ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:245

進行性乳がん患者に対するTDM-1、無増悪生存期間、全生存期間を有意に延長/NEJM

 トラスツズマブエムタンシン(TDM-1)は、HER2陽性進行性乳がん患者[トラスツズマブ(商品名:ハーセプチン)とタキサン系薬剤による治療歴のある]に対して、ラパチニブ+カペシタビン療法と比較して無増悪生存期間、全生存期間を有意に延長することが示された。毒性も低かった。TDM-1は、抗体医薬品トラスツズマブと化学療法薬のDM1が安定したリンカーにより結合した抗体薬物複合体である。カナダ・Sunnybrook Odette Cancer CentreのSunil Verma氏らEMILIA試験グループによるTDM-1の有効性と安全性を検討した第3相無作為化試験の結果は、NEJM誌2012年11月8日号(オンライン版2012年10月1日号)で発表された。

マルチビタミン剤を毎日10年間服用しても心血管疾患予防には効果なし/JAMA

 毎日のマルチビタミン剤服用が、心血管疾患予防には結びつかないことが、ブリガム&ウィメンズ病院・ハーバードメディカルスクールのSesso HD氏らが、米国男性(医師コホート)を10年間追跡した無作為化試験「Physicians' Health Study II」の結果、報告された。マルチビタミン剤はビタミンとミネラル不足を防ぐために用いるもので、心血管疾患予防の可能性が知られていた。ただしこれまでの観察研究でもマルチビタミン剤の定期服用と心血管疾患との関連は一貫しておらず、また長期服用の臨床試験は行われていなかった。JAMA誌2012年11月7日号掲載報告より。

全心血管疾患生涯リスクは、あらゆる人で>30%と高い/JAMA

 全心血管疾患生涯リスクは、あらゆる人で高い(>30%)ことが、米国・ノースウエスタン大学ファインバーグ医学校のJohn T. Wilkins氏らによるプール生存解析の結果、明らかにされた。これまで、そうした疾患負担の可能性は示唆されていたが、解析報告はなかった。今回示された生涯リスクには、中高年のリスク因子を有する人も含まれるのだが、著者らによる解析で、それらリスクを有する人々でもメンテナンスでリスクを至適に維持すれば、かなり長期にわたって非疾患生存を達成していたことも明らかにされた。JAMA誌2012年11月7日号掲載より。

禁煙対策で喫煙率が年間-3.3%と大幅に低減/Lancet

 ウルグアイでは禁煙対策の導入により、喫煙率の年間低下率3.3%という良好な効果が得られたことが、同国保健省のWinston Abascal氏らの調査で示された。喫煙者の80%を低~中所得国の住人が占め、高所得国では喫煙率が低下していることもあって、低~中所得国の世界的なたばこ関連疾病負担の割合が増大しているという。人口約3,500万人の南米の中所得国であるウルグアイでは、2005年に包括的な禁煙プログラムが導入され、キャンペーンが実施された。Lancet誌2012年11月3日号(オンライン版2012年9月14日号)掲載の報告。

冠動脈CT血管造影、よりリアルな画像を提供する診断精度の評価は?/BMJ

 診断検査法の評価において、診断精度研究やプールメタ解析は重大なステップである。しかし診断精度研究において、評価不能の結果を扱うべきかどうかや、共通のアプローチで診断精度が過剰なのかどうかを評価するかのかについてコンセンサスは得られていない。そうした中でドイツ・ベルリン自由大学のGeorg M Schuetz氏らは、冠動脈CT血管造影の診断パフォーマンスのメタ解析的評価を行い、3×2分割表による評価が従来の2×2分割表による評価よりも優れているかを検討した。その結果、評価不能の結果をどう扱うべきかコンセンサスをみいだすことはできなかったが、評価不能の結果を含める場合は、3×2分割表を適用するほうがよりリアルな画像を提供可能であったと報告している。BMJ誌2012年11月3日号(オンライン版2012年10月24日号)掲載より。

