完全切除および補助化学療法後の早期(Stage IB~IIIA)肺がん患者へのアテゾリズマブを評価した「IMpower010試験」の最新の中間解析結果を、スペイン・Vall d'Hebron University HospitalのEnriqueta Felip氏が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2021)で発表した。
腫瘍細胞でPD-L1が1%以上発現している(PD-L1 TC≧1%)Stage II~IIIAの非小細胞肺がん(NSCLC)において、アテゾリズマブは再発または死亡リスクを34%低下したこと、再発部位について両群で明確な違いはみられないが、再発までの期間はアテゾリズマブ群のほうが延長したことなどが報告された。
IMpower010試験は、完全切除および補助化学療法後の早期肺がん患者へのアテゾリズマブによるアジュバント免疫療法(CIT)の有効性と安全性を、支持療法(BSC)と比較した初となる第III相無作為化試験。
「ASCO 2021」において、アテゾリズマブ群で無病生存期間(DFS)に関する有益性が統計的に有意であったことが報告されたが、今回研究グループは、再発部位と再発後治療に着目した探索的結果を加えて報告した。
・対象:UICC/AJCC第7版定義のStage IB~IIIAのNSCLC、手術後にシスプラチンを含む補助化学療法(最大4サイクル)を受けた1,005例
・試験群:アテゾリズマブ1,200mg/日3週ごと16サイクル
・対照群:BSC
・評価項目
[主要評価項目]治験医師評価による階層的DFS:(1)PD-L1 TC≧1% Stage II~IIIA集団、(2)Stage II~IIIA全集団、(3)ITT(Stage IB~IIIA全無作為化)集団
[副次評価項目]ITT集団の全生存期間(OS)、PD-L1 TC≧50% Stage II~IIIA集団のDFS、全3集団の3年・5年DFS
主な結果は以下のとおり。
・DFSに関する有意性の境界を越えていたのは、(1)PD-L1 TC≧1% Stage II~IIIA集団(ハザード比[HR]:0.66[95%信頼区間[CI]:0.50~0.88]、p=0.004)、(2)Stage II~IIIA全集団(0.79[0.64~0.96]、p=0.02)であった。(3)ITT集団は越えていなかった(0.81、0.67~0.99)、p=0.04)。
・PD-L1発現率が高いほどDFSの改善が大きいことが認められた。サブグループ解析で、PD-L1 TC 1~49%はHR:0.87(95%CI:0.60~1.26)、≧50%はHR:0.43(0.27~0.68)であった。
・PD-L1 TC≧1% Stage II~IIIA集団の再発率は、アテゾリズマブ群29.4%、BSC群44.7%であった。
・再発パターンは両群で差はなかった。PD-L1 TC≧1% Stage II~IIIA集団における、局所領域のみの再発率はアテゾリズマブ群47.9%、BSC群41.2%、遠隔再発のみは38.4%、39.2%などであった。
・無作為化から再発までの期間は、3集団ともにアテゾリズマブ群が延長した。PD-L1 TC≧1% Stage II~IIIA集団では、アテゾリズマブ群17.6ヵ月(範囲:0.7~42.3)、BSC群10.9ヵ月(1.3~37.3)であった。
・再発後の治療は両群とも化学療法が最も多かったが、CITの使用は3集団ともにBSC群で多かった。PD-L1 TC≧1%のStage II~IIIA集団ではアテゾリズマブ群11.0%に対し、BSC群35.3%であった。また、同集団での再発後放射線治療の実施は、アテゾリズマブ群43.8%、BSC群47.1%、手術の施行は16.4%、10.8%であった。
Felip氏は、「IMpower010試験において、アテゾリズマブはPD-L1 TC≧1% Stage II~IIIAのNSCLC患者の再発または死亡リスクを34%低下したことが示され、同集団の標準治療を変え得る可能がある」とまとめた。
(ケアネット)