正常組織で正確に発がんリスク診断。国がんが測定法開発

提供元:ケアネット

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公開日:2018/02/02

 

 国立研究開発法人国立がん研究センター(理事長:中釜斉、東京都中央区)は2018年1月23日、これまで測定困難であった正常組織に蓄積された微量の点突然変異の測定法の開発に成功したと発表。この新たな測定法を用いて正常な胃と食道での点突然変異とDNAメチル化異常両者の蓄積量を測定し、発がんリスクとの関連を調べた。

 研究の結果、発がんリスクに応じて点突然変異とDNAメチル化異常の両者または一方の蓄積が増加すること、胃と食道ではその重要性が異なることを発見した。さらに、この両者測定により、正確な発がんリスクの予測が可能であることがわかった。

 本研究は、国立がん研究センター研究所エピゲノム解析分野(牛島俊和分野長)の研究グループによるもので、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の革新的がん医療実用化研究事業および次世代がん医療創生研究事業の支援を受け行った。また、研究成果は米国科学アカデミーの機関誌Proceeding of National Academy of Science誌オンライン版201年11月22日号に掲載された。

 対象は、発がんリスクほぼなし:食道30人(男20人、女10人)、胃32人(男18人、女14人)。リスクややあり:食道32人(男32人、女0人)、胃32人(男22人、女10人)。リスク高:食道31人(がん罹患 男31人、女0人)、胃32人(がん罹患 男25人、女7人)であった。

発がんリスクの上昇に応じて点突然変異とDNAメチル化異常の両者または一方の蓄積が増加
 食道では発がんリスクが高いほど、点突然変異とDNAメチル化異常の両者とも蓄積量が増加することを確認した。一方、胃では発がんリスクが高いほどDNAメチル化異常の蓄積量は増加したが、点突然変異の増加と発がんの関連は確認できなかった。

点突然変異やDNAメチル化異常の上昇はライフスタイルを反映
 食道がんの場合、喫煙、飲酒、ビンロウ(噛みタバコ)使用が、誘発要因として知られているが、これらは突然変異とDNAメチル化異常の両者を誘発する。今回の食道がんにおける点突然変異とDNAメチル化異常が同程度に重要という結果と合致する。胃がんの場合、その誘発要因としてピロリ菌感染歴が知られているが、ピロリ菌感染は胃粘膜に強い慢性炎症を誘発して、DNAメチル化異常を強力に誘発する。今回の胃がんにおけるDNAメチル化異常が重要という結果と合致する。

点突然変異とDNAメチル化異常の蓄積を組み合わせることで正確なリスク診断へ
 これまでは、正常な組織に蓄積したDNAメチル化異常のみが測定可能であったが、点突然変異と組み合わせることにより発がんリスク予測精度がより向上することが考えられる。食道がんの場合、点突然変異とDNAメチル化異常を組み合わせると、発がんリスク予測の感度・特異度が非常に高くなった。胃がんの場合、DNAメチル化異常のみの場合でも相当に高く、点突然変異追加の効果は不明確であった。

 本研究成果により、正常組織に蓄積した点突然変異とDNAメチル化異常の両者を測定し、検討することで、より正確に発がんリスクの診断が可能となることが示された。今後さまざまながんでライフスタイルに応じた両者の異常の蓄積を検討することで、さらに多くのがんリスク診断の発展が期待される。

■参考
国立がん研究センタープレスリリース
Yamashita S, et al. Proc Natl Acad Sci U S A. 2018 Jan 22. [Epub ahead of print]

(ケアネット 細田 雅之)