ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:251

医学専門誌の別刷部数、医薬品企業からの資金提供と関連

英国・オックスフォード大学のAdam E Handel氏らは、資金提供と研究デザインが医学専門誌の別刷の大量注文とどれだけ関連するかを評価するケースコントロール研究を行った。その結果、医薬品企業による資金提供と大量の別刷注文との関連が認められたという。BMJ誌2012年7月2日号(オンライン版2012年6月28日号)掲載報告より。

5大医学専門誌の情報提供の質は改善したか?

論文アブストラクトのミスリードを解消することを目的に、2008年1月にCONSORT(consolidated standards of reporting trials)ステートメントによって発表されたガイドラインの影響について、英国・オックスフォード大学のSally Hopewell氏らが5大医学専門誌(AIM、BMJ、Lancet、JAMA、NEJM)を対象に検討した。結果、媒体によって異なる傾向がみられたという。BMJ誌2012年7月2日号(オンライン版2012年6月22日号)掲載報告より。

硫酸マグネシウム、動脈瘤性クモ膜下出血の予後を改善せず:MASH-2試験

 動脈瘤性クモ膜下出血に対する硫酸マグネシウムの静脈内投与は臨床予後を改善しないことが、オランダ・ユトレヒト大学医療センターのSanne M Dorhout Mees氏らが実施したMASH-2試験で示された。動脈瘤性クモ膜下出血は予後不良であり、1ヵ月後の死亡率は27~44%、過去10年で死亡率は低下傾向にあるものの生存者の20%は介助なしでは生活ができない。動脈瘤性クモ膜下出血では、発症後4~10日にみられる遅発性脳虚血が不良な予後の重要な原因であり、神経保護薬である硫酸マグネシウムは遅発性脳虚血を抑制したり、その予後を改善することで、クモ膜下出血そのものの予後を改善する可能性があるという。Lancet誌2012年7月7日号(オンライン版2012年5月25日号)掲載の報告。

多疾患罹患、もはや例外ではない

患者の約4分の1が多疾患に罹患しており、その頻度は加齢とともに上昇し、とくに貧困地区では発症時期が10年以上早く、精神疾患の併発頻度が高いことが、英国Dundee大学のKaren Barnett氏らの調査で明らかとなった。長期間にわたる疾患の管理は医療が直面する重要な課題だが、医療システムは複数の疾患の併存状態よりも個々の単一疾患を想定して構成されている。これまでに行われた多疾患罹患の調査は、疾患数が少なく、患者の自己申告に基づくものや高齢者、入院患者を対象としたものが多いという。Lancet誌2012年7月7日号(オンライン版2012年5月10日号)掲載の報告。

高用量ビタミンD摂取、65歳以上の骨折リスクを低減

メタ解析の結果、65歳以上高齢者の高用量ビタミンD摂取(毎日≧800 IU)は、大腿骨頸部骨折およびあらゆる非椎体骨折の予防に多少ではあるが有望であることが示された。スイス・チューリッヒ大学のHeike A. Bischoff-Ferrari氏らによる解析結果で、「居住場所、年齢、性別とは独立して骨折リスクを低減する可能性があることが示された」と報告している。ビタミンD摂取と骨折の減少についてこれまでのメタ解析の結果は一貫していない。Bischoff-Ferrari氏らは、11の二重盲検無作為化比較試験の被験者を対象に解析を行った。NEJM誌2012年7月5日号掲載報告より。

CKD診断のためのGFR推定式、クレアチニン+シスタチンCが有用である可能性

慢性腎臓病(CKD)の診断指標である糸球体ろ過量(GFR)の推定について、血清クレアチニンまたはシスタチンCいずれか単独マーカーの値に基づく推定よりも、両者を組み合わせての推定が優れることが報告された。米国・タフツ医療センターのLesley A. Inker氏らCKD疫学共同研究グループの横断解析の結果で、「CKDの確認検査には複合推定式が有用かもしれない」と結論している。GFRの推定は血清クレアチニンに基づく推定式がルーチンに用いられているが、不正確でCKDの過剰診断につながる可能性が示唆されている。代替マーカーとして登場したのがシスタチンCで、Inker氏らはその有効性を検討するため、シスタチンC単独と、シスタチンCと血清クレアチニンとを組み合わせについて検証した。NEJM誌2012年7月5日号掲載報告より。

MRSA感染症、市中型も院内型も2005年以降は減少傾向

米国におけるMRSA感染症は、2005年以降は市中型・院内型ともに減少傾向にあることが報告された。MRSA起因の市中型皮膚軟部組織感染症についても、2006年以降は減少しているという。米国・San AntonioMilitary Medical CenterのMichael L. Landrum氏らが、米国国防総省の医療保険受給者を対象に行った観察研究の結果明らかにしたもので、JAMA誌2102年7月4日号で発表した。これまでに、院内型MRSA感染症の発症率の減少傾向は報告されているものの、市中型MRSA感染症の動向については報告がなかった。

