精神科/心療内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:139

統合失調症に対する抗精神病薬未使用と死亡リスク

 抗精神病薬の使用が統合失調症患者の死亡率の上昇または低下と関連しているかは、よくわかっていない。大規模登録研究では、抗精神病薬を使用しないと死亡リスクが増加することが示唆されているが、プロスペクティブ研究での報告は十分ではない。ノルウェー・Haukeland University HospitalのMaria Fagerbakke Stromme氏らは、統合失調症の死亡率と抗精神病薬未使用との関連を調査するため、オープンコホート研究を実施した。Schizophrenia Research誌オンライン版2021年7月21日号の報告。  対象は、ノルウェー・ベルゲンのHaukeland University Hospital精神科急性期病棟に10年間入院し、退院診断を受けた統合失調症患者696例。各患者における抗精神病薬の使用期間と未使用期間での比較を行うため、抗精神病薬の使用を時間依存変数としCox重回帰分析を行った。性別、入院時の年齢、精神科急性期病棟への入院数、アルコールおよび違法薬物の過剰使用、ベンゾジアゼピンおよび抗うつ薬の使用で調整を行った。

アルツハイマー病患者の抑うつ症状に対する抗うつ薬治療の有効性~メタ解析

 抑うつ症状は、アルツハイマー病(AD)患者でみられる最も一般的な神経精神症状の1つである。現在の臨床現場では、AD患者の抑うつ症状に対する第1選択治療として、抗うつ薬治療が行われている。中国・Maoming People's HospitalのYanhong He氏らは、AD患者の抑うつ症状の治療における抗うつ薬の有効性に関するエビデンスをシステマティックに調査した。Journal of Psychopharmacology誌オンライン版2021年7月9日号の報告。  ランダム化比較試験のメタ解析を行うため、Cochrane Central Register of Controlled Trials、PubMed、Embase、CNKIデータベースよりシステマティックに検索した。主要アウトカムは、平均うつ病スコアおよび安全性とし、副次的アウトカムは、認知機能とした。さまざまな治療による順位確率を推定するため、surface under the cumulative ranking curveを用いた。

うつ状態の変化が喫煙量に及ぼす影響

 韓国の喫煙率は、この10年間さまざまな喫煙コントロール政策が行われてきたにもかかわらず、わずか3%しか減少していない。そのため、喫煙者の心理学的特徴を考慮した政策を考える必要がある。一方、禁煙が失敗する要因として、うつ病との関連が示唆されている。韓国・延世大学校のSoo Hyun Kang氏らは、喫煙者のうつ状態の変化が1日の喫煙量(DCA)に及ぼす影響について、調査を行った。BMC Public Health誌2021年7月3日号の報告。  Korea Welfare Panel Study(KoWePS)のウェーブ3(2008年)~13(2018年)より抽出したサンプルを用いて検討を行った。調査時に1日で喫煙した紙巻きタバコの本数をDCAと定義した。うつ状態の評価には、うつ病自己評価尺度(CESD-11)を用いた。うつ症状の変化がDCAに及ぼす影響を評価するため、一般化推定方程式を用いた。うつ状態の変化により「NO→NO」群、「NO→YES」群、「YES→NO」群、「YES→YES」群に分類し評価した。

統合失調症と双極性障害を鑑別する多遺伝子リスクスコアと病前知能との関連

 統合失調症と双極性障害は、臨床的および遺伝的に類似している疾患であるにもかかわらず、統合失調症患者の知能障害は、双極性障害患者よりも重篤である。統合失調症と双極性障害を鑑別する遺伝子座(つまり統合失調症に特異的なリスク)は特定されている。統合失調症に特異的なリスクに対する多遺伝子リスクスコア(PRS)は、健康対照者よりも統合失調症患者で高くなるが、知能障害に対する遺伝的リスクの影響は、よくわかってない。岐阜大学の大井 一高氏らは、統合失調症に特異的なリスクが、統合失調症および健康対照者の知能障害を予測するかについて調査を行った。The International Journal of Neuropsychopharmacology誌2021年7月23日号の報告。

医療従事者のバーンアウトとそれに伴う仕事量の変化

 COVID-19感染流行に収束の兆しが見えない中、医療従事者の燃え尽き症候群(バーンアウト)が問題となっている。COVID-19感染流行前に、医師以外の医療従事者(HCW)における燃え尽き症候群(バーンアウト)と組織への満足度が、その後の仕事量の変化と関連するのかを調査した研究結果が、JAMA Network Open誌2021年8月20日号で報告された。  米メイヨー・クリニックのLiselotte N. Dyrbye氏らは、米国の複数の州にある地域密着型病院と医療施設において、2015年~2017年にかけてHCW(看護師、理学療法士、薬剤師、ソーシャルワーカー等)を対象に、バーンアウト及び組織への満足度と、その後24ヵ月間の仕事量の変化との関連を探る縦断的コホート研究を実施した。分析は2020年11月25日に完了した。主要アウトカムは、給与記録に記録されるフルタイム換算(FTE)単位で測定される仕事量の変化だった。バーンアウトの診断はMaslach Burnout Inventory(MBI)による情緒的消耗感と脱人格化の測定、組織への満足度は5段階アンケートで測定した。

