精神科/心療内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:103

精神疾患患者の認知症リスク

 統合失調症、双極性障害、うつ病などの重度の精神疾患は認知症と関連しているといわれているが、これらの関連を直接比較した研究はあまり行われていない。台湾・台北栄民総医院のYing-Jay Liou氏らは、重度の精神疾患と認知症リスクとの関連を明らかにするため、台湾全民健康保険データベースを用いてレトロスペクティブに分析を行った。その結果、重度の精神疾患患者は対照群と比較し、アルツハイマー病および血管性認知症リスクが高いことが示唆されたとし、中年および高齢の精神疾患患者では、認知機能の変化を綿密にモニタリングする必要があることを報告した。European Archives of Psychiatry and Clinical Neuroscience誌オンライン版2022年4月26日号の報告。

日本人双極性障害外来患者の3年間の臨床アウトカムに影響を及ぼす要因~MUSUBI研究

 双極性障害患者の長期的な臨床アウトカムの予測因子に関するエビデンスは限られている。獨協医科大学の菅原 典夫氏らは、日本の精神科クリニックにおける双極性障害の多施設治療調査「MUSUBI研究」に参加した双極性障害患者を対象に、3年間の臨床アウトカムに影響を及ぼす予測因子を特定しようと試みた。その結果、フォローアップ期間中に持続的な寛解が得られる患者は少なく、臨床アウトカムに個々の人口統計学的および臨床的特徴が影響を及ぼしていることが示唆された。Journal of Psychiatric Research誌2022年7月号の報告。

思春期女性の食事行動とうつ病との関連

 うつ病の増加は、公衆衛生上の重大な問題となっている。うつ病と食事行動との関連が示唆されているものの、そのエビデンスは限られている。イラン・Shahid Sadoughi University of Medical SciencesのAbbas Ali Sangouni氏らは、食事行動とうつ病スコアとの関連を評価するため、横断的研究を実施した。その結果、いくつかの摂食行動とうつ病スコアとの有意な関連が認められたことを報告した。BMC Public Health誌2022年6月11日号の報告。  対象は、12~18歳のイラン人の思春期女性933人。うつ病重症度スコアにはベックうつ病評価尺度のペルシャ語版を用いて評価した。食事行動は事前に定義し、10項目の標準的な質問票を用いて評価した。食事行動とうつ病スコアとの関連を評価するため、租分および調整済みモデル線形回帰分析を用いた。

統合失調症患者の第一度近親者の神経認知機能障害

 統合失調症患者だけでなく、その第一度近親者(FDR)も神経認知機能障害を有している可能性が示唆されているものの、これまで十分に評価されていなかった。インド・Topiwala National Medical CollegeのSachin P. Baliga氏らは、統合失調症患者のFDRにおける認知的洞察と客観的認知機能、精神病的体験歴、社会的機能との関連について評価を行った。その結果、統合失調症患者のFDRは、統合失調症患者と同様に認知的洞察が不良であることが確認された。Indian Journal of Psychological Medicine誌2022年3月号の報告。

PC使用や自動車運転と認知症リスク~プロスペクティブ研究

 座りがちな行動は、高齢者の認知症リスクと関連しているといわれている。東北大学の竹内 光氏らは、自動車運転やコンピューターの使用が、高齢者の認知症リスクと関連しているかを調査した。その結果、座りがちな行動の種類により将来の認知症リスクは異なり、単純に座っている時間のみで評価するのではなく、さまざまな要因を考慮する必要があることを報告した。Frontiers in Aging Neuroscience誌2022年5月16日号の報告。  対象は欧州の中高年成人を含む縦断的コホート研究の参加者のうち、ベースライン(2006~10年)より5年前に認知症と診断されておらず、ベースラインから5年以内に死亡していなかった人で、2018年までフォローアップし分析した。交絡因子で補正した後、ベースラインで質問票より得られた自動車運転時間および非職業的コンピューター使用時間と、5年後の認知症発症との関連を分析した。自動車運転およびコンピューター使用の時間により、4群(A群:0時間/日、B群:1時間未満/日、1時間/日、C群:2時間/日、3時間/日、D群:4時間以上/日)に分類した。分析にはCox比例ハザードモデルを用いた。

