病率は2010年以降にわずかに減少しているが、治療およびコントロールの割合は依然として低い状態にとどまり、農村部と都市部の乖離も存続していることが、中国・疾病管理予防センターのMei Zhang氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2023年1月11日号で報告された。  研究グループは、中国における高血圧の有病率と疾病管理の最近の傾向を評価する目的で、6回の全国調査データの解析を行った(中国国家重点研究開発計画の助成を受けた)。  解析には、China Chronic Disease and Risk Factor Surveillance(CCDRFS)の2004~18年のデータが用いられた。対象は、成人(年齢18~69歳)の地域住民64万2,523人で、6回の調査人数の内訳は2004年が3万501人、2007年が4万7,353人、2010年が9万491人、2013年が15万6,836人、2015年が16万2,293人、2018年が15万5,049人であった。  高血圧は、血圧≧140/90mmHgまたは降圧薬の服用と定義された。

Artemis欠損症に対するレンチウイルス形質導入細胞移植の効果/NEJM

 新たにArtemis欠損重症複合免疫不全症(ART-SCID)と診断された乳児において、薬理学的に標的化した低曝露のブスルファンによる前処置後、レンチウイルス遺伝子で修正した自己CD34+細胞注入移植により、遺伝子が修正された機能的T細胞およびB細胞数の上昇に結び付いたことが、米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校Benioff小児病院のMorton J. Cowan氏らにより報告された。NEJM誌2022年12月22日号掲載の報告。  ArtemisはDNA修復酵素で、T細胞およびB細胞レセプターの再構成に不可欠である。ART-SCIDは、ArtemisをコードするDCLRE1Cにおける変異に起因し、標準治療は同種造血幹細胞移植だが効果は限定的である。

米国・HIV感染者へのART、人種・民族差は?/JAMA

 米国のHIV感染者が抗レトロウイルス療法(ART)を受ける可能性について、人種・民族間で差異があるかを調べる検討が、同国・ノースカロライナ大学のLauren C. Zalla氏らにより行われた。HIVケア開始1ヵ月以内にARTが開始される確率について有意差はなかったが、インテグレーゼ阻害薬(INSTI)を含むARTを受ける可能性は、調査対象期間(2007~19年)の早期においては、白人と比べて黒人とヒスパニック系の患者で有意に低く、ガイドラインの見直しに伴いINSTIが大半のHIV感染者の初回治療として推奨されるようになって以降、有意差が見られなくなったという。著者は、「さらなる研究で、根底にある人種・民族間の差異を明らかにすること、また処方の差異が臨床アウトカムと関連するかどうかを調べる必要がある」とまとめている。JAMA誌2023年1月3日号掲載の報告。

リファンピシン耐性結核、24週レジメンが標準治療に非劣性/NEJM

 リファンピシン耐性肺結核患者に対する24週間の経口治療レジメンは、従来の標準治療に対して有効性に関する非劣性が示され、安全性プロファイルも良好であった。オランダ・Operational Center AmsterdamのBern-Thomas Nyang'wa氏らが、国境なき医師団主導による多施設共同無作為化非盲検非劣性第II/III相試験「TB-PRACTECAL試験」の結果を報告した。リファンピシン耐性結核患者においては、現在のレジメンより治療期間が短くかつ有効で、副作用プロファイルも許容できる、経口治療レジメンが必要とされている。NEJM誌2022年12月22日号掲載の報告。  研究グループは、ベラルーシ、南アフリカ共和国、ウズベキスタンの7施設において、新たに診断された15歳以上のリファンピシン耐性肺結核患者を登録した。

骨盤臓器脱の改善効果、ペッサリーvs.外科的治療/JAMA

 症候性骨盤臓器脱患者において、保存的治療であるペッサリー療法は手術治療と比較して、24ヵ月時点での患者報告による改善に関して非劣性が認められなかった。オランダ・アムステルダム大学のLisa R. van der Vaart氏らが、オランダの21施設で実施した無作為化非劣性試験「PEOPLEプロジェクト」の結果を報告した。骨盤臓器脱は女性のQOL(生活の質)に悪影響を及ぼす疾患で、平均寿命の延長に伴い骨盤臓器脱に対する費用対効果の高い治療が世界的に求められている。JAMA誌2022年12月20日号掲載の報告。  研究グループは、手術歴またはペッサリー療法歴のないステージ2以上の骨盤臓器脱症状を有する女性を、ペッサリー群または手術群に1対1の割合で無作為に割り付けた。

ADAMTS13欠損の先天性TTPにADAMTS13投与が著効した1例/NEJM

 妊娠合併症と動脈血栓症歴のある妊娠30週の27歳女性が、重度のADAMTS13欠損による急性遺伝性血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)の診断を受けた。医療チームは当初、治療的血漿交換(TPE)を実施したが、効果が乏しく中止し、遺伝子組み換えADAMTS13投与に切り替えた。その後、血小板数は正常化、胎児の成長も安定化し、妊娠37週と1日で、在胎不当過小児であったが健康な男子を帝王切開で出産した。その後も患者と生まれた男児の健康状態は良好で、遺伝子組み換えADAMTS13の投与を隔週で継続しているという。スイス・ベルン大学のLars M. Asmis氏らによる症例報告で、NEJM誌2022年12月22日号で発表された。

