ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:258

リチウムの有害事象プロフィール:385試験のメタ解析

リチウム治療は、尿濃縮能の低下、甲状腺機能低下症、副甲状腺機能亢進症、体重増加のリスクを増大させるが、腎機能には臨床的に重大な影響を及ぼさないことが、英国・オックスフォード大学のRebecca F McKnight氏らの検討で示された。リチウム(商品名:リーマスほか)は気分障害の有効な治療薬として広範に使用されている。リチウムの安全性への関心は高いが、有害事象のエビデンスに関する適正な統合解析は行われていないという。Lancet誌2012年2月25日号(オンライン版2012年1月20日号)掲載の報告。

大腸がんスクリーニングとしての内視鏡検査vs.FIT:中間報告

大腸がんは世界的にみると3番目に頻度の高いがんであり、2番目に主要ながん関連死の原因である。いくつかの研究で、大腸がんスクリーニングは、平均的リスク集団では効果的で費用対効果に優れていることが示され、スクリーニング戦略として推奨されるのは、検便検査と組織検査の2つのカテゴリーに集約されている。そうした中、スペイン・ウニベルシタリオ・デ・カナリア病院のEnrique Quintero氏らは、便免疫化学検査(FIT)が、他のスクリーニング戦略より有効でコストもかさまない可能性が示唆されたことを受け、内視鏡検査に非劣性であると仮定し無作為化試験を行った。NEJM誌2012年2月23日号掲載報告より。

大腸内視鏡的ポリープ切除、大腸がん死亡を長期に予防

大腸腺腫性ポリープの内視鏡的切除は、長期的に大腸がんによる死亡を予防し得ることが示された。米国・マウントサイナイ医療センターのAnn G. Zauber氏らが、全米ポリープ研究(National Polyp Study;NPS)の被験者を23年にわたり前向きに追跡し、内視鏡的ポリープ切除が大腸がん死亡に与える長期的な影響について解析した結果による。NEJM誌2012年2月23日号掲載報告より。

無細胞百日咳を含む混合ワクチンの熱性痙攣リスク、てんかんリスクは?

ジフテリア・破傷風・無細胞百日咳/ポリオ/ヘモフィルスインフルエンザb型菌(DTaP-IPV-Hib)混合ワクチンの接種後リスクについて、接種当日の熱性痙攣のリスクが、3ヵ月齢での接種第1回目、5ヵ月齢での接種第2回目当日のリスクは4~6倍に増大することが報告された。しかし、絶対リスクは小さく、てんかんのリスクについては増大は認められなかった。デンマーク・Aarhus大学のYuelian Sun氏らが、約38万人の乳幼児について行ったコホート試験の結果、明らかにしたもので、JAMA誌2012年2月22・29日号で発表した。これまで、全細胞百日咳ワクチンは熱性痙攣リスクを増大することが知られていたが、無細胞百日咳ワクチンについての同リスクとの関連は明らかではなかった。

成人への肺炎球菌ワクチン接種、23価よりも13価のほうが費用対効果が大きい

 成人への肺炎球菌ワクチン接種に関して、13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)と23価肺炎球菌多糖体ワクチン(PPSV23)との費用対効果について比較した結果、PCV13接種に高い費用対効果があることが報告された。ただし報告では、前提条件次第で逆転もあり得ることも示されている。米国・ピッツバーグ医科大学のKenneth J. Smith氏らが、50歳成人の仮定コホート群を対象として行った解析の結果で、JAMA誌2012年2月22・29日号で発表した。同種の検討はこれまで行われていなかった。

医学ジャーナルのプレスリリースは、新聞報道に影響するか?

医学ジャーナルが特定の論文について発表したプレスリリースの質が高い場合は、それを報じる新聞記事の質も高くなるが、プレスリリースの質が低ければ関連新聞記事の質も低下することが、米在郷軍人局医療センターのLisa M Schwartz氏らの調査で明らかとなった。医学ジャーナルが発行するプレスリリースには質のばらつきがみられ、重要な要素が除外されたり、試験の重大な限界を伝えていないことが多いという。これらのプレスリリースが、新聞報道の質に及ぼす影響は不明であった。BMJ誌2012年2月18日号(オンライン版2012年1月27日号)掲載の報告。

治療を完遂したがん患者、運動によりQOLが改善

治療を終えたがん患者では、運動によってQOLの改善を含め種々の好ましい効果が得られることが、中国・香港大学のDaniel Y T Fong氏らの検討で示された。がんサバイバー(cancer survivor)は、治療終了後に診断前と同等の生活を期待するが、治療の影響で疲労感が増大したり、身体活動性やQOLが低下することが多い。がん治療を完遂した患者における運動の効果に関する最近のメタ解析では、試験の不均一性の増大が指摘されており、その原因は異なるドメインあるいは異なる方法でアウトカムを評価した試験が混在しているためだという。BMJ誌2012年2月18日号(オンライン版2012年1月31日号)掲載の報告。