精神科入院患者の重症度に応じたうつ病の薬理学的治療

 ICD-10では、うつ病を重症度に応じて分類している。また、ガイドラインでは、重症度に応じたうつ病治療に関する推奨事項を記載している。ドイツ・ハノーファー医科大学のJohanna Seifert氏らは、実臨床における精神科入院患者に対するうつ病の重症度に基づいた向精神薬の使用について評価を行った。その結果、ガイドラインの推奨事項と実臨床での薬物治療には乖離があり、精神科入院うつ病患者の治療における臨床ニーズをガイドラインに十分反映できていない可能性が示唆された。Journal of Neural Transmission誌オンライン版2022年5月7日号の報告。

初回入院統合失調症患者の再入院予防に対する抗精神病薬の有効性比較

 抗精神病薬治療は、統合失調症の最も主要な治療法であるが、その有効性を比較することは簡単ではない。国立台湾大学のYi-Hsuan Lin氏らは、アジア人初回入院統合失調症患者の再入院予防に対する抗精神病薬のリアルワールドでの有効性を比較するため、検討を行った。その結果、統合失調症の初回入院後に抗精神病薬の長時間作用型注射剤(LAI)による治療を行うことで、再入院予防に対する顕著なベネフィットが確認されたことから、初期段階でのLAI使用が再入院予防の重要な治療戦略であることを報告した。Schizophrenia Bulletin誌オンライン版2022年5月15日号の報告。

日本食の死亡率や認知症リスクへの影響~大崎コホート研究

 長寿国である日本。その要因として日本人の食生活が影響しているといわれている。しかし、日本食の健康に対するベネフィットは、十分に解明されていない。2007年、宮城県大崎市の日本人住民を対象とした大崎コホート研究において、日本食パターンと心血管疾患による死亡率との関連が世界で初めて発表された。以来、本報告の著者らは、日本食パターンと健康への影響に関するエビデンスを蓄積するため、日本食インデックス(JDI)を開発し、日本食の健康への影響について検討を行ってきた。東北大学の松山 紗奈江氏らは、これまでの6報の論文をレビューし、日本食の健康への影響および将来の研究への影響について議論を深めるため本報告を行った。その結果、日本食パターンを高率で実践している人では、死亡率だけでなく、機能障害や認知症リスクの減少も認められることが確認された。Nutrients誌2022年5月12日号の報告。

日本における統合失調症に対する抗コリン薬使用の特徴

 統合失調症のさまざまな臨床ガイドラインにおいて、抗コリン薬の長期使用は推奨されていない。福岡大学の堀 輝氏らは、向精神薬使用のパターンおよび病院間での違いを考慮したうえで、統合失調症患者に対する抗コリン薬使用の特徴について、調査を行った。その結果、抗精神病薬の高用量および多剤併用、第1世代抗精神病薬の使用に加え、病院の特性が抗コリン薬の使用に影響を及ぼすことが示唆された。Frontiers in Psychiatry誌2022年5月17日号の報告。  日本の医療機関69施設の統合失調症患者2,027例を対象に、退院時治療薬に関する横断的レトロスペクティブ調査を実施。抗コリン薬と向精神薬使用との関連を調査した。各病院を抗コリン薬の処方率に応じて、低、中、高の3グループに分類し、抗コリン薬処方率と抗精神病薬使用との関連を分析した。

入院うつ病患者の自殺リスクに対する不眠症の影響

 不眠症は、うつ病に関連する重要な症状であり、自殺のリスク因子の1つであるといわれている。いくつかの研究によると、うつ病患者では不眠症と自殺行動との関連が示唆されているが、入院患者の大規模サンプルによる評価は十分に行われていなかった。米国・ハーバード大学医学大学院のZeeshan Mansuri氏らは、入院うつ病患者を対象に不眠症の有無による自殺リスクの評価を行った。その結果、うつ病患者の不眠症は自殺リスクと有意に関連することが示唆されたことから、不眠症を合併しているうつ病患者では、自殺行動をより注意深くモニタリングする必要があると報告した。Behavioral Sciences誌2022年4月19日号の報告。