ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:162

腹部大動脈瘤、手術の閾値の差が死亡率の差に関連するのか/NEJM

 イングランドでは、未破裂腹部大動脈瘤の手術施行率が米国の約半分で、大動脈瘤径が米国より5mm以上大きくなってから手術が行われ、瘤破裂率は2倍以上、瘤関連死亡率は3倍以上であることが、英国・ロンドン大学セントジョージ校のAlan Karthikesalingam氏らの検討で明らかとなった。研究の成果は、NEJM誌2016年11月24日号に掲載された。欧州血管外科学会議(ESVS)のガイドラインは、動脈瘤径が男性で55mm、女性では50mmを超えたら介入を考慮すべきとしているが、介入の至適な閾値が不確実であるため、実臨床ではかなりのばらつきがみられ、55mm未満での手術施行率は国によって6.4~29.0%の幅があるという。

緩和ケアの患者・介護者それぞれへの効果は?/JAMA

 末期患者への緩和ケアは、患者QOLや症状負担を改善する可能性があるが、介護者の転帰への効果は明確ではないことが、米国・ピッツバーグ大学のDio Kavalieratos氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2016年11月22・29日号に掲載された。重篤な病態の患者のQOL改善は国際的な優先事項とされ、緩和ケアの焦点は、QOLの改善と、患者および家族の苦痛の軽減に置かれている。米国では、65%以上の病院が緩和ケアの入院プログラムを持ち、地域および外来ベースの緩和ケア提供モデルも増加しているが、実際の効果はよく知られていないという。

小児/青年ICU患者の急性腎障害、重症度と死亡リスク/NEJM

 小児集中治療室に入院中の重症小児・若年成人において、急性腎障害(AKI)の発症頻度は高く、死亡率増加など予後不良と関連している。米国・シンシナティ小児病院のAhmad Kaddourah氏らによる、国際共同前向き疫学研究(Assessment of Worldwide Acute Kidney Injury, Renal Angina, and Epidemiology:AWARE)の結果、明らかになった。結果を踏まえて著者は、「ICU入室時には急性腎障害の系統的な検査が必要である」と強調している。小児および若年成人におけるAKIの疫学的特徴は、これまで単施設および後ろ向き研究で示されてきたが、AKIの定義や重症度などが異なり一貫した結果は得られていなかった。NEJM誌オンライン版2016年11月18日号掲載の報告。

薬物有害事象による救急受診、原因薬剤は?/JAMA

 米国において2013~14年の薬物有害事象による救急外来受診率は、年間1,000例当たり4件で、原因薬剤として多かったのは抗凝固薬、抗菌薬、糖尿病治療薬、オピオイド鎮痛薬であった。米国疾病予防管理センターのNadine Shehab氏らの分析の結果、明らかになった。米国では、2010年の「患者保護および医療費負担適正化法(Patient Protection and Affordable Care Act :PPACA)」、いわゆるオバマケアの導入により、国家的な患者安全への取り組みとして薬物有害事象への注意喚起が行われている。結果を受けて著者は、「今回の詳細な最新データは今後の取り組みに役立つ」とまとめている。JAMA誌2016年11月22・29日号掲載の報告。

エボロクマブ、アテローム体積率を減少/JAMA

 スタチン服用のアテローム性動脈硬化症の患者に対する、プロ蛋白転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)阻害薬エボロクマブ(商品名:レパーサ)の投与は、LDL-C値を低下し、アテローム体積率を減少することが示された。プラーク退縮が認められた患者の割合も、エボロクマブ投与群で高率だった。オーストラリア・アデレード大学のStephen J. Nicholls氏らが行った、多施設共同のプラセボ対照無作為化二重盲検比較試験「GLAGOV」の結果で、JAMA誌2016年11月15日号で発表した。スタチン服用患者におけるPCSK9阻害薬のLDL-C値の低減効果は知られていたが、冠動脈アテローム性硬化症に対する効果は不明だった。

