ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:121

術前治療で浸潤病変残存の早期乳がん、術後T-DM1が有望/NEJM

 術前補助療法終了後に浸潤性病変が残存するHER2陽性早期乳がん患者の術後補助療法において、T-DM1(トラスツズマブ・エムタンシン)はトラスツズマブに比べ、浸潤性乳がんの再発および死亡のリスクを半減させることが、ドイツ・German Breast GroupのGunter von Minckwitz氏らが行ったKATHERINE試験で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2018年12月5日号に掲載された。術前補助化学療法+HER2標的治療を受けたのちに残存する浸潤性乳がんを有する患者は、残存がんのない患者に比べ予後不良とされる。T-DM1は、モノクローナル抗体であるトラスツズマブと、メイタンシン誘導体で微小管阻害薬であるエムタンシン(DM1)を結合させた抗体薬物複合体で、化学療法+HER2標的治療を受けた転移を有する乳がん患者に便益をもたらすことが知られている。

高齢の未治療CLL、イブルチニブでPFS延長/NEJM

 高齢の未治療慢性リンパ性白血病(CLL)患者において、イブルチニブの単剤またはリツキシマブとの併用は、ベンダムスチン+リツキシマブ併用療法と比較し、無増悪生存期間(PFS)を有意に延長することが認められた。イブルチニブ単剤投与とイブルチニブ+リツキシマブ併用投与との間で、PFSに差はなかった。米国・オハイオ州立大学総合がんセンターのJennifer A. Woyach氏らが、イブルチニブの第III相試験「A041202試験」の結果を報告した。イブルチニブは、未治療CLLの1次治療として米国では2016年に承認されているが、化学免疫療法との比較はされていなかった。NEJM誌オンライン版2018年12月1日号掲載の報告。

経口抗凝固薬+PPIで、上部消化管出血による入院率低下/JAMA

 経口抗凝固療法における上部消化管出血による入院発生率は、リバーロキサバンを処方された患者で最も高く、アピキサバンが処方された患者で最も低かった。いずれの抗凝固薬も、プロトンポンプ阻害薬(PPI)との併用で同入院発生率は低下することが示された。米国・ヴァンダービルト大学のWayne A. Ray氏らが、後ろ向きコホート研究の結果を報告した。PPIの併用は、経口抗凝固療法でしばしば起こる潜在的に重篤な合併症である上部消化管出血のリスクに影響を与える可能性が示唆されていた。JAMA誌2018年12月4日号掲載の報告。

動脈硬化患者へ画像所見提示、進行予防に効果/Lancet

 無症候性アテローム硬化症について、頸動脈内膜中膜肥厚の超音波検査結果を用いて可視化し患者に見せることで、1年後のフラミンガム・リスクスコアが低下するなど、心血管疾患予防に効果があることが明らかにされた。スウェーデン・ウメオ大学のUlf Naslund氏らが約3,500例を対象に行った、非盲検無作為化比較試験の結果で、Lancet誌オンライン版2018年12月3日号で発表された。運動や禁煙といった生活習慣の変更や、高血圧・高コレステロール血症の治療など、心血管疾患の1次予防は、患者や医師のアドヒアランスが低いことが課題となっている。

DPP-4阻害薬・GLP-1受容体作動薬は胆管がんリスクを大幅増/BMJ

 インクレチンベースのDPP-4阻害薬やGLP-1受容体作動薬は、それ以外の抗糖尿病薬の第2・第3選択薬と比べて、胆管がんリスクを大幅に増大する可能性があることが明らかにされた。カナダ・Jewish General HospitalのDevin Abrahami氏らが、糖尿病患者15万例超を対象とした集団ベースのコホート試験で明らかにし、BMJ誌2018年12月5日号で発表した。アンバランスな胆道系がんの発症が、インクレチンベースの抗糖尿病薬の大規模無作為化試験においてみられているが、リアルワールドでの観察試験では調査されていなかった。

