ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:331

ボディピアスの実態:イギリス全国調査

イギリスでは特に若い成人女性で耳たぶ以外の身体部位へのピアス装着の頻度が高く、問題が多発し健康サービスの支援を要する事例も多いことが、健康保護局感染症センターのAngie Bone氏らが実施した横断的世帯調査で明らかとなった。近年、イギリスでは美容的なボディピアシングが急増しているが、その実態は不明だという。医学、歯学論文では合併症の報告が相次いでおり、国会でも議論されているが、問題の大きさを把握するための検討はほとんどなかった。BMJ誌2008年6月21日号(オンライン版2008年6月12日)の報告。

喘鳴が見られる幼児が将来、喘息を発症する予測因子が明らかに

喘鳴の見られる就学前の幼児が、将来、喘息をきたす可能性は、運動で誘発される喘鳴およびアトピー性疾患の既往という2つの因子で予測可能なことが、イギリスWythenshawe病院北西肺研究センター一般診療研究部のPeter I Frank氏らが実施した縦断的研究で明らかとなった。就学前の幼児の25~38%に喘鳴が見られるが、これらの幼児が将来、なんらかの肺疾患をきたす症候は明確でなかった。BMJ誌2008年6月21日号(オンライン版2008年6月16日号)掲載の報告。

ボセンタンは軽度症候性の肺動脈高血圧にも有効

エンドセリン受容体拮抗薬ボセンタン(商品名:トラクリア)は、進行性のみならず軽度症候性の肺動脈高血圧(PAH)にも有効なことが、イタリアBologna大学心臓病研究所のNazzareno Galie氏らが実施した無作為化試験(EARLY試験)で明らかとなった。PAHの治療はおもに進行性病変について検討されており、軽症例に関する研究は少ないという。Lancet誌2008年6月21日号掲載の報告。

再発寛解型多発性硬化症に対するlaquinimod治療は、増量しても有効かつ耐用可能

再発寛解型多発性硬化症(RRMS)の新たな治療薬であるlaquinimodは、0.6mg/日に増量しても十分に耐用可能で、MRI上の疾患活動性を有意に低減させることが、イタリアVita-Salute大学San Raffaele科学研究所のGiancarlo Comi氏らが実施した第IIb相試験で明らかとなった。すでに、laquinimod 0.3mg/日の安全性および有効性は確かめられていた。Lancet誌2008年6月21日号掲載の報告。

重篤な心不全患者へのdronedarone治療で死亡率は上昇

国際的な第III相試験が進められている抗不整脈薬dronedaroneは、強い副作用が問題とされているアミオダロン(商品名:アンカロン)に代わる心不全患者の治療薬として期待されている。本報告は、コペンハーゲン大学(デンマーク)のLars Kober氏らのdronedarone研究グループによるANDROMEDA試験(Antiarrhythmic Trial with Dronedarone in Moderate to Severe CHF Evaluating Morbidity Decrease)の結果で、「重症の心不全患者にdronedaroneを投与した場合、死亡率が上昇する」との警告が報告された。NEJM誌2008年6月19日号より。

心房細動と心不全患者には心拍コントロールを主要戦略とすべき

心房細動および心不全患者の治療は、洞調律を回復し維持する方法が一般的である。これは、心房細動が心不全患者の死亡の予測因子であり、心房細動を抑制すれば転帰に有利な影響を及ぼす可能性があるというデータに基づいているが、この方法の利点とリスクについては、これまで十分に検討されなかった。カナダ・モントリオール大学心臓研究所のDenis Roy氏らAtrial Fibrillation and Congestive Heart Failure 共同研究グループは、心調律コントロールと心拍コントロールを比較検証した結果、心調律コントロールは死亡率減少に結びつかず、心拍コントロールが主要アプローチであると結論付けた。NEJM誌2008年6月19日号より。

2型糖尿病治療でかえってうつ発症率が高まる

抑うつ症状と2型糖尿病は関連が指摘されているが、2型糖尿病が抑うつ症状のリスク因子かどうかは不明である。抑うつ症状と2型糖尿病の相関関係を調べていたジョンズ・ホプキンス大学(アメリカ)のSherita Hill Golden氏らは、全体としての相関関係はないとしながらも、糖尿病治療中のほうが抑うつ症状発症率は高まることを示した。JAMA誌2008年6月18日号より。

セント・ジョーンズ・ワートは注意欠陥多動障害(ADHD)に効果なし

年少者の注意欠陥多動性障害(ADHD)には興奮剤が有効で、患者の60%~70%を効果的に治療できるが、多くの親は代替療法を求める。米国では植物性薬品(ハーブ)が人気だが、その中でセント・ジョーンズ・ワート(セイヨワートギリソウ=Hypericum perforatum)は使用されるハーブの上位3つに入る。補完代替療法を主体とするバスティア大学(アメリカ)のWendy Weber氏らは、ADHD治療におけるセント・ジョーンズ・ワートの有効性と安全性を検討し報告した。JAMA誌2008年6月11日号より。

椎間板ヘルニアに伴う坐骨神経痛には手術を

欧米では椎間板ヘルニアに伴う坐骨神経痛(1,000人中5、6人が毎年発症)の疼痛症状から軽減するためルーチンに手術が行われている。初発から6週間で70%は下肢痛減弱に至るが、大部分のガイドラインで手術が推奨されている。しかし障害が残ることへの恐れから保存療法を支持する手術慎重派も少なくなく、また手術の至適時期に関する知見も乏しいことから、オランダのライデン-ハーグ椎間板ヘルニア介入予後予測研究グループは、早期手術の有効性を保存療法群との比較で2年以上にわたり追跡調査を行い検討した。BMJ誌2008年6月14日号(オンライン版2008年5月23日号)にて掲載。

地中海式ダイエットは糖尿病予防効果あり

大量のバージンオリーブオイルを使い食物繊維なども豊富な地中海沿岸地方の伝統的な食習慣(地中海式ダイエット)に、心血管疾患の予防効果があることはこれまで多くの調査によって示されている。では、糖尿病に対する予防効果はどうなのか。ナバラ大学(スペイン)医学部予防医学・公衆衛生部門のM A Martinez-Gonzalez氏らは、地中海式ダイエットを嗜好する人々とそうでない人で、糖尿病発生率との相関関係を検討した。「地中海式ダイエットは糖尿病発生率を低減する」との結果を報告している。BMJ誌2008年6月14日号(オンライン版2008年5月29日号)掲載より。

旅行者下痢の予防に大腸菌由来毒素含有ワクチンパッチが有効

旅行者下痢に対し、腸管毒素原性大腸菌(ETEC)由来の易熱性毒素(LT)を含有する経皮吸収型のワクチンが有効なことが、IOMAI Corporation(米国、Gaithersburg)のSarah A Frech氏らが健常な旅行者を対象に行った第II相試験で示された。ETECは、流行地への旅行者や開発途上国の幼児の下痢の主要原因である。毎年2,700万人の旅行者および2億1,000万人の小児が急性の下痢を発症し、38万人の子どもが死亡しているという。Lancet誌2008年6月14日号掲載の報告。

粘液溶解薬カルボシステインが、COPDの増悪予防に有効

粘液溶解薬であるカルボシステインが、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の増悪の予防に有効なことが、中国で実施された臨床試験で明らかとなった。COPDは気道制限を特徴とし、粘液過剰分泌、酸化ストレス、気道炎症など多くの構成因子を有する。カルボシステインは、喀痰を伴う呼吸器疾患の治療に広く用いられる粘液溶解薬のひとつであり、抗炎症作用および抗酸化作用を持つためCOPDの増悪の抑制に有効な可能性があるという。広州医科大学第一病院広州呼吸器疾患研究所のJin-Ping Zheng氏らの報告で、Lancet誌2008年6月14日号に掲載された。

強化血糖コントロールは血管系転帰を改善:ADVANCE

本論は、2型糖尿病の大規模試験ADVANCE(the Action in Diabetes and Vascular Disease:Preterax and Diamicron Modified Release Controlled Evaluation)研究グループによる、2型糖尿病患者に対する強化血糖コントロールの、血管系転帰に与える影響の検討結果。NEJM誌2008年6月12日号(オンライン版2008年6月6日号)に掲載された。同日掲載されたACCORD研究グループでは、「血糖降下強化療法は死亡率を高め心血管イベント減へのベネフィットはない」と結論していたが、ADVANCE研究グループからは反対の見解が報告されている。

血糖降下強化療法は有害:ACCORD

2型糖尿病患者の糖化ヘモグロビン値と心血管イベントとの関連はこれまで疫学研究で示されている。2型糖尿病の大規模試験ACCORD(The Action to Control Cardiovascular Risk in Diabetes)研究グループは、糖化ヘモグロビン値を正常化するための強化療法が心血管イベントを減らすかどうかを検討していたが、死亡リスクが増大し試験は中止に至った。NEJM誌2008年6月12日号(オンライン版2008年6月6日号)より。

QRS幅拡大は心不全患者の退院後死亡・再入院の独立予測因子

心不全で入院した患者は、退院後も死亡率と再入院率の高いことはわかっているが、入院中のQRS波持続時間による予後予測については、これまであまり検討されていない。そこで、米国ノースウエスタン大学医学部(シカゴ)のNorman C. Wang氏らは、左室駆出率(LVEF)低下に伴う心不全の入院患者のQRS幅と予後の関係について検討し、「QRS幅延長は、高い退院後死亡率の独立因子である」と報告している。JAMA誌2008年6月11日号より。

認知症改善のため日光浴を

多くの認知症高齢患者と介護者を苦しめる、認知低下や気分障害、行動・睡眠障害およびADL(日常生活動作)の制限は、サーカディアンリズム障害が関連している。オランダ神経科学研究所(Netherlands Institute for Neuroscience)のRixt F. Riemersma-van der Lek氏らは、サーカディアンリズムの2大同調因子である「明るい光」と「メラトニン」を長期間、単独もしくは組み合わせることで、認知症状の進行を改善できるかどうかを検証する長期2×2因子二重盲検無作為化プラセボ対照試験を行った。JAMA誌2008年6月11日号より。

英国で進行中の患者治療記録のIT共有プロジェクトに対する人々の反応は?

英国では、NHS(National Health Service)のスタッフや患者が、電子化した患者の治療記録サマリーを共有できるよう大規模なITプロジェクトが進められている。SCR(summary care record)と呼ばれるサマリーは、一般開業医の診療記録から抽出・電子化されたもので、患者もHealthSpaceというWEBサイトを通じてアクセスすることができる。治療効率のアップ、それに伴う治療コスト削減が期待される本システムだが、一方で実用性、システムにかかるコスト、個人情報管理などに疑念を呈する声も絶えない。そこでロンドン大学のTrisha Greenhalgh氏らが、患者、スタッフが本システムをどう見ているのか質的研究を行った。BMJ誌2008年6月7日号(オンライン版2008年5月29日号)掲載より。

臨床試験での治療有効性に対する医師と患者の評価は一致している

さまざまな疾患の治療有効性を評価するため、患者および医師による総合評価(global assessments)が一般的に用いられるようになっている。しかし一方で、患者の総合評価と医師の総合評価は必ずしも一致しないとのエビデンスも示されている。そこでギリシャ・イオアニア医科大学Evangelos Evangelou氏らは、コクランデータベースで臨床試験における医師、患者の総合評価に関するシステマティックレビューを行った。結果は「おおむね一致する」と報告している。BMJ誌2008年6月7日号(オンライン版2008年5月21日号)掲載より。

メタボの診断基準では心血管疾患や糖尿病を予測できない?

メタボリックシンドローム(MetS)とその構成因子は高齢者の2型糖尿病とは相関するものの、血管リスクとの関連はないか、あるいは弱いため、心血管疾患(CVD)と糖尿病のリスクを同時に予測するMetSの判定規準を策定する試みは有益でないことが、2つのプロスペクティブ試験の予後データの解析から明らかとなった。MetS診断基準はインスリン抵抗性と血管疾患の関連をよりよく理解できるように策定されたが、その臨床的な役割には疑問の声もあるという。英国Glasgow大学医学部のNaveed Sattar氏らによる報告で、Lancet誌2008年6月7日号(オンライン版2008年5月22日号)に掲載された。

原発性高アルドステロン症、高血圧患者における有病率はそれほど高くない

治療抵抗性の高血圧患者では原発性高アルドステロン症の有病率が高いが、現在報告されているほどではなく、それゆえ高血圧患者一般の有病率も低いと推察されることが、20年以上をかけて集積した症例のレトロスペクティブな観察研究で明らかとなった。最近の報告では、一般的な高血圧患者の約10%が原発性高アルドステロン症(Conn症候群)に罹患しているとされるが、この高い有病率については疑問の声が上がっていた。アリストテレス大学Hippokration病院(ギリシャ、セサロニキ)のStella Douma氏らがLancet誌2008年6月7日号で報告した。