ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:255

急性冠症候群疑いの救急搬送患者にはCCTA戦略が有用

 救急搬送されてきた急性冠症候群の疑い患者に対しては、冠動脈CT血管造影(CCTA)を基本として診断スクリーニング戦略が有用であることが、米国・ペンシルベニア大学のHarold I. Litt氏らによる無作為化試験の結果、明らかにされた。Litt氏は「他の診断スクリーニング戦略では入院したであろう患者が、CCCT戦略であれば安全かつ早期退院できる可能性がある」と結論している。急性冠症候群の疑いの救急搬送患者の入院率は高いが、最終的には心臓に起因する症状ではないことが判明するケースがほとんどである。一方で、CCTAは冠動脈疾患の陰性的中率は非常に高いが、救急部門での判定に有用かどうかはこれまで確立されていなかった。NEJM誌2012年4月12日号(オンライン版2012年3月26日号)掲載報告より。

高齢者の心電図異常、冠動脈性心疾患イベントリスクを40~50%増

高齢者の心電図異常は、その程度にかかわらず、冠動脈性心疾患イベント発生リスク増大と関連することが明らかにされた。軽度の場合は約1.4倍に、重度では約1.5倍に、それぞれ同リスクが増大するという。また、従来のリスク因子による予測モデルに、心電図異常の要素を盛り込むことで、同イベント発生に関する予測能が向上することも示された。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のReto Auer氏らが、高齢者2,000人超について約8年間追跡して明らかにしたもので、JAMA誌2012年4月11日号で発表した。

高血圧患者、上腕収縮期血圧の左右差10mmHg以上で死亡リスクが3倍以上に

高血圧症患者の上腕収縮期血圧の左右差が10mmHg以上ある人は、全死因死亡リスクが3倍以上増大するという。英国Exeter大学のChristopher E Clark氏らが、高血圧症の治療を受ける230例を約10年間追跡して明らかにした。同左右差は、心血管イベントや心血管死リスクの増大にも関与しており、Clark氏は、「同左右差は、心血管リスク増大の有用なインジケーターとなり得る」と結論している。BMJ誌2012年4月7日号(オンライン版2012年3月20日号)掲載報告より。

日本の経済不況期、男性管理職、専門・技術職の死亡率、自殺率が急上昇

1990年代後半以降、日本の男性管理職や専門・技術職の死亡率、自殺率が急激に上昇し、その他の職種を上回るという西欧諸国の定説とは異なるパターンが出現したことが、北里大学医学部公衆衛生学の和田耕治氏らの調査で明らかとなった。日本の保健医療は現在、1990年代以降の長引く景気低迷により、特に労働年齢男性で危機的状況にあり、これは男性における高い自殺率で特徴づけられる。一方、この間の職種別の死亡率の傾向はほとんど知られていないという。BMJ誌2012年4月7日号(オンライン版2012年3月6日号)掲載の報告。

現金給付プログラム、就学中の若年女性のHIV、HSV-2感染を抑制

現金給付プログラムは、低所得層の就学若年女性においてHIVおよび単純ヘルペスウイルス2型(HSV-2)の感染を抑制するが、すでに退学している場合は効果がないことが、米国・ジョージ・ワシントン大学のSarah J Baird氏らがアフリカで行った調査で示された。世界のHIV感染者の3分の2がサハラ砂漠以南の地域に居住しており、その60%が女性だ。世界の新規感染者の45%が15~24歳の若年者であり、この年齢層の感染率は女性が男性の2倍以上だという。教育の不足や男性への経済的依存が、女性のHIV感染の重大なリスク因子であることが示唆されている。Lancet誌2012年4月7日号(オンライン版2012年2月15日号)掲載の報告。

薬剤師主導の介入により、プライマリ・ケアでの投薬過誤が低減

薬剤師の主導による情報技術ベースの介入により、プライマリ・ケアにおける投薬過誤が有意に低減することが、英国・ノッティンガム大学プライマリ・ケア科のAnthony J Avery氏らが実施したPINCER試験で示された。専門医の領域では、投薬の意志決定のサポートや医師の処方オーダーが電子化されるなど、投薬過誤防止における大きな進展がみられるが、プライマリ・ケアの現場では投薬の過誤が生じており、患者に重大な被害をもたらす場合がある。投薬過誤を抑制する有望な方法として、薬剤師主導の介入の有用性が示唆されているという。Lancet誌2012年4月7日号(オンライン版2012年2月21日号)掲載の報告。

がん診断後に、自殺、心血管死が増大:スウェーデン

スウェーデン人約600万人を対象とした大規模なヒストリカル・コホート研究の結果、がんとの診断を受けた人は、受けなかった人と比べて、自殺および心血管系の死亡が増大することが明らかにされた。スウェーデン・Karolinska InstitutetのFang Fang氏らの報告で、NEJM誌2012年4月5日号で発表された。がんと診断されることは、精神的外傷となる経験であり、がんという疾患やその治療による影響以上に、差し迫った有害な影響をもたらす可能性が指摘されていた。