倦怠感は日中の過度な眠気と独立して抑うつ症状と関連

 一般集団における倦怠感に対する睡眠障害や併存疾患の影響について、韓国・ソウル大学校病院のJun-Sang Sunwoo氏らが、調査を行った。Sleep & Breathing誌オンライン版2021年7月22日号の報告。  2018年に実施された韓国の横断調査より得られたデータを用いて、分析を行った。倦怠感の評価には、Fatigue Severity Scaleを用いた。就業日の睡眠時間、クロノタイプ、休日の睡眠不足を解消するための睡眠、日中の過度な眠気などの睡眠習慣および抑うつ症状、その他の併存疾患について調査した。倦怠感を従属変数として、多重ロジスティック回帰分析を行った。  主な結果は以下のとおり。

若年性認知症の世界的有病率~メタ解析

 認知症の症状が65歳以前に発現する若年性認知症については、信頼できる推定有病率が明らかとなっていない。有病率の推定は、政策立案時に適切な医療環境を組織するうえで必要となる。オランダ・マーストリヒト大学のStevie Hendriks氏らは、若年性認知症の世界的有病率の推定を試みた。JAMA Neurology誌オンライン版2021年7月19日号の報告。  1990年1月~2020年3月に公表された若年性認知症の有病率に関する人口ベースの研究を、PubMed、Embase、CINAHL、PsycInfoのデータベースよりシステマティックに検索した。65歳未満の認知症有病率に関するデータを含む研究を独立した2人のレビュアーによりスクリーニングし、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。30~34歳から60~64歳まで、5歳刻みの年齢層における若年性認知症の有病率を推定した。有病率の推定値をプールするため、変量効果メタ解析を実施した。結果は、世界標準人口による年齢調整を行った。性別、認知症サブタイプ、研究デザイン、世界銀行の分類に基づく経済状態によるサブグループ分析およびメタ解析により、不均一性を評価した。主要アウトカムは、5歳刻みの年齢層における若年性認知症の推定有病率とした。

認知刺激の強い仕事は高齢期の認知症リスクを低下させる可能性/BMJ

 認知刺激が強い労働に従事している人々は、認知刺激が弱く受動的な労働に就いている人々と比較して、高齢期の認知症のリスクが低く、中枢神経系の軸索形成やシナプス形成を阻害する血漿タンパク質のレベルが低下していることが、英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのMika Kivimaki氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2021年8月18日号で報告された。  研究グループは、認知刺激が強い労働と、後年の認知症リスクの関連を評価し、この関連に関与するタンパク質生合成経路の特定を目的にマルチコホート研究を行った(NordForskなどの助成を受けた)。

抗CGRP抗体エレヌマブによる急性頭痛薬の減少効果

 トリプタンやエルゴットなどの片頭痛に特異的な治療薬(migraine-specific medication:MSM)を含む急性期治療薬の過度な使用は、薬物乱用頭痛の出現など健康への悪影響につながる可能性がある。米国・Geisel School of Medicine at DartmouthのStewart J. Tepper氏らは、反復性および慢性片頭痛患者における急性期治療薬(とくにMSM)の減少に対するエレヌマブの効果について調査を行った。The Journal of Headache and Pain誌2021年7月23日号の報告。  2つのエレヌマブの研究(反復性片頭痛患者955例および慢性片頭痛患者667例を対象とした試験とその後続試験)における二重盲検治療段階のデータを用いて、事後分析を行った。対象患者には、エレヌマブ(70または140mg)またはプラセボの月1回皮下投与を行った。毎日の急性期治療薬(MSMおよび非MSM)の使用については、治療開始4週前(ベースライン期間)から治療期間終了まで電子日誌を用いて記録した。アウトカムは、ベースライン時の急性頭痛薬使用患者における1ヵ月当たりの急性頭痛薬使用日数の変化、ベースライン時のMSM使用患者における1ヵ月当たりのMSM使用日数の変化、ベースライン時の非MSM使用患者における1ヵ月当たりの非MSM使用日数の変化として、測定を行った。

妊娠前の睡眠時間と産後うつ病~日本での多施設共同研究

 産後うつ病は、世界における主要な公衆衛生上の問題であり、臨床的優先事項として挙げられている。名古屋大学の松尾 聖子氏らは、妊娠前の睡眠時間と産後うつ病との関連について、調査を行った。Archives of Women's Mental Health誌オンライン版2021年7月13日号の報告。  日本の産婦人科病院12施設より収集した2014~18年に出産した女性の臨床データを用いて、多施設共同レトロスペクティブ研究を実施した。対象女性1万5,314人を妊娠前の睡眠時間に応じて5群に分類した(6時間未満、6~7時間、7~8時間、8~9時間、9時間以上)。妊娠前の睡眠時間が産後1ヵ月間のエジンバラ産後うつ病質問票(EPDS)のスコアに影響を及ぼすかを判断するため、単変量および多変量回帰分析を行った。また、産後うつ病リスクが、妊娠前の睡眠時間に応じて分類された女性において、以前の出産経験の有無により異なるかについても評価した。