精神科/心療内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:63

日本人高齢者の認知症発症を予測するバイオマーカー

 九州大学の小原 知之氏らは、血漿アミロイドβ(Aβ)42/40、リン酸化タウ(p-τ)181、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)、ニューロフィラメント軽鎖(NfL)と認知症リスクとの関連を評価し、これらの血漿バイオマーカーが、一般的な高齢者集団の認知症発症予測の精度向上につながるかを調査した。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2024年4月12日号の報告。  非認知症の65歳以上の地域在住日本人高齢者1,346人を対象に、5年間のプロスペクティブフォローアップ調査を実施した。血漿バイオマーカーは、超高感度オートELISA Simoa HD-X Analyzerを用いて、定量化した。認知症リスクに対する各血漿バイオマーカーレベルのハザード比を推定するため、Cox比例ハザードモデルを用いた。

米国での精神疾患の経済的コストは年間2820億ドル

 米国での精神疾患の経済的コストは年間2820億ドル(1ドル154円換算で43兆4280億円)であり、一般に経済不況とされるレベルに達していることが、新たな研究で明らかにされた。この金額は、米国の歳出の約1.7%に相当し、米国における精神疾患の全体的なコストを概算した過去の試みよりも約30%大きいという。米イェール大学経済学分野教授のAleh Tsyvinski氏らによるこの研究は、全米経済研究所(National Bureau of Economic Research;NBER)の「Working Paper」として作成され4月に公開された。  米国物質乱用・精神衛生サービス局(U.S. Substance Abuse and Mental Health Services Administration)によると、成人の約5人に1人が精神疾患を抱えており、約5.5%の人は重度の精神疾患に罹患しているという。精神疾患が米国経済に及ぼす影響を算出する試みはこれまでにもなされているが、それらは収入減と治療費に焦点を当てたものであったと研究グループは説明する。

医師の燃え尽き防止、同僚のコーチングは役立つか?

 4月から医師の働き方改革がスタートし、労働時間の制約が強まるなか、医師の仕事における過度なストレスや燃え尽き症候群(バーンアウト)への対策は依然として課題であり、よりエビデンスに基づいたアプローチが求められている。医師がコーチングの訓練を受け、同僚に働きかけることで燃え尽き症候群を予防できるのかを検証した、米国・マサチューセッツ総合病院のStephanie B. Kiser氏らによる研究結果が発表された。JAMA Network Open誌2024年5月1日号掲載の報告。

日本における統合失調症に対する薬物療法の変化~クロザピン導入前後12年間の調査

 日本における統合失調症に対する精神科薬物療法は、多剤併用療法が行われてきた長い歴史がある。これは、世界的にまれではあるが、依然として重大な問題である。その理由の1つとして、日本では2009年までクロザピンが使用できなかったことが挙げられる。岡山県精神科医療センターの北川 航平氏らは、統合失調症に対する薬物療法がクロザピン導入により、どのように変化したのかを明らかにするため、クロザピン導入前後の12年間にわたる統合失調症に対する精神科薬物療法の変化を調査した。Asian Journal of Psychiatry誌2024年6月号の報告。

遺伝子分析とアンケートを組み合わせた日本人うつ病患者の特徴分析

 うつ病は、さまざまな環境的因子や遺伝的因子の影響を受け発症する、気分障害を特徴とする一般的な精神疾患であるが、その病因は、ほとんどわかっていない。ヤンセンファーマのRyo Takano氏らは、日本人うつ病患者のリスク因子を特定するため、本研究を実施した。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2024年4月8日号の報告。  対象は、東北メディカル・バンク機構が2021年12月までに募集した2つのコホート参加者(人口ベースコホート、3世代コホート)。社会人口統計学的因子、ライフスタイル、併存疾患、遺伝的因子に焦点を当て、自己申告によるうつ病のプロファイリングを行った。  主な結果は以下のとおり。

心電図所見から夜間の自殺企図を予測できる?

