特発性ALSの疾患感受性遺伝子を発見 筋萎縮側索硬化症(ALS)の約90%を占める特発性ALSについては、複数の環境要因と未解明の遺伝子との相互作用に起因するのではないかといわれているが、発症の一因となる遺伝子についてはほとんどわかっていない。そこで米国アリゾナ州にある遺伝子研究センターTGen(Translational Genomics Research Inst)のTravis Dunckley氏らが、ゲノム解析を行った。NEJM誌8月1日号オンライン版、8月23日号本誌掲載の報告から。
米国高齢者の性 人口の高齢化にもかかわらず、高齢者の性行動と性機能についてはあまり知られていない。シカゴ大学プリッツカー医科大学院で医療倫理学を扱うStacy Tessler Lindau氏らは、米国内で57~85歳の3,005人(女性1,550人と男性1,455人)をランダムに抽出。性行動、活動性、問題点の出現率について報告するとともに、これらの変数が年齢や健康状態とどのように関連するのかについて報告した。NEJM誌8月23日号より。
小児高血圧症の診断見落としは74% 小児肥満の蔓延に伴って小児高血圧症の有病率が増加している中、診断未確定の高血圧症と高血圧前症の頻度がどれくらいあるのか、また診断見落としはどんな患者因子が原因になっているのかを同定するコホート研究が、米国オハイオ州にあるCase Western Reserve 大学医学部のMatthew L. Hansen氏らによって行われた。JAMA誌8月22日号より。
重症腹膜炎患者にはon-demandな外科的治療を優先すべき 二次性腹膜炎患者について検討される再開腹術には、on-demand治療戦略とplanned治療戦略がある。それぞれ一長一短が言われており検証されていないのだが、死亡率、腹膜炎に関連した罹病率の低下、医療資源の消費およびコストを抑えられる可能性があることからon-demand治療を支持する声が高まっている。 そこでOddeke van Ruler氏らオランダ腹膜炎研究グループは無作為化試験を行い、どちらがふさわしいか検討した。JAMA誌8月22日号掲載の報告から。
特定のプロバイオティクスが小児の急性下痢の期間と排便回数を改善 急性下痢は、グルコース電解質を含む水分補給用飲料の経口投与により失われた水分を補うことで管理されるが、この方法では下痢の重症度や持続期間は改善されない。プロバイオティクス(ヒトの健康に良好な作用を及ぼす細菌)はヨーロッパの多くの国で小児の急性下痢の補助的治療法として用いられており、いくつかの製品は重症度や持続期間の改善効果が認められている。 イタリア・ナポリ大学Federico II小児科のRoberto Berni Canani氏らは、5つのプロバイオティクス製品の急性下痢の改善効果を比較する無作為化対照比較試験を実施した。BMJ誌8月9日付オンライン版、8 月18日付本誌に掲載された報告から。
重篤な精神疾患に対する集中型ケース管理は入院治療を低減させるか 現代の精神健康サービスでは重篤な精神疾患患者の入院期間は最小限にすべきとされており、集中型ケース管理(intensive case management)は重症精神疾患患者の不必要な入院の低減を目的とした患者管理法である。これまでに実施された集中型ケース管理の無作為化対照試験の結果は相反するものであり、入院治療を減少させたとする報告がある一方で無効とする研究もある。 このような矛盾した結果が生じる原因については、試験の実施状況や集中型ケース管理モデルの違いなど諸説がある。イギリス・オックスフォード大学Warneford病院社会精神医学のTom Burns氏らは、これらの仮説の検証を目的に体系的なレビューを行った。BMJ誌7月13日付オンライン版、8月18日付本誌に掲載された報告。
新たなアジュバントによる抗原節減法が鳥インフルエンザワクチンの免疫原性を増強 次なるヒトインフルエンザの汎流行(爆発的大流行、パンデミック)の原因となる可能性が高いウイルスとしてH5N1型鳥インフルエンザが考えられているが、その対策としてのインフルエンザワクチンの生産能には世界的に限界がある。抗原節減法は1接種に要する抗原量を少なくできるため、パンデミックワクチンの開発において重要なアプローチと考えられており、アジュバント(免疫増強法)は抗原節減の重要な戦略である。 ベルギー・ヘント大学病院ワクチンセンターのIsabel Leroux-Roels氏らは、独自に開発した新たなアジュバント法で調整した遺伝子組み換えH5N1スプリットウイルス粒子ワクチンの安全性および免疫原性を評価し、交差反応性免疫の誘導能について検証を行った。8月18日付Lancet誌掲載の報告から。
