精神科/心療内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:58

小児・青年に対する抗精神病薬の生理学的影響の比較〜ネットワークメタ解析

 小児および青年における各抗精神病薬に対する生理学的反応の程度は、よくわかっていない。英国・キングス・カレッジ・ロンドンのMaria Rogdaki氏らは、神経精神疾患および神経発達障害を伴う小児および青年における各種抗精神病薬の生理学的変数への影響を評価するため、ネットワークメタ解析を実施した。The Lancet. Child & Adolescent Health誌2024年7月号の報告。  2023年12月22日までに公表された神経精神疾患および神経発達障害を伴う18歳未満の小児または青年を対象に抗精神病薬とプラセボを比較したランダム化比較試験(RCT)をMedline、EMBASE、PsycINFO、Web of Science、Scopusより検索し、ネットワークメタ解析を実施した。主要アウトカムは、体重、BMI、空腹時血糖、総コレステロール、LDLコレステロール、HDLコレステロール、トリグリセライド、プロラクチン、心拍数、収縮期血圧(SBP)、補正QT時間(QTc)のベースラインから急性期治療終了までの平均変化とした。複数の用量で検討されたマルチグループ試験では、すべての用量について各生理学的変数のサマリ値を算出した。Kilimプロットを用いて、すべての治療とアウトカムの結果を要約し、p値を用いて、治療効果と統計学的エビデンスの強さに関する情報を評価した。異質性はτ、バイアスリスクはCochrane Collaborationバイアスリスク評価ツール、ネットワークメタ解析の信頼性はConfidence in Network Meta-Analysis(CINEMA)appで評価した。

日本における頭痛障害、片頭痛の有病率調査の正確性は

 疫学データを収集するために実施されるアンケート調査は、誤分類を起こす可能性がある。大阪・富永病院の竹島 多賀夫氏らは、頭痛に関するアンケートを分析し、どの質問が片頭痛以外の分類につながっているかを評価した。BMC Neurology誌2024年5月25日号の報告。  19〜74歳の個人医療請求データと組み合わせた匿名調査をDeSCヘルスケアより入手し、一次性頭痛障害(片頭痛、緊張型頭痛、群発性頭痛、その他の頭痛障害)の患者割合を調査した。片頭痛を判定する6つの基準を用いて、その他の頭痛障害を有する人が、アンケートにどのように回答したかを調査した。

夜勤とギャンブル利用の関係

 日本人の労働者2万人以上を対象とした横断研究の結果、夜勤はギャンブルの利用と関連しており、夜勤のある人ほど、ギャンブルから生活や健康などの問題が発生する可能性が高いことが明らかとなった。慶應義塾大学 医学部衛生学公衆衛生学教室 HTA公的分析研究室の吉岡貴史氏らによる研究であり、「Addictive Behaviors」に5月23日掲載された。  夜勤を含むシフト勤務者の睡眠に関する問題は、「交代勤務睡眠障害」と呼ばれる。睡眠の質が悪いとアルコールや睡眠補助薬の多用につながる可能性があり、反対に、覚醒を維持するためにカフェインやタバコなどの物質を常用してしまうこともある。

低脂肪食がうつ病リスクに及ぼす影響〜メタ解析

 低脂肪食がうつ病リスクに及ぼす影響を調査するため、イラン・Shahid Sadoughi University of Medical SciencesのSepideh Soltani氏らは、ランダム化比較試験(RCT)のシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Nutrition Reviews誌オンライン版2024年6月19日号の報告。  2023年6月7日までに公表されたRCTをPubMed、ISI Web of Science、Scopus、CENTRALデータベースより検索し、低脂肪食(脂肪摂取量がエネルギー摂取量の30%以下)がうつ病スコアに及ぼす影響を調査した試験を特定した。低脂肪食がうつ病リスクに及ぼす影響のプールされた効果(Hedges g)を推定するため、ランダム効果メタ解析を用いた。

未治療の急性期統合失調症患者におけるビリルビン値と代謝パラメータとの関連

 酸化システムは、統合失調症発症に重要な影響を及ぼす。統合失調症患者のさまざまなエピソードにおいて、高ビリルビン血症と精神病理や糖脂質代謝との間に、一貫性のない関連が認められている。中国・安徽医科大学のYinghan Tian氏らは、急性期エピソードおよび薬物治療未治療の統合失調症患者を対象に、これらの関連性を調査した。BMC Psychiatry誌2024年5月29日号の報告。  安徽医科大学附属巣湖病院の電子カルテシステムより抽出した5年間(2017年5月〜2022年5月)のデータを用いて、レトロスペクティブ研究を実施した。地元の医療スクリーニングセンターより同期間の健康対象者データを抽出した。対象者のビリルビン濃度(総ビリルビン[TB]、抱合ビリルビン[CB]、非抱合ビリルビン[UCB])、糖脂質代謝パラメータ、簡易精神症状評価尺度(BPRS)スコアを収集した。

