冠動脈CT-FFR、安定狭心症の管理を改善するか

提供元:ケアネット

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公開日:2016/08/15

 

 胸痛患者の評価方法にはさまざまな選択肢があり、最適な評価に関して議論が分かれる。そのうえ、冠動脈造影を実施しても、冠動脈狭窄が認められないという結果に終わることが多い。

 CT血管造影(CTA)を用いた血流予備量比(FFR)の測定(FFRCT)は、冠動脈造影の際に実施する侵襲的なFFRに対して感度・特異度ともに高く、有用性が指摘されている。PLATFORM(Prospective Longitudinal Trial of FFRCT: Outcome and Resource Impacts)試験では、FFRCTを前向きに適応した結果、冠動脈造影が予定されていた患者群で、予定されていた冠動脈造影の60%をキャンセルすることができた。また、冠動脈造影で狭窄の認められなかった症例の割合が73%から12%に減少し(無駄な冠動脈造影が減少した)、冠動脈造影予定群の90日間の費用が有意に低かった。

 Duke University School of MedicineのPamela S. Douglas氏らは、PLATFORM試験の12ヵ月までの追跡結果をまとめ、FFRCTを用いた場合の1年後の臨床的、経済的転帰およびQOLを評価した。欧州11施設が参加した前向き連続コホート研究で、Journal of the American College of Cardiology誌2016年8月号に発表された。

584例の新規発症狭心症患者を連続して登録

 584例の患者を担当医の評価によって冠動脈造影予定群と非侵襲的検査予定群に割り付けた後、さらに各群を予定された検査(侵襲的冠動脈造影または非侵襲的検査)とCTAに割り付けた。CTAに割り付けた場合、冠動脈造影予定群では全員、非侵襲的検査予定群ではCTAで30%以上の狭窄が認められた場合、予定された検査の前にFFRCTを実施した。

 584例中581例(99.5%)が1年間の追跡を完了した。評価項目を主要心イベント(MACE:死亡、心筋梗塞、予定外の再灌流療法)、総医療費およびQOLとした。

冠動脈造影予定群では、FFRCT群の医療費が33%安い

 平均年齢は61歳、検査前の冠動脈疾患保有の確率は平均で49%であった。1年後の時点でMACEの発生はまれであり、冠動脈造影予定群の従来ケア群、FFRCT群で各2例、非侵襲的検査予定群では従来ケア群の1例でMACEが発生した。冠動脈造影予定群では、FFRCT群の平均医療費が従来ケア群と比べて33%安かった(FFRCT:8,127ドル vs. 従来ケア:1万2,145ドル、p<0.0001)。非侵襲的検査予定群では、FFRCTの費用をゼロとした場合の平均医療費に差がみられなかったが(FFRCT:3,049ドル vs. 従来ケア:2,579ドル、p=0.82)、FFR CTとCTAの費用を同等とするとFFRCT群が高かった。

CTAとFFRCTに基づく治療、臨床成績とQOLが同等でコスト安

 安定狭心症で冠動脈造影を予定している患者に対するCTAと選択的FFRCTに基づく治療は、1年後のフォローアップ時、結果として冠動脈に狭窄が認められない冠動脈造影を有意に減らし、臨床成績、QOLも同等でかつ医療費も安いという結果が示された。報告者らはその一方で、非侵襲的検査が予定された患者では臨床での心イベントの頻度が低いため、医療費やQOLの比較が難しく、大規模な試験が必要であるという結論を示している。