ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:268

二次予防としての低用量アスピリンの服用中断は非致死的心筋梗塞を有意に増大

心血管イベント歴のある人は、低用量アスピリンを飲み続けないと、非致死的心筋梗塞のリスクが高まることが明らかにされた。スペイン薬剤疫学研究センターのLuis A Garcia Rodriguez氏らが行った、英国プライマリ・ケアベースの症例対照研究の結果による。BMJ誌2011年7月23日号(オンライン版2011年7月19日号)掲載報告より。

術前心エコー検査、術後生存改善や入院期間短縮と関連せず

大手術時に懸念される周術期心臓合併症を回避するために、ガイドラインで推奨されている術前心エコー検査について、住民ベースの後ろ向きコホート試験の結果、術後生存や入院期間を改善していないことが明らかにされた。カナダ・St Michael's HospitalのDuminda N Wijeysundera氏らが、40歳以上の中~高リスクの選択的非心臓手術患者を対象に行った試験で報告した。周術期心臓合併症は、選択的非心臓手術例の2%以上で発生、術後死亡の約3分の1を占めると報告されており、術前リスク層別化として心エコーが推奨されている。BMJ誌2011年7月23日号(オンライン版2011年6月30日号)掲載報告より。

特発性後腹膜線維症の寛解維持はステロイド療法が第一選択

特発性後腹膜線維症に対する寛解維持療法として、プレドニゾン(ステロイド療法として)とタモキシフェン(免疫療法として)の有効性を比較したオープンラベル無作為化試験の結果、プレドニゾンのほうが再発予防効果においてより有効であることが明らかにされた。イタリア・パルマ大学病院のAugusto Vaglio氏らが行った試験の結果で、「プレドニゾンを、新規の特発性後腹膜線維症患者への第一選択薬と考えるべきであろう」と結論した。特発性後腹膜線維症は、腹部大動脈や腸骨動脈周囲の線維炎症性組織の存在によって特徴づけられ、尿管にも病変が及ぶ場合が多い稀な疾患である。Lancet誌2011年7月23日号(オンライン版2011年7月5日号)掲載報告より。

1型糖尿病患者に対する免疫療法としてのGAD-alumワクチン療法の可能性

1型糖尿病患者に対する免疫療法としてのGAD-alum(水酸化アルミニウム配合グルタミン酸脱炭酸酵素)ワクチン療法について、無作為化二重盲検試験の結果、治療目標としたインスリン分泌の低下を抑制しなかったことが報告された。カナダ・トロント大学小児疾患病院のDiane K Wherrett氏らによる。GADは、1型糖尿病の自己免疫反応の主要なターゲットであり、非肥満性の自己免疫性糖尿病モデルのマウス実験では、糖尿病を予防する可能性が示されていた。Lancet誌2011年7月23日号(オンライン版2011年6月27日号)掲載報告より。

中東からの帰還兵に多い呼吸器障害の原因とは

1990年代に配備され最近帰国したイラク、アフガニスタンからの帰還兵では、呼吸器症状の報告が一般的になっているという。米国、英国、オーストラリアで行われた疫学的研究では、他地域配備と比べて中東配備兵での呼吸器障害の発生率増大が報告され、2009年の報告ではイラク内陸部への配備との関連が示されたが、配備中に吸入性傷害を負ったことは明らかになったものの病理学的な検証はなされていない。そこで米国・Meharry医科大学のMatthew S. King氏らは、帰還後に労作時呼吸困難で運動耐容能が低下した80例について症例記述研究を行った。NEJM誌2011年7月21日号掲載報告より。

Framinghamリスク分類を有意に改善するのは内頸動脈壁の最大内膜中膜厚のみ

頸動脈壁内膜中膜厚が心血管アウトカムの予測因子として有用かについて、Framinghamリスクスコアと関連させながら詳細に検討(総頸動脈壁内膜中膜厚、内頸動脈壁内膜中膜厚の別に考慮)した結果、総頸動脈壁内膜中膜厚、内頸動脈壁内膜中膜厚ともに心血管アウトカムを予測したが、Framinghamリスクスコアのリスク分類能を改善するには、内頸動脈壁内膜中膜厚のみ有用であることが、米国・タフツ医療センター放射線部門のJoseph F. Polak氏らにより報告された。同氏らは、頸動脈壁内膜中膜厚をFraminghamリスクスコアに加えることで、同リスク分類が改善されるのではないかと言われてきた仮説を検証した結果による。NEJM誌2011年7月21日号掲載報告より。

米国飲食店のカロリー表示、総じて正確

米国レストランで行っている料理のカロリー表示は、実際の測定値とほぼ同等であることが、米国・タフツ大学のLorien E. Urban氏らが行った米国の飲食店42店を対象とする調査で明らかになった。米国人のカロリー摂取の約35%は飲食店の食事からだが、飲食店のカロリー表示の正確性については、これまで明らかになっていなかったという。JAMA誌2011年7月20日号掲載より。

