ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:84

セマグルチド、NASH治療に有効な可能性/NEJM

 非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の治療において、セマグルチドはプラセボに比べ、肝線維化の悪化を伴わないNASH消散が達成された患者の割合が有意に高いが、肝線維化の改善効果には差がないことが、英国・バーミンガム大学のPhilip N. Newsome氏らの検討で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2020年11月13日号で報告された。NASHは、脂肪蓄積と肝細胞損傷、炎症を特徴とする重度の非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)であり、肝線維化や肝硬変と関連し、肝細胞がんや心血管疾患、慢性腎臓病、死亡のリスク増大をもたらす。また、インスリン抵抗性は2型糖尿病と肥満に共通の特徴で、NASHの主要な病因とされる。2型糖尿病治療薬であるグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体作動薬セマグルチドは、肥満および2型糖尿病患者の減量に有効で、血糖コントロールを改善し、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)値や炎症マーカーを抑制すると報告されているが、NASH治療における安全性や有効性は明らかにされていない。

FFR閾値を順守したPCI実施でアウトカム改善/JAMA

 日常診療で1枝血管の血流予備量比(FFR)測定を受けた冠動脈疾患患者において、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の実施は実施しない場合と比較し、FFR閾値から虚血性病変と判定された患者で主要有害心血管イベント(MACE)の発生率が低く、非虚血性病変と判定された患者では同イベントの発生率が高いことと有意に関連していた。カナダ・トロント大学のManeesh Sud氏らによる検討の結果で示された。FFRは、冠動脈狭窄が心筋虚血を誘発する可能性を評価し、PCIの適応を判定するために用いられる侵襲的検査である。しかし、PCIの適応に関するFFRの閾値が日常的な介入診療で順守されているか、あるいは閾値の順守が良好な臨床アウトカムと関連しているかはわかっていなかった。著者は、「今回の解析結果は、エビデンスに基づくFFR閾値に従ったPCIの実施を支持するものである」とまとめている。JAMA誌オンライン版2020年11月13日号掲載の報告。

がん治療は4週遅れるごとに死亡率が高まる/BMJ

 がん治療が4週間遅れるだけで、手術、全身療法、放射線療法の適応となる7つのがんで全体の死亡率が上昇する。カナダ・クイーンズ大学のTimothy P. Hanna氏らが、がん治療の遅延と死亡率上昇との関連を定量化する目的で実施したシステマティックレビューとメタ解析の結果を報告した。がん治療の遅れは転帰に悪影響を及ぼす可能性があるが、その影響の標準推定値はなく、これまでのメタ解析で治療の遅れと死亡/局所管理との関連が示されていたものの、各報告のばらつきが大きくメタ解析に限界があった。著者は、「世界的にがん治療の遅れは医療制度に問題がある。がん治療開始の遅れを最小限にするシステムに焦点を当てた政策が、集団レベルでの生存転帰を改善できるであろう」とまとめている。BMJ誌2020年11月4日号掲載の報告。

COVID-19へのヒドロキシクロロキン投与、効果を認めず/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による呼吸器症状を伴う入院患者において、ヒドロキシクロロキンを用いた治療はプラセボと比較して、14日時点の臨床状態を有意に改善しなかった。米国・ヴァンダービルト大学医療センターのWesley H. Self氏らが、米国内34病院で行った多施設共同プラセボ対照無作為化盲検試験の結果を報告した。ヒドロキシクロロキンはCOVID-19治療に効果的なのか、そのデータが求められている中で示された今回の結果について著者は、「COVID-19入院成人患者の治療について、ヒドロキシクロロキンの使用を支持しないものであった」とまとめている。JAMA誌2020年11月9日号掲載の報告。

英国ガイドラインにおける年齢・人種別の降圧薬選択は適切か/BMJ

 非糖尿病高血圧症患者の降圧治療第1選択薬について、英国の臨床ガイドラインでは、カルシウム拮抗薬(CCB)は55歳以上の患者と黒人(アフリカ系、アフリカ-カリブ系など)に、アンジオテンシン変換酵素阻害薬/アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ACEI/ARB)は55歳未満の非黒人に推奨されている。しかし、英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のSarah-Jo Sinnott氏らによる同国プライマリケア患者を対象としたコホート試験の結果、非黒人患者におけるCCBの新規使用者とACEI/ARBの新規使用者における降圧の程度は、55歳未満群と55歳以上群で同等であることが示された。また、黒人患者については、CCB投与群の降圧効果がACEI/ARB投与群と比べて数値的には大きかったが、信頼区間(CI)値は両群間で重複していたことも示された。著者は、「今回の結果は、最近の英国の臨床ガイドラインに基づき選択した第1選択薬では、大幅な血圧低下には結び付かないことを示唆するものであった」とまとめている。BMJ誌2020年11月18日号掲載の報告。