DESへのCOX2阻害薬追加で再狭窄抑制 服用による心筋梗塞リスク増加が懸念されている選択的COX2阻害薬だが、その1つcelecoxibは、薬剤溶出ステント(DES)留置前からの服用開始により6ヵ月間の経皮的冠血行再建術(PCI)再施行を減少させる可能性が示唆された。Lancet誌8月18日号にNational University of Seoul(韓国)のBon-Kwon Koo氏らが無作為化オープン試験の結果として報告した。抗血小板薬中止後の超遠隔期血栓がDESの最大問題となっている現在、この研究の臨床的価値はどのようなものだろうか──。
小細胞肺癌では予防的全脳照射を標準治療とすべき 小細胞肺癌は肺癌全体の13%を占める予後不良の疾患で、化学療法による長期生存は期待できない(2年生存率:1977年1.5%→2000年4.6%)。また共通して脳転移がみられるのが特徴で、診断時に少なくとも18%に脳転移があり2年間で80%近くに達する。 脳転移は予後不良を示す。維持化学療法では転移を防げず、発症後の全脳照射治療も有効ではない。しかし予防的全脳照射の有効性は多数のメタアナリシスによって示されている。そこで欧州癌研究治療機関(EORTC)の肺癌グループは、本治療を実行に移すため無作為化試験を行った。NEJM誌8月16日号の報告から。
睡眠時周期性四肢運動障害の遺伝子変異を確認 不穏下肢症候群(RLS)は、脚を動かしたいという抑えられない衝動を特徴とする一般的にみられる神経性障害である。RLSは睡眠を妨げる一因となり、そのためRLS患者の大部分で睡眠時周期性四肢運動障害を有すると同時に、同疾患の生理学的指標とされている。 deCODEジェネティクス社(アイスランド)のHreinn Stefansson氏らは、RLSの一因と言われてきた遺伝子配列変異体を捜すため、ゲノムワイド関連研究と2つの再現性研究を実施した。NEJM誌オンライン版7月18日号、本誌8月16日号より。
食習慣は大腸癌発病に加え再発にも深く関与 大腸癌発病と食事の因果関係については知られているが、患者の予後における食事の影響については明らかにされていない。アメリカ・ボストンのダナ・ファーバー癌研究所のJeffrey A. Meyerhardt氏らは、食パターンと大腸癌生存者の再発率および死亡率との関連に着目して、前向き観察研究を実施した。JAMA誌8月15日号の報告から。
HPV感染女性へのワクチン投与の有効性は皆無 ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンは、HPV感染症と子宮頸部前癌および癌の発現を予防するために開発され、発癌性のHPVにすでに感染している女性に対してもワクチン接種を検討すべきとの説もある。米国立癌研究所のAllan Hildesheim氏らのグループは、子宮頸癌との関連が指摘されているHPV16と18の2タイプについて、既感染女性への予防接種がウイルス・クリアランス率を向上させるかどうか無作為化試験を実施した。報告はJAMA誌8月15日号に掲載された。
クラミジアの組織的スクリーニングは本当に費用効果に優れるか イギリスでは2003年4月に、国の主導によるクラミジア(Chlamydia trachomatis)のスクリーニングプログラムが開始されたが、それ以前は組織的スクリーニングは行われていなかった。クラミジアの組織的スクリーニングは費用効果が優れるとする報告のほとんどが、感染症の評価には不適切な静的モデルを用いている。 イギリス・バーミンガム大学健康サービス管理センター健康経済学のTracy Roberts氏らは、家庭をベースとした地域住民におけるクラミジアの積極的な組織的スクリーニングの費用効果を、非組織的スクリーニング(組織的な勧奨は行わず受診は対象者の意志に委ねられる)との比較において評価する試験(ClaSSプロジェクト、http://www.chlamydia.ac.uk/index.htm)を実施、BMJ誌7月26日付オンライン版、8月11日付本誌で報告した。