たこつぼ心筋症、心血管MRIで正確に診断が可能

ストレス心筋症(たこつぼ心筋症)について、心血管MRI(CMRI)により正確な診断が可能であることが報告された。またCMRIにより、従前報告されているよりも広範囲に臨床像が認められることが判明し、ストレス心筋症の心室部の無収縮部位について、心尖部や両心室など4つのパターンがあることが示されたという。ドイツ・ライプツィヒ大学心臓センターのIngo Eitel氏らが、米国とヨーロッパのストレス心筋症患者256人について行った前向きコホート試験の結果明らかにしたもので、JAMA誌2011年7月20日号で発表した。

インフルエンザ A(H1N1)2009ワクチン接種とギランバレー症候群との関連

インフルエンザA(H1N1)2009ワクチン接種とギランバレー症候群発症との関連について、ヨーロッパ5ヵ国を対象とした症例対照研究の結果、発生リスクの増大は認められなかったことが報告された。ただしリスク上限が2.7倍以上も否定できないとしている。オランダ・エラスムス大学病院のJeanne Dieleman氏らが、BMJ誌2011年7月16日号(オンライン版2011年7月12日号)で発表した。インフルエンザワクチン接種とギランバレー症候群との関連は、1976年のアメリカでブタ由来インフルエンザA(H1N1)亜型A/NJ/76ワクチンで7倍に増大したことが知られる。その後の季節性インフルエンザワクチンではそこまでの増大は認められていないが、今回新たなワクチン接種が始まり、ヨーロッパでは増大に対する懸念が持ち上がっていたという。

心房細動を有する75歳以上高齢者の脳卒中リスクは“高リスク”とするのが妥当

心房細動を有する高齢患者の脳卒中リスクの予測能について、近年開発提唱された7つのリスク層別化シェーマを比較検討した結果、いずれも限界があることが報告された。英国・オックスフォード大学プライマリ・ケア健康科学部門のF D R Hobbs氏らによる。脳卒中のリスクに対しては、ワルファリンなど抗凝固療法が有効であるとの多くのエビデンスがあるにもかかわらず、高齢者への投与率は低く、投与にあたっては特に70歳以上ではアスピリンと安全面について検討される。一方ガイドラインでは、リスクスコアを使いリスク階層化をした上でのワルファリン投与が推奨されていることから、その予測能について検討した。試験の結果を受けHobbs氏は、「より優れたツールが利用可能となるまでは、75歳以上高齢者はすべて“高リスク”とするのが妥当だろう」と結論している。BMJ誌2011年7月16日号(オンライン版2011年6月23日号)掲載報告より。

未治療HIV-1感染患者に対するrilpivirine、エファビレンツに非劣性、安全性良好(2):ECHO試験

未治療のHIV-1感染成人患者に対するHIV治療薬として、非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬(NNRTI)rilpivirineが新たな治療オプションとなり得ることが示された。同一クラスのエファビレンツ(商品名:ストックリン)に対する非劣性を検討した第3相無作為化試験の結果による。本論は、フランス・Paris Diderot大学Saint-Louis病院感染症部門のJean-Michel Molina氏らによる、全被験者がヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬(NRTI)レジメンのテノホビル ジソプロキシルフマル酸(商品名:ビリアード)+エムトリシタビン(同:エムトリバ)も同時に受けていることを前提に行われた「ECHO」試験の結果報告で、主要アウトカムとした48週時点でのrilpivirineの非劣性が認められ、安全性も良好であったという。Lancet誌2011年7月16日号掲載報告より。

未治療HIV-1感染患者に対するrilpivirine、エファビレンツに非劣性、安全性良好(1):THRIVE試験

未治療のHIV-1感染成人患者に対するHIV治療薬として、非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬(NNRTI)rilpivirineが新たな治療オプションとなり得ることが示された。同一クラスのエファビレンツ(商品名:ストックリン)に対する非劣性を検討した第3相無作為化試験の結果による。本論は、米国・Community Research Initiative of New England(ボストン)のCalvin J Cohen氏らによる、全被験者がヌクレオシド系またはヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬(NRTI)レジメンも同時に受けていることを前提に行われた「THRIVE」試験の結果報告で、主要アウトカムとした48週時点でのrilpivirineの非劣性が認められ、安全性も良好であったという。Lancet誌2011年7月16日号掲載報告より。

喘息患者への気管支拡張薬vs. プラセボvs. 無治療

喘息患者を対象とした前向き実験的試験で報告されるプラセボ効果の客観的および主観的効果結果への影響について、気管支拡張薬とプラセボ(2種類)と無治療とを比較して検討した二重盲検クロスオーバーパイロット試験の結果、客観的なFEV1を指標とした結果ではプラセボ群に改善は認められなかったが、主観的な患者評価では気管支拡張薬とプラセボに有意差は認められなかったことが報告された。米国・ブリガム&ウィメンズ病院/ハーバードメディカルスクールのMichael E. Wechsler氏らが米国国立補完代替医療センターから助成を受け行った試験報告で、NEJM誌2011年7月14日号で発表された。

