小児科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:36

妊娠高血圧症候群と長期的な児への影響(解説:三戸麻子氏)

 妊娠高血圧症候群は母児ともにadverse pregnancy outcomeの合併が多く、死亡率も高い代表的な妊娠合併症である。その影響は周産期のみならず出産後長期的な健康にも及び、妊娠高血圧症候群に罹患した女性では、将来高血圧や糖尿病などの生活習慣病や脳心血管病のリスクが高い。またその児においても、メタボリック症候群や免疫系の異常、精神神経疾患のリスクが高いことが報告されている。しかし児の出生後長期的な全死亡についてはほとんど報告がなかった。

糖毒性glucose toxicityと進行性β細胞機能不全との関係-再考が必要か?-(解説:住谷哲氏)

1型糖尿病患者のβ細胞機能は診断時に完全に廃絶しているわけではなく、診断後次第に低下していくことが知られている。この進行性β細胞機能不全のメカニズムは明らかではないが、自己免疫および糖毒性glucose toxicityの2つが関与していると考えられている。1型糖尿病診断直後からの抗TNF-α抗体ゴリムマブの投与により、β細胞機能不全の進行が抑制されることが報告されている。糖毒性については、高血糖に起因する細胞内酸化ストレスなどを介してβ細胞機能不全が進行するため、診断直後からの厳格な血糖管理がその進行を抑制するために有効である、と考えられてきた。しかしこの考えを支持するエビデンスは実は十分ではない。いくつかの介入試験がこれまでに報告されているが、その結果はcontroversialである。そこで本試験ではHybrid closed loop(HCL)を用いた厳格な血糖コントロールが、診断直後の1型糖尿病患者における進行性β細胞機能不全を抑制するか否かを検討した。

新生児への毎日の保湿剤、アトピー性皮膚炎を予防しない

 生後1年間、保湿剤を毎日塗布しても、アトピー性皮膚炎への予防効果は認められなかったことが、英国・ノッティンガム大学のLucy E. Bradshaw氏らが行った無作為化試験「Barrier Enhancement for Eczema Prevention(BEEP)試験」の結果、示された。食物アレルギー、喘息、花粉症への予防効果も認められなかった。保湿剤塗布のアトピー性皮膚炎/湿疹への予防効果については議論が分かれている。Allergy誌オンライン版2022年10月19日号掲載の報告。  BEEP試験では、アトピー性皮膚炎およびアトピー性の症状に対する生後1年間の毎日の保湿剤塗布の効果を、5歳まで評価した。  アトピー性疾患の家族歴がある新生児1,394人を、1対1の割合で無作為に2群に割り付け、毎日の保湿剤塗布+標準的スキンケアをアドバイス(保湿剤塗布群:693人)または標準的スキンケアのみをアドバイス(対照群:701人)した。

ガイドライン改訂ーアナフィラキシーによる悲劇をなくそう

 アナフィラキシーガイドラインが8年ぶりに改訂され、主に「1.定義と診断基準」が変更になった。そこで、この改訂における背景やアナフィラキシー対応における院内での注意点についてAnaphylaxis対策委員会の委員長である海老澤 元宏氏(国立病院機構相模原病院 臨床研究センター長)に話を聞いた。  改訂となった診断基準では世界アレルギー機構(WAO)が提唱する項目として3つから2つへ集約された。アナフィラキシーの定義は『重篤な全身性の過敏反応であり、通常は急速に発現し、死に至ることもある。重症のアナフィラキシーは、致死的になり得る気道・呼吸・循環器症状により特徴づけられるが、典型的な皮膚症状や循環性ショックを伴わない場合もある』としている。海老澤氏は「基準はまず皮膚症状の有無で区分されており皮膚症状がなくても、アナフィラキシーを疑う場面では血圧低下または気管支攣縮または喉頭症状のいずれかを発症していれば診断可能」と説明した。

妊婦へのコロナワクチン接種をメタ解析、NICU入院や胎児死亡のリスク減

 妊娠中のCOVID-19ワクチン接種による周産期アウトカムへの影響について、有効性と安全性を評価するため、筑波大学附属病院 病院総合内科の渡邊 淳之氏ら日米研究グループによりシステマティックレビューとメタ解析が行われた。本研究の結果、ワクチン接種が新生児集中治療室(NICU)入院、子宮内胎児死亡、母親のSARS-CoV-2感染などのリスク低下と関連することや、在胎不当過小(SGA)、Apgarスコア低値、帝王切開分娩、産後出血、絨毛膜羊膜炎などといった分娩前後の有害事象のリスク上昇との関連がないことが示された。JAMA Pediatrics誌オンライン版2022年10月3日号に掲載の報告。

