精神科/心療内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:60

日本における統合失調症、うつ病患者に対する向精神薬処方実態

 日本の精神疾患の治療では、メインとなる治療薬(たとえば、統合失調症に対する抗精神病薬、うつ病に対する抗うつ薬)に加えて向精神薬の多剤併用が一般的に行われている。北海道大学の橋本 直樹氏らは、施設間での差異を減少させながら、日本における向精神薬の処方を国際基準と一致させることを目的に、精神疾患患者の入院時および退院時の処方実態の比較を行った。BMC Psychiatry誌2023年6月28日号の報告。  2016~20年の入院時および退院時における処方箋データを収集した。データに基づき患者を次の4群に分類した。A群(入院時および退院時:主薬単剤療法)、B群(入院時:主薬単剤療法、退院時:多剤併用療法)、C群(入院時および退院時:多剤併用療法)、D群(入院時:多剤併用療法、退院時:主薬単剤療法)。向精神薬の投与量および数を4群間で比較した。

慢性片頭痛の診断率~6ヵ国の比較

 米国・アッヴィのAubrey Manack Adams氏らは、世界6ヵ国における慢性片頭痛患者の評価に基づいた詳細調査を実施した。その結果、6ヵ国ともに、片頭痛の過小診断の割合が高いことが示唆された。Cephalalgia誌2023年6月号の報告。  カナダ、フランス、ドイツ、日本、英国、米国において、Webベースの横断的観察コホート研究を実施した。最初のスクリーニング調査では、代表的なサンプルより一般的な健康管理情報を収集し、国際頭痛分類第3版(ICHD-3)基準に基づき片頭痛の有病率を特定した。検証済みの片頭痛特有の評価に基づき詳細調査を行った。

日本におけるアルコール摂取、喫煙と認知症リスク~村上健康コホート研究

 飲酒や喫煙は、生活習慣病リスクに影響するが、認知症への影響については依然としてよくわかっていない。新潟大学のShugo Kawakami氏らは、日本人中高年におけるアルコール摂取や喫煙と認知症リスクとの長期的な関連性を調査するため本研究を実施した。その結果、中程度までのアルコール摂取は認知症リスクが低下し、喫煙は用量依存的に認知症リスク増加との関連が認められた。また、多量のアルコール摂取と喫煙との間に認知症リスクとの相互作用が確認された。Maturitas誌オンライン版2023年6月14日号の報告。

膝の痛みが消えてもメンタルヘルスは改善しない

 膝が痛くて気分が滅入ることはあるが、その痛みが和らいでもメンタルヘルスは改善しないようだ。身体機能や痛みが大幅に改善すると、不安症状は軽減するが、抑うつ症状は軽減しないことが、米ワシントン大学医学部整形外科分野のAbby Cheng氏らの研究で明らかにされた。米国立衛生研究所(NIH)から資金提供を受けて実施されたこの研究の詳細は、「JAMA Network Open」に6月28日掲載された。  背中や肩、股関節に痛みがある人が、イライラしたり、不安を感じたり、精神的に落ち込んだりするのは珍しいことではない。今回の研究では、ワシントン大学病院整形外科で筋骨格系の治療を、2015年6月22日から2022年2月9日の間に4〜6回受けた成人患者1万1,236人〔平均年齢(標準偏差)57(16)歳、女性64.2%〕を対象に、身体機能や痛みの影響が改善されることで不安や抑うつの症状も軽減するのかどうかが検討された。対象患者には、受診のたびに患者報告アウトカム測定情報システム(PROMIS)と呼ばれる評価ツールに回答してもらい、これを基に不安と抑うつの症状、身体機能、痛みの影響のスコア化を行った。PROMISの質問には、「過去7日間で、痛みがどの程度、家事の妨げとなりましたか」「過去7日間で、痛みがどの程度、眠りにつく妨げとなりましたか」などの項目が含まれていた。