乳癌の「2週間ルール」はまったく役に立っていない、直ちに見直しを 論文冒頭に、著者は記している。「当初の楽観的展望は短命に終わった」。 イギリスでは照会から専門医による診察までの順番待ちの期間が長く、その結果としての診断、治療の遅れが高い乳癌死亡率の理由の一端とされていた。そこで、1999年、乳癌が疑われる女性は一般医(GP)からの照会後2週間以内に専門医の診察を受けるという「2週間ルール」が導入された。しかし、科学的基礎に乏しいため当初からその効果を疑問視する声があった。 イギリス・ブリストル市Frenchay病院乳癌治療センターのShelley Potter氏らは、乳癌の2週間ルールが照会パターン、癌の診断、待ち時間に及ぼす長期的効果を評価した。BMJ誌7月13日付オンライン版、8月11日付本誌掲載の報告。
サプロプテリンのフェニルケトン尿症に対する有用性を確認 現在、フェニルケトン尿症における精神遅滞の予防法としては、早期の厳格な食事療法があるのみである。最近、新たな治療アプローチとして、テトラヒドロビオプテリン(BH4)あるいはその生物学的活性合成体であるサプロプテリン(6R-BH4)によるフェニルアラニン水酸化酵素(PAH)の活性化の増強が注目されている。 アメリカ・ボストン小児病院のHarvey L. Levy氏らは、フェニルケトン尿症におけるサプロプテリンの血中フェニルアラニン濃度低下作用について検討するために、プラセボ対照無作為化第III相試験を実施した。8月11日付Lancet誌掲載の報告から。
高齢AF患者に対してもワルファリンはアスピリンよりも有用:BAFTAスタディ これまでのメタ解析では確認されなかった75歳以上の心房細動(AF)患者に対するワルファリンの有用性だが、Lancet誌8月11日号に掲載された BAFTA(Birmingham Atrial Fibrillation Treatment of the Aged)スタディの結果によれば、ワルファリンによる出血性合併症の増加は必ずしも脳塞栓症・脳梗塞の減少による有用性を相殺しないという。英国 University of BirminghamのJonathan Mant氏らが報告した。
天疱瘡患者にリツキシマブ1サイクル投与は有効 リツキシマブと免疫グロブリン静注併用の複数サイクル投与は、重症天疱瘡患者に効果的だと報じられている。フランス・ルーアン大学病院のPascal Joly氏らは、1サイクル投与の有効性について評価を行った。NEJM誌8月9日号の報告から。
重症血友病A男児への第VIII因子の有効な投与法 1960年代に行われた小規模試験の結果を受け、血友病性関節症の予防に第VIII因子の投与が有効であることが推奨され臨床家の間に広がった。その後 1980年代に、血漿由来の第VIII因子がヒト免疫不全や肝炎ウイルスに汚染されていることが判明し予防的治療は激減。1992年にアメリカで血友病患者への安全投与を見据えた組み換え型第VIII因子が承認されたが、投与の開始時期、投与量、期間については明らかになっていない。 コロラド大学保健科学センターのMarilyn J. Manco-Johnson氏らは、重症の血友病Aの男児を対象に無作為化試験を行い、有効な方法について検証した。NEJM誌8月9日号の報告から。
早期・持続的・重層的な非薬物的介入は有効なインフルエンザ対策となる インフルエンザ・パンデミック(世界的大流行)への重要な対策の1つに、非薬物的介入がある。流行時期を遅らせ、全体の発病率やピークを低下させ、死亡者数を減らす可能性のほか、ワクチンや抗ウイルス剤の生産と供給に時間的余裕をもたらす可能性があるからだ。最適かつ適切な非薬物的介入は、医療サービスと発症地域の負担を減少させることになる。ミシガン大学医学部医学史センターのHoward Markel氏らは、最適かつ適切な非薬物的介入を明らかにするため、20世紀最悪と言われたいわゆる「スペイン風邪」流行時の、全米43都市における非薬物的介入の状況を調べた。JAMA誌8月8日号の報告から。
高齢男性の骨粗鬆症性骨折予防治療の費用対効果は? 60歳白人男性が残りの生涯で、骨粗鬆症が原因で骨折する可能性は29%に上るなど、高齢男性の骨粗鬆症性骨折は重大な健康問題と認識されている。カナダ骨粗鬆学会は70歳以上あるいは65歳以上の全男性で骨密度検査を行うべきと提唱しているが、米国予防医療対策委員会やカナダ予防医療対策委員会では勧告を行っていない。女性については65歳以上での骨密度検査と予防的治療の費用対効果が実証されているが、男性については明らかになっていないため。そこでミネアポリスのPark Nicollet Health Servicesリウマチ学のJohn T. Schousboe氏らは、男性について費用対効果を検証した。JAMA誌8月8日付け報告から。