高用量抗ウイルス薬治療、HSV-2再活性化の抑制効果は不十分

単純ヘルペスウイルス2型(HSV-2)は、高用量抗ウイルス薬治療中にも潜在性の再活性化を認めることが、米国・ワシントン大学のChristine Johnston氏らの検討で示された。同氏は「HSV感染の除去には、より強力な抗ウイルス薬治療を要する」と指摘している。HSV-2感染は世界的に蔓延し、HIV-1感染リスクを増大させることが示されている。抗ウイルス薬の連日投与は性器病変を減少させ、性器粘膜表面へのHSV排出を抑制するが、性感染リスクの改善効果は十分ではないという。Lancet誌2012年2月18日号(オンライン版2012年1月5日号)掲載の報告。

人工妊娠中絶は世界的に低下、危険な中絶は増加傾向に

最近の人工妊娠中絶の世界的な傾向として、1995年以降に観察された中絶率が実質的に低下した状態が、現在まで継続しているものの、危険な中絶は増加していることが、米国・Guttmacher研究所のGilda Sedgh氏らの調査で明らかとなった。妊産婦の健康増進(ミレニアム開発目標5)や家族計画の利用状況を評価するには、妊娠中絶の発生率やその傾向に関するデータが必要となる。また、中絶を取り巻く議論の一つに、中絶を制限する法律が、果たして女性を中絶から救出し得るかという問題がある。Lancet誌2012年2月18日号(オンライン版2012年1月19日号)掲載の報告。

がん化学療法中の患者へのsemuloparin、血栓塞栓症イベントを低下

がん化学療法を受けている患者に対するsemuloparinの投与は、重大出血の顕著な増加なく、血栓塞栓症イベント発生率を低下することが明らかにされた。イタリア・ペルージャ大学のGiancarlo Agnelli氏らが、47ヵ国395施設から3,212例を対象とした多施設共同無作為化二重盲検試験の結果による。がん化学療法を受けている患者は、静脈血栓塞栓症のリスクが高いことが知られる。これまで、抗血栓薬の予防処置の臨床上の有益性が支持された試験データは限定的なものだった。NEJM誌2012年2月16日号掲載報告より。

市中てんかん重積状態患者へのミダゾラム筋注、ベンゾジアゼピン系薬静注に対し非劣性

てんかん重積状態の患者に対する病院到着前の処置について、ミダゾラム(商品名:ドルミカムほか)の筋肉内投与は、ロラゼパム(商品名:ワイパックスほか)の静脈内投与と、痙攣発作の停止に関する有効性と安全性は同等以上であることが報告された。米国・ミシガン大学救急医学部門のRobert Silbergleit氏らが、二重盲検無作為化非劣性試験を行った結果による。持続性の発作は、ベンゾジアゼピン系薬の静脈内投与で早期に停止することで転帰が改善するが、より速く確実に薬を投与するため、米国の救急救命士の間では筋注で処置する傾向が増えているという。NEJM誌2012年2月16日号より。

小児・青年期の身体活動時間が長いと、心血管代謝リスク因子は良好に

小児・青年期の身体活動時間が長いほど、座位時間の総量にかかわらず、心血管代謝に関するリスク因子は良好であることが明らかにされた。英国・ケンブリッジ大学アデンブルックス病院代謝科学研究所のUlf Ekelund氏らが、2万人超の4~18歳に対して行ったメタ解析の結果、報告したもので、JAMA誌2012年2月15日号で発表した。これまで、健康児における身体活動時間と座位時間との複合でみた心血管代謝リスクとの関連についてはあまり検討されていなかった。

急性副鼻腔炎に対する抗菌薬治療、プラセボとの比較で症状改善みられず

急性副鼻腔炎に対するアモキシシリン(商品名:サワシリンほか)10日間投与の効果を、プラセボとの比較で検討した無作為化試験の結果、投与開始3日後、10日後での症状改善は認められなかったことが報告された。ただし7日後ではアモキシシリン群で有意な改善が認められたという。急性副鼻腔炎への抗菌薬投与に関するエビデンスは乏しいものの、医療現場では広く投与が行われている。本報告は、米国・ワシントン大学総合医科学部門のJane M. Garbutt氏らが、約170人について行った無作為化プラセボ対照試験の結果で、JAMA誌2012年2月15日号で発表した。

甲状腺摘出術、臨床経験20年以上の外科医で合併症リスクが上昇

甲状腺摘出術の最良の技能は、内分泌外科医が経験を積んだだけで達成されるわけではなく、合併症リスクは経験年数が20年を超えると有意に増大することが、フランス・リヨン大学のAntoine Duclos氏らの検討で示された。専門医は30~50歳でその専門的技能の頂点に達するとされ、大学卒業後長期にわたり実地臨床に携わってきた医師は実際的な知識が低下し、EBMに基づくケアを着実に実行する能力が劣化している可能性があるという。術後合併症の発生率は、外科医が経験を重ねるに従い、大きなばらつきが生じることも示されている。BMJ誌2012年2月11日号(オンライン版2012年1月10日号)掲載の報告。