肺塞栓症に対するリバーロキサバン、標準療法に非劣性

肺塞栓症の初期治療および長期治療に対する、経口第Xa因子阻害薬リバーロキサバン(商品名:イグザレルト)の固定用量レジメンは、標準的な抗凝固療法との比較で非劣性であり、ベネフィット対リスク特性が改善されていることが報告された。EINSTEIN–Pulmonary Embolism(PE)Study研究グループの検討報告で、NEJM誌2012年4月5日号(オンライン版2012年3月26日号)で発表された。リバーロキサバンの固定用量レジメンは、検査室監視が不要で、効果は深部静脈血栓症治療の標準的な抗凝固療法と同程度であることが示されていた。そこで、肺塞栓症の治療をシンプルにする可能性があることから検討が行われた。

フルオロキノロン系薬の網膜剥離発症リスクを検討

 経口フルオロキノロン系薬服用中は、網膜剥離発症リスクが約4.5倍に増大することが報告された。一方で1週間以内、1年以内の使用歴は同リスクを増大しないことも示されている。カナダ・Child and Family Research Institute of British ColumbiaのMahyar Etminan氏らが、約99万人を対象としたコホート内症例対照研究の結果、明らかにしたもので、JAMA誌2012年4月4日号で発表した。フルオロキノロン系薬の眼毒性については、多くの症例報告があるものの、網膜剥離発症リスクとの関連についての研究報告はこれまでほとんど行われていなかったという。

マンモグラフィに超音波やMRIを追加すると?

乳がん検出のため、マンモグラフィ検査に超音波検査やMRIを追加実施すると、乳がん検出の感受性は向上することが示された。ただし、疑陽性所見も増大する。米国Magee-Womens HospitalのWendie A. Berg氏らが、乳がんハイリスクの女性約2,800人について行った試験で明らかにしたもので、JAMA誌2012年4月4日号で発表した。マンモグラフィでは見つからない小さなリンパ節陰性乳がんも、年1回の超音波スクリーニングで検知可能とされ、さらにMRIは、マンモグラフィと超音波スクリーニングでは検出不可能な乳がんを見つけられる可能性があるとされる。Berg氏らは、それらを踏まえて本検討を行った。

がんでアルツハイマー病のリスクが低下?

がん患者はアルツハイマー病のリスクが低く、アルツハイマー病患者はがんのリスクが低下するという逆相関の関係がみられることが、米ボストン退役軍人医療センターのJane A Driver氏らの検討で示された。パーキンソン病ではがんのリスクが低減し、がんと神経変性疾患は遺伝子や生物学的経路を共有することが示されている。がんとアルツハイマー病の発症は逆相関することが示唆されているが、この関係はがんサバイバーに限定的な死亡の結果(アルツハイマー病発症年齢に達する前に死亡)なのか、それともアルツハイマー病患者におけるがんの過小診断(重度認知障害患者ではがん症状の検査が少ない)によるものかは不明だという。BMJ誌2012年3月31日号(オンライン版2012年3月12日号)掲載の報告。

DPP-4阻害薬、メトホルミン単独で目標血糖値非達成例の二次治療として有効

 ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP-4)阻害薬は、メトホルミン単独療法で目標血糖値が達成されなかった2型糖尿病患者の二次治療としてHbA1cの低下効果を発揮することが、ギリシャ・アリストテレス大学のThomas Karagiannis氏らの検討で示された。経口血糖降下薬であるDPP-4阻害薬は、2型糖尿病患者のHbA1cを著明に低下させ、体重増加や低血糖のリスクも少ない。種々の血糖降下薬に関する間接的なメタ解析では、二次治療薬としてのDPP-4阻害薬は他の薬剤と同等のHbA1c低下効果を有することが示唆されているが、既存の2型糖尿病の治療ガイドラインはDPP-4阻害薬の使用に関するエビデンスが十分ではないという。BMJ誌2012年3月31日号(オンライン版2012年3月12日号)掲載の報告。

ミレニアム開発目標4/5の2015年達成に向けた保健介入の現状とは?

妊産婦、新生児、子どもへの保健介入の普及度は、介入の種類や国ごとで大きなばらつきがあることが、ブラジル・Pelotas連邦大学のAluísio J D Barros氏らの調査で明らかとなった。ミレニアム開発目標4(乳幼児死亡率の削減)および5(妊産婦の健康の改善)の達成に向けた歩みが、期限とされる2015年へ秒読み体制に入っている現在、死亡率や健康の改善に有効な介入の普及度の不均衡にいかに対処するかが、重要な戦略となっているという。Lancet誌2012年3月31日号掲載の報告。