高山病予防薬としてのアセタゾラミド、250mg/日でも有効/BMJ

 高山病の予防薬としてのアセタゾラミド(商品名:ダイアモックス)服用について、最低用量250mg/日で効果があるとのエビデンスが、メタ解析の結果、報告された。これまで、2000年に発表されたシステマティックレビューにおいて、高山病予防に対するアセタゾラミド服用では750mg/日が有効であることが示されていた。英国・サウサンプトン大学Emma V Low氏らは、250mg/日量、500mg/日量についての効果を検証し、最小有効量を明らかにするためメタ解析を行った。BMJ誌2012年11月3日号(オンライン版2012年10月18日号)掲載より。

ガバペンチン、難治性慢性咳嗽の治療に有効/Lancet

 難治性慢性咳嗽の治療として、抗てんかん薬ガバペンチンが有効なことが、オーストラリア・ニューカッスル大学のNicole M Ryan氏らの検討で示された。難治性の慢性咳嗽は重篤な症状やQOL障害を引き起こす。難治性咳嗽には中枢性感作に関連する疾患(神経因性疼痛など)との類似性がみられ、神経因性疼痛にはガバペンチンが有効とされる。また、慢性咳嗽に対するガバペンチンの効果を示唆する2つの症例シリーズ研究が知られている。Lancet誌2012年11月3日号(オンライン版2012年8月28日号)掲載の報告。

耳下腺炎ワクチンの接種は、男性の精巣炎リスクを有意に減少する/NEJM

 12歳以上の男性で、耳下腺炎ワクチンの2回投与を受けた人は、受けなかった人に比べ、耳下腺炎を発症しても、合併症の精巣炎を発症するリスクを有意に減少することが報告された。米国疾病予防管理センター(CDC)のAlbert E. Barskey氏らが、2009~2010年にかけて、ニューヨーク地域などのユダヤ教徒コミュニティで流行した、3,500人超の耳下腺炎発症例について調べて明らかにしたもので、NEJM誌2012年11月1日号で報告した。米国では2005年までに、耳下腺炎ワクチン接種によって同罹患率は99%以上減少したものの、2006年には同ワクチン接種をした人の中で耳下腺炎が大流行した。その後、同様の集団発生が世界各地で報告されている。

アタマジラミの治療に0.5%イベルメクチン・ローションが有効/NEJM

 難治性のアタマジラミの患者に対し、0.5%イベルメクチン・ローションを処方し、自宅で単回塗布し10分間置き水ですすいでもらうという治療を行った結果、7割以上の患者で、治療の翌日、1週間、2週間後でアタマジラミがみられない状態が確認できた。米国・Eastern Virginia Medical SchoolのDavid M. Pariser氏らが、約770人の患者について行った無作為化比較試験の結果、報告した。アタマジラミの第一選択治療であるペルメトリンやピレトリンは、その薬剤抵抗性が増加してきているという。NEJM誌2012年11月1日号掲載より。

喫煙、高血圧、脂質異常症、2型糖尿病、いずれも男性PAD発症の高リスク因子

 末梢動脈疾患(PAD)の発症リスクについて、男性で一般的によくみられる4つの因子(喫煙、高血圧、脂質異常症、2型糖尿病)について検討した結果、各因子が独立した高リスク因子であり、また因子が併存するほど発症リスクが増大すること(因子が1つ増えるごとに発症リスクは2.06倍)が明らかになった。米国・ハーバードメディカルスクールのMichel M. Joosten氏らが米国男性約4万5千人を25年間追跡した前向き研究の結果、報告した。先行研究においてリスク因子個々とPAD発症との関連は明らかにされていたが、因子が併存している場合の発症との関連は検討されていなかった。JAMA誌2012年10月24・30日号掲載より。

