認知症患者が生活する環境デザインは納得できるもの、そして患者がパーソナルアイデンティティを強く保ち、彼らの能力を維持していけるようなものであるべきである。これまでは認知症患者がうまく生活することに重点を置いてきたため、終末期が近い患者の物理的環境支援へのニーズや希望が考慮されてこなかった。オーストラリア・ウーロンゴン大学のRichard Fleming氏らは、認知症患者が良好なQOLを保ちつつ人生の最期を迎えるのに適切な環境を明らかにするため、認知症患者、介護家族、医療従事者らからなるフォーカスグループインタビューを行った。その結果、環境デザインとして求められる15の特性についてコンセンサスが得られたことを発表した。BMC Palliative Care誌オンライン版2015年5月12日号の掲載報告。
本研究では、フォーカスグループインタビューとデルファイ法とを組み合わせ、認知症患者、介護家族、専門家が、終末期に向けて良好なQOL維持をサポートするために重要とする物理的環境について調査した。
研究グループは、オーストラリア東海岸に位置する3都市で、文献レビューに基づくディスカッションガイドを用いて3つのフォーカスグループインタビューを実施。フォーカスグループは、最近遺族となった認知症患者の介護家族(FG1)、認知症患者と認知症の介護家族(FG2)、終末期あるいは終末期に近づいている認知症患者の診療にあたる医療従事者(FG3)の3つで、フォーカスグループの会話は参加者の同意を得て録音した。
オーディオファイルを基に速記録を作成し、人生の最期に向けて望ましい生活を提供するという目的の達成を促す環境的特性を判断するため、テーマ分析を実施した。フォーカスグループの録音記録分析より引き出されたデザイン特性リストを、認知症の各分野に携わるさまざまな専門家に確認してもらい、妥当性についてのコンセンサスを探り、終末期に近い認知症患者にとってふさわしい環境デザインの特性を判断した。
主な結果は以下のとおり。
・3つのフォーカスグループへの参加者は18人であった(認知症患者2人、現在介護をしている家族、あるいは最近まで介護していた遺族介護者11人、医療従事者5人)。
・重要だと考える環境に関する事項について、意見の相違が認められた。
・認知症患者および介護家族は、関与全般を通しての快適性、心の安らぎ、穏やかな環境、プライバシーと尊厳、そして連続的な技術の活用が重要であるとした。
・医療従事者らがとくに重要としたテーマは、介護業務を容易にするデザインと、制度面での業務への影響であった。
・認知症の各分野に関わる専門家21人が、フォーカスグループの発言記録から分析された、環境デザインに求められる特性についてのコンセンサスを得るべく検討を行い、15項目の特性で意見が一致し認定した。
・15の特性は、動くことができる認知症患者に対するデザイン方針と対応しているが、感覚的な関与により重点が置かれていた。
結果を踏まえ、著者らは「これら15の特性を介護の一環として考慮することにより、優れた介護の実現をサポートし、認知症患者に最後まで良い人生を提供し、また介護家族にも患者と共に生きる最期の日までより有意義な体験を与えることができるものと考える」とまとめている。
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