救急科の海外論文・最新ニュースアーカイブ

軽症例が多かった2023年の救急搬送の現状/消防庁

 総務省消防庁は、1月24日に「令和6年版 救急・救助の現況」を公表した。2023(令和5)年の救急出動件数(消防防災ヘリコプターを含む)は764万987件、搬送人員は664万3,379人だった。また、現場到着所要時間の平均は約10.0分だった。  救急出動件数は全体で764万987件(対前年比40万8,869件増、5.7%増)、搬送人員は664万3,379人(対前年比42万4,080人増、6.8%増)で前年と比較して救急出動件数、搬送人員ともに増加した。

とくに注意すべき血液検査のパニック値とは?死亡事例の分析と提言~医療安全調査機構

 日本医療安全調査機構(医療事故調査・支援センター)は、血液検査パニック値が関与していた死亡事例の分析を実施し、事故防止のための提言(医療事故の再発防止に向けた提言 第20号)を公表した(2024年12月)。パニック値とは「生命が危ぶまれるほど危険な状態にあることを示唆する異常値」とされ、緊急異常値や緊急報告検査値などとも呼ばれる。今回、死亡に至った過程で血液検査パニック値が関与していた12事例が分析対象とされ、分析を基に5つの提言が示された。

小児の急性単純性虫垂炎、抗菌薬は切除に非劣性示せず/Lancet

 小児の急性単純性虫垂炎に対する治療について、抗菌薬投与の虫垂切除術に対する非劣性は示されなかった。米国・Children's MercyのShawn D. St. Peter氏らが、カナダ、米国、フィンランド、スウェーデンおよびシンガポールの小児病院11施設で実施した無作為化非盲検並行群間比較試験の結果を報告した。合併症のない虫垂炎に対して、手術治療よりも非手術的治療を支持する文献が増加していることから、研究グループは抗菌薬投与の虫垂切除術に対する非劣性を検討する試験を行った。Lancet誌2025年1月18日号掲載の報告。

高齢者救急、緩和ケア開始は入院率を改善するか/JAMA

 生命を脅かす重篤な疾患を呈し救急診療部(ED)を受診した高齢患者に対する、複数要素介入を取り入れた緩和ケア(Primary Palliative Care for Emergency Medicine:PRIM-ER)の開始は、入院率を改善せず、介入後の医療活用状況や短期死亡率にも影響を及ぼさないことが、米国・スローン・ケタリング記念がんセンターのCorita R. Grudzen氏らが実施した「PRIM-ER試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌オンライン版2025年1月15日号に掲載された。

敗血症、thymosinα1は死亡率を改善するか/BMJ

 敗血症の成人患者の治療において、プラセボと比較して免疫調整薬thymosinα1は、28日以内の全死因死亡率を低下させず、90日全死因死亡率や集中治療室(ICU)内死亡率も改善しないが、60歳以上や糖尿病を有する患者では有益な効果をもたらす可能性があり、重篤な有害事象の発生率には両群間に差を認めないことが、中国・中山大学のJianfeng Wu氏らTESTS study collaborator groupが実施した「TESTS試験」で示された。研究の詳細は、BMJ誌2025年1月15日号で報告された。  TESTS試験は、thymosinα1は敗血症患者の死亡率を低減するかの検証を目的とする二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2016年9月~2020年12月に中国の22施設で患者を登録した(Sun Yat-Sen University Clinical Research 5010 Programなどの助成を受けた)。

ベースアップ評価料の届出様式を大幅に簡素化/日医

 日本医師会(会長:松本 吉郎氏[松本皮膚科形成外科医院 理事長・院長])は、1月22日に定例会見を開催した。  はじめに松本氏が阪神・淡路大震災から30年を迎え、これまでの医師会の活動を振り返った。この大震災から得た教訓が現在のさまざまな災害対策の基礎となったこと、JMATの発足とともにチーム運営のためにさまざまな研修や関係政府機関や学会とも連携を進めていることなどを説明し、「南海トラフ地震に備え、医師会では地域の医師会とともに今後も取り組んでいく」と災害対策への展望を語った。

敗血症へのβ-ラクタム系薬+VCM、投与順序で予後に差はあるか?

 敗血症が疑われる患者への治療において、β-ラクタム系薬とバンコマイシン(VCM)の併用療法が広く用いられている。しかし、β-ラクタム系薬とVCMの投与順序による予後への影響は明らかになっていない。そこで、近藤 豊氏(順天堂大学大学院医学研究科 救急災害医学 教授)らの研究グループは、β-ラクタム系薬とVCMの併用による治療が行われた敗血症患者を対象として、投与順序の予後への影響を検討した。その結果、β-ラクタム系薬を先に投与した集団で、院内死亡率が低下することが示唆された。本研究結果は、Clinical Infectious Diseases誌オンライン版2024年12月5日号に掲載された。

敗血症が疑われる入院患者に対するバイオマーカーガイド下の抗菌薬投与期間(解説:寺田教彦氏)

本研究は、敗血症が疑われる重篤な入院成人患者に対して連日血液検査を行い、バイオマーカー(プロカルシトニン[PCT]またはC反応性タンパク質[CRP])のモニタリングプロトコールに基づいた抗菌薬中止に関する助言を臨床医が受けた際の、標準治療と比較した有効性(総抗菌薬投与期間)と安全性(全死因死亡率)を評価している。本論文の筆者は、ジャーナル四天王「敗血症疑い患者の抗菌薬の期間短縮、PCTガイド下vs.CRPガイド下/JAMA」にもあるように、有効性(無作為化から28日までの総抗菌薬投与期間)はDaily PCTガイド下プロトコール群(以下PCT群)で認め(期間短縮)、Daily CRPガイド下プロトコール群(以下CRP群)では有意差なし。安全性(無作為化から28日までの全死因死亡)はPCT群で非劣性だが、CRP群では非劣性の確証は得られなかった、と結論付けている。

qSOFAによる敗血症アラートで院内死亡率が低下/JAMA

 病棟入院患者では、敗血症スクリーニングを行わない場合と比較して、quick Sequential Organ Failure Assessment(qSOFA)スコアを用いた電子的敗血症スクリーニングは、90日院内死亡率を有意に低下させ、昇圧薬治療や多剤耐性菌の発現を減少させることが、サウジアラビア・Ministry of National Guard-Health Affairs(MNG-HA)のYaseen M. Arabi氏らが実施した「SCREEN試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2024年12月10日号に掲載された。

2025年に医師会が掲げる4つの課題/日医

 日本医師会(会長:松本 吉郎氏[松本皮膚科形成外科医院 理事長・院長])は、定例会見を開催し、2025年の医師会の課題を語った。  新年の挨拶として松本氏は、年末年始にインフルエンザの患者の診療対応にあたった診療所の医師、医療者などに感謝の意を示すとともに、地域によっては予想を超えるインフルエンザ患者が来院したことを明らかにした。また、依然としてインフルエンザの検査キット、注射薬、治療薬などが不足していること、引き続き厚生労働省と協議し、各メーカーに増産用を要請していることを述べるとともに、引き続き、マスクの着用や手指衛生など感染対策の実施と医療機関にはなるべく診療時間内に診療を受診するように述べた。