特定の前立腺肥大症治療薬がレビー小体型認知症の予防に有効か

 特定の前立腺肥大症治療薬が、レビー小体型認知症のリスク低下に役立つ可能性のあることが新たな研究で示唆された。米アイオワ大学内科学分野のJacob Simmering氏らによるこの研究の詳細は、「Neurology」に6月19日掲載された。Simmering氏は、「レビー小体型認知症は、神経変性により生じる認知症としてはアルツハイマー病に次いで多いが、現時点では予防や治療のための薬剤がないため、今回の結果には心が躍った。既存の薬剤がこの衰弱性疾患の予防に有効であることが確認されれば、その影響を大幅に軽減できる可能性がある」と同大学のニュースリリースで述べている。  米国立老化研究所(NIA)によれば、米国でのレビー小体型認知症の患者数は100万人以上に上るという。レビー小体型認知症は、高度にリン酸化したα-シヌクレインと呼ばれるタンパク質が脳の神経細胞に凝集・沈着して形成されるレビー小体が原因で発症するとされている。レビー小体型認知症では、思考力や記憶力、運動機能が障害されるほか、幻視が生じる可能性もあり、実際に、80%以上の患者では実在しないものが見えるという。

早期アルツハイマー病におけるレカネマブの安全性〜第III相試験

 アルツハイマー病(AD)は、世界における医療制度、患者、家族に多大な負担を強いる高齢化に伴う主要な健康問題である。早期ADに対しFDAが承認しているアミロイドベータ(Aβ)標的抗体であるレカネマブは、可溶性Aβ凝集体に高い親和性を示す薬剤である。一方、可溶性Aβ凝集体は、単量体や不溶性フィブリルよりも神経毒性が高いことが示唆されている。レカネマブは、複数の臨床試験において、忍容性が良好であると報告されているが、プラセボと比較し、アミロイド関連画像異常(ARIA)および注射部位反応の発生リスクが高いことが問題となる。米国・コロンビア大学のLawrence S. Honig氏らは、早期アルツハイマー病におけるレカネマブの安全性について、第III相試験であるClarity AD試験の結果を報告した。Alzheimer's Research & Therapy誌2024年5月10日号の報告。

「孤食」の人は自殺リスクが2.8倍に?

 日本の高齢者4.6万人を7年間追跡し、社会的つながりと自殺との関連を調べたところ、「孤食」の状態にある人は、自殺死亡のリスクが約2.8倍、高かったという推計結果が発表された。日本福祉大学社会福祉学部の斉藤雅茂氏らによる研究であり、「Social Science & Medicine」4月号に掲載された。  日本では依然として、国際的に見て自殺率が高い。社会的孤立の問題が指摘されているが、個人の社会的つながりに関する多様な指標と自殺死亡を検証した研究は少ない。また、日本では50~59歳の年齢層の自殺者数が最も多いが、70~79歳と80歳以上の自殺者数を合計するとそれを上回る。そのような中、高齢者の自殺に関する研究は不足している。

抗精神病薬誘発性体重増加に対する薬理学的介入〜ネットワークメタ解析

 抗精神病薬誘発性体重増加は、第1世代および第2世代抗精神病薬による治療において重要な問題となるが、しばしば軽視されて、心血管疾患を引き起こす可能性につながる。インド・全インド医科大学のNaveen Chandrashekar Hegde氏らは、抗精神病薬誘発性体重増加に対する利用可能な治療オプションの有効性を評価および比較するため、ネットワークメタ解析を実施した。General Hospital Psychiatry誌オンライン版2024年6月11日号の報告。  MEDLINE/PubMed、Embase、Scopus、Cochraneデータベース、臨床試験レジストリより関連する臨床試験を抽出した。ベースラインからの体重変化に対する介入の全体的な効果をプールするため、ランダム効果ベイジアンネットワークメタ解析を実施した。ネットワークグラフ作成、一貫性モデルの実行、ノード分割分析の実施、SUCRAスコアに従った治療のランク付けを行った。治療期間、ベースライン時の体重、治療戦略を予測変数とし、メタ回帰を行った。エビデンスの確実性に基づき結果を分類した。

網膜症は認知症リスクと関連

 福岡県久山町の地域住民を対象とする久山町研究の結果が新たに発表され、網膜症のある人は、網膜症のない人と比べて認知症の発症リスクが高いことが明らかとなった。九州大学大学院医学研究院衛生・公衆衛生学分野の二宮利治氏らと同大学眼科分野の園田康平氏らの共同研究グループによる研究成果であり、「Scientific Reports」に5月26日掲載された。  網膜症は糖尿病や高血圧などの特定の原因に限らず、網膜の微小血管瘤、微小血管の出血、滲出などと関連しており、眼底検査で確認することができる。また、網膜と脳は、解剖学や発生学などの観点から類似している。これまでの研究で、網膜の微小血管異常と認知症との関連が示唆されているものの、追跡調査の成績を用いて縦断的にそれらの関係を検討した研究は限られ、その結果は一貫していなかった。