コロナ呼吸不全で気管挿管率が低い治療は?/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による低酸素血症性呼吸不全を発症した成人患者に対し、覚醒下腹臥位療法は通常ケアと比べて、気管挿管の発生リスクを低減するが、死亡率や人工呼吸器離脱期間(VFD)などのアウトカムには、ほとんど影響が認められないことが明らかにされた。カナダ・アルバータ大学のJason Weatherald氏らによる、システマティック・レビューとメタ解析で示された。BMJ誌2022年12月7日号掲載の報告。研究グループは、創刊から2022年3月4日までのMedline、Embase、CENTRAL(Cochrane Central Register of Controlled Trials)をデータソースとして、COVID-19関連の低酸素血症性呼吸不全の成人患者を対象に、覚醒下腹臥位療法と通常ケアを比較した無作為化試験について、システマティック・レビューと頻度論的・ベイズメタ解析を行った。  2人のレビュアーがそれぞれデータを抽出し、バイアス・リスクを評価。ランダム効果モデルを用いて主要アウトカム(気管挿管)と副次アウトカム(死亡率、VFD、ICU・病院入院期間など)を評価した。気管挿管と死亡率はベイズメタ解析で評価。アウトカムのエビデンスの信頼性はGRADEで評価した。

脳卒中後の職場復帰状況は?/BMJ

 手厚い福利厚生と支援システムを有するデンマークでは、主に軽症の脳梗塞成人患者の約3分の2が、診断から2年後には労働市場に参加している一方で、脳出血患者は脳梗塞やくも膜下出血の患者に比べ職場復帰の確率が低いことが、デンマーク・オーフス大学病院のNils Skajaa氏らの調査で示された。職場復帰をしていない理由で最も多かったのは、病気休暇の取得と障害年金の受給であったという。研究の成果は、BMJ誌2023年1月3日号で報告された。

気管挿管時の誤嚥回避に、レミフェンタニルは有効か/JAMA

 手術室での迅速導入気管挿管時に、誤嚥のリスクがある成人患者において、即効性オピオイドであるレミフェンタニルは神経筋遮断薬と比較して、重度合併症を伴わない初回挿管の成功に関して非劣性を達成できず、むしろ統計学的に有意に劣ることが、フランス・ナント大学のNicolas Grillot氏らの検討で示された。研究の詳細は、JAMA誌2023年1月3日号に掲載された。  本研究は、フランスの15施設が参加した非盲検無作為化非劣性試験であり、2019年10月~2021年4月の期間に、患者の登録が行われた(フランス保健省の助成を受けた)。

常染色体優性多発性嚢胞腎の遺伝的基盤は予想以上に多彩/JAMA

常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)の遺伝に関する研究の多くは、PKD1とPKD2に焦点を当てたコホートで行われるため、ADPKD関連遺伝子変異の有病率やその表現型の発現状況を推定する際にバイアスが生じる可能性があるという。米国・GeisingerのAlexander R. Chang氏らは、同国の大規模な非選択的コホートで他の遺伝子を含むADPKDの遺伝的基盤と表現型について検討し、ADPKDはこれまで考えられていた以上に高度な多様性を有し、遺伝的なばらつきが認められることを示した。研究の成果は、JAMA誌2022年12月27日号に掲載された。

人工知能は、放射線科専門医試験に合格できるのか?/BMJ

 英国の放射線科医は、研修を修了する前にFRCR(Fellowship of the Royal College of Radiologists)試験に合格する必要がある。英国・Great Ormond Street Hospital for ChildrenのSusan C. Shelmerdine氏によると、人工知能(AI)が、この試験の3つの構成要素のうち迅速報告と呼ばれる試験に合格できるかを検討した「FRCR-AI試験」の結果、AIは人間と同様の厳しい基準で採点された場合は10回の模擬試験のいずれにも合格できなかったが、訓練を受けていないため読影不能な画像を除外すると、全体の平均正答率は79.5%で、10回中2回の模擬試験に合格したという。研究の詳細は、BMJ誌2022年12月21日号で報告された。