活動期クローン病の寛解導入・維持にウステキヌマブは有効/NEJM

 中等度~重度の活動期クローン病の患者に対し、インターロイキン12/23のp40サブユニットに対するモノクローナル抗体であるウステキヌマブ静脈内投与による寛解導入療法は、6週時点の評価で寛解達成患者の割合が約34%と、プラセボ群に比べ有意に高率だった。また、寛解を示した患者に対し、皮下投与による維持療法を行った結果についても、44週時点で寛解を維持していた患者の割合は49~53%であり、プラセボ群より有意に高率だった。カナダ・ウェスタンオンタリオ大学のBrian G. Feagan氏らが、2つのプラセボ対照二重盲検無作為化試験を行って明らかにした。NEJM誌2016年11月17日号掲載の報告。

冠動脈石灰化、低リスク女性の心血管疾患リスク予測精度を向上/JAMA

 アテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)のリスクが低い女性の約3分の1に冠動脈石灰化(CAC)が認められ、CACはASCVDのリスクを高め、従来のリスク因子に加えると予後予測の精度をわずかに改善することが、オランダ・エラスムス大学医療センターのMaryam Kavousi氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2016年11月22日(オンライン版2016年11月15日)号に掲載された。米国心臓病学会(ACC)/米国心臓協会(AHA)の予防ガイドラインに基づく、心血管疾患(CVD)の低リスク女性の予防戦略の導出におけるCAC検査の役割は、明らかにされていないという。

進行心不全への新規遠心流ポンプ、軸流ポンプより予後良好/NEJM

 進行心不全患者への完全磁気浮上遠心流ポンプ植込み術は、軸流ポンプに比べポンプの不具合による再手術の割合が低く、良好な転帰をもたらすことが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院心血管センターのMandeep R. Mehra氏らが行ったMOMENTUM 3試験で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2016年11月16日号に掲載された。連続流左心補助人工心臓により、進行心不全患者の生存率が改善しているが、ポンプ血栓症の発現がみられる。血栓症を回避するために、新たな磁気浮上遠心連続流ポンプが開発された。

CABGにおける内胸動脈の使用、両側 vs.片側/NEJM

 冠動脈バイパス術(CABG)における両側内胸(乳)動脈の使用と、片側内胸動脈+静脈グラフトの使用について、5年フォローアップの結果、死亡率や心血管イベント発生率について、有意な差はみられなかった。縦隔炎の発生は、両側群のほうが片側群よりも多く認められた。英国・オックスフォード大学のDavid P. Taggart氏らART研究グループが、多施設共同無作為化試験の結果、報告した。これまで観察試験のプール解析において、両側内胸動脈の使用のほうが長期アウトカムを改善する可能性が示されていた。しかし、手技が複雑、縦隔炎リスクが高い、無作為化試験によるエビデンスが不足しているとの理由から、両側内胸動脈の使用は、広く採用されていなかった。NEJM誌オンライン版2016年11月14日号掲載の報告。

PCI後の心房細動患者、リバーロキサバン+抗血小板薬は有効か/NEJM

 ステント留置により冠動脈インターベンション(PCI)を受けた心房細動患者に対し、低用量のリバーロキサバン(商品名:イグザレルト)+P2Y12の12ヵ月間投与、および超低用量リバーロキサバン+2剤併用抗血小板療法(DAPT)の1、6、12ヵ月投与はいずれも、標準療法のビタミンK拮抗薬+DAPT(P2Y12+アスピリン)の1、6、12ヵ月投与と比べて、臨床的に有意に出血リスクを抑制することが示された。有効性については3群で同等だった。米国・ハーバード・メディカル・スクールのMichael C. Gibson氏らが行った2,124例を対象とした無作為化試験の結果で、NEJM誌オンライン版2016年11月14日号で発表された。標準療法のビタミンK拮抗薬+DAPTは、血栓塞栓症および脳卒中のリスクを抑制するが、出血リスクを増大する。抗凝固薬リバーロキサバン+抗血小板薬(単剤または2剤併用)の有効性、安全性は確認されていなかった。

