肥大型閉塞性心筋症へのアルコール中隔アブレーションの長期成績【Dr.河田pick up】

提供元:ケアネット

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公開日:2019/01/08

 

アルコールによる中隔アブレーションは安全か?
 症候性の肥大型閉塞性心筋症(HOCM)患者に対する非薬物療法としては、外科的中隔心筋切除術とアルコールによる中隔アブレーション(経皮的中隔心筋焼灼術;PTSMA)が挙げられる。外科的中隔心筋切除術はPTSMAに比べて成功率が高く、効果が現れるのも早い。一方PTSMAは開心術に比べると低侵襲ではあるが、冠動脈解離、房室ブロックや心室性不整脈を起こす可能性があり、若年者では外科的中隔心筋切除術のほうが好まれる。しかしながら、PTSMA後の長期的な効果や成績に関する報告は少ない。症例数が豊富なドイツのグループから、PTSMA後の長期成績が報告された。Angelika Batzner氏らによるJournal of American College of Cardiology誌12月号掲載の報告。

 HOCM患者において、アルコールによる中隔心筋の梗塞が、心疾患による死亡を増やすのではないかと議論されてきた。この研究は、HOCM患者に対してエコーガイド下で行われたPTSMAの長期成績を明らかにする目的で行われた。

対象は952例のHOCM患者、大半がNYHAクラスIII~IV
 2000年5月から2017年6月までに952例の患者(55.7±14.9歳、男性:59.2%、NYHAクラス III~IV:73.3%、失神:50.3%、突然死の家族歴:10.3%)に対してPTSMAが行われた。臨床症状のフォローが全症例で行われ、平均フォローアップ期間は6.0±5.0年であった。

5年後の生存率95.8%、心臓関連イベント非発生率は98.9%
 平均で2.1±0.4ccのアルコールが注入され、クレアチニンキナーゼ(CK)の最高値は872±489U/Lであった。2例(0.2%)が術後3日後と33日後に死亡した。100例(10.5%)の患者でペースメーカーが植め込まれた。急性期エコーでの圧格差は、安静時で63.9±38.2 mmHgから33.6±29.8mmHgに減少し、バルサルバ法施行時には104.6±44.0mmHgから56.5±41.0mmHgへ減少した(いずれもp<0.0001) 。フォローアップ期間中、164例(17.2%)があらかじめ計画された段階的な手技としてアブレーションを再度受けた。18例(1.9%)が中隔心筋切除術を受け、49例(5.1%)に植込み型除細動器が挿入された。死亡は70例で、うち非心臓疾患に伴う死亡が50例、脳梗塞関連死亡が6例、心臓関連死亡は14例であった。推定5年生存率は95.8%で、心血管イベント非発生率は98.6%、心臓関連イベント非発生率は98.9%であった。10年後におけるこれらの確率は88.3%、96.5%、97.0%で、15年後では79.7%、92.3%、96.5%であった。

 PTSMAが安全に施行され、症状を改善に導き、かつ良好な長期生存率であることを証明する結果が示された。PTSMAは外科的中隔心筋切除術の合理的な代替手段となり得ると考えられる。外科的中隔心筋切除術とPTSMAの無作為比較試験が行われることが理想であるが、比較的発生率が低い疾患であり、術者の技術による差も大きく、無作為比較試験を行うことは難しいと考えられる。術者の経験や技量、症例の特徴に応じて、適切な手技が選択されるべきであろう。

(Oregon Heart and Vascular Institute 河田 宏)

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