70歳以上、ビタミンD・ω3・運動による疾患予防効果なし/JAMA

 併存疾患のない70歳以上の高齢者において、ビタミンD3、オメガ3脂肪酸、または筋力トレーニングの運動プログラムによる介入は、拡張期または収縮期血圧、非脊椎骨折、身体能力、感染症罹患率や認知機能の改善について、統計学的な有意差をもたらさなかったことが、スイス・チューリッヒ大学のHeike A. Bischoff-Ferrari氏らが行った無作為化試験「DO-HEALTH試験」の結果で示された。ビタミンD、オメガ3および運動の疾患予防効果は明らかになっていなかったが、著者は「今回の結果は、これら3つの介入が臨床アウトカムに効果的ではないことを支持するものである」とまとめている。JAMA誌2020年11月10日号掲載の報告。

機械学習モデルは統計モデルよりも優れるか/BMJ

 機械学習および統計モデルについて、同一患者の臨床的リスクの予測能を調べた結果、モデルのパフォーマンスは同等だが、予測リスクはさまざまに異なることが、英国・マンチェスター大学のYan Li氏らによる検討で示された。ロジスティックモデルと一般的に用いられる機械学習モデルは、中途打ち切りを考慮しない長期リスクの予測には適用すべきではなく、QRISK3のような生存時間分析モデルが、中途打ち切りを考慮し説明も可能であり望ましいことが示されたという。結果を踏まえて著者は、「モデル内およびモデル間の一貫性のレベルを評価することを、臨床意思決定に使用する前にルーチンとすべきであろう」と指摘している。QRISKやフラミンガムといった心血管疾患のリスク予測モデルは、臨床で幅広く使われるようになっている。これらの予測にはさまざまな技術が用いられるようにもなっており、最近の研究では、機械学習モデルがQRISKのようなモデルよりも優れているといわれるようになっていた。BMJ誌2020年11月4日号掲載の報告。

75歳以上への脂質低下療法、心血管イベントの抑制に有効/Lancet

 系統的レビューとメタ解析には、スタチン/強化スタチンによる1次/2次治療に関するCholesterol Treatment Trialists' Collaboration(CTTC)のメタ解析(24試験)と、5つの単独の試験(Treat Stroke to Target試験[スタチンによる2次予防]、IMPROVE-IT試験[エゼチミブ+シンバスタチンによる2次予防]、EWTOPIA 75試験[エゼチミブによる1次予防、日本の試験]、FOURIER試験[スタチンを基礎治療とするエボロクマブによる2次予防]、ODYSSEY OUTCOMES試験[スタチンを基礎治療とするアリロクマブによる2次予防])の6つの論文のデータが含まれた。

未就学児へのアジスロマイシン集団配布で耐性因子が増加/NEJM

 アジスロマイシンの年2回、4年間の集団配布により、マクロライド系抗菌薬のみならず、マクロライド系以外の抗菌薬の耐性遺伝子が増大する可能性があることが、米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のThuy Doan氏らが実施したMORDOR試験の補助的調査で示された。研究の詳細は、NEJM誌2020年11月12日号に掲載された。サハラ以南のアフリカでは、就学前の子供へのアジスロマイシンの年2回、2年間の配布により、小児死亡率は低下するものの、マクロライド耐性の増大という代償を要することが報告されている。また、より長期の年2回アジスロマイシン投与が、体内の抗菌薬耐性遺伝子の集積場所である腸レジストーム(gut resistome)に影響を及ぼすかは明らかにされていないという。

心血管リスク患者へのフェブキソスタット、アロプリノールに非劣性/Lancet

 心血管リスク因子を有する痛風患者において、フェブキソスタットはアロプリノールと比較し、主要評価項目である複合心血管イベントに関して非劣性であることが示された。長期投与による死亡あるいは重篤な有害事象のリスク増加も確認されなかった。英国・ダンディー大学のIsla S. Mackenzie氏らが、多施設共同前向き無作為化非盲検非劣性試験「FAST試験」の結果を報告した。フェブキソスタットとアロプリノールはともに痛風の治療に用いられる尿酸降下薬であるが、フェブキソスタットの心血管系への安全性に懸念があり、欧州医薬品庁は安全性をアロプリノールと比較する市販後臨床試験の実施を勧告していた。Lancet誌オンライン版2020年11月9日号掲載の報告。