帯状疱疹ワクチン、生物製剤服用者への安全性と効果示す

関節リウマチなど自己免疫疾患で生物学的製剤を服用している患者への帯状疱疹ワクチン接種は、同発症予防に有効であることが明らかにされた。同ワクチン接種直後の帯状疱疹発症リスクについても、増大は認められなかったという。米国・アラバマ大学のJie Zhang氏らが、46万人超を対象に行った後ろ向きコホート試験の結果明らかにしたもので、JAMA誌2012年7月4日号で発表した。抗腫瘍壊死因子(抗TNF)療法やその他の生物学的製剤を服用している患者への、帯状疱疹弱毒生ワクチンの効果や安全性は検証データが限られており明らかになっておらず、接種は禁忌とされている。

ヒマラヤ登山死、商業化で低下傾向に

ヒマラヤ登山における死亡リスクは、登山経験が豊富だからといって低減せず、従来の非商業的で探索的な登山よりも、むしろ最近の商業登山のほうが死亡リスクを改善する傾向にあることが、米国Madigan Healthcare System(ワシントン州タコマ)のJohn L Westhoff氏らの調査で明らかとなった。登山は人気が高いがきわめて危険な活動であり、ほかのほとんどの娯楽的活動よりも死亡率が高い。ヒマラヤ登山の商業化の傾向に伴い、比較的経験の浅い登山者が、自力で登るには経験不足な山頂を職業的ガイドの指導の下で目指すことが多くなったが、登山による負傷率はこの数十年、下降傾向にあるという。BMJ誌2012年6月30日号(オンライン版2012年6月13日号)掲載の報告。

3つの新規経口抗凝固薬、術後血栓塞栓症の予防に有効だが出血傾向も

3つの新規経口抗凝固薬リバーロキサバン*1、ダビガトラン*2、アピキサバンは、従来の標準治療であるエノキサパリンに比べ、全般的に術後の静脈血栓塞栓症の予防効果が高いが出血リスクも上昇傾向にあることが、スペイン医薬品・医療機器機構(マドリッド市)のAntonio Gomez-Outes氏らの検討で明らかとなった。欧米では、これら3つの新規薬剤は、人工股関節/膝関節全置換術後の静脈血栓塞栓症の予防治療として承認されているが、主要な臨床試験が標準治療では通常行われない下肢の静脈造影所見で評価され、出血の定義が試験によって異なるなどの理由で、臨床アウトカムや相対的な効果、安全性は明確ではないという。また、3剤を直接比較した最新の試験は行われていない。BMJ誌2012年6月30日号(オンライン版2012年6月14日号)掲載の報告。

新生児パルスオキシメトリー検査、先天性心疾患のスクリーニング法として有用

重度先天性心疾患の検出法として、新生児に対するパルスオキシメトリー法は高い特異度と中等度の感度を有し、普遍的なスクリーニング法の適格基準を満たすことが、英国ロンドン大学クイーン・メアリー校のShakila Thangaratinam氏らの検討で示された。先天性心疾患は他の先天性異常に比べ死亡率が高く、先天性異常による死亡の最大40%、乳児死亡の3~7.5%を占めるとされるが、手術によって予後は大きく改善するため早期発見が重要だという。新生児スクリーニングは早期発見の一助となる可能性があり、パルスオキシメトリー法が有望視されている。Lancet誌2012年6月30日号(オンライン版2012年5月2日号)掲載の報告。

HIV母子感染、抗レトロウイルス薬28週治療が有効:BAN試験

授乳に代わる安全な育児法がない環境においては、HIVに感染した母親あるいは未感染乳児に対する28週の抗レトロウイルス薬予防治療により、乳児へのHIV感染が減少することが、米国疾病対策予防センター(CDC)のDenise J Jamieson氏らの検討で示された。HIVの母子感染は世界的に減少傾向にあるが、医療資源が乏しい地域では解決すべき課題とされる。WHOは、医療資源が限られ、授乳に代わる安全な育児法がない環境では、授乳期間中は母親あるいは乳児のいずれかに対する抗レトロウイルス薬の予防投与を推奨している。Lancet誌2012年6月30日号(オンライン版2012年4月26日号)掲載の報告。

未破裂脳動脈瘤の自然歴が明らかに

未破裂脳動脈瘤の自然歴は動脈瘤の直径、部位、形状により異なることが、UCAS Japan(http://ucas-j.umin.ac.jp/index.html 事務局:東京大学医学部脳神経外科)研究から報告され、NEJM誌2012年6月28日号で発表された(筆頭著者はNTT東日本関東病院脳神経外科部長の森田明夫氏)。UCAS Japan研究は、本邦における未破裂脳動脈瘤のデータを広く収集し、これまで明らかとなっていなかった未破裂脳動脈瘤の自然歴および診療実態の調査を目的とする前向き研究で、日本全国脳神経外科学会認定施設を中心に、脳検診等で新たに脳動脈瘤が発見された治療例または未治療例すべての患者を登録・追跡している。