呼吸器疾患死亡率、英国vs.EU15+諸国/BMJ

 1985~2015年の期間に、英国、およびEU15+諸国(英国を除く欧州連合[EU]加盟15ヵ国に、オーストラリア、カナダ、米国を加えた国々)では、いずれも呼吸器疾患による死亡率が全体として低下したが、閉塞性・感染性・間質性呼吸器疾患死亡率については英国がEU15+諸国に比べて高いことが、米国・ハーバード大学のJustin D. Salciccioli氏らの調査で明らかとなった。研究の成果は、BMJ誌2018年11月28日に掲載された。世界疾病負担(Global Burden of Disease)などの報告によれば、英国は、医療制度が同程度の他国に比べて呼吸器疾患死の割合が高い可能性が示唆されていた。

英国でプライマリケアの検査件数が激増/BMJ

 英国では、性別や年齢、検査の種類にかかわらず、検査件数が経時的に増加しており、調査対象となった検査の9割が、16年間で統計学的に有意に件数が増加したことが、英国・オックスフォード大学のJack W. O’Sullivan氏らの検討で明らかとなった。プライマリケアにおける検査を定量的に評価したデータは、世界的にみても少ない。英国では、2005~09年の検査件数の増加を示す調査が1件あるだけで、加えてこの調査はサンプル数が少なく、種類は検体検査のみで、対象集団も限定的だという。BMJ誌2018年11月28日号掲載の報告。

学校全体への介入、いじめの抑制に有効/Lancet

 生徒間のいじめや攻撃行動、暴力は、最も重大な公衆衛生上の精神面の問題の1つとされる。英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のChris Bonell氏らは、“Learning Together”と呼ばれる学校全体への介入により、いじめに対しては小さいものの有意な効果が得られたが、攻撃行動の改善は有意ではなかったとの研究結果を示し、Lancet誌オンライン版2018年11月22日号で報告した。Learning Togetherは、単なる教室ベースの介入ではなく、学校全体の方針やシステムの修正を目指す全校的な介入法である。修復的実践(restorative practice)を活用し、社会情動的スキル(social and emotional skills)を身に付けることで、生徒に学校環境の修正を図るよう促すという。

新たな抗体医薬、遺伝性血管性浮腫の予防に効果/JAMA

 遺伝性血管性浮腫I/II型の患者において、26週間のlanadelumab皮下注はプラセボと比較して、発作の発生率を有意に減少したことが、米国・マサチューセッツ総合病院のAleena Banerji氏らによる第III相の無作為化二重盲検並行群プラセボ対照試験の結果、示された。遺伝性血管性浮腫の現行治療には、長期予防に関して限界がある(相当な有害事象や、頻回投与を要するなど)。lanadelumabは開発中の完全ヒトモノクローナル抗体で、血漿中カリクレインの活性を選択的に阻害する。第1b相試験において、忍容性が高く発作を減少することが示されていた。今回の結果を踏まえて著者は、「示された結果は、遺伝性血管性浮腫の予防治療としてlanadelumabの使用を支持するものであった。さらなる研究を行い、長期的な安全性と有効性を確認する必要がある」とまとめている。JAMA誌2018年11月27日号掲載の報告。

ADHD、同学年では早生まれの児童で診断率が高い/NEJM

 米国において、注意欠如・多動症(ADHD)の診断率と治療率は、幼稚園入園基準日を9月1日とする州では、基準日に近い同年の8月生まれの児童が、前年の9月生まれよりも高いことを、米国・ハーバード大学医学大学院のTimothy J. Layton氏らが、2007~09年に生まれた小児約40万人の調査で明らかにした。米国の大半の州では公立学校への入学基準を時期で区切っており、同学年でも誕生日が基準日に近い児童では、ほぼ1年の年齢差がある。そのため、同一学年のコホートにおいて、より年齢が低い(いわゆる早生まれ)児童は、より年齢が高い(遅生まれ)児童と比べて、年齢の違いによる行動がADHDと診断される可能性があると考えられていた。著者は、「今回の結果は、学年または学校クラス内の行動状況が、ADHDの診断に影響するという仮説と一致する」とまとめている。NEJM誌2018年11月29日号掲載の報告。