プライマリ・ケアでの肺塞栓症の除外、WellsルールとDダイマー検査の併用が有用/BMJ

 プライマリ・ケアでの肺塞栓症の除外診断において、Wellsルールとポイント・オブ・ケア診断としてのDダイマー検査を併用するアプローチは安全で効果的な方法であることが、オランダ・ユトレヒト大学医療センターのGeert-Jan Geersing氏らが実施したAMUSE-2試験で示された。原因不明の息切れや胸膜炎性胸痛は診断が困難な症状であり、これらの患者と最初に遭遇するプライマリ・ケア医は気道感染症などの自己管理が可能な一般的な疾患と、肺塞栓症のような生命を脅かす疾患を鑑別する必要に迫られる。WellsスコアとDダイマー検査の併用により、肺塞栓症が疑われる患者の約3分の1が安全に除外可能なことが分かっているが、プライマリ・ケアにおける有用性は検証されていなかったという。BMJ誌2012年10月27日号(オンライン版2012年10月4日号)掲載の報告。

HAARTを受けているHIV患者、マルチビタミン高用量服用にメリットみられず

 多剤併用抗レトロウイルス療法(HAART)を受けているHIV患者で、マルチビタミンサプリメントを併用する場合の高用量と標準量とを比較した結果、高用量服用により疾患進行および死亡が抑制されることはなく、むしろアラニントランスアミナーゼ(ALT)が増加してしまう可能性が示された。米国・ハーバード公衆衛生大学院のSheila Isanaka氏らが、タンザニアで行った約3,400例を対象とする無作為化二重盲検対照試験の結果、報告した。先行研究ではHAARTを受けていないHIV患者で、微量栄養素がCD4細胞数を増加し、疾患進行と死亡を抑制したことが報告されていたが、HAARTを受けている場合のサプリメント服用の安全性および有効性については検証されていなかった。JAMA誌2012年10月17日号掲載より。

院内心停止患者への蘇生処置時間、長いほど生存率が改善:AHA報告/Lancet

 院内心停止患者では、蘇生処置で蘇生した患者の処置時間は蘇生しなかった患者よりも長く、処置時間が長いほうが生存の可能性は高くなることが、米国・ミシガン大学のZachary D Goldberger氏ら米国心臓協会(AHA)の研究グループの検討で示された。先進国では、入院患者1,000人当たり1~5人が心停止を来し、心停止患者の退院時の生存率は20%に満たない。蘇生処置をいつ止めるかは臨床医が直面する最大の課題の1つだが、心停止患者の予後は全般的に不良なため、臨床医は処置開始後早期に自己心拍が再開しない場合は処置の継続に消極的になりがちだという。Lancet誌2012年10月27日号(オンライン版2012年9月5日号)掲載の報告。

ベンゾジアゼピンと認知症リスクの関連:PAQUID試験

 ベンゾジアゼピンの新規使用により認知症リスクが増大することが、フランス・ボルドー・セガレン大学のSophie Billioti de Gage氏らが実施したPAQUID試験で示された。多くの先進国では、診療ガイドラインの有無にかかわらず、高齢者へのベンゾジアゼピンの処方が広く行われ、習慣化している場合も多いという。ベンゾジアゼピンの短期投与の効果はよく知られているが長期投与の有害作用は明確ではなく、認知機能に対する遅発性の有害作用(認知機能低下、認知症)をもたらす可能性が、症例対照試験やコホート試験で指摘されている。BMJ誌2012年10月27日号(オンライン版2012年9月27日号)掲載の報告。

化学療法への誤解、医師とのコミュニケーションが良い人が悪い人の約2倍

 転移性肺がん・大腸がん患者の大半は、化学療法によってがんが治癒すると誤解していることが明らかになった。また誤解をしている人の割合は、医師・患者間のコミュニケーションが良いと感じている患者の方が高かった。米国・ダナ・ファーバーがん研究所のJane C. Weeks氏らが、約1,200人の転移がん患者を対象に行った調査で明らかにしたもので、NEJM誌2012年10月24日号で発表した。転移性の肺がんや大腸がんに対する化学療法は、数週間から数ヵ月の延命効果は期待でき症状が緩和される可能性はあるが、治癒は得られない。