人工股関節全置換術、metal-on-metal関節で高い再置換率

人工股関節全置換術(THR)では、metal-on-metal関節は他の人工関節に比べ再置換を要する確率が高く、骨頭径が大きいほど5年再置換率が上昇することが、英国・ブリストル大学整形外科のAlison J Smith氏らの検討で示された。THRは極めて一般的な施術法だが、特に若年患者で人工関節が機能しなかったり、摩滅や転位に起因する弛緩によって再置換を要する場合があるという。これらの問題への対処法として、骨頭径が大きく摺動面がmetal-on-metalの人工関節の移植が行われるが、その耐用性は明らかではなく、セラミック製のceramic-on-ceramic関節の有用性も報告されている。Lancet誌2012年3月31日号(オンライン版2012年3月13日号)掲載の報告。

2型糖尿病の肥満成人、生活習慣の強化介入改善で可動性低下を約半減

2型糖尿病の肥満成人に対し、生活習慣への強化介入で体重を減少して可動性改善を図ることで、身体障害の衰えを遅くできることが明らかにされた。米国・ウェイクフォレスト大学のW. Jack Rejeski氏らが、約5,000例を対象に4年間、強化介入をしつつ追跡した結果で、NEJM誌2012年3月29日号で発表された。2型糖尿病の人は加齢とともに、身体障害(特に可動性の低下)が増大することが知られる。一方で、そのような患者への、積極的な生活習慣改善介入による体重減少と可動性改善が、その低下を遅くすることが示されていた。

brodalumab、中等度~重度の乾癬に有効

尋常性乾癬に対する、brodalumab(開発コードAMG 827)の有効性と安全性を検討した第2相試験の結果が報告された。brodalumabは、抗IL-17受容体完全ヒト抗体で、第1相試験において、1回700mg投与の6週間時点での相当な改善が示され、本試験では用量プロファイルが模索された。乾癬は、米国では人口の2~3%、欧州では0.6~6.5%に存在するとされる慢性T細胞自己免疫疾患で、皮膚細胞が炎症症状を起こし角化するのが特徴で、最近の研究で、その発現にIL-17が関わっていることが明らかになっている。カナダ・Probity Medical ResearchのKim A. Papp氏らによる本報告は、NEJM誌2012年3月29日号で発表された。

薬剤費自己負担の増加で、小児喘息患者の喘息による入院増加

米国の5~18歳の小児喘息患者について、薬剤費の自己負担額が増えるにつれ、喘息治療薬服用日数がやや減少し、一方で喘息による入院件数が増大することが明らかにされた。米国・ミネソタ大学のPinar Karaca-Mandic氏らが、約9,000人の18歳以下の喘息患者について調べた結果で、JAMA誌2012年3月28日号で発表した。米国では近年、民間医療保険会社が、薬剤費の患者自己負担を増加してきているという。そのことによる小児患者への影響については明らかにされていなかった。

AHA推奨の健康指標、遵守項目が多いほど死亡リスクは有意に減少

米国心臓協会(AHA)が推奨する7項目からなる心血管健康基準について、6項目以上を満たしている人は、1項目以下しか満たしていない人に比べ、全死亡リスクは半分以下、心血管疾患死や虚血性心疾患死リスクは3分の1以下に減少することが示された。米国疾病管理予防センター(CDC)のQuanhe Yang氏らが、約4万5,000人の成人データを調べて明らかにしたもので、JAMA誌2012年3月28日号(オンライン版2012年3月16日号)で発表した。ただしYang氏は、同基準7項目すべてを満たしている人は、1~2%とごくわずかであったことについても言及している。

携帯電話の使用、神経膠腫の発生に影響せず

アメリカでは現在、携帯電話の使用率がほぼ100%に達しているが、関連が指摘されている神経膠腫のリスク増大は認めないことが、アメリカ国立がん研究所のM P Little氏らの検討で示された。国際がん研究機関(International Agency for Research on Cancer:IARC)は最近、2つの疫学試験[interphone試験(2010年)、スウェーデン試験(2011年)]で報告された相対的なリスクに基づいて、携帯電話の使用と脳腫瘍のリスクの関連について再評価を行い、発がん促進の可能性のある携帯電話のマイクロ波放射の分類を行った。その一方で、1990年半ば以降、脳腫瘍の発生率の傾向は携帯電話の使用増加を反映しておらず、一般にこの状況は現在も続いているという。BMJ誌2012年3月25日号(オンライン版2012年3月8日号)掲載の報告。

子宮頸がん検診の予後改善効果を確認

子宮頸がんの治癒率は、症状の発現で病変がみつかった女性よりも、検診で発見された女性のほうが高く、検診によって予後が改善することが、スウェーデン・ウプサラ大学のBengt Andrae氏らの調査で示された。通常、検診で発見された子宮頸がん女性は、外来で発見された場合に比べ生存期間が長いが、検診プログラムはリードタイム・バイアス(lead time bias、早期に発見されたため生存期間が長くみえ、生存率も高くみえるバイアス)によってそのベネフィットの評価が歪められるという。そこで、同氏らは浸潤性子宮頸がんの治癒率を指標に、検診プログラムの有用性について検討した。BMJ誌2012年3月25日号(オンライン版2012年3月1日号)掲載の報告。