米メイヨークリニックのAaron S. Mansfield氏は、ペムブロリズマブに関する臨床試験であるKEYNOTE-001、010、 024、042の統合解析結果から、脳転移があるPD-L1陽性非小細胞肺がん(NSCLC)に対するペムブロリズマブ単独療法は、脳転移なしと同等以上の予後改善効果があると欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で発表した。
統合解析に用いた4試験(KEYNOTE-001、010、024、042)のうちKEYNOTE-001のみが単群試験で、その他はいずれも化学療法との比較試験である。
主な結果は以下のとおり。
・統合解析による全症例数は3,170例。うち脳転移ありは293例、脳転移なし2,877例であった。
・PD-L1 TPS≧50%の脳転移あり症例の全生存期間(OS)中央値はペムプロリズマブ群が19.7ヵ月(95%信頼区間[CI]:12.1~31.4)、化学療法群が9.7ヵ月(95%CI:7.2~19.4)であった(ハザード比[HR]:0.78、95%CI:0.71~0.85)。
・PD-L1 TPS≧50%の脳転移なし症例でのOS中央値はペムブロリズマブ群が19.4ヵ月(95%CI:17.0~22.4)、化学療法群が11.7ヵ月(95%CI:10.1~13.1)であった(HR:0.66、95%CI:0.58~0.76)であった。
・PD-L1 TPS≧1%の脳転移あり症例でのOS中央値はペムブロリズマブ群が13.4ヵ月(95%CI:10.4~18.0)、化学療法群が10.3ヵ月(95%CI:8.1~13.3)であった(HR:0.83、95%CI:0.62~1.10)であった。
・PD-L1 TPS≧1%の脳転移なし症例でのOS中央値はペムブロリズマブ群が14.8ヵ月(95%CI:13.4~16.1)、化学療法群が11.3ヵ月(95%CI:10.2~12.0)であった(HR:0.78、95%CI:0.71~0.85)であった。
・PD-L1 TPS≧50%の脳転移あり症例での無増悪生存期間(PFS)中央値はペムブロリズマブ群が4.1ヵ月(95%CI:2.3~10.6)、化学療法群が4.6ヵ月(95%CI:3.5~8.4)であった(HR:0.70、95%CI:0.47~1.03)。
・PD-L1 TPS≧50%の脳転移なし症例でのPFS中央値はペムブロリズマブ群が6.5ヵ月(95%CI:6.1~8.1)、化学療法群が6.1ヵ月(95%CI:5.8~6.2)であった(HR:0.69、95%CI:0.62~0.78)であった。
・PD-L1 TPS≧1%の脳転移あり症例でのPFS中央値はペムブロリズマブ群が2.3ヵ月(95%CI:2.1~3.9)、化学療法群が5.2ヵ月(95%CI:4.2~8.3)であった(HR:0.96、95%CI:0.73~1.25)であった。
・PD-L1 TPS≧1%の脳転移なし症例でのPFS中央値はペムブロリズマブ群が4.3ヵ月(95%CI:4.2~5.1)、化学療法群が6.1ヵ月(95%CI:6.0~6.3)であった(HR:0.91、95%CI:0.84~0.99)であった。
・PD-L1 TPS≧50%の脳転移あり症例での奏効率(ORR)はペムブロリズマブ群が33.9%、化学療法群が14.6%、脳転移なしの症例でペムブロリズマブ群が38.1%、化学療法群が26.1%であった。
・PD-L1 TPS≧1%の脳転移あり症例でのORRはペムブロリズマブ群が26.1%、化学療法群が18.1%、脳転移なしの症例でペムブロリズマブ群が25.8%、化学療法群が22.2%であった。
・奏効期間(DOR)中央値はPD-L1 TPS≧50%の脳転移あり症例でペムブロリズマブ群が未到達、化学療法群が7.6ヵ月、脳転移なしの症例でペムブロリズマブ群が33.9ヵ月、化学療法群が8.2ヵ月であった。
・DOR中央値はPD-L1 TPS≧1%の脳転移ありの症例でペムブロリズマブ群が未到達、化学療法群が8.3ヵ月、脳転移なしの症例でペムブロリズマブ群が30.4ヵ月、化学療法群が8.1ヵ月であった。
・Grade3以上のAE発現率は脳転移ありのペムブロリズマブ群が15%、脳転移なしのペムブロリズマブ群が18%、脳転移ありの化学療法群が46%、脳転移なしの化学療法群が43%であった。
この結果からペムブロリズマブ単独療法は脳転移の有無にかかわらず、なおかつPD-L1 TPS≧50%、PD-L1 TPS≧1%のいずれの場合でも脳転移ありの症例ではDOR中央値が未到達であることをMansfield氏は強調。「ペムブロリズマブ単独療法は脳転移を有する場合も含めPD-L1陽性の進行NSCLCの標準治療」との結論を述べた。
(ケアネット)