慶應義塾大学の菊地 悠平氏らは、精神疾患に対する向精神薬の1日1回投与と分割投与の有効性および安全性を比較するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。The Journal of Clinical Psychiatry誌2021年2月23日号の報告。
投与レジメンおよび向精神薬に関連するキーワードを用いて、2019年12月30日までに公表された文献を、MEDLINEおよびEmbaseよりシステマティックに検索した。精神疾患患者に対する向精神薬の1日1回投与と分割投与の臨床アウトカムを比較したランダム化比較試験を選択した。研究の中止、精神病理、治療による有害事象(TEAE)に関するデータを抽出した。
主な結果は以下のとおり。
・適格基準を満たした32研究(34件の比較検討、3,142例)をメタ解析に含めた。
・向精神薬別の比較検討の内訳は、以下のとおりであった。
●抗うつ薬:22件
●抗精神病薬:7件
●ベンゾジアゼピン:2件
●気分安定薬:2件
●抗うつ薬とベンゾジアゼピンの併用:1件
・向精神薬の1日1回投与と分割投与における研究の中止では、有意な差は認められなかった。
●すべての原因による中止(30件、2,883例、リスク比(RR):1.01、95%CI:0.94~1.09、p=0.77)
●効果不十分による中止(22件、2,307例、RR:1.06、95%CI:0.84~1.33、p=0.62)
●有害事象による中止(25件、2,571例、RR:0.93、95%CI:0.75~1.14、p=0.47)
・精神病理に関しても、両群間に有意な差は認められなかった。
●精神病理(8件、1,337例、標準化平均差:0.00、95%CI:-0.11~0.11、p=0.99)
・これらの結果は、いずれの向精神薬においても同様であった。
・TEAEに関しては、1日1回投与のほうが不安症状および眠気の頻度が低かった。
●不安症状(4件、347例、RR:0.53、95%CI:0.33~0.84、p=0.007)
●眠気(3件、934例、RR:0.82、95%CI:0.68~0.99、p=0.04)
著者らは「本結果より、精神疾患に対する向精神薬の投与は、向精神薬の種類にかかわらず、臨床的に1日1回投与が採用可能であると考えられる」としている。
(鷹野 敦夫)