臨床研究で患者登録増に影響を与える要素とは/BMJ

 英国・オックスフォード大学のJoanna C. Crocker氏らは、臨床試験の登録率や維持率への患者・市民参画(patient and public involvement:PPI)の影響、ならびにその影響が患者・市民参画の状況(対象患者集団、募集要件、臨床試験の介入/治療など)や特性(活性度、参画モデルなど)でどのように変化するかを調査した。システマティックレビューとメタ解析による検討の結果、とくに実際に臨床試験に参加した経験のある人が患者・市民参画に含まれている場合に、臨床試験の患者登録が改善する傾向が認められ、臨床試験における患者・市民参画の影響は大きいことが示された。著者は、「患者・市民参画に関しては、個々の状況でどのタイプが最も機能するか、費用対効果、試験計画の初期段階での影響、および維持に関する影響について評価するさらなる研究が必要である」とまとめている。BMJ誌2018年11月28日号掲載の報告。

多剤耐性グラム陰性桿菌、ICUでのベストな感染予防は?/JAMA

 多剤耐性グラム陰性桿菌(MDRGNB)感染の発生率が中等度~高度のICUにおいて、人工呼吸器装着患者に対する、クロルヘキシジン(CHX)による口腔洗浄や、選択的中咽頭除菌、選択的消化管除菌の実施は、いずれも標準的ケア(CHXによる毎日の清拭とWHO推奨手指衛生プログラム)と比べて、MDRGNBによるICU血流感染の発生率を低下させないことが示された。オランダ・ユトレヒト大学病院のBastiaan H. Wittekamp氏らが行った無作為化比較試験の結果で、JAMA誌2018年11月27日号で発表した。

無症状成人の頭部・全身MRI、偶発的所見の有病率は?/BMJ

 無症状の成人に対して行った頭部・全身MRI検査で発見される、潜在的に重篤な偶発的所見はどれくらいなのか。英国・エディンバラ大学のLorna M. Gibson氏らによるシステマティック・レビューとメタ解析の結果、有病率は3.9%であることが明らかにされた。そのうち悪性病変が疑われたのは約半数だが、最終的に重篤と診断される割合は偶発的所見の20.5%と相対的に少ないことが示されたという。ただし分析データが限定的で、それら病変の健康への影響はほとんど不明であった。著者は、「潜在的に重篤な偶発的所見のアウトカムをより理解でき、そうした所見をどうフィードバックするかを考えるうえで、系統的な長期追跡研究が必要だ」と述べている。偶発的所見の有病率の推定値はばらつきが大きく、多くが重篤でない偶発的所見を含んでいると考えられ、偶発的所見検出の臨床的価値は限定的である。BMJ誌2018年11月22日号掲載の報告。

リナグリプチン、高リスク2型DMでのCV・腎アウトカムは/JAMA

 心血管および腎リスクが高い2型糖尿病の成人患者では、通常治療と選択的DPP-4阻害薬リナグリプチンの併用療法は、主要な心血管イベントのリスクがプラセボに対し非劣性であることが、米国・Dallas Diabetes Research Center at Medical CityのJulio Rosenstock氏らが行ったCARMELINA試験で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2018年11月9日号に掲載された。2型糖尿病は心血管リスクの増加と関連する。これまでに実施された3つのDPP-4阻害薬の臨床試験では、心血管への安全性が示されているが、これらの試験に含まれる高い心血管リスクおよび慢性腎臓病を有する患者の数は限定的だという。

HPV陽性中咽頭がんへのセツキシマブ、5年生存率と毒性は/Lancet

 HPV陽性中咽頭がんについて、放射線療法+EGFR阻害薬セツキシマブは放射線療法+シスプラチンに対し、全生存(OS)および無増悪生存(PFS)ともに劣性であることが示された。米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのMaura L. Gillison氏らによる多施設共同無作為化非劣性試験「RTOG 1016試験」の結果で、Lancet誌オンライン版2018年11月15日号で発表された。放射線療法+高用量(100mg/m2)シスプラチンによるHPV陽性中咽頭がん治療の生存率は高いが(3年生存率はHPV陽性82.4%、HPV陰性57.1%)、若年患者における生存率の高さが、治療関連の後発性毒性への懸念を増している。シスプラチンの代わりにセツキシマブを併用したレジメンが、高い生存率を維持し治療関連の毒性を低下するかは不明であった。