エネルギー消費量が高い歩き方/BMJ

 歩行障害がなく1日平均歩数が約5,000歩の成人において、1日の歩数の約22~34%を、より高エネルギーで低効率な歩き方(『ティーバッグ氏』の歩き方)に変えて歩く(約12~19分間)ことで、1日のエネルギー消費量は100kcal増加した。成人では、このような歩き方で1日約11分間歩くことは、1週間に強強度の身体活動を75分間したことに相当するという。米国・アリゾナ州立大学のGleen A. Gaesser氏らが、英国のコメディグループ「モンティ・パイソン」によるコント『バカ歩き省(Ministry of Silly Walks)』(1970年に英国で放映されたコメディ番組で演じられたスケッチ)にインスピレーションを受け、同コントに登場する「バカ歩き」のエネルギー消費量を定量化する目的で行った実験的研究の結果を報告した。同コントのキャラクター『ティーバッグ氏』と『ピューティー氏』の非効率的な歩き方は、通常の歩き方と比較して3~7倍動きが激しいことが示されていたが、それらのエネルギー消費量は調査されていなかった。著者は、「1970年代初めに非効率的な動作を促進する取り組みが行われていたら、われわれは現在、もっと健康的な社会で生活していたかもしれない」とまとめている。BMJ誌2022年12月21日クリスマス特集号「PHYSICAL」掲載の報告。

開発中の経口レムデシビル、ニルマトレルビル/リトナビルに非劣性/NEJM

 重症化リスクの高い軽症~中等症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)成人患者において、VV116(重水素化レムデシビル臭化水素酸塩)の経口投与は、経口抗ウイルス薬ニルマトレルビル+リトナビル(商品名:パキロビッドパック)と比較して、持続的な臨床的回復までの期間に関して非劣性であり、安全性は良好であることが、中国・Shanghai Institute of VirologyのZhujun Cao氏らが実施した第III相無作為化観察者盲検比較試験の結果、報告された。VV116は、レムデシビルの経口抗ウイルス薬の1つとして中国で開発が進められている。これまで小規模試験で、陽性確定後5日以内の投与は通常ケアと比較してウイルス排出期間が短縮したことが示されていた。NEJM誌オンライン版2022年12月28日号掲載の報告。

モルヌピラビル、ワクチン接種済み患者の入院・死亡への効果は?/Lancet

 SARS-CoV-2の経口抗ウイルス薬モルヌピラビルは、地域で暮らす高リスクのワクチン接種済み成人集団における、COVID-19関連の入院または死亡の発生を減少しなかった。英国・オックスフォード大学のChristopher C. Butler氏らが、約2万6,000例を対象とした非盲検プラットフォームアダプティブ無作為化対照試験「PANORAMIC試験」の結果を報告した。Lancet誌オンライン版2022年12月22日号掲載の報告。  PANORAMIC試験は2021年12月8日~2022年4月27日に、50歳以上、または18歳以上で関連併存疾患のある体調不良で在宅療養5日以内のCOVID-19確定患者を適格対象として行われた。被験者を無作為に2群に分け、一方にはモルヌピラビル(800mg、1日2回、5日間)+通常ケアを、もう一方の群には通常ケアのみを行った。

正しいがんの原因への認識、ワクチン拒否・代替医療・陰謀論支持者で低調/BMJ

 がんの原因に対する認識傾向について、スペイン・Catalan Institute of OncologyのSonia Paytubi氏らが、約1,500人を対象に行ったオンライン横断調査の結果、ほぼ半数が「何もかもががんの原因になるように思える」と感じていることが明らかになった。著者は、「大量の情報が、事実に基づく原因と根拠のない原因を見分けることを困難にしていることが浮き彫りになった」と述べている。

定量化が困難な冠動脈疾患、機械学習で可能に/Lancet

 冠動脈疾患のバイナリ診断では、疾患の複雑性が保持されず、重症度や死亡リスクを定量化できないため、冠動脈疾患の定量的マーカーの確立が求められている。米国・マウント・サイナイ・アイカーン医科大学のIain S. Forrest氏らは、電子健康記録(EHR)に基づく機械学習を用いて、動脈硬化と死亡リスクを連続スペクトルで非侵襲的に定量化し、過小診断された患者の特定が可能な冠動脈疾患のin-silicoマーカー「ISCAD」を開発した。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2022年12月20日号で報告された。  研究グループは、機械学習モデルに基づく確率から導出される冠動脈疾患の定量的マーカーの評価を目的にコホート研究を実施した(米国国立衛生研究所[NIH]の助成を受けた)。

adagrasib、既治療のKRAS G12C変異陽性大腸がんに有望/NEJM

 治療歴のある転移を有するKRAS G12C変異陽性の大腸がん患者の治療において、経口KRAS G12C阻害薬adagrasibは、単剤療法およびセツキシマブ(抗EGFR抗体)との併用療法のいずれにおいても、抗腫瘍活性が認められ、併用療法では奏効期間が6ヵ月を超えることが、米国・Sloan Kettering記念がんセンターのRona Yaeger氏らが実施した「KRYSTAL-1試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2023年1月5日号に掲載された。  KRYSTAL-1試験は、米国で進行中の非盲検非無作為化第I/II相試験であり、今回はadagrasib単剤療法の第II相試験と、セツキシマブとの併用療法の第Ib相試験の結果が報告された(Mirati Therapeuticsの助成を受けた)。