6ヵ月~5歳児へのモデルナワクチン、第II/III相中間解析/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のmRNA-1273ワクチン(モデルナ製)25μgの2回接種は、生後6ヵ月~5歳の小児において安全であり、免疫原性は18~25歳の若年成人に対して非劣性であることが認められた。米国・エモリー大学医学部のEvan J. Anderson氏らが、6ヵ月~12歳未満の小児を対象に実施している第II/III相試験「KidCOVE試験」の6ヵ月~5歳児のコホートにおける中間解析結果を報告した。同試験の6~12歳未満のコホートにおける中間解析結果は、すでに報告されている。NEJM誌オンライン版2022年10月19日号掲載の報告。

1型糖尿病におけるオープンソースAID(自動インスリン送達)システムの効果(CREATE試験)(解説:小川大輔氏)

1型糖尿病の治療において、一般にインスリン頻回注射療法あるいはインスリンポンプ療法が用いられる。これまでCGM(持続血糖モニター)を用いたインスリンポンプ療法とオープンソースのAID(自動インスリン送達)システムの効果について比較した試験はなかった。今回ニュージーランドの施設において実施された、オープンソースAIDシステムとセンサー付きインスリンポンプ療法(SAPT)システムの安全性および有効性を比較する初の多施設ランダム化比較試験(CREATE試験)の結果が報告された1)。AIDシステムとは、CGMを搭載したインスリンポンプ療法(SAPT)に、インスリン送達を自動的に調整して血糖値を目標範囲内に維持するアルゴリズムを組み合わせた方法である。そして企業が開発し非公開のアルゴリズムを用いる商用AIDシステムとは異なり、糖尿病患者らが開発・公開し修正を重ねてきたアルゴリズムを用いるシステムをオープンソースAIDシステムと呼んでいる。

妊娠高血圧症候群、出生児は全死因死亡リスクが26%高い/BMJ

 妊娠高血圧症候群(HDP)、とくに子癇および重症妊娠高血圧腎症の母親から生まれた児は、最長41年間(中央値19.4年)の追跡期間における全死亡、ならびに消化器疾患、周産期に起因する疾患、内分泌・栄養・代謝疾患および心血管疾患による原因別死亡のリスクが高いことが、中国・復旦大学のChen Huang氏らによるデンマークの国民健康登録を用いたコホート研究の結果、示された。HDPは、母体および胎児の発病や死亡の主な原因の1つであるが、母親のHDPが児の出生から青年期以降の長期にわたる死亡に及ぼす影響については明らかになっていなかった。BMJ誌2022年10月19日号掲載の報告。

小児アトピー性皮膚炎と神経発達に関連はあるか?

 2歳以前にアトピー性皮膚炎(AD)を発症した子供は、6歳時の発達スクリーニング検査における神経発達障害と有意な関連があることが報告された。Allergology International誌オンライン版2022年9月1日号掲載の報告。  小児におけるADと認知機能障害との関連を報告した研究はほとんどない。韓国・翰林大学校のJu Hee Kim氏らは、小児におけるADと神経発達障害との関連を評価した。  2008~12年に韓国で生まれた239万5,966例の小児を分析した。すべてのデータは、韓国国民健康保険制度のデータベースより用いられた。ADは、生後24ヵ月までに5つ以上の診断を受けたものと定義した。アウトカムは、6歳時の韓国乳幼児発達スクリーニングテストの粗大運動能力、微細運動能力、認知、言語、社会性、セルフケア領域における神経発達障害の疑いであった。陽性対照アウトカムは、注意欠陥多動性障害(ADHD)とした。喘息とアレルギー性鼻炎を調整した順序ロジスティック回帰を用いて関連性を評価した。

母親の産後うつ病と子供のADHDとの関係~メタ解析

 産後うつ病(PPD)は、出産後、女性のメンタルヘルスや気分に重大な影響を及ぼす。これまでの研究によると、家族にとっての不運な出来事や母親の精神症状の出産後のレベルが、子供の注意欠如多動症(ADHD)と関連していることが示唆されている。ギリシャ・アテネ大学のVasileia Christaki氏らは、母親のPPDと子供のADHDリスクとの関連を調査するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、母親のPPDと子供のADHDとの関連が明らかとなったが、同時にさまざまな地理学的地域におけるさらなる研究が必要であることも示唆された。Journal of Affective Disorders誌2022年12月1日号の報告。