酒さは、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMPs)や抗菌性ペプチド(AMPs)の発現上昇が観察される慢性炎症性皮膚疾患である。とくに、炎症、MMPs、AMPsは、アルツハイマー病(AD)などの認知症を含む神経変性疾患の病因とも関連している。いくつかの臨床観察に基づき、デンマーク・コペンハーゲン大学のAlexander Egeberg氏らは、ADを含むデンマークのレジスタより、酒さと認知症との関連を調査した。Annals of neurology誌2016年6月号の報告。
1997年1月1日から2012年12月31日の18歳以上のデンマーク市民のデータを、行政のレジスタを介し、個人レベルで結合した。Cox回帰は、未調整および調整ハザード比(HRs)を計算するために使用した。
主な結果は以下のとおり。
・本研究は、酒さ患者8万2,439例を含む、559万1,718例で構成された。
・研究期間中に、何らかの認知症を発症した患者は9万9,040例、そのうち2万9,193例はADと診断された。
・酒さ患者における認知症の調整HRsは1.07(95%CI:1.01~1.14)、ADの調整HRsは1.25(95%CI:1.14~1.37)であった。
・性別による層別化解析の結果、ADのHRsは、女性1.28(95%CI:1.15~1.45)男性1.16(95%CI:1.00~1.35)であった。
・研究登録時の年齢による層別化解析の結果、ADリスクは60歳以上でのみ有意に増加した(調整HR:1.20、95%CI:1.08~1.32)。
・病院皮膚科医による酒さの診断を有する患者に限った場合、認知症の調整HRsは1.42(95%CI:1.17~1.72)、ADの調整HRsは1.92(95%CI:1.44~2.58)であった。
著者らは「酒さは認知症、とくにADと関連が認められており、酒さ高齢患者における認知機能障害の増加と関連している可能性がある」とまとめている。
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