小児双極性障害は、重度の機能障害につながる重篤な再発性疾患である。そして、最初に発現する気分エピソードが、疾患の長期的な経過に影響を及ぼす可能性がある。トルコ・Dokuz EylulUniversityのNeslihan Inal氏らは、全国多施設自然主義的フォローアップ調査のサンプルより小児双極性障害の臨床的特徴を評価し、躁症状発症年齢に対する最初の気分エピソードおよび以前の抗うつ薬治療効果の影響について検討を行った。Acta Psychiatrica Scandinavica誌オンライン版2021年6月2日号の報告。
双極I型障害の若年患者271例を対象に、トルコの代表的な6つの地域にある大学病院7施設と州立研究病院3施設の児童思春期精神科クリニックでフォローアップを行った。すべての診断は、構造化面接に従って実施した。すべてのデータは、臨床医が記録した診療データよりレトロスペクティブに収集した。
主な結果は以下のとおり。
・最初に発現した気分エピソードがうつ病/混合エピソードの患者(IDE群)は129例、躁病エピソードの患者(IME群)は142例であった。
・気分エピソードおよびラピッドサイクリングの総数は、IME群よりもIDE群で有意に多かった。
・社会人口統計および疾患の特徴で調整したCox回帰分析では、抗うつ薬治療を受けたIDE群の思春期女性において、より早期に躁病を発症する可能性が高いことが示唆された(ハザード比:2.03、95%信頼区間:1.31~3.12、p=0.001)。
著者らは「本研究は、トルコで初めて実施された大規模フォローアップ調査であり、抗うつ薬治療経験のある若年者、とくに思春期の女性において、躁病の早期発症との関連が認められた。小児双極性障害の根底にある神経発達のプロセスを特定し、予防に対するアプローチを行うためには、より大規模なプロスペクティブ研究が必要である」としている。
(鷹野 敦夫)