大腸がん患者のアスピリン常用、PIK3CA変異型と野生型では効果が異なる

 大腸がん診断後のアスピリンの常用は、臨床転帰を改善することが示されていたが、その効果は、PIK3CA(ホスファチジルイノシトール-4,5-二リン酸 3-キナーゼ触媒サブユニット α ポリペプチド遺伝子)変異型の有無で異なることが明らかにされた。米国・ハーバードメディカルスクールのXiaoyun Liao氏らによる報告で、アスピリン作用メカニズムの実験的エビデンスから、PIK3CA変異型とPIK3CA野生型の大腸がんでアスピリンの効果は異なるのではないかと仮説を立て検証した結果、両者の生存改善が異なることが示された。NEJM誌2012年10月25日号掲載より。

高齢者施設のノロウイルス感染症発生、入居者の全入院・死亡率増大の要因に

 ノロウイルス感染症の発生は、高齢者施設入居者の全入院および死亡の増大と有意に関連していることが報告された。米国CDCのTarak K. Trivedi氏らが、2009~2010年の米国ナーシングホームからの発生報告を後ろ向きに検証し明らかにした。脆弱な高齢者が入居する米国の高齢者施設でもノロウイルス感染症は日常的な感染症となっているという。JAMA誌2012年10月24・30日号掲載より。

臨床試験で示されるvery large effects、その特色は?

 大半の医療行為がもたらす影響はささやかなものであるが、臨床試験では有効性または有害事象に関して、ときに非常に大きな影響(very large effects)をもたらす可能性が示される。ブラジル・German Hospital Oswaldo CruzのTiago V. Pereira氏らは、そのようなlarge effectsが示される試験頻度と特色を評価した。その結果、large effectsが示されるのは小規模試験がほとんどで、追試験をするとその効果サイズは概して小さくなっていた。Pereira氏は「よく確認されたlarge effectsというのはまれであり、多くは非致死的アウトカムに関したものであった」とまとめた。JAMA誌2012年10月24・31日号掲載より。

早産に対する分娩遅延効果が最も優れる子宮収縮抑制薬とは?

 早産への対処において、子宮収縮抑制薬としてのプロスタグランジン阻害薬とカルシウム拮抗薬は、他の薬剤に比べ分娩遅延効果が高く、新生児と母親の双方の予後を改善することが、米国・インディアナ大学医学部のDavid M Haas氏らの検討で示された。早産のリスクのある妊婦では、子宮収縮抑制薬を使用して分娩を遅らせることで、出生前に副腎皮質ステロイドの投与が可能となり、新生児の予後が改善される。子宮収縮抑制薬には多くの薬剤があり、標準的な1次治療薬は確立されていない。少数の薬剤を比較した試験は多いが、使用頻度の高い薬剤をすべて評価する包括的な研究は行われていないという。BMJ誌2012年10月20日号(オンライン版2012年10月9日号)掲載の報告。

ステント血栓症、ゾタロリムスとシロリムスの溶出ステントで同等:PROTECT試験

 留置術後3年の時点におけるステント血栓症の発生状況は、ゾタロリムス溶出ステントとシロリムス溶出ステントで有意な差はないことが、スイス・ジュネーブ大学のEdoardo Camenzind氏らが行ったPROTECT試験で示された。複雑な冠動脈病変を含む広範な患者集団において薬剤溶出ステント(DES)の導入が急速に進んでいるが、近年、再狭窄の発生がより少ないDESによる医療コストの抑制効果に対する関心が高まっている。これまでに実施された両ステントの比較試験では、ステント血栓症の評価は行われていなかったという。Lancet誌2012年10月20日号(オンライン版2012年8月27日号)掲載の報告。