冠動脈疾患の遺伝的リスクは生活習慣で抑制できる/NEJM

 3件の前向きコホート研究と1件の横断研究の計5万5,685例全体で、遺伝的要因と生活習慣要因は、それぞれ独立して冠動脈疾患(CAD)の感受性と関連していることが示された。高遺伝子リスク群でも、生活習慣が悪い群よりも良い群でCADの相対リスクが約50%低下した。米国・マサチューセッツ総合病院のAmit V. Khera氏らが、CADの遺伝子リスクを定量化し生活習慣との関連を解析し、報告した。遺伝的要因と生活習慣の要因はどちらも、個人のCADリスクに関与するが、高遺伝子リスクが健康的生活習慣によってどのくらい相殺されるかはこれまで不明であった。NEJM誌オンライン版2016年11月13日号掲載の報告。

タウ凝集阻害薬の軽度~中等度アルツハイマー病への効果/Lancet

 ロイコメチルチオニニウムビス(LMTM)の第III相臨床試験の結果は否定的なものであり、軽度~中等度アルツハイマー病に対するLMTMのアドオン療法の有益性は示されなかった。カナダ・ダグラス精神保健大学研究所のSerge Gauthier氏らが、LMTMの安全性および有効性を評価する15ヵ月間の無作為化二重盲検比較試験の結果、報告した。先行研究で、塩化メチルチオニニウム(=メチレンブルー:酸化型メチルチオニニウムの塩化物)は、タウ凝集阻害作用を有し、アルツハイマー病に対し単独療法で有効である可能性が示唆されている。LMTMはメチルチオニニウムの安定還元体で、塩化メチルチオニニウムより溶解性や吸収性が良好で、塩化メチルチオニニウムと同様、in vitroおよび遺伝子導入マウスモデルにおいて選択的タウ凝集阻害剤として作用することが確認されていた。なお、軽度のアルツハイマー病患者を対象としたLMTMの18ヵ月間の臨床試験の結果がまもなく報告される予定である。Lancet誌オンライン版2016年11月15日号掲載の報告。

末梢動脈疾患へのチカグレロル、クロピドグレルと同等/NEJM

 症候性末梢動脈性疾患の患者に対し、抗血小板薬チカグレロル(商品名:ブリリンタ)の有効性はクロピドグレルと同等で、優越性は示されなかった。また、急性肢虚血や重大な出血といった有害事象の発生率も同等だった。米国・コロラド大学のWilliam R. Hiatt氏らが、約1万4,000例の患者を対象に行った、無作為化二重盲検試験の結果、明らかにしたもので、NEJM誌オンライン版2016年11月13日号で発表した。先行試験において、クロピドグレル単独療法群はアスピリン群と比べて心血管イベントリスクを有意に抑制することは示されていた。

世界の血圧値の動向、40年間でどう変わったか/Lancet

 1975~2015年の世界200ヵ国における血圧値の動向を調べたところ、血圧高値の傾向は高所得国から低所得国へ移行したことが認められた。しかし、南アジア、サハラ以南アフリカ諸国の最貧集団では血圧高値の増加傾向はみられず、また中央・東欧諸国では血圧高値が継続していることが示された。世界200ヵ国の非感染性疾患(NCD)について調査を行っている科学者ネットワーク「NCD Risk Factor Collaboration」(NCD-RisC)が、1,479試験を基に分析し明らかにしたもので、Lancet誌オンライン版2016年11月15日号で発表した。

胎児発育不全を検出する子宮底長測定の国際基準を作成/BMJ

 英国・オックスフォード大学のAris T Papageorghiou氏らはINTERGROWTH-21stプロジェクトの胎児発育追跡研究から、妊娠健診において定期的に行う子宮底長(symphysis-fundal height:SFH)計測値の国際基準を作成する検討を行った。重大な合併症がなく先天奇形のない児を出産した妊婦の計測記録データについて分析を行い、臨床使用できる在胎齢(週)に比した子宮底長値(cmをパーセンタイル値で提示)を明らかにした。BMJ誌2016年11月7日号掲載の報告。

