ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:22

IBSの2次治療、低用量アミトリプチリンが有用/Lancet

 プライマリケアにおける過敏性腸症候群(IBS)の2次治療として、低用量アミトリプチリンはプラセボと比較し、6ヵ月後のIBS重症度尺度(IBS Severity Scoring System:IBS-SSS)スコアが有意に低く、安全性および忍容性も良好であることが示された。英国・リーズ大学のAlexander C. Ford氏らが、英国のプライマリケア55施設で実施した無作為化二重盲検プラセボ対照試験「Amitriptyline at Low-Dose and Titrated for Irritable Bowel Syndrome as Second-Line Treatment:ATLANTIS試験」の結果を報告した。IBS患者の多くはプライマリケアで管理されている。IBSに対する1次治療が無効であった場合、英国国立医療技術評価機構(NICE)のガイドラインでは2次治療として低用量の三環系抗うつ薬を考慮することが推奨されているが、プライマリケアにおける有効性は不明であり処方頻度は低い。Lancet誌オンライン版2023年10月16日号掲載の報告。

CAD患者へのスタチン、種類による長期アウトカムの差は?/BMJ

 冠動脈疾患(CAD)成人患者においてロスバスタチンvs.アトルバスタチンは、3年時点の全死因死亡、心筋梗塞、脳卒中または冠動脈血行再建術の複合に関して有効性は同等であった。ロスバスタチンはアトルバスタチンと比較し、LDLコレステロール(LDL-C)値の低下に対して有効性が高かったが、糖尿病治療薬を必要とする糖尿病の新規発症および白内障手術のリスクが上昇した。韓国・延世大学校医科大学のYong-Joon Lee氏らが、韓国の病院12施設で実施した多施設共同無作為化非盲検試験「Low-Density Lipoprotein Cholesterol-Targeting Statin Therapy Versus Intensity-Based Statin Therapy in Patients With Coronary Artery Disease trial:LODESTAR試験」の2次解析結果を報告した。LDL-Cの低下作用はスタチンの種類によって異なり、冠動脈疾患患者におけるロスバスタチンとアトルバスタチンの長期的な有効性および安全性を直接比較した無作為化試験はほとんどなかった。BMJ誌2023年10月18日号掲載の報告

1型DMへのteplizumab、β細胞機能を有意に維持/NEJM

 新規診断の1型糖尿病の小児・青少年患者において、抗CD3モノクローナル抗体のteplizumab(12日間投与の2コース)は、β細胞機能の維持(主要エンドポイント)に関してベネフィットがあることが示された。ただし、インスリン用量、糖化ヘモグロビン値などの副次エンドポイントに関しては、ベネフィットが観察されなかった。英国・カーディフ大学のEleanor L. Ramos氏らが、第III相の無作為化プラセボ対照試験の結果を報告した。teplizumabは、8歳以上のステージ2の1型糖尿病患者に対し、ステージ3への進行を遅らせるための投与が米国FDAに承認されている。新規診断の1型糖尿病患者におけるteplizumabの静脈内投与が疾患進行を抑制するかについては不明であった。NEJM誌オンライン版2023年10月18日号掲載の報告。

起立性低血圧ありの高血圧患者、厳格治療のベネフィットは?/JAMA

 ベースラインで起立性低血圧が認められる場合でも、厳格降圧治療が標準降圧治療と比べて心血管疾患(CVD)または全死因死亡リスクを低減し、また立位性低血圧の有無による治療効果の差はないことが、米国・ベス・イスラエル・ディーコネス医療センターのStephen P. Juraschek氏らによる検討で示された。起立性低血圧または立位性低血圧を有する成人において、厳格vs.標準降圧の有益性については懸念が続いていた。JAMA誌2023年10月17日号掲載の報告。

多がん早期検出血液検査は、がんスクリーニングで実行可能か/Lancet

 多がん早期検出(multicancer early detection:MCED)血液検査は、腫瘍から循環血中に排出された遊離DNA(cell-free DNA:cfDNA)のがん特異的DNAメチル化パターンを検出し、がんシグナルが確認された場合はその起源(cancer signal origin:CSO)を予測することから、1回の採血で50以上のがん種の検出が可能とされる。米国・スローン・ケタリング記念がんセンターのDeb Schrag氏らは、「PATHFINDER研究」にてMCED血液検査を用いたがんスクリーニングは実行可能であることを確認し、今後、臨床的有用性を検証する研究を進める必要があることを示した。研究の成果は、Lancet誌2023年10月7日号で報告された。