 精神疾患と心電図所見の関連については多くの研究が行われている。新たな研究として、自殺企図歴のある日本人の精神疾患患者を対象に、夜間の自殺企図と心電図の波形との関連が検討された。その結果、早期再分極を示す心電図により、夜間の自殺企図を予測できる可能性のあることが示された。東京慈恵会医科大学附属柏病院精神神経科の亀山洋氏らによる研究結果であり、「Neuropsychopharmacology Reports」に3月17日掲載された。  早期再分極パターン(early repolarization pattern;ERP)は、心電図におけるQRS-ST接合部(J点)の上昇(スラーやノッチと呼ばれる波形)を特徴とする。ERPは男性に多く、健常人にも見られるが、精神疾患との関連が報告されており、自殺企図などの衝動性と関連する可能性も示唆されている。自殺行動は夜間の時間帯に多いことが知られているため、その危険性を事前に予測することが重要となる。

年齢や婚姻状況で異なる、「世帯の人数」と心理的苦痛の関係

 日本の全国調査データを活用して、年齢・性別や婚姻状況により、世帯の人数と心理的苦痛の関係が異なるかどうかを調べる研究が行われた。その結果、若い世代や未婚者では、世帯の人数が少ないほど心理的苦痛の強い人が多いという関係が認められた。奈良県立医科大学県民健康増進支援センターの冨岡公子氏らによる研究結果であり、「Frontiers in Public Health」に3月11日掲載された。  一人暮らしや少人数の世帯は増加の一途をたどっている。2024年4月には「孤独・孤立対策推進法」が施行され、孤独や孤立への総合的な対策が必要とされている。これまでにも世帯の人数とがんや認知症、幸福感、メンタルヘルスなどとの関連が研究されているが、世帯の人数が及ぼし得る影響は、年齢や性別、配偶者の有無などにより異なる可能性がある。

片頭痛患者における睡眠障害併存が中枢性感作に及ぼす影響

 片頭痛患者では、睡眠障害が見られることが多く、このことがQOLに影響を及ぼす。また、中枢感作は、片頭痛の重症度や慢性化と関連している可能性がある。獨協医科大学の鈴木 圭輔氏らは、併存する睡眠障害の数が中枢感作の影響を介して頭痛関連障害に及ぼす影響を調査した。Frontiers in Neurology誌2024年2月26日号の報告。  連続した片頭痛患者215例を対象に、横断的研究を実施した。不眠症の定義は、ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)総スコア5超とした。レム睡眠行動障害の可能性は、RBDスクリーニングスコア5以上と定義した。日中の過度な眠気の定義は、エプワース眠気尺度(ESS)スコア10以上とした。睡眠時無呼吸症候群の疑いの定義は、いびきまたは睡眠時無呼吸症候群の症状が3夜/週以上とした。中枢感作の評価には、Central Sensitization Inventory(CSI)を用いた。

マヨネーズをオリーブ油にすると認知症死亡が14%低下

 オリーブ油の摂取と認知症関連死亡との関連はわかっていない。今回、米国・Harvard T.H. Chan School of Public HealthのAnne-Julie Tessier氏らが、9万人超の前向きコホート研究を実施したところ、オリーブ油を1日7g超摂取する人は、まったく/ほとんど摂取しない人と比べて、食事の質によらず認知症関連死亡リスクが3割近く低いことがわかった。また、1日5gのマヨネーズを同量のオリーブ油に置き換えると、認知症関連死亡リスクが14%低下すると推定された。JAMA Network Open誌2024年5月6日号に掲載。

SSRI使用と男性不妊症との関連

 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の使用は、男性の生殖能力に潜在的な影響を及ぼすといわれているが、その正確なメカニズムは十分にわかっているとはいえない。サウジアラビア・King Saud UniversityのJawza F. Alsabhan氏らは、SSRIと男性不妊症との関連を調査した。Journal of Clinical Medicine誌2024年4月7日号の報告。  SSRIによる治療を受け、King Saud Medical Cityの不妊クリニックに通院したサウジアラビア人男性を対象に、カルテレビューをレトロスペクティブに実施した。SSRIを服用している患者の精子パラメータの質をスクリーニングするため、不妊クリニックに通院している男性患者の医療記録を参照した。