感染性心内膜炎患者への早期手術介入は全身塞栓症リスク低下に有効

感染性心内膜炎および大きな疣腫を有する患者に対し、早期手術は従来治療と比較して、有効に全身塞栓症リスクを低下し、全死因死亡および塞栓イベントの複合エンドポイントを有意に低下することが、前向き無作為化試験の結果、示された。韓国・蔚山大学校のDuk-Hyun Kang氏らによる報告で、NEJM誌2012年6月28日号で発表された。感染性心内膜炎患者に対する、全身塞栓症予防目的の外科的介入に関しては、その適応および介入時期についてなお議論の的となっている。研究グループは従来治療と早期手術の臨床転帰の比較を目的に試験を行った。

体重減量プログラム、段階的ケアで一人当たりコスト低減

体重過多や肥満の人を対象にした減量介入プログラムについて、減量経過と目標値に合わせてプログラムを調整する段階的ケア減量介入(STEP)は、一貫して同じ内容のプログラムを行う標準的行動減量介入(SBWI)と比べて、減量効果は同等で1人当たりコストが500ドル以上低く抑えることができることが示された。米国・ピッツバーグ大学のJohn M. Jakicic氏らが、300人超を対象に行った無作為化試験の結果明らかにしたもので、JAMA誌2012年6月27日号で発表した。

ワルファリン服用の急性虚血性脳卒中へのt-PA、症候性頭蓋内出血リスク増大みられず

組織型プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)静注療法を行った急性虚血性脳卒中患者の症候性頭蓋内出血リスクについて、ワルファリン服用中の患者のリスクは非服用患者と比べて増大しないことが示された。その他のt-PA合併症や院内死亡率についても、ワルファリン服用による増加は認められなかった。米国・デューク臨床研究所のYing Xian氏らが、約2万4,000人の急性虚血性脳卒中患者について行った観察試験の結果で、JAMA誌2012年6月27日号で発表した。

新たな冠動脈疾患の予測モデル、有病率が低い集団でも優れた予測能

オランダ・エラスムス大学医療センターのTessa S S Genders氏らが新たに開発した冠動脈疾患の予測モデルは、有病率が低い集団においても優れた予測能を示すことが、同氏らが実施した検証試験で確認された。検査前確率は、患者にとって最も有益な検査法を決めるのに有用とされる。ACC/AHAやESCの現行ガイドラインでは、安定胸痛がみられる患者における冠動脈疾患の検査前確率の評価には、Diamond and ForresterモデルやDuke臨床スコアが推奨されているが、いずれの方法にもいくつか欠点があるという。BMJ誌2012年6月23日号(オンライン版2012年6月12日号)掲載の報告。

ピオグリタゾンと膀胱がんリスクとの関連

 カナダ・ユダヤ総合病院(モントリオール市)のLaurent Azoulay氏らの検討で、2型糖尿病患者では膀胱がんのリスクがピオグリタゾン(商品名:アクトスほか)の使用により増大することが示された。チアゾリジン系経口血糖降下薬であるピオグリタゾンと膀胱がんについてはその関連が指摘される一方で否定的な見解もみられる。この問題解決のために地域住民ベースの観察試験がいくつか実施されたが、相反する結果が得られており、さらなる検討が求められている。BMJ誌2012年6月23日号(オンライン版2012年5月31日号)掲載の報告。

脳卒中のrt-PA血栓溶解療法、早期開始で予後が改善:IST-3試験を含むメタ解析

脳卒中の治療では、早期の遺伝子組み換え組織プラスミノーゲンアクチベータ(rt-PA)による静脈内血栓溶解療法が、良好なアウトカムの達成率および自立した生存率の改善をもたらすことが、英国エジンバラ大学のJoanna M Wardlaw氏らの検討で示された。rt-PAは、急性虚血性脳卒中患者の身体機能アウトカムを改善することが欧米の無作為化試験で示されているが、適応は発症後3時間以内に限定され、欧州では80歳以上は適応外とされる。2000年に開始されたIST-3試験(http://www.dcn.ed.ac.uk/ist3/)は、80歳以上の患者が半数以上を占め、発症後6時間まで適応を拡大して実施された。Lancet誌2012年6月23日号(オンライン版2012年5月23日号)掲載の報告。

脳卒中のrt-PA血栓溶解療法、発症後6時間でも身体機能を改善: IST-3試験

脳卒中患者に対する遺伝子組み換え組織プラスミノーゲンアクチベータ(rt-PA)による静脈内血栓溶解療法は、発症から6時間まで適応を拡大しても、6ヵ月後の身体機能アウトカムを改善することが、英国オックスフォード大学のColin Baigent氏らIST-3 collaborative groupが進めるIST-3試験(http://www.dcn.ed.ac.uk/ist3/)で示された。rt-PAによる血栓溶解療法は、欧州では発症後3時間以内、80歳未満の急性虚血性脳卒中患者に対し承認されている。一方、11試験(3,977例)に関するコクランレビューでは、rt-PAは早期の致死的脳出血を3%増加させるものの身体機能障害のない生存を有意に改善することが示され、発症後6時間まで有効な可能性が示唆されている。Lancet誌2012年6月23日号(オンライン版2012年5月23日号)掲載の報告。