早期限局性前立腺がん、放射線療法+短期ADTが全生存率上昇、死因別死亡率低下

 早期の限局性前立腺がんに対する、放射線療法+4ヵ月の短期アンドロゲン遮断療法(ADT)の併用療法について、有意な死亡率(死因別)の低下および全生存率の上昇が認められたことが明らかにされた。米国・Radiological Associates of SacramentoのChristopher U. Jones氏らが、米国とカナダの212施設から被験者約2,000例を募り行った無作為化試験の結果による。これまで同併用療法の効果については明らかにされていなかった。NEJM誌2011年7月14日号掲載報告より。

米国ナーシングホーム入所者の褥瘡リスク、減少傾向にあるものの人種間格差続く

米国ナーシングホーム入所者の褥瘡罹患率は、2003年から2008年にかけて減少傾向にあるものの、白人入所者よりも黒人入所者で高率の状態が続いていることが明らかになった。米国・アイオア大学一般総合内科のYue Li氏らが、米国内の約1万2,500ヵ所のナーシングホームと、その入所者約250万人について観察研究を行った結果によるもので、JAMA誌2011年7月13日号で発表した。

がん検診に影響与える家族歴は30~50歳で変化が大きい、医師は5~10年ごとに問診を

がん検診の開始年齢や方法などに影響を与える家族歴は、30~50歳の間で変化が大きいことが明らかにされた。米国・カリフォルニア大学アーバイン校のArgyrios Ziogas氏らが、米国民ベースのがんレジストリ「Cancer Genetics Network」(CGN)を基に、約2万7,000人の登録被験者とその家族について行った追跡試験の結果明らかにしたもので、JAMA誌2011年7月13日号で発表した。

高血圧の薬物療法開始前にABPMを:診察室血圧、家庭血圧より治療ターゲットが適切に

診察室血圧と家庭血圧は、いずれも高血圧の診断に推奨される単体検査としての十分な精度を有していないことが、英国・バーミンガム大学プライマリ・ケア臨床サイエンスのJ Hodgkinson氏らによるシステマティックレビューの結果、報告された。各測定を24時間自由行動下血圧測定(ABPM)と比較した結果による。従来、高血圧の治療導入は診察室血圧を診断ベースとしガイドラインでもその値が参照基準として採用されているが、ABPMのほうがより正確に真の平均血圧を推定でき、心血管アウトカムや末端器官傷害との相関性も良好であることが示されている。また、家庭血圧のほうが診察室血圧よりも末端器官傷害との相関性が良好であることも明らかになっており、Hodgkinson氏らは、診察室血圧、家庭血圧の精度をABPMと照らし合わせて検証することは重要かつ必要なこととしてレビューを行った。BMJ誌2011年7月9日号(オンライン版2011年6月24日号)掲載報告より。

非選択的NSAID、選択的COX-2阻害薬が、心房細動/粗動リスクを増大

非選択的NSAIDの使用によって心房細動/粗動のリスクが増大することが、デンマーク・Aarhus大学病院のMorten Schmidt氏らの検討で示され、BMJ誌2011年7月9日号(オンライン版2011年7月4日号)で報告された。NSAIDは世界で最も広範に使用されている薬剤の1つであり、新世代の選択的COX-2阻害薬は消化管毒性を改善したNSAIDとして開発された。一方、心房細動は一般診療で最も高頻度にみられる持続性の心調律障害だが、NSAIDは腎臓への有害作用を介して心房細動のリスクを増大させる可能性が示唆されている。NSAIDの使用や心房細動の発生率は加齢とともに増加するため、その関連性は特に高齢者の治療で大きな関心事となっているという。

2型糖尿病に対する早期強化療法により心血管イベントがわずかに低下傾向に:ADDITION-Europe試験

2型糖尿病に対する早期の多元的な強化療法によって、5年後の心血管イベントや死亡が有意ではないがわずかに減少することが、イギリス・代謝科学研究所のSimon J Griffin氏らが行ったADDITION-Europe試験で示され、Lancet誌2011年7月9日号(オンライン版2011年6月25日号)で報告された。2型糖尿病では、複数の心血管リスク因子に対する多元的な強化療法によって死亡率が半減する可能性が指摘されているが、血圧、脂質、血糖などの個々のリスク因子の治療を診断直後から開始した場合の有効性は不明だという。

2型糖尿病に対する診断直後からの強化食事療法が血糖値を改善:Early ACTID試験

 2型糖尿病患者に対する診断直後からの強化食事療法は、通常治療に比べ血糖値や体重減少、インスリン抵抗性を改善し、糖尿病治療薬の使用量を低減するが、これに運動療法を追加しても新たなベネフィットは得られないことが、イギリス・ブリストル大学のR C Andrews氏らが行ったEarly ACTID試験で示され、Lancet誌2011年7月9日号(オンライン版6月25日号)で報告された。血圧の改善効果は得られなかった。2型糖尿病の管理では、診断直後からライフスタイルの変容を導入すれば予後が改善する可能性があるが、介入の有無で予後の比較を行った大規模試験はないという。