抗精神病薬で治療されている精神疾患患者に対するアリピプラゾール初回使用に関連した潜在的な精神医学的悪化を懸念する報告がいくつかあるが、とくに長期的なアリピプラゾール使用が、重篤な精神医学的イベントリスクを増大させるかは、よくわかっていなかった。カナダ・Jewish General HospitalのFrancois Montastruc氏らは、他の抗精神病薬で治療されていた精神疾患患者に対するアリピプラゾールへの切り替えまたは追加(アリピプラゾール群)が、アリピプラゾール以外の抗精神病薬への切り替えまたは追加(非アリピプラゾール群)と比較し、重篤な精神医学的イベントと関連性が認められるかについて評価を行った。JAMA Psychiatry誌オンライン版2019年1月30日号の報告。
2005年1月1日~2015年3月31日の期間に、集団ベースコホート研究を実施した。Hospital Episodes Statistics(HES)とOffice for National Statistics(ONS)死亡率データベースにリンクされた世界最大の電子データベースの1つである、英国Clinical Practice Research Datalink(CPRD)よりデータを収集した。抗精神病薬新規使用患者の基本コホートにおいて、傾向スコアマッチングを使用し、アリピプラゾール群と非アリピプラゾール群に1:1の割合で割り付けた。すべての患者について、精神科治療不良、コホート参加から1年、自殺以外の原因による死亡、データベースの登録終了、試験期間終了(2016年3月31日)のいずれかに至るまで、フォローアップを行った。非アリピプラゾール群と比較したアリピプラゾール群の精神科治療不良の重篤なイベント(精神医学的入院、自傷行為、自殺)のハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)の推定には、Cox比例ハザード回帰モデルを用いた。傾向スコアのマッチングに加えて、すべてのモデルは、年齢、コホート登録前6ヵ月間の精神医学的入院または自傷行為の件数、コホート登録前の他の抗精神病薬数、Index of Multiple Deprivationの五分位数で調整された。
主な結果は以下のとおり。
・対象は、アリピプラゾール群1,643例(女性の割合:57.8%[949例]、平均年齢:42.1±16.8歳)、非アリピプラゾール群1,643例(女性の割合:53.0%[871例]、平均年齢:42.4±17.1歳)。
・フォローアップ期間の2,692患者年のうち、重篤な精神科治療不良は391件であり、粗発生率は100患者年あたり14.52件(95%CI:13.16~16.04)であった。
・ アリピプラゾール群は、非アリピプラゾール群と比較し、精神科治療不良率(HR:0.87、95%CI:0.71~1.06)、精神医学的入院率(HR:0.85、95%CI:0.69~1.06)、自傷行為または自殺の発生率(HR:0.96、95%CI:0.68~1.36)の増加と関連が認められなかった。
・結果は、いくつかの感度分析にわたり一貫していた。
著者らは「他の抗精神病薬で治療されていた精神疾患患者に対するアリピプラゾールへの切り替えまたは追加は、アリピプラゾール以外の薬剤と比較し、精神医学的入院、自傷行為、自殺との関連は認められなかった。これらの結果は、大規模な観察研究における追試の正当性を示すものである」としている。
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(鷹野 敦夫)