虚血コンディショニングの臨床的アウトカムへの影響は?/BMJ

 侵襲的手術に伴い施行する虚血コンディショニングは、総じて死亡リスクには影響しないことが、オーストラリア・シドニー大学のLouisa Sukkar氏らが、無作為化試験の被験者データを臨床設定を問わずに包含して評価したシステマティックレビューとメタ解析の結果、示された。また、脳卒中と急性腎障害(AKI)への影響については、発生を低下する可能性が示唆されたが、エビデンスの質が低かった。虚血コンディショニングの役割については多くの臨床試験で検討されているが、アウトカムに及ぼす影響については不明であった。今回の結果を踏まえて著者は、「虚血コンディショニングの採用は、質が高く統計的検出力が良好なエビデンスの下で有益性があることが示されない限り、ルーティンに用いることは推奨できない」と述べている。BMJ誌2016年11月7日号掲載の報告。

パイプカットと前立腺がんリスク/BMJ

 精管切除と前立腺がんリスクに関連性は認められないことが、カナダ・トロント大学Madhur Nayan氏らが行ったオンタリオ州の住民を対象とした大規模集団適合コホート研究の結果、示された。先行研究では、両者の関連について相反する結果が示されており、またそれらの結果は、試験規模やバイアスなどにより限定的なものであった。BMJ誌2016年11月3日号掲載の報告。

ステント留置後のDAPT期間、糖尿病の有無で検討/BMJ

 薬剤溶出ステント留置後の2剤併用抗血小板療法(DAPT)の投与期間は、短期か長期か。スイス・ベルン大学のGiuseppe Gargiulo氏らが、メタ解析により糖尿病患者と非糖尿病患者を層別化して検討した。その結果、糖尿病はステント留置後の重大有害心血管イベント(MACE)の独立予測因子であることが明らかになったが、MACE発生のリスクは、糖尿病患者また非糖尿病患者についてもDAPT投与期間の短期(6ヵ月以下)と長期(12ヵ月)で有意な差はなく、一方で長期DAPTは出血リスクを増大することが示された。BMJ誌2016年11月3日号掲載の報告より。

高リスク早期乳がんへのテーラードdose-denseの効果/JAMA

 高リスク早期乳がん患者において、テーラードdose-dense化学療法は標準化学療法と比較して、乳がん無再発生存率を有意に改善するという結果には至らず、むしろ非血液学的毒性の頻度が高まることが示された。スウェーデン・カロリンスカ大学病院のTheodoros Foukakis氏らが、Pan-European Tailored Chemotherapy(PANTHER)試験の結果を報告した。体表面積を基に投与量を決定する標準化学療法は、患者の薬物動態・毒性・有効性の個人差が大きい。患者の状態に合わせて投与量を調整するテーラード化学療法と、投与間隔を短縮するdose-dense化学療法の組み合わせが、予後を改善できるかどうかについてはこれまで明らかになっていなかった。JAMA誌2016年11月8日号掲載の報告。

HIV母子感染予防への抗レトロウイルス療法の有用性/NEJM

 妊娠期間中の抗レトロウイルス療法(ART)は、ジドブジン単独療法と比較してHIVの母子感染率を有意に低下させたが、母親と新生児の有害転帰リスクの増加も認められた。米国・ジョンズ・ホプキンス大学医学部のMary G. Fowler氏らが、無症候性HIV感染妊婦を対象としたThe Promoting Maternal and Infant Survival Everywhere (PROMISE)試験の結果、報告した。ARTはHIV母子感染の予防に有効であるが、妊娠の転帰に悪影響を及ぼすことが示された研究も散見される。CD4高値のHIV感染妊婦における、ジドブジン+ネビラピン単回投与とARTの、母子感染予防効果と安全性を比較した無作為化試験は十分ではない。NEJM誌オンライン版2016年11月3日号掲載の報告。