選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)は、認知症の神経変性プロセスに影響を及ぼし、認知機能を高める可能性があるといわれている。英国・Royal Infirmary of EdinburghのHelen E Jones氏らは、いかなるタイプの認知症者でも認知実行や気分、機能に対しSSRIが影響を与えるのかを検討した。Age and ageing誌オンライン版2016年4月7日号の報告。
ALOIS(ALzheimer's and cOgnitive Improvement Studies register)に基づき、2013年4月および2015年1月のアップデートにおいて、認知アウトカムを示した認知症者に対するSSRIについての無作為化プラセボ対照比較試験よりデータを抽出した。データには、認知、興奮、気分、ADL、有害事象が含まれた。治療終了時の統計が算出された。
主な結果は以下のとおり。
・選択基準を満たした試験12件(1,174例)のうち、7件(710例)から認知に関するメタ分析のデータが得られた。
・治療終了後のMMSEスコアに差はなく、平均差(MD)は0.28(95%CI:-0.83~1.39)であった(6件、470例)。
・MMSEスコアの変化には小さな改善があり、MDは0.53(95%CI:-0.07~1.14)であった(3件、352例)。
・それ以外の研究では、認知の改善は認められなかった。
・治療終了後の気分(4件、317例、標準平均差[SMD]:-0.10、95%CI:-0.39~0.2)、興奮(3件、189例、SMD:-0.01、95%CI:-0.86~0.83)、ADL(4件、336例、SMD:-0.15、95%CI:-0.45~0.15)に対するSSRIのベネフィットは統計学的に有意ではなかった。
・両群間の死亡率に差はなかった。
・研究の質については、不十分と懸念されるデータが含まれていた。
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(鷹野 敦夫)