プライマリ・ケア医の抗菌薬使用減に有効な多面的教育プログラムが開発

英国・カーディフ大学プライマリ・ケア部門教授のChristopher C Butler氏らは、プライマリ・ケアでの抗菌薬使用の減少を目的とした多面的教育プログラム「STAR」を開発、臨床実践ベースの無作為化対照試験の結果、その使用減少が認められ、その後の入院や再受診、コストの有意な増大は認められなかったことが報告された。プライマリ・ケアでの抗菌薬は、有益性がほとんどないことが立証されているにもかかわらず、過剰に処方され続け、患者は不必要な有害反応に曝露されており、耐性菌発生を招いていることが指摘されている。Butler氏らは、診断能力のトレーニングによって、抗菌薬処方を減らす可能性があるとしてプログラム開発を行った。BMJ誌2012年2月11日号(オンライン版2012年2月2日号)掲載報告より。

成人とは異なる小児の肺高血圧症の臨床的特徴が明らかに

小児の肺高血圧症では、肺動脈性肺高血圧症(PAH)が多く、その半数以上を特発性(IPAH)や家族性(FPAH)が占めるなど、成人とは異なる臨床的特徴を示すことが、オランダ・フローニンゲン大学のRolf M F Berger氏らの検討で明らかとなった。肺血管抵抗増加をともなう肺高血圧症は、高い合併症罹患率や死亡率を示す重大な疾患だが、その臨床的特徴は十分には知られていない。成人と小児では病理生物学的、臨床的特徴が類似する部分もあるが、たとえばIPAHやFPAHは小児のほうが予後不良であり、成人に比べ治療法の開発も遅れているため、分けて考える必要があるという。Lancet誌2012年2月11日号(オンライン版2012年1月11日号)掲載の報告。

成人ダウン症の認知症に、抗アルツハイマー病薬は有効か?

 成人ダウン症患者の認知機能障害や認知症に対し、アルツハイマー病治療薬のメマンチン(商品名:メマリー)は効果を示さないことが、英キングス・カレッジ・ロンドンのMarisa Hanney氏らが行ったMEADOWS試験で示された。ダウン症患者のアルツハイマー病発症率はきわめて高く、40歳以上になると多くにアルツハイマー病に特徴的な病理学的な変化がみられるという。N-メチル-D-アスパラギン酸型(NMDA)グルタミン酸受容体拮抗薬であるメマンチンは、ダウン症の遺伝子導入マウスモデルで有効性が示されているが、ダウン症患者に対するアルツハイマー病治療薬の投与を支持するエビデンスは十分ではない。Lancet誌2012年2月11日号(オンライン版2012年1月10日号)掲載の報告。

軽度~中等度パーキンソン病患者に太極拳が有益

軽度~中等度のパーキンソン病患者に対し太極拳トレーニングを行うと、平衡障害が軽減し、運動能力の向上および転倒の減少という付加的なベネフィットが得られることが報告された。米国・ウィラメット大学のFuzhong Li氏らが行った無作為化試験の結果による。パーキンソン病患者では平衡障害が著しく、運動能力の低下と転倒リスクの増加が知られる。医療提供者によって常に運動が推奨されてきたが、これまで効果が実証された運動プログラムはほとんどなかった。NEJM誌2012年2月9日号掲載報告より。

甲状腺機能低下症の妊婦への出産前治療、出生児の認知機能を改善せず

妊娠期間の平均が12週3日の妊婦を対象に甲状腺機能スクリーニングを行い、機能低下が認められた妊婦に治療を行っても、生まれた子どもの認知機能に改善は認められなかったことが報告された。英国・カーディフ大学のJohn H. Lazarus氏らが、約2万2,000人を対象とした無作為化試験の結果、報告した。胎児が甲状腺ホルモンを分泌するようになるのは在胎約18~20週以降で、それまでは母胎の遊離サイロキシン(T4)に依存して、中枢神経系の成熟を含む成長を遂げていくとされている。遊離T4にはヨウ素が不可欠で、妊娠前のヨウ素サプリメントの服用は認知機能を増強することや、一方で妊娠中の甲状腺刺激ホルモン高値は出生児の認知機能障害をもたらすことが知られ、甲状腺機能障害を出産前に検知し治療することは有益である可能性が示唆されていた。NEJM誌2012年2月9日号掲載報告より。

ロタウイルスワクチン、腸重積罹患率を増大せず

乳幼児への5価ロタウイルス(RV5)ワクチン接種は、接種後1~7日、同1~30日後の腸重積罹患率を増大しないことが報告された。米国・ハーバード公衆衛生大学院のIrene M. Shui氏らが、米国のワクチン安全データリンク(VSD)に登録された、RV5接種を受けた乳幼児について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2012年2月8日号で発表した。RV5ワクチン接種後の腸重積発症は、開発試験段階では報告されなかったが、承認後の国際的なトライアルで、特に1回目の接種後1週間以内の低レベルのリスク上昇の可能性が示唆されていた。