境界性パーソナリティ障害と全般不安症の併存率

 境界性パーソナリティ障害(BPD)は、感情、衝動性のコントロール、対人機能において重度の不安定さを特徴とする精神疾患である。これまでの研究でBPD患者は不安症などの他の精神疾患の併発リスクが高いと報告されているにもかかわらず、全般不安症(GAD)とBPDとの関係はあまり調査されていなかった。カナダ・マクマスター大学のAimun Qadeer Shah氏らは、成人におけるBPDとGAD併存の臨床アウトカムに関する報告を統合するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、BPDにGADが併発する頻度は高く、この併存疾患がBPDの症状の重症度に関連している可能性が示唆された。Journal of Psychiatric Research誌2023年8月号の報告。

日本人アルツハイマー病患者の日常生活に影響を及ぼすリスク因子

 日常生活動作(ADL)を維持することは、アルツハイマー病(AD)患者およびその介護者にとって非常に重要な問題である。エーザイの赤田 圭史氏らは、日本人AD患者の診断時のADLレベルおよび長期(3年以内)治療中のADL低下と関連するリスク因子を明らかにするため、本検討を行った。その結果、低い体格指数(BMI)、脳卒中、骨折を伴う日本人AD患者では、ADL低下リスクが高いことから、これらリスク因子を有する患者では、ADLを維持するためのリハビリテーションなどの適切な介入が求められることを報告した。Journal of Alzheimer's Disease誌オンライン版2023年6月30日号の報告。

ナルコレプシータイプ1、経口OX2受容体作動薬の第II相試験データ/NEJM

 ナルコレプシータイプ1の患者において、経口オレキシン(OX)2受容体選択的作動薬のTAK-994はプラセボと比較して8週間にわたり眠気およびカタプレキシー(情動脱力発作)を大きく改善したが、肝毒性との関連が認められた。フランス・モンペリエ大学のYves Dauvilliers氏らが、北米、欧州およびアジアで実施された第II相無作為化二重盲検プラセボ対照用量設定試験の結果を報告した。ナルコレプシーは、日中の過度の眠気を特徴とするまれで慢性的な中枢神経系の過眠障害で、カタプレキシー、入眠時または出眠時幻覚、睡眠麻痺などを伴うことがある。ナルコレプシーはタイプ1とタイプ2に大別され、タイプ1は視床下部外側野に局在するオレキシン産生ニューロンの著しい欠乏によって引き起こされることが明らかになっていた。NEJM誌2023年7月27日号掲載の報告。

アルツハイマー型認知症の予防薬第二の扉(解説:岡村毅氏)

前回のコラムでは扉がこじ開けられつつあると書いた。すなわち「認知症の初期の人」の症状進展を止める薬剤が出てきたと述べた。そうなると次は、第二の扉だ。アミロイドが溜まっているが、発症していない段階(プレクリニカル期)で止められないかが次の課題だと書いた。イーライリリーは「第一の扉」で大変苦戦しており、期待されたsolanezumabは初期認知症に対するEXPEDITION試験が失敗した。そしてエーザイに先を越された。しかし次に控えていたdonanemabが、初期認知症に対するTRAILBLAZER-ALZ試験で挽回した。

急性期統合失調症に対する長時間作用型注射剤抗精神病薬~メタ解析

 長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬は、統合失調症の再発予防効果が期待できるが、急性期患者においてもベネフィットをもたらす可能性がある。ドイツ・ミュンヘン工科大学のDongfang Wang氏らは、急性期統合失調症患者に対する第2世代抗精神病薬(SGA)のLAIに関するエビデンスのシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、急性期統合失調症に対し、SGA-LAIは効果的な治療選択肢であることを報告した。Schizophrenia Bulletin誌オンライン版2023年6月23日号の報告。

認知症予防の扉がこじ開けられつつある(解説:岡村毅氏)

歴史的に眺めてみよう。20世紀にはアルツハイマー型認知症は臨床的にのみ診断され、死後に解剖されて初めて確定診断されていた。人類には何もできなかった。しかし21世紀に入り、生きているうちから診断するための技術が徐々に開発・実装された。2004年に米国で大規模画像プロジェクトADNIが始まり、脳内で何が起きているのかがわかってきた。死後脳に溜まっているアミロイドが、だんだんと溜まっていくさまが確認され、アミロイドカスケード仮説は、生体でも確認された。そして2011年の新しい診断基準で、PETや髄液検査による診断が可能になった。これにより、プレクリニカル期(症状がないが病理がある)、MCI期のアルツハイマー型認知症、そしてアルツハイマー型認知症という病期が確立した。