腫瘍科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:311

甲状腺がん1次治療後の画像診断を再考すべき/BMJ

 分化型甲状腺がんの1次治療後の画像診断検査の実施は、再発治療の増加と関連しているが、放射性ヨウ素スキャンによるもの以外は、疾患特異的生存率の改善には結び付いていないことが、米国・ミシガン大学のMousumi Banerjee氏らの検討で明らかにされた。米国では過去20年で甲状腺がん発症率が上昇しているが、その上昇の大半は死亡に至らない低リスク甲状腺がんの増加による。一方で同一時期に甲状腺がんの1次治療後の画像診断施行も増加したことから、研究グループは、この画像診断の実施が再発治療や疾患死亡の低下と関連していないかを調べた。著者は、「検討の結果は、1次治療後の不必要な画像診断を抑制することの重要性を強調し、甲状腺がんのサーベイランスのあり方を見直す必要があることを提示するものであった」とまとめている。BMJ誌オンライン版2016年7月20日号掲載の報告。

体外受精は乳がんリスクを増加させるか?/JAMA

 1980~95年にオランダで不妊治療を受けた女性を平均21年追跡し、乳がんリスクについて体外受精(IVF)療法群と非IVF療法群を比較したが、体外受精群のリスク増加はみられず、一般集団と比較しても乳がんリスクに有意な差はないことが示された。オランダがん研究所のAlexandra W. van den Belt-Dusebout氏らが、後ろ向きコホート研究「OMEGA」の結果、報告した。これまでにいくつかの研究で、IVFのため卵胞刺激を行った女性の乳がんリスク増加が報告されているが、追跡期間が短いなどの限界があり、結論は得られていなかった。今回の所見を受けて著者は、「IVF療法を受けた女性で乳がんリスクは増加しない」とまとめている。JAMA誌2016年7月19日号掲載の報告。

高齢者肺がんの長期生存、放射線治療 vs.低侵襲手術/BMJ

 高齢者肺がんに対する、体幹部定位放射線治療(stereotactic ablative radiotherapy:SABR)後および胸腔鏡下肺葉切除後のがん特異的生存率でみた長期生存を比較した結果、とくに腫瘍径が大きい症例では胸腔鏡下肺葉切除のほうが、有意に改善する可能性が示唆された。米国・RWJ Barnabas Health SystemのSubroto Paul氏らによる、全米集団ベース傾向適合比較解析を行った結果で、著者は、「交絡因子が排除しきれず結果は限定的だが、手術可能な早期肺がんでSABRの治療選択が浸透する前に、さらなる詳細な評価を行う必要があるだろう」とまとめている。SABRは手術可否を問わず、早期非小細胞肺がんに有用とされている。SABR後の生存率について、低侵襲手術による切除後に疾患リスクが改善した場合と比べた場合に、同等であるかどうかは明らかになっていなかった。BMJ誌オンライン版2016年7月8日号掲載の報告。

喫煙が日本人HTLV-1キャリアのATLL発症に関連

 ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)キャリアにおいて、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)の発症を予防する有効な方法はまだ同定されていない。今回、長崎大学原爆後障害医療研究所 近藤 久義氏らの研究により、わが国のHTLV-1キャリアにおいて、喫煙がATLL発症に影響を与える可能性が示唆された。Cancer causes & control誌オンライン版2016年7月13日号に掲載。

高度催吐性化療の制吐薬としてオランザピンが有効/NEJM

 高度催吐性化学療法(highly emetogenic chemotherapy:HEC)を受けるがん患者において、オランザピンは悪心・嘔吐の予防に有効であることが、米国・インディアナ大学のRudolph M Navari氏らの検討で示された。研究の成果はNEJM誌2016年7月14日号にて発表された。オランザピンは非定型抗精神病薬であり、中枢神経系のドパミン受容体(D1、D2、D3、D4)、セロトニン受容体(5-HT2a、5-HT2c、5-HT3、5-HT6)、アドレナリンα1受容体、ヒスタミンH1受容体など多くの神経伝達物質を遮断する。体重増加や糖尿病リスクの増加などの副作用がみられるが、とくにD2、5-HT2c、5-HT3受容体は悪心・嘔吐に関与している可能性があり、制吐薬としての効果が示唆されている。

医師も医療費のことを考えるべきか?―第12回 肺がん医療向上委員会

 7月4日(月)、都内で「医療者(医師)は医療費のことを考えるべきか?」をテーマに第12回 肺がん医療向上委員会が開催され、後藤 悌氏(国立がん研究センター中央病院 呼吸器内科)が講演を行った。今後のがん治療を変えると言われる免疫チェックポイント阻害薬、ニボルマブが昨年末に肺がんの適応を取得したことで、高額な医療費をめぐる問題に対する関心がますます高まっており、こうした問題は米国では“financial toxicity(経済的毒性)”とも表現される。今回、同氏は医療者の立場からこの問題を論じた 。

抗PD-1抗体療法に対する耐性のメカニズムは?/NEJM

 悪性黒色腫の抗PD-1抗体療法に対する耐性は、インターフェロン受容体シグナル伝達や抗原提示経路の異常と関連していることが明らかとなった。米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のJesse M. Zaretsky氏らが、悪性黒色腫患者4例の生検サンプルを分析し報告した。抗PD-1抗体療法で奏効(objective response)が得られた悪性黒色腫患者の約75%は、効果が永続的に長期間持続するが、客観的腫瘍縮小が最初に確認された後、治療を継続しているにもかかわらず遅発性再発がみられることがある。このことについて、免疫監視機構の回避メカニズムは不明であった。NEJM誌オンライン版2016年7月13日号掲載の報告。

HSCT後の造血器腫瘍再発、イピリムマブが有効の可能性/NEJM

 同種造血幹細胞移植(HSCT)後に造血器腫瘍を再発した患者に対し、免疫チェックポイント阻害薬イピリムマブを投与することで、抗腫瘍効果が得られる可能性があることが示された。米国・ダナファーバーがん研究所のMatthew S. Davids氏らが第I・Ib相臨床試験の結果、明らかにしたもので、NEJM誌2016年7月14日号で発表した。被験者のうち完全奏効が認められたのは、約2割だった。一方で免疫関連の有害事象を発症した人も約2割に上っている。