DSM-5分類の大うつ病性障害(MDD)の診断に用いる9つの症状は、背景にある障害の指標と置き換えることが可能であり、すべて同様のリスク因子をもっていると推測されている。ドイツ・ベルリン自由大学のE. I. Fried氏らは、低~高レベルのうつ病を有する母集団コホートを用いて、MDDの診断に用いる9つの症状と、うつに関する7つのリスク因子との関連を評価した。その結果、うつのリスク因子が症状に多彩な影響を及ぼすことが明らかとなり、MDDの診断に際して“うつ”のリスク因子も加味することの重要性を示唆した。Psychological Medicine誌オンライン版2013年12月号の掲載報告。
医学生1,289例を対象とし、DSM-5分類のMDDの診断に用いる9つの症状を、Patient Health Questionnaire(PHQ-9)を用いて評価するとともに、うつに関する7つのリスク因子(MDDの既往、家族歴、性行為、小児時代のストレス、神経症傾向、就労時間、ストレスの多い生活)を、インターンシップ前からインターンシップ期間を通した長期研究で評価した。そして、症状によってリスク因子が異なるかどうか、また症状間の不均一性と潜在的なうつ要素との関連を検討した。
主な結果は以下のとおり。
・MDDのすべての症状は、レジデント研修中に有意に悪化した。
・「うつの既往」「小児時代のストレス」「性行為」および「ストレスの多い生活」の4つのリスク因子は、PHQ-9の特定の下位項目悪化の予測因子であった。
・一方、「神経症傾向」と「就労時間」は、程度はさまざまであるが、すべての症状において悪化の予測因子であった。
・MDDの家族歴は、いずれの症状に関しても悪化の予測因子ではなかった。
・潜在的なうつ要素で調整した後も、症状間の強い不均一性がみられた。
・リスク因子は、DSMによるうつ病の症状にさまざまな影響を及ぼすことが示された。著者は、「病因学的に症状は不均一であることから、うつの診断に加えて個々の状況を考慮することは、症状総スコアの後ろに隠されている重要な知見提供に結びつく可能性がある」と述べている。
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