米空母内の新型コロナ感染リスク、甲板上より船内で高い/NEJM

 米原子力空母セオドア・ルーズベルト(乗組員4,779人)において、2020年3月23日~5月18日に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のアウトブレイクが発生、U.S. Navy Bureau of Medicine and SurgeryのMatthew R. Kasper氏らがその調査結果をまとめた。SARS-CoV-2の感染は、狭苦しい閉鎖的な空間で無症状および症状発現前の感染者によって促進され、空母内で急速に拡大したという。SARS-CoV-2陽性と判定された乗組員の約半数は、無症状であった。NEJM誌オンライン版2020年11月11日号掲載の報告。

発症時間不明かつDWI-FLAIRミスマッチ脳梗塞、アルテプラーゼ投与は有益/Lancet

 発症時間不明で、灌流/拡散ミスマッチやMRI拡散強調画像-フレアー画像(DWI-FLAIR)ミスマッチが認められる脳卒中患者において、アルテプラーゼの静脈内投与はプラセボ投与または標準治療と比較して、90日後の機能的アウトカムは良好であることが示された。ドイツ・ハンブルク大学エッペンドルフ医療センターのGotz Thomalla氏らによるシステマティックレビューとメタ解析の結果で、症候性頭蓋内出血リスクが高くてもすべての機能的アウトカムで、ネットベネフィットが観察されたという。アルテプラーゼによる死亡例はプラセボよりも多かったが、重度の障害または死亡の発生ケースは少なかった。発症時間不明の脳卒中患者は、以前は血栓溶解療法の除外対象とされていた。研究グループは、イメージバイオマーカーで救済可能な脳細胞範囲が特定された患者については、アルテプラーゼ静脈内投与が安全で有効であるかを確認するため本検討を行った。Lancet誌2020年11月8日号掲載の報告。

監視下隔離中に新型コロナクラスター発生、その原因は/NEJM

 米国海軍入隊者1,848人について調べたところ、入隊時の定量PCR検査でSARS-CoV-2陰性だった入隊者のうち約2%が、入隊2週間後の検査で陽性に転じていた。また、入隊時の検査を拒否した入隊者のうち、同2週間後の検査で陽性だったのは2%未満であり、さらに、入隊2週間後の検査で陽性と判定された入隊者のうち、検査前から症状が認められたのは10%に満たず大半が無症状で、毎日の検温や体調モニタリングによるスクリーニングでは、SARS-CoV-2感染者は検出されなかったという。ゲノム解析では、6つの感染クラスターが確認された。米国・Naval Medical Research CenterのAndrew G. Letizia氏らが、若年成人におけるSARS-CoV-2感染制御のための有効な公衆衛生対策の研究が不十分であることから本検討を行い明らかにした。NEJM誌オンライン版2020年11月11日号掲載の報告。

術後管理への管理図使用、有害事象を有意に削減/BMJ

 手術後モニタリングにおいて、手術チームへの規則的な指標のフィードバックを伴う管理図(control chart)の使用は、主要有害事象と死亡を統計学的に有意に減少することが、フランス・クロード・ベルナール・リヨン第1大学のAntoine Duclos氏らSHEWHART Trial Groupによるクラスター無作為化試験の結果、示された。著者は、「示された結果は、管理図のルーチン使用が術後主要有害事象の予防に役立つことを支持するものである」と述べている。アウトカムをモニタリングするための管理図は、製品やサービスの質の改善ツールとして、産業界では50年以上にわたり広く使用されている。医療においても幅広い適用が示唆されているが、管理図を用いたアウトカムのモニタリングが、入院患者の有害事象発生を低下するのか、全国規模での具体的なエビデンスは乏しかったという。BMJ誌2020年11月4日号掲載の報告。

高齢者の転倒・骨折予防、スクリーニング+介入は有効か/NEJM

 高齢者の転倒による骨折の予防において、郵送での情報提供に加え、転倒リスクのスクリーニングで対象を高リスク集団に限定した運動介入または多因子介入を行うアプローチは、郵送による情報提供のみと比較して骨折を減少させないことが、英国・エクセター大学のSarah E. Lamb氏らが行った無作為化試験「Prevention of Fall Injury Trial」で示された。研究の詳細は、NEJM誌2020年11月5日号で報告された。高齢者における転倒の発生は、地域スクリーニングとその結果を考慮した予防戦略によって抑制される可能性があるが、英国ではこれらの対策が骨折の発生、医療資源の活用、健康関連QOLに及ぼす効果は知られていないという。

