神経内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:21

アルツハイマー病に対する薬物療法~FDA承認薬の手引き

 近年、認知症の有病率は高まっており、患者および介護者のQOLを向上させるためには、認知症の病態生理学および治療法をより深く理解することが、ますます重要となる。神経変性疾患であるアルツハイマー病は、高齢者における健忘性認知症の最も一般的な病態である。アルツハイマー病の病態生理学は、アミロイドベータ(Aβ)プラークの凝集とタウ蛋白の過剰なリン酸化に起因すると考えられる。以前の治療法は、非特異的な方法で脳灌流を増加させることを目的としていた。その後、脳内の神経伝達物質の不均衡を是正することに焦点が当てられてきた。そして、新規治療では、凝集したAβプラークに作用し疾患進行を抑制するように変わってきている。しかし、アルツハイマー病に使用されるすべての薬剤が、米国食品医薬品局(FDA)の承認を取得しているわけではない。インド理科大学院Ashvin Varadharajan氏らは、研究者および現役の臨床医のために、アルツハイマー病の治療においてFDAが承認している薬剤を分類し、要約を行った。Journal of Neurosciences in Rural Practice誌2023年10~12月号の報告。

わさびは高齢者の記憶力を向上させる

 わさびには記憶力を高める効果がある可能性が、健康な少人数のボランティアを対象とした日本の研究で示唆された。論文の筆頭著者である、人間環境大学総合心理学部教授の野内類氏は、「わさびが健康に良いことは、先行の動物実験で明らかになっていた。それでも、今回の研究で示されたわさびの記憶力向上効果の大きさには、本当に驚かされた」と述べている。野内氏と東北大学加齢医学研究所教授の川島隆太氏を中心とする研究グループによるこの研究結果は、「Nutrients」に10月30日掲載された。

アルツハイマー病患者のイライラや興奮の原因は脳内炎症?

 アルツハイマー病患者にイライラ(易刺激性)や不安、興奮といった症状が現れることはよく知られているが、その原因は、アミロイドβやタウタンパク質などの従来から知られているアルツハイマー病のマーカーではなく脳内の炎症である可能性が、新たな研究で示唆された。米ピッツバーグ大学医学部のCristiano Aguzzoli氏らによるこの研究の詳細は、「JAMA Network Open」に11月27日掲載された。  Aguzzoli氏らピッツバーグ大学の研究グループは、2023年5月に、過度の脳内炎症がアルツハイマー病発症の重要な要因であり、脳内炎症により高齢者でのアルツハイマー病の発症リスクが高いかどうかを予測できる可能性があることを明らかにしていた。

処方薬の片頭痛治療効果は市販のイブプロフェンより高い?

 片頭痛に苦しんでいるなら、イブプロフェンを買いに行くのではなく、処方薬の使用についてかかりつけの医師に相談する方が良いかもしれない。米メイヨー・クリニックの神経専門医Chia-Chun Chiang氏らは、トリプタン製剤やエルゴタミン製剤、制吐薬などの処方薬は、イブプロフェンと比べて急性期の片頭痛に対する効果が高いことが示されたとする研究結果を、「Neurology」に11月29日発表した。Chiang氏は、「片頭痛の治療では、トリプタン製剤を重度の頭痛発作に対する使用にとどめておくよりも早期の段階から使用を考慮すべきことが確認された」と説明している。

日本の片頭痛治療におけるフレマネズマブのリアルワールドエビデンス

 抗CGRP抗体であるフレマネズマブのみに焦点を当てたアジアにおけるリアルワールド研究は、これまでほとんど行われていなかった。慶応義塾大学の大谷 星也氏らは、日本のリアルワールドにおけるフレマネズマブの有効性および安全性を評価するため、本研究を実施した。その結果から、日本人の片頭痛予防に対するフレマネズマブの有効性および安全性が確認され、フレマネズマブ治療により約半数の患者において片頭痛関連症状の改善が認められたことを報告した。BMC Neurology誌2023年11月14日号の報告。

赤ワインで頭痛が生じる人がいるのはなぜ?

 ホリデーシーズンには数え切れないほどのコルク栓が開けられ、たくさんのワインが飲まれることになるが、ほんの少しの飲酒でもひどい目にあう人がいる。それは、たとえ小さなグラス1杯でも赤ワインを飲んだときにだけ頭痛が起きる人だ。こうした中、米カリフォルニア大学デービス校ブドウ栽培・醸造学部のApramita Devi氏らが、このような「赤ワイン頭痛」が引き起こされる原因の解明につながり得る研究結果を、「Scientific Reports」に11月20日発表した。それによると、果物や野菜に含まれているフラボノールの一種であるケルセチンが、赤ワイン頭痛を引き起こしている可能性があるという。

ヘディングが脳機能の低下に関連

 サッカーのヘディングの危険性を示すエビデンスが増え続けている。米コロンビア大学放射線学教授および生物医学工学分野のMichael Lipton氏らは、サッカーのヘディングにより測定可能な脳の構造が変化し、機能が低下することを示した2件の研究結果を、北米放射線学会年次総会(RSNA 2023、11月26~30日、米シカゴ)で発表した。  Lipton氏は、「脳損傷全般、特に、サッカーのヘディングが長期にわたって脳に悪影響を与える可能性については、世界的に大きな懸念がもたれている。そうした懸念の大部分は、若年期の脳の変化が中年期以降の神経変性や認知症のリスクをもたらす可能性に関係している」と説明している。

中年期日本人のBMIや体重変化と認知症リスク

 中年期のBMIや体重変化と認知症発症リスクとの性別特異的相関性に関するエビデンスは、とくにアジア人集団において不足している。高知大学の田代 末和氏らは、40~59歳の日本人を対象にBMIや体重変化と認知症発症リスクとの関連を調査した。その結果、中年期の肥満は認知症発症のリスク因子であり、中年後期の体重減少は体重増加よりも、そのリスクを高める可能性があることを報告した。Alzheimer's & Dementia(Amsterdam、Netherlands)誌2023年11月23日号の報告。

内臓脂肪はアルツハイマー病の発症リスクを高める?

 腹部を中心とした内臓の周りに脂肪が多くついている中高年は、後年、アルツハイマー病を発症するリスクの高いことが、新たな研究で示唆された。研究では、表面からは見えないこの脂肪(内臓脂肪)が脳の変化に関係しており、その変化は、アルツハイマー病の最初期の症状である記憶障害が生じる最長で15年前に現れ始めることが示されたという。米ワシントン大学医学部マリンクロット放射線医学研究所のMahsa Dolatshahi氏らによるこの研究結果は、北米放射線学会年次総会(RSNA 2023、11月26~30日、米シカゴ)で発表された。

認知症の評価に視覚活用、アイトラッキングシステムとは

 早期認知症発見のためのアイトラッキング技術を用いた「汎用タブレット型アイトラッキング式認知機能評価アプリ」の神経心理検査用プログラム『ミレボ』が2023年10月に日本で初めて医療機器製造販売承認を取得した。発売は24年春を予定している。この医療機器は日本抗加齢協会が主催する第1回ヘルスケアベンチャー大賞最終審査会(2019年開催)で大賞を取った武田 朱公氏(大阪大学大学院医学系研究科 臨床遺伝子治療学)の技術開発を基盤として同第5回大賞(10月27日開催)を受賞した高村 健太郎氏(株式会社アイ・ブレインサイエンス)らが産業化に成功したもの。