HPV陽性中咽頭がん、セツキシマブvs.標準レジメン/Lancet

 低リスクHPV陽性中咽頭がんに対して、放射線療法+EGFR阻害薬セツキシマブは、標準レジメンの放射線療法+シスプラチンと比較して毒性低下のベネフィットは示されず、腫瘍コントロールに関しては重大な損失をもたらすことが示された。英国・バーミンガム大学のHisham Mehanna氏らによる第III相の多施設共同非盲検無作為化試験「De-ESCALaTE HPV試験」の結果で、Lancet誌オンライン版2018年11月15日号で発表された。HPV陽性中咽頭がんの発生は急速に増大しており、とくに若年成人を急襲している。セツキシマブは、標準治療のシスプラチンの毒性を低下しde-escalationな放射線併用療法を可能にするものとして提案されたが、この戦略の有効性に関して無作為化試験に基づくエビデンスはなかった。

不健康な生活様式が重なると女性の糖尿病リスク5倍以上に/BMJ

 交替制の夜勤労働と不健康な生活様式はいずれも2型糖尿病のリスクと関連し、これらが併存すると、個々の要因を単独に有する場合に比べリスクが相加的に高くなることが、米国の女性看護師を対象とする調査の解析で示された。中国・華中科技大学のZhilei Shan氏らが、BMJ誌2018年11月21日号で報告した。交替制の夜勤労働者は不健康な生活様式の頻度が高いとする報告は多い。また、交替制夜勤労働と不健康な生活様式は、いずれも2型糖尿病のリスクを増大させることが知られている。

ピーナッツアレルギーに有効な新経口免疫療法薬/NEJM

 開発中のピーナッツ由来の生物学的経口免疫療法薬AR101は、高度ピーナッツアレルギーの小児・若年者において、プラセボと比較し試験終了時の食物負荷試験で用量制限を要する症状を伴わず高用量のピーナッツ蛋白の摂取が可能となり、ピーナッツ曝露中に発現する症状の重症度が低下することが認められた。米国・エモリー大学医学校のBrian P. Vickery氏らが、AR101の有効性と安全性を検証した第III相試験「Peanut Allergy Oral Immunotherapy Study of AR101 for Desensitization:PALISADE」の結果を報告した。ピーナッツアレルギーは、生命を脅かすこともある、予測不能なアレルギー反応のリスクがあるが、現状では承認された治療選択肢はない。NEJM誌2018年11月18日号掲載の報告。

EPAとアスピリン、単独/併用の大腸腺腫予防効果は?/Lancet

 オメガ3系多価不飽和脂肪酸であるエイコサペンタエン酸(EPA)もアスピリンも、大腸腺腫を有する患者割合の低下と関連していなかった。英国・リーズ大学のMark A. Hull氏らが、EPAとアスピリンの単独または併用投与の大腸腺腫予防効果を検証した、多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験「seAFOod Polyp Prevention trial」の結果を報告した。EPAとアスピリンはともに、大腸がんの化学的予防に関するproof of concept試験で、有効性と優れた安全性プロファイルが示されていた。Lancet誌オンライン版2018年11月19日号掲載の報告。

減量後の低炭水化物食、代謝量を増大/BMJ

 低炭水化物ダイエットは、体重減少維持中のエネルギー消費量を増大することが明らかにされた。米国・ボストン小児病院のCara B. Ebbeling氏らが行った無作為化試験の結果で、BMJ誌2018年11月14日号で報告された。エネルギー消費量は、体重の減少とともに低下し、体重再増加を促す要因となるが、この代謝反応に、長期間にわたる食品構成がどのような影響を与えるのかは明らかになっていなかった。今回の検討で示された関連性は、炭水化物-インスリンモデルで一貫性を持ってみられ、著者は「示された代謝効果は、肥満治療の成功を改善する可能性があり、とくにインスリン分泌能が高い人で効果があると思われる」と述べている。