高血圧や2型DM合併の肥満、オンラインプログラム+PHMが有効/JAMA

 高血圧または2型糖尿病を有する過体重/肥満の患者では、プライマリケア施設による集団健康管理(population health management:PHM)とオンライン体重管理プログラムを組み合わせたアプローチは、オンラインプログラム単独および通常治療単独と比較して、12ヵ月後の減量効果が、差は小さいものの統計学的に有意に優れることが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のHeather J. Baer氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2020年11月3日号で報告された。わずかな体重減少(たとえば3~5%)であっても、重要な健康上の利益をもたらす可能性があることから、米国の診療ガイドラインでは、肥満および過体重の患者の生活様式への介入や助言が推奨されているが、プライマリケア医は時間の制約や研修、医療システムが原因で、患者と体重に関する話し合いをしないことが多いという。また、オンラインプログラムはプライマリケアにおいて効果的で、費用対効果が優れる可能性が示されているが、日常診療での有効性や拡張性は不明とされる。

低リスク前立腺がん、監視療法の転帰に人種は影響するか/JAMA

 監視療法を受けた低リスク前立腺がん患者について、アフリカ系米国人は非ヒスパニック系白人と比較して、病勢進行および根治的治療の10年累積発生率が統計学的に有意に増加したが、転移または前立腺がん特異的死亡率は増加しなかった。米国・VHA San Diego Health Care SystemのRishi Deka氏らが、後ろ向きコホート研究(追跡調査期間中央値7.6年)で明らかにした。これまでの研究で、低リスク前立腺がんのアフリカ系米国人は、非ヒスパニック系白人に比べ進行性の疾患が隠れている可能性が懸念されるとして、監視療法が安全な選択肢であるかは不明であった。JAMA誌2020年11月3日号掲載の報告。

ホルモン補充療法の乳がんリスク、治療法と期間で異なる/BMJ

 英国・ノッティンガム大学のYana Vinogradova氏らの同国コホート内症例対照研究で、ホルモン補充療法(HRT)の乳がんリスクのレベルは、HRTの種類により異なり、併用療法および長期投与で高いことが示された。ただし、メタ解析と比較し、長期のHRTに関連した乳がんのリスク増加は小さく、治療の中止でリスクは顕著に低下することも示されている。先行研究では、長期的なHRTは乳がんのリスク増加と関連しており、治療中止後はリスク増加が減るものの数年間はリスクが高いままであることが、また最近の大規模メタ解析ではHRTに関連した乳がんリスクが予想よりも高いことが示されていた。BMJ誌2020年10月28日号掲載の報告。

医療従事者とその家族のCOVID-19入院リスク/BMJ

 スコットランドにおける新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の入院患者のうち、6分の1は医療従事者とその家族であることが、英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のAnoop S V Shah氏らによる国内コホート研究で明らかにされた。また、全体としては入院絶対リスクは低いが、患者との対面サービスを担う(対面職)医療従事者の入院リスクが非対面職医療従事者と比べて3倍、その家族についても2倍高かったという。医療従事者のCOVID-19感染リスクの研究は行われているが、規模が小さく、単一施設をベースとした断面調査で、バイアスの影響を非常に受けやすい手法によるもの、また医師と看護師に限定されたものであり、医療従事者の家族についても評価した研究は不足していたという。BMJ誌2020年10月28日号掲載の報告。

医師への謝礼金額がICD/CRT-Dデバイスの選択に大いに影響/JAMA

 植込み型除細動器(ICD)や両室ペーシング機能付き植込み型除細動器(CRT-D)の初回埋め込み手術の94%が、デバイスメーカーから謝礼金を受けている医師によって行われており、さらに、採用されているのはメーカーから執刀医への謝礼金額が最も高いものである可能性が明らかになったという。米国・Yale-New Haven HospitalのAmarnath R. Annapureddy氏らが、3年間で14万5,900例の患者を対象に行った横断調査の結果を報告した。米国では議会法によって2010年に、医薬品等のメーカーから医師への謝礼金については透明性を確保するため報告開示が義務付けられ(Physician Payments Sunshine Act)、ホームページ「The Facts About Open Payments Data」で詳細情報を入手することができるようになっている。これまでの研究で、医師への謝礼がジェネリック医薬品よりも先発医薬品を処方する可能性を高めることが報告されていたが、デバイスを巡っての研究は行われていなかった。JAMA誌2020年11月3日号掲載の報告。