HIV陽性者の結核性髄膜炎、デキサメタゾン追加は有用か/NEJM

 結核性髄膜炎を有するHIV陽性の成人患者の治療において、抗結核化学療法に補助療法としてデキサメタゾンを追加する方法は、プラセボの追加と比較して、1年生存率を改善せず、神経障害や免疫再構築症候群(IRIS)の発生などに関しても有益性を認めないことが、ベトナム・オックスフォード大学臨床研究所(OUCRU)のJoseph Donovan氏らが実施した「ACT HIV試験」で示された。研究の詳細は、NEJM誌2023年10月12日に掲載された。  ACT HIV試験は、ベトナムとインドネシアの施設で実施された二重盲検無作為化プラセボ対照試験であり、2017年5月~2021年4月の期間に参加者の無作為化を行った(Wellcome Trustの助成を受けた)。

急性脳梗塞、単純CT診断下で血管内血栓除去術vs.薬物治療単独/Lancet

 患者を選定する画像診断に、造影剤を用いない単純CTを用いる環境下では、主幹動脈閉塞の大梗塞が認められた急性虚血性脳卒中患者において、血管内血栓除去術は機能的アウトカムの改善および死亡率低下と関連することが、ドイツ・ハイデルベルク大学病院のMartin Bendszus氏らによる、前向き多施設共同非盲検無作為化試験の結果で示された。最近のエビデンスとして、急性脳梗塞では血管内血栓除去術の有益な効果が示されている。しかしながら、それらの試験はマルチモーダル脳画像に依拠しており、臨床現場で使用されているのは主に単純CTであることから本検討が行われた。Lancet誌オンライン版2023年10月11日号掲載の報告。

2型DM基礎インスリンへの追加、チルゼパチドvs.インスリン リスプロ/JAMA

 基礎インスリン療法で血糖コントロールが不十分な2型糖尿病患者において、インスリン グラルギンへの追加治療として週1回のチルゼパチドは、食前追加インスリンと比べてHbA1c値の低下および体重減をもたらし、低血糖症の発現もより少なかったことが、米国・Velocity Clinical ResearchのJulio Rosenstock氏らによる第IIIb相国際多施設共同非盲検無作為化試験「SURPASS-6試験」で示された。チルゼパチドは、グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチドおよびグルカゴン様ペプチド-1(GIP/GLP-1)受容体作動薬であり、2型糖尿病の治療に用いられているが、これまで上記患者の追加インスリン療法として食前追加のインスリンと比較した有効性と安全性については明らかにされていなかった。JAMA誌オンライン版2023年10月3日号掲載の報告。

脳梗塞急性期の降圧治療開始、早期vs.8日目/BMJ

 発症から24~48時間以内の軽度~中等度急性虚血性脳卒中で、収縮期血圧が140mmHg以上220mmHg未満かつ静脈内血栓溶解療法を受けなかった患者において、早期降圧治療は8日目以降開始の降圧治療と比較し、90日時点の機能的依存(後遺症)や死亡を低下させることはなかった。中国・首都医科大学のLiping Liu氏らが、多施設共同無作為化非盲検評価者盲検比較試験「China Antihypertensive Trial in Acute Ischemic Stroke:CATIS-2試験」の結果を報告した。急性虚血性脳卒中患者において、発症後3日以内の早期降圧治療は無治療と比較し、90日時の機能的依存または死亡のリスクに影響を与えないことが示されていたが、早期降圧治療と遅延降圧治療の比較試験はなかった。BMJ誌2023年10月9日号掲載の報告。

1型DM妊婦の血糖コントロール、クローズドループ療法vs.標準療法/NEJM

 1型糖尿病の妊婦において、ハイブリッドクローズドループ(HCL)療法は標準インスリン療法と比較し妊娠中の血糖コントロールを有意に改善することが示された。英国・Norfolk and Norwich University Hospitals NHS Foundation TrustのTara T. M. Lee氏らが、同国9施設で実施した無作為化非盲検比較試験「Automated insulin Delivery Amongst Pregnant women with Type 1 diabetes trial:AiDAPT試験」の結果を報告した。HCL療法は、非妊娠成人および小児において血糖コントロールを改善することが報告されているが、妊娠中の1型糖尿病の管理における有効性は明らかになっていなかった。NEJM誌オンライン版2023年10月5日号掲載の報告。

介護施設の入浴時ユニバーサル除菌、感染症入院リスクを低下/NEJM

 ナーシングホームにおいて、全入所者に対するクロルヘキシジンの使用とポビドンヨード経鼻投与による除菌は、通常ケアよりも感染症による入院リスクを有意に低下することが示された。米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のLoren G. Miller氏らが、ナーシングホーム28ヵ所の入所者計2万8,956人を対象に行ったクラスター無作為化試験で明らかにした。ナーシングホームの入所者は、感染・入院および多剤耐性菌の保菌率が高いといわれる。NEJM誌オンライン版2023年10月10日号掲載の報告。

妊娠糖尿病への早期メトホルミンvs.プラセボ/JAMA

 妊娠糖尿病に対する早期のメトホルミン投与は、プラセボ投与との比較において、インスリン投与開始または32/38週時空腹時血糖値5.1mmol/L以上の複合アウトカム発生について、優位性を示さなかった。アイルランド・ゴールウェイ大学のFidelma Dunne氏らが、プラセボ対照無作為化二重盲検試験の結果を報告した。ただし、副次アウトカムのデータ(母親のインスリン開始までの時間、自己報告の毛細血管血糖コントロール、妊娠中の体重増加の3点)は、大規模試験でさらなるメトホルミンの研究を支持するものであったという。妊娠糖尿病は、妊娠期に多い合併症の1つだが、至適な治療は明らかになっていない。JAMA誌オンライン版2023年10月3日号掲載の報告。

術前リスク層別化アルゴリズムで、不必要な卵巣摘出術が低減/JAMA

 米国・Nemours Children's HealthのPeter C. Minneci氏らMidwest Pediatric Surgery Consortiumの研究チームは、卵巣温存術に適した良性病変の可能性が高い病巣を同定するための術前リスク層別化アルゴリズムを使用することで、不必要な卵巣摘出術が減少することを示し、これによって青少年期における不必要な卵巣摘出とその生涯にわたる影響を回避できる可能性があることを明らかにした。研究の成果は、JAMA誌2023年10月3日号に掲載された。  研究チームは、良性と悪性の卵巣病変を識別し、不必要な卵巣摘出術を減少させるための、コンセンサスに基づく術前リスク層別化アルゴリズムの性能を評価する目的で、前向きコホート研究を実施した(Thrasher Research FundのE.W. "Al" Thrasherによる助成を受けた)。

eplontersen、遺伝性ATTRvアミロイドーシスに有効/JAMA

 ポリニューロパチーを伴う遺伝性トランスサイレチン型(ATTRv)アミロイドーシス患者の治療において、アンチセンスオリゴヌクレオチドであるeplontersenはプラセボと比較して、血清トランスサイレチン濃度を有意に低下させ、ニューロパチーによる機能障害を軽減し、良好なQOLをもたらすことが、ポルトガル・Centro Hospitalar Universitario de Santo AntonioのTeresa Coelho氏らが実施した「NEURO-TTRansform試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2023年9月28日号で報告された。   NEURO-TTRansform試験は、過去の臨床試験のプラセボ群(historical placebo)との比較を行う非盲検単群第III相試験であり、2019年12月~2021年6月に日本を含む15ヵ国40施設で患者のスクリーニングを実施した(米国・Ionis Pharmaceuticalsの助成を受けた)。

エフガルチギモド、一次性免疫性血小板減少症に有効/Lancet

 一次性免疫性血小板減少症(特発性血小板減少性紫斑病)は後天性の自己免疫疾患で、血小板抗原を標的とする自己抗体がその一部を媒介しており、ほかの疾患との明確な関連のない孤立性血小板減少症(血小板数<100×10 9/L)を特徴とする。患者は、出血イベント(まれに生命を脅かす)や疲労を呈し、QOLの低下を招く場合もある。米国・ジョージタウン大学のCatherine M. Broome氏らは「ADVANCE IV試験」において、ファーストインクラスの抗胎児性Fc受容体(FcRn)抗体フラグメント製剤エフガルチギモドが、プラセボと比較して、本症の慢性期の患者における血小板数の持続的臨床効果について有意に優れ、忍容性も良好で有害事象の多くは軽度~中等度であることを示した。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年9月28日号に掲載された。

睡眠時無呼吸へのCPAP、MACEイベントの2次予防に有効か/JAMA

 閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)と心血管疾患の双方を有する患者の治療において、持続陽圧呼吸療法(CPAP)はこれを行わない場合と比較して、主要有害心脳血管イベント(MACCE)の2次予防に全般的には有効ではないものの、CPAPのアドヒアランスが良好な患者ではMACCEのリスクを低減することが、スペイン・リェイダ大学のManuel Sanchez-de-la-Torre氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2023年10月3日号で報告された。  研究グループは、OSAに対するCPAPによる治療がMACCEのリスクに及ぼす影響を評価する目的で、系統的レビューとメタ解析を行った(スペイン・カルロス三世保健研究所などの助成を受けた)。

eGFR低下とアルブミン尿、腎不全や心血管疾患と関連/JAMA

 CKD Prognosis Consortiumの114コホートからの個人データを対象としたメタ解析において、血清クレアチニン(Cr)値に基づく推定糸球体濾過量(eGFRcr)あるいは血清Cr値と血清シスタチンC値に基づくeGFR(eGFRcr-cys)の低下、および尿アルブミン/クレアチニン比(UACR)の上昇は、腎不全や心血管疾患、入院等を含む10の有害アウトカムの発生率上昇と関連していることが示された。米国・ニューヨーク大学のMorgan E. Grams氏らCKD Prognosis Consortiumの執筆グループが報告した。米国では成人の約14%が慢性腎臓病(CKD)(eGFR低下またはアルブミン尿)に罹患しているという。しかしながらeGFRの低さやアルブミン尿の重症度と有害アウトカムとの関連性については不明であった。JAMA誌2023年10月3日号掲載の報告。

治療抵抗性うつ病、esketamine点鼻薬vs.クエチアピン/NEJM

 治療抵抗性うつ病に対し、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)またはセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)との併用において、esketamine点鼻薬はクエチアピン徐放剤と比較して8週時の寛解率が有意に高かった。ドイツ・Goethe University FrankfurtのAndreas Reif氏らが、24ヵ国171施設で実施された第IIIb相無作為化非盲検評価者盲検実薬対照試験「ESCAPE-TRD試験」の結果を報告した。治療抵抗性うつ病(一般的に、現在のうつ病エピソード中に2つ以上の連続した治療で有効性が得られないことと定義される)は、寛解率が低く再発率が高い。治療抵抗性うつ病患者において、SSRIまたはSNRIとの併用投与下で、クエチアピン増強療法と比較したesketamine点鼻薬の有効性と安全性は明らかになっていなかった。NEJM誌2023年10月5日号掲載の報告。

急性脳卒中への遠隔虚血コンディショニングは有効か?/JAMA

 急性脳卒中患者において、四肢虚血と再灌流の一過性サイクルによる遠隔虚血コンディショニング(RIC)を、病院到着前から病院到着後に継続して行っても、90日時点での機能的アウトカムは改善しなかった。デンマーク・オーフス大学病院のRolf Ankerlund Blauenfeldt氏らが、1,500例を対象に行った無作為化比較試験の結果を報告した。これまで、いつくかの有望な前臨床および臨床データが示されてはいたが、RICが急性脳卒中に対して有効な治療法かどうかは依然として不明であった。JAMA誌2023年10月3日号掲載の報告。

ステロイド漸減中再発のリウマチ性多発筋痛症、サリルマブが有効/NEJM

 グルココルチコイド漸減中にリウマチ性多発筋痛症が再発した患者において、サリルマブ+prednisone漸減投与は、プラセボ+predonison漸減投与に比べ、持続的寛解の達成とグルココルチコイド累積投与量の減少に有意な有効性を示した。米国・コーネル大学のRobert F. Spiera氏らが、合計118例を対象に行った第III相多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験「Sarilumab in Patients with Polymyalgia Rheumatica (SAPHYR)試験」の結果を報告した。リウマチ性多発筋痛症の患者の半数以上が、グルココルチコイド漸減中に再発する。先行研究では、インターロイキン(IL)-6の阻害がリウマチ性多発筋痛症の治療で